概要
プリキュアシリーズでは「プリキュアへの腹や顔へのパンチは厳禁」という決まりごとがあった。
これは『ふたりはプリキュア』および『ふたりはプリキュアMaxheart』でシリーズディレクターを務めた演出家の西尾大介氏が初めに提案して定めた原則である。
西尾氏によると、「バトルものでも女の子が腹または顔を攻撃される描写は避けるべき」というのが理由であり、この考えにはプリキュアを立ち上げた初代プロデューサーの鷲尾天氏も賛同している。
プリキュアが敵キャラクターに攻撃される場合には、爆発等の攻撃によって吹き飛ばされるのが大半であり、例えプリキュアが敵キャラクターに殴られたとしても高確率で腕を駆使して防御を行う他、殴られるところは背中等の場所に限られることが多いのが特徴。
ボディブロー等の腹部に打撃されるという苦しみは、腕や背中を打撃される苦しみとはかなり異なり、独特の気持ち悪さを伴う他に呼吸が困難になるほど想像を絶するほどの苦しみである。さらには、胃液を吐いたり激しい嘔吐を繰り返すという地獄のような苦しみを味わうことにもなり得る。その苦しみを少女のキャラクターにさせるというのは酷とも言える。
このように、女の子が変身するプリキュアへの腹パンなどは禁止にされる一方で、敵キャラクターや男性キャラクターはその限りではない。
実は、直接の描写でなければだが、敵キャラクターがプリキュアの腹部を打撃する描写自体は少なからず存在する。また、映画版や小説版ではプリキュアに該当するキャラクターが強烈な腹パンをくらったり、アニメ本編以外の場であればプリキュアが直接腹パンされることは多々ある。
また、ギャグ調のコミカルな描写ならばプリキュアでも腹部に攻撃されることもあり、妖精に腹部を踏まれたりすることもある。
規制緩和への動き
西尾氏や鷲尾氏といったプリキュアシリーズの初期メンバーが離脱してからは、腹パン描写の規制は緩やかになり、製作陣の意向によってはテレビアニメ本編でもプリキュアが敵キャラクターがプリキュアに対して「明確な腹パン」をするシーンが描写されることもある。
特に、プリキュアシリーズに参加することが多い演出家の長峯達也氏がシリーズディレクターまたは監督を務める作品では結構な確率でプリキュアが腹パンされるシーンが描かれており、『Yes!プリキュア5』および『Yes!プリキュア5GoGo!』の映画版、『ハートキャッチプリキュア!』および『ハピネスチャージプリキュア!』のテレビアニメ本編のいずれも明確な腹パンシーンが存在する。
また、プリキュアの腹部を打撃する描写をしやすくするための工夫として、プリキュアの腹部に手を当ててエネルギー弾をぶつけたり、プリキュアの腹部を直接殴る場合にはカメラを遠くに置いた視点にする等、腹部を直接殴る以外の攻撃パターンも存在する。
このように、下にある左のイラストのような過激な腹パンではなく、右のイラストのようなシンプルな腹パンなら許容されるようになる。
なお、プリキュアへの腹パン規制以外でも、「プリキュアの水着シーンは描かない」「プリキュアに流血描写は描かない」という規制に疑問を抱く製作陣もおり、演出家の田中裕太氏はプリキュアシリーズにできるだけ規制を緩和して新しいことに挑戦するべきだと主張している。
腹パンの規制が撤廃された作品
規制や制約が多いプリキュアシリーズたが、映画版ではそれらの規制が緩くなる傾向にあり、特に『映画Yes!プリキュア5鏡の国のミラクル大冒険!』(長峯達也監督)の劇中ではプリキュアが当たり前のように腹を打撃されるシーンが描写される等、この作品には実質的に腹パンの規制が存在しないのである。
これは、当時のプリキュアのプロデューサーであった鷲尾天氏はこの作品を「ノータッチ」と名言しており、「プリキュアは腹パンされてはならない」という原則が必然的に存在しないのであろう。
言わば、「プリキュアへの腹パン禁止が撤廃された作品」と言えるものであり、プリキュアシリーズに腹パン禁止が撤廃されたらこのようになるという良い見本とも言える。
また、プリキュアが腹パンされるシーンは直接かつ具体的に描写されており、キュアドリームは敵に直接腹に手を当てられてゼロ距離からエネルギー波をどて腹に受けて明確に悶絶するシーンがある他、キュアレモネードは敵に脇腹を蹴られ、キュアミントは敵が放つエネルギー弾を腹にくらっていたりする。
さらに、敵として登場する「ダークプリキュア5」のメンバーも例外なく腹パンをくらっており、ダークレモネードは2回連続して腹を打撃されて苦しむシーンがある他、ダークアクアは強烈な前蹴りを腹にくらうシーンもある。
特に、ダークドリームは腹がめり込む程の腹パンを受けるシーンが直接描写されており、ここまで明確な女の子の腹への攻撃は全プリキュアシリーズを通じてもこのシーンしか存在しない。
このように、この作品には数多くのプリキュアが腹部を打撃されるというシーンがたくさん描写されている貴重な作品なのである。
なお、この作品の続編に当たる『映画Yes!プリキュア5GoGo!お菓子の国のハッピーバースディ♪』(長峯達也監督)でも前作ほどではないが、プリキュアへの腹パンシーンが描写さている。
腹を殴る・殴られるキャラクターの傾向
敵キャラクターに腹部を「明確に」打撃されるプリキュアは、武道のプロフェッショナルである明堂院いつきが変身するキュアサンシャインや、空手のプロフェッショナルである氷川いおなが変身するキュアフォーチュンのような運動神経抜群のプリキュアに多い傾向にある。
これは、か弱いタイプの少女のキャラクターが腹パンされて苦しむというショッキングな描写をできるだけ避けるためと思われるが、勿論、か弱いタイプのプリキュアでも敵キャラクターに腹部を打撃されるというケースは珍しくない。
そもそも武道や空手には「腹突き/腹打ち」や「腹踏み」等の腹部を打撃する技が数多くあり、日々武道や空手の訓練をしているいつきといおなは腹部を打撃する技を何度もくらっている可能性が高く、この2人は日常的に腹部を打撃される機会が多いものと考えられる。
このように、例えプリキュアとして活動しなくても腹部を打撃される機会が多い少女も存在する。
逆に、プリキュアの腹部を「明確に」打撃する敵は、ダークプリキュア5、ダークプリキュア、バッドエンドプリキュア、キュアテンダー、トワイライトのような少女タイプのキャラクターが多い傾向にある。
これは、成人男性に該当する敵キャラクターが少女の腹部を打撃するという生々しく痛々しい構図を極力避けるためと思われる。
また、男性の敵キャラクターでも、アンラブリーのような男性が女性に変身したタイプの敵キャラクターもおり、この場合は男性でも姿は少女になるため、プリキュアに腹パンする際も少女が少女に腹パンするというマイルドな描写で済んでいる。
なお、少女の姿をしたキャラクターでも敵という立場ならば腹パン等の規制は一切存在しない。
高校生のプリキュアならば例外?
後述のように、現在最も腹パン等をくらったプリキュアは『ハートキャッチプリキュア!』のキュアムーンライトの合計6例であり、他のプリキュアと比較してもかなりの多さである。
さらに、小説版に至っては腹部を打撃されて血を吐いたり、生身の状態のまま腹部を蹴られる等、彼女が腹部を打撃される際には生々しく描写されている。
プリキュアの大半は中学校の2年生であり、キュアムーンライトに変身する月影ゆりは高等学校の2年生である。
彼女のように、一般的なプリキュアよりも大人に近い年齢のプリキュアならば、敵キャラクターに腹パンされるという描写もしやすいのであろう。
長らく、アニメ本編で高校生のプリキュアはキュアムーンライトこと月影ゆりのみであった。
しかし、2017年に放送予定の『キラキラ☆プリキュアアラモード』に登場するキュアマカロンこと琴爪ゆかりとキュアショコラこと剣城あきらは高等学校の2年生であり、月影ゆり以来の高校生プリキュアが2人も登場することになる。
なお、ゆかりは気高いクールビューティ系の少女であり、あきらは男性気質のボーイッシュ系の少女である。ゆり同様、両者とも大人に近い年齢であり、か弱いタイプの少女ではない。
はたして、高校生プリキュアのキュアマカロンとキュアショコラは、同じく高校生プリキュアであるキュアムーンライトと同様に腹部を明確に打撃されることはあるのか注目である。
腹パンされたプリキュアの例
ふたりはプリキュア / ふたりはプリキュアMaxheart
Yes!プリキュア5 / Yes!プリキュア5GoGo!
- ダークドリームに腹部を触られ、そのまま強烈な衝撃波を撃ち込まれて苦しむ(映画版にて)
- ダークココが放つエネルギー弾が腹部に直撃する(映画版にて)
- ムシバーンの前蹴りが腹部に直撃する(映画版にて)
- ブンビーに腹部を6回殴られて倒れ込む(プリキュア5周年スペシャルステージにて)
- ダークミントが放つエネルギー弾を腹部にくらう(映画版にて)
- シャドウが放つ衝撃波を腹部にくらって吹き飛ばされる(映画版にて)
- ネバタコスの触手攻撃を腹部にくらって吹き飛ばされる
- ビターが放つエネルギー弾が腹部に直撃する(映画版にて)
- シャドウが放つ衝撃波を腹部にくらって吹き飛ばされる(映画版にて)
- ネバタコスの触手攻撃を腹部にくらって吹き飛ばされる
- ムシバーンのエネルギー弾を腹部に押し込まれて吹き飛ばされる(映画版にて)
ハートキャッチプリキュア!
- ミラージュブロッサムに腹部を殴られ、ミラージュブロッサムのサーベル攻撃を腹部にくらって腹を抑える
- サバーク博士が放つビーム攻撃を腹部に直撃して苦しむ
- ダークプリキュアの両拳を使った強烈なダブルハンマーが腹部に直撃して降り落とされる
- ダークプリキュアの手から放つエネルギー弾を腹部にめり込まれながら撃ち込まれる
- コブラージャが放つカード攻撃を2回も腹部に直撃する。
- ダークプリキュアに腹部を触られ、そのまま腹部に強烈な衝撃波を撃ち込まれる
- ダークプリキュアの回し蹴りが腹部にくらって吹き飛ばされる
- 変身を解かれた状態のまま、ダークプリキュアの前蹴りを腹部に直撃される(小説版にて)
- ダークプリキュアの強烈な蹴りが腹部に直撃して血を吐く(小説版にて)
スイートプリキュア♪
- ゴーレムが放つビーム攻撃が腹部に直撃して吹き飛ばされる
- フラットに腹部を殴られ、高速で迫るフラットに腹部を攻撃され、止めにフラットに腹部を踏まれて降り落とされる(映画版にて)
スマイルプリキュア!
- アカンベェが振り回す鎖が腹部に直撃する
- 桃太郎の強烈な前蹴りが腹部に直撃して吹き飛ばされる(映画版にて)
- エネルギー状態のバッドエンドビューティの突進が腹部に直撃する
ハピネスチャージプリキュア!
- アンラブリーに腹部を触られ、そのまま腹部に衝撃波をもろに撃ち込まれる
- アンラブリーの強烈な拳が腹部に直撃し、そのまま腹部に衝撃波を放たれて苦しむ
- ダーク誠司が放つエネルギー弾を腹部にくらって吹き飛ばされる
- サイアークが放ったサッカーボールを腹部で受け止めて少し苦しむ
- 変身を解かれた状態のまま、オレスキーに腹部を2回も殴られて倒れ込む(ミュージカルショーにて)
- キュアテンダーのエネルギー弾を腹部にめり込まれながら撃ち込まれる
Go!プリンセスプリキュア
魔法つかいプリキュア!
- ドンヨクバールに腹部を殴られて吹き飛ばされる
その他の腹パンされた女性キャラクター
ドツクゾーン
- キュアブラックに腹部を殴られる
ダークプリキュア5
- シャドウの強烈なパンチが腹部にめり込んで吹き飛ばされる(映画版にて)
- キュアレモネードに腹部を殴られ、さらに平手で腹部をド突かれて腹を抑えながら苦しむ(映画版にて)
- キュアアクアに強烈な前蹴りを腹部にくらって吹き飛ばされる(映画版にて)
砂漠の使徒
- キュアムーンライトに強烈な後ろ回し蹴りを腹部にくらって吹き飛ばされる(小説版にて)
ジコチュー
余談
腹パンされたプリキュアを最も演じた声優
ダークドリームとキュアビューティはともに声優の西村ちなみ氏が演じており、西村氏はいずれも敵キャラクターに腹パン等をされたプリキュアを担当したことになる。
腹パンされたプリキュアが最も多いシリーズ
敵キャラクターに腹部を打撃されたプリキュアの人数が最も多い作品は、『Yes!プリキュア5』とその続編の『Yes!プリキュア5GoGo!』の2作であり、そのシリーズに登場するキュアドリーム、キュアレモネード、キュアミント、キュアアクア、ミルキィローズの計5人が敵キャラクターに腹パンされた経験をもつ。
歴代でもプリキュアの人数が多いから当然といえば当然なのだが、前述の腹パンされたプリキュアの一覧を見る通り、ほぼ同じ人数である『スマイルプリキュア!』や『ドキドキ!プリキュア』と比較してもその差は歴然である。
しかし、腹パンされるとは言ってもほとんどは映画版での描写である。詳細は「腹パンの規制が撤廃された作品」を参照。