概要
一般的には、鉄道駅において列車出発前に流れる音楽(メロディ)のことを指す。海外では日本企業が建設した路線ですらまず無く、非常にガラパゴスな文化である。
元祖は京阪電気鉄道とされる。
国鉄民営化後、JR東日本がやり始めたことで全国的に広まった。JR東の発車メロディは使いまわしをするので広域的に有名で、一部地域を除いて発車メロディ化が推進されている。
沿線出身の有名人や関連施設に因んだ楽曲が、発車メロディとして採用される場合がある。新規作曲ではなくポップソングをメロディ化する例としては京急が有名(ただし接近メロディなので電車内からは聞こえない)。
ご当地メロディも人気となっているが、中には自治体のゴリ押しやアレンジ不足もあり田舎臭いとか暗いと言われてしまうものも。
また発車ベルだけでなく発車メロディも騒音と認識する人も一部いる模様。電子ベルの騒音問題を解決するつもりが本末転倒である。
音楽CDも発売されている。録音してまわる熱心なマニア(音鉄)も多い。ただし発メロ業者が動画削除に熱心なので注意。
発車メロディを使わないエリアとしてJR東海エリアとJR東日本新潟支社管内がある。三島駅で駆け込み乗車に起因する乗客転落死亡事故を起こしたJR東海管内は、再発防止の為、メロディ禁止、伊豆箱根鉄道・名鉄・名古屋市営地下鉄など東海管内の他社にも徹底させた。しかし、伊豆箱根鉄道駿豆線は条件付きで発車メロディの採用が認められた。皮肉にも使用駅は三島駅であった。
新潟支社は理由は全く不明。2010年代から新潟駅、白山駅などごく一部で使用されるようになった。
千葉駅に関しては周辺地域への騒音対策の為、発車メロディはおろかベルすら鳴らない。
有名な発車メロディ
東日本
ヤマハ製
JR東初期の初メロ。かつては新宿駅などに使用されていたが悉く変更され、現在は水戸駅のみ使用されている。
東洋メディアリンクス製(JR-SHシリーズ)
SHとは塩塚博の略。五感工房とも呼ばれる。スペイン語シリーズと並んで発車メロディの代表格。総武線に多く採用されている。
東洋メディアリンクス製(スペイン語シリーズ)
JR東日本やりんかい線等で使用される発車メロディ。首都圏外で採用されるケースもある。JR東日本では乗客催促メロディとしても使用されている。
- Water_Crown(目黒、鶴見、東大宮、藤代など)
- Verde_Rayo(東神奈川など横浜線、京浜東北線停車駅多数、西船橋など総武快速線停車駅多数)
- Verde_Rayo V2(東京、八丁堀、越中島、佐倉)
- Cielo_Estrellado(大船、五反田など)
- Gota_Del_Vient(新橋、下総中山、西船橋など多数)
東洋メディアリンクス製(曲名不明、近郊地域シリーズ)
曲名が不明な場合は便宜上「近郊地域○番」と表現される。
ユニペックス製
90年代初頭から採用されている古参の発車メロディが多い。多数の駅で採用されており認知度は高い。
- せせらぎ(神田、日暮里など山手線停車駅多数及び西大井、松戸など)
- 春(大塚、目白、西大井など)
- 春トレモロVer(日暮里、御徒町など山手線停車駅多数及び南千住、赤羽、西川口など)
- 高原(大森、赤羽、南浦和など)
宗次郎シリーズ
何を思ったか曲の暗い部分を発メロ化して大量採用し全部廃止となった伝説のシリーズ。曲自体は良かったのだが、2005年ごろに著作権の使用料関係の問題も相まって使用終了となった。
永楽電気製
ほとんど廃止されたが独特の華奢なサウンドで根強い人気がある。基本的に既存楽曲を使用している。
サウンドファクトリー製(SFシリーズ)
SFはサウンドファクトリーの略称。長らく常磐線の主であったが、常磐線発メロ車上化による東洋メディアリンクス楽曲への変更に伴い、一部の楽曲が消えてしまった。
- 教会の見える駅(大崎、柏、田端など多数)
- 春new version(秋葉原、田端、天王台など多数)
- 海の駅(品川のみ)
- SF10-38(大崎、取手)
- SF10-43(柏、武蔵小杉)
- SF22-14(旧松戸、南流山)
- SF22-29(旧柏、旧金町)
テイチク製
テイチク社の発車メロディで、櫻井隆仁による作曲のもの。1999年に初めて実装され、2000年代に新規で採用された発車メロディの大半はこのシリーズ。
現在は櫻井音楽工房が権利を持っている。
しかし、それ以前にテイチク社がJOYSOUNDカラオケで知られるエクシング社に買収されたことによる発車メロディ事業からの撤退や、上述の宗次郎楽曲のように著作権上の問題の発生がうわさされており、現在ではテイチク製発車メロディの採用が行われていなかったり、別の楽曲への変更が進んでいたりする。
- 木々の目覚め(新宿、鎌倉、市川塩浜など)
- 雪解け間近(西船橋、佐原)
- シンコペーション(東大宮、王子、新木場、東松戸など)
- 小川のせせらぎ(秋葉原、新宿、池袋など)
- 花のほころび(渋谷、立川、小林)
- くるみあそび(上野、市川大野など)
- 光と風と(長野、東松戸)
- 南風の行方(新八柱、上総一ノ宮)
- 秋桜(新町、長野、新八柱、旧戸塚)
- 星空の下(府中本町、西船橋など)
- 海岸通り(新木場、市川塩浜など)
- 公園の楓(葛西臨海公園、千葉みなと)
- 瞬く街並み(大崎、上野、新松戸など)
- 美しき丘(さいたま新都心、潮見など)
- スプリングボックス(旧池袋、秋葉原、埼玉県内の武蔵野線停車駅多数など)
- メロディー(旧池袋、田町、埼玉県内の武蔵野線停車駅多数など)
- Twilight(大宮、新宿、府中本町)
- Sunny_Island(神田、上野原、市川大野など)
- sunrise(日暮里、南浦和、我孫子など)
スイッチ製
JRだけでなく東京メトロの発車メロディも手掛けている。2010年代より主に採用されている。期間限定メロディ、ご当地メロディを手掛ける傾向があり、採用されても変更されたり、発車メロディ自体が廃止されることも少なくない。
- 一番星見つけた(西国分寺)
- ムーンストーン(市川、川口、武蔵小金井など)
- 森の妖精(南船橋、市川)
- 蝶々のように(戸塚、佐倉)
- 木漏れ陽の散歩道(東神奈川、戸塚、武蔵小金井など)
- パシフィック(南流山)
- 子(旧取手)
電子ベル
音楽を流さず敢えてベルを鳴らす駅も存在する。高音ベル、低音ベルなどの種類がある。上野駅、千駄ケ谷駅などで採用。
- 東武鉄道(メモリア、夜のストレンジャー等)
関東の大手私鉄としては珍しく発車メロディ導入に積極的な会社であり、汎用の短い楽曲、長い楽曲やご当地メロディが入り乱れている。
西日本
京阪・向谷実シリーズ
なお元々京阪は発車メロディのパイオニアだった。
発車メロディの傾向と対策
京阪電気鉄道・東京メトロ東西線の場合
ともに株式会社音楽館社長でミュージシャンの向谷実が作曲した発車メロディを採用している。1駅1駅をつなげて聴くと1つの曲になる仕掛け。「MIYABI」「A Day in the METRO」はその一例。
また、全ての駅のメロディが同じ長さになっているのも特徴で、これにより乗客はメロディからの発車タイミングを感覚で覚え、不要な駆け込み乗車を減らそうとする狙いがある。
埼玉県の場合
埼玉ではよく市歌や市民歌、応援歌が流れ、市威発揚が行われる。埼玉県内は内戦状態なのだろうか?
希望(ゆめ)のまち(大宮、さいたま新都心、北浦和、浦和、与野)
ああ わが戸田市(戸田公園、戸田、北戸田)
- 川口市(期間限定)
川口市民歌(川口、西川口、東川口)
また、埼玉県内の武蔵野線停車駅の殆どは「メロディー」と「スプリングボックス」の組み合わせである。(ただし、上述の問題によりこの組み合わせも過去のものとなる可能性が高い。)
中央快速線の場合
童謡が多い。間違えてもホームで「どんぐりころころ」したり、「たきび」をしてはいけない。
JR東日本横浜支社の場合
川崎市内と相模線を除いて東洋メディアリンクス製のスペイン語シリーズかSH系の曲が多い。
特に横浜線を中心に多いのがVerde RayoとWater Crown。
上り線や東京方面にWater Crownの採用割合が多い。
南武線や東海道線茅ケ崎駅以西の主要駅は概ね、ご当地メロディとなっている。
路線毎、方向別ごとに統一されている場合が多い。
JR東日本東洋メディアリンクスの発車メロディ採用駅の傾向。
主に上り線や東京方面にWater Crownの採用が多く、それ以外の3曲が対になって使用される場合が多い。(常磐線各駅停車では車上メロディだが、Water crownとGota Del Vientの組み合わせとされている。)
又、Gota Del Vientが使用されていて、Water Crownが使用されていない場合はVerde RayoかCielo_Estrelladoの採用が高い。
但し、Verde RayとCielo_Estrelladoの組み合わせだけは殆どない。
西武鉄道の場合
新宿線と有楽町線、池袋線と国分寺線は一部の例外を除いて同じメロディーが採用されており、統一もされている。
ご当地メロディの場合、新宿線がCMソングや地域色が強い曲が多く、池袋線はアニメソング系が多い。
横浜市営地下鉄の場合
ブルーラインとグリーンラインでは関内駅などを一部を除いてきた両路線とも北行きと南行きで発車メロディーが統一されている。
近畿日本鉄道の場合
近鉄特急の始発駅では、列車の発車数分前にメロディを流し、その後「発車します」のアナウンスと同時に発車サインを流している。「ドナウ川のさざなみ」はその一例。
JR西日本大阪環状線の場合
1999年5月に導入されたが、2003年に一度廃止されている。
2014年の復活の際には、先述したように沿線出身の有名人や関連施設に因んだ楽曲があるほか、単なるダジャレや「環状運転」という路線の運行形態に因んで発車メロディを決定していたりする。
ここに発車メロディ一覧をすべて掲載する。
駅番号 | 駅名 | 発車メロディ | 選曲理由 |
---|---|---|---|
JR-O01 | 天王寺 | あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子) | 四天王寺の鐘から |
JR-O02 | 寺田町 | Life Goes On(韻シストBAND(大阪環状線イメージソング) | 曲のイメージ「次の大阪へ走り出す」から一周して次の一周が始まる |
JR-O03 | 桃谷 | 酒と泪と男と女(河島英五) | 河島英五の出身地最寄り |
JR-O04 | 鶴橋 | ヨーデル食べ放題(桂雀三郎withまんぷくブラザーズ) | 「焼肉の町」から |
JR-O05 | 玉造 | メリーさんのひつじ(アメリカ民謡) | 駅ビルの窓配置がこの曲の音階になっている |
JR-O06 | 森ノ宮 | 森のくまさん(アメリカ民謡) | 駅のコンセプトが「森」 |
JR-O07 | 大阪城公園 | 法螺貝(オリジナル) | 「大阪城→大阪の陣」から |
JR-O08 | 京橋 | ゆかいな牧場(アメリカ民謡) | 曲の別名「大阪うまいもんの歌」から |
JR-O09 | 桜ノ宮 | さくらんぼ(大塚愛) | 「桜」 大塚愛も大阪出身 |
JR-O10 | 天満 | 花火(aiko) | 天神祭の花火 |
JR-O11 | 大阪 | やっぱ好きやねん(やしきたかじん) | 大阪を愛し愛されたやしきたかじんの代表曲 |
JR-O12 | 福島 | 夢想花(円広志) | 「環状線→回って、回って…」 |
JR-O13 | 野田 | 一週間(ロシア民謡) | 日本語詞「日曜日に市場~」から(大阪中央卸売市場最寄り駅) |
JR-O14 | 西九条 | アメリカン・パトロール(アメリカ民謡) | JRゆめ咲線乗換駅→USJ |
JR-O15 | 弁天町 | 線路は続くよどこまでも(アメリカ民謡) | かつて駅下にあった交通科学博物館から |
JR-O16 | 大正 | てぃんさぐぬ花(沖縄県民謡) | 周辺には沖縄出身者が多数居住 |
JR-O17 | 芦原橋 | 祭(芦原橋太鼓集団「怒」) | 駅周辺に老舗和太鼓メーカーが多数所在 |
JR-O18 | 今宮 | 大黒様(文部省唱歌) | 大国主神社最寄り |
JR-O19 | 新今宮 | 交響曲第9番「新世界」より(ドヴォルザーク作曲) | 「新世界」最寄り |
JR東日本2024年10月以降の動き
1989年以降、積極的に発車メロディを採用していたJR東日本では、2024年10月に首都圏の主要駅である横浜、新宿、東京において、楽曲の変更がそれぞれの駅の全部のホームで行われ、長年親しまれた楽曲から、新たな楽曲へと刷新された。
詳細が判明しておらずとも、3駅のうち2駅以上で使用された楽曲が存在し、それらより、「同じ路線は同じ楽曲を使用し、それぞれの進行方向ごとに違う音色を使用する」という法則が確認されている。ただし、東海道線関連では横浜駅、東京駅、新宿駅(湘南新宿ライン)がいずれも2面4線の駅でありながら、2ホームで3駅共通の楽曲を使いながらも残りの2ホームではそれぞれ異なる楽曲を使用しており、駅ホームが2つ以上ある場合は例外が発生する場合がある。
関連項目
横断歩道/青信号…音楽が流れる音響式信号機があるが、利便性の点から減少傾向にある。
自然音…同じく音楽CDが発売されている。
店内BGM…発車メロディ同様、コアなファンが多い。