概要
2001年1月28日から2002年1月27日までテレビ朝日系列で放映された「平成ライダーシリーズ』第2作にして、仮面ライダー生誕30周年記念作品。全51話。
仮面ライダーアギト、仮面ライダーG3、仮面ライダーギルスの3人の仮面ライダーが大きく喧伝され、複数の仮面ライダーが登場しドラマを展開するという平成ライダーの潮流の先駆けとなった。
未確認生命体事件が収束した直後の日本を舞台にしており、新たなる脅威アンノウンの暗躍に立ち向かう仮面ライダーたちの活躍を描く。
前作『仮面ライダークウガ』のように警察が怪事件を追う要素を盛り込みつつもそれがメインになっているわけではなく、ミステリー・群像劇の要素を取り入れた作品となっている。
また、仮面ライダーシリーズの映画作品としては『仮面ライダーJ』、TVシリーズの延長としては『仮面ライダーBLACK』以来実に11年ぶりに劇場版が制作され、以降のライダー作品で定番となった。
全51話中50話、加えて劇場版『PROJECT G4』、その前日談であるTVSP『新たなる変身』を井上敏樹が執筆。
第28話とHBVは次回作『仮面ライダー龍騎』でメインライターを務める小林靖子が担当している。
あらすじ
未確認生命体事件が解決してから2年後の西暦2001年。沖縄県与那国島海岸に謎の物体オーパーツが漂着する。
時を同じくして、世間では物理的にあり得ない不可能殺人が多発していた。警視庁は一連の事件を未確認生命体以上の脅威として認識し、アンノウンと呼称。有事の際の備えに開発していた対未確認生命体用パワードスーツで変身する、仮面ライダーG3で新たに現れたアンノウンと戦うが、未確認生命体を凌駕する能力の前にまるで歯が立たない。しかし、アンノウンを突如現れた謎の戦士が倒してしまう。
その戦士に変身するのは、記憶喪失でお人好しな青年・津上翔一。彼をはじめとしたアギトと呼ばれる仮面ライダーとアンノウンの戦いが幕を開ける。
総合的な評価
怪人による不可能犯罪や、前作ほどではないが大量の殺人シーンがあり、前作同様に子供には複雑な描写が多く見られるなど表現の面での指摘はあるものの、毎週見たくなるようなミステリー・謎解き要素が多く取り入れられており、平成ライダー史上最高視聴率を記録した。
最終的に4人となった各ライダーの人気に加え、彼らの苦悩や過去を独特なストーリーに仕立てうまくまとめており、今なお人気作となっている。
また、『クウガ』に少なからずあった「迫力と臨場感はあるが特撮ヒーローらしいアクションがもっとほしい」という声を受けてか、ライダーそれぞれの個性を出した動きの多い戦闘シーンも描かれている。
プロデューサーに白倉伸一郎、監督に田﨑竜太、メインライターに井上敏樹と以降の平成ライダーでお馴染みになるスタッフが中心となっており、作風に関して言えば後の作品への基盤として『クウガ』よりも大きな役割を果たしているとも言える。
具体的には、複数人ライダーの導入、戦闘時のBGMとして使用するエンディングテーマ、夏のギャグ回など平成ライダーの「お約束」は『アギト』で形成されている点が多い。
前作『クウガ』との関連
一見すると『クウガ』の続編のように思えるが、世界観に直接的な繋がりはない。
これに関しては、当初こそ『クウガ』の続編として制作が進んでいたものの、途中から『クウガ』の設定を下敷きにしつつ直接の関連はない独自の世界観にするという制作方針に切り替えられたという少々ややこしい逸話があるため。
これは『クウガ』が綺麗に完結したので、直接の続編は蛇足になりかねないという『クウガ』のスタッフ側の意見と、『クウガ』の人気を引き継いで新しい仮面ライダーシリーズを展開していきたい、というスポンサー側の意見を折衷したもの。
結果として、『クウガ』以降の平成ライダーは毎作独立した世界観となり、他作品とのストーリー的な繋がりはないという方針の切っ掛けになった(平成ライダーシリーズ最終作『仮面ライダージオウ』を除く)。
未確認生命体事件が本編の2年前に起こったという設定があるが、時系列が『クウガ』本編とは異なっており、いわゆるパラレルワールドとなっている(『クウガ』本編の事件は西暦2000年、『アギト』では本編が2001年であり、その2年前は1999年となって一致しない)。
『仮面ライダーディケイド』でアギトの世界が描かれた時は、「クウガの世界とよく似ているが別の世界」と設定された。
なお月刊ヒーローズで連載されている漫画版『クウガ』は井上が執筆しているためか、アギトが存在する世界観となっており、『アギト』放送から実に14年ぶりに繋がりが語られるのではないかと注目されていた。
『ジオウ』でアギト編が行われた際は、G3がアナザーアギトに襲われるという記事の横に九郎ヶ岳遺跡での失踪事件について触れられている。なお、このアギト編冒頭でクウガライドウォッチは既に手に入れていることが確認されている。
本作の仮面ライダーについて
劇場版のオーディオコメンタリーで監督の田崎竜太は「仮面ライダーは人間と超人の境界線を行き来する存在」と述べており(翔一は境界線を楽々越える、氷川は越えようとするが越えられない、涼は越えてしまった存在と表現している)、後述するテレビスペシャル『新たなる変身』の前口上は恐らくこれが元ネタだと思われる。
主な登場人物
→仮面ライダーアギトの登場人物一覧を参照。
音楽
劇伴
『クウガ』に引き続き、佐橋俊彦が担当。
第36話からはTV用録音の楽曲に加えて、劇場版用録音の楽曲が使用されており、クライマックスを大いに盛り上げている。劇場版用録音の楽曲が本編後半でも使用される形式は、以降の平成一期の作品でも恒例となった。
なお、TV用第2回録音の楽曲にはCDに収録されていない楽曲が8曲存在する。
主題歌・挿入歌
OP映像では本編に先駆け、アギト・G3・ギルスの3人がバイクで併走するシーンが描かれ、なかなか共闘の輪に加わらないギルスにやきもきしていた当時の子供たちの心を躍らせた。
本作以降の平成ライダーは主題歌がオープニングテーマのみとなり、正式なフォーマットとしてのエンディングテーマは原則存在しない(『仮面ライダー響鬼』の第33話までや、及び各作品の一部の回を除く)。このため、各回の戦闘のクライマックスで流される挿入歌がエンディングテーマと称されている。第1話は主題歌が使用されず、次回予告にほとんどのスタッフロールを被せるという荒業を行った。
- 前期OPテーマ「仮面ライダーAGITO」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:三宅一徳/歌:石原慎一/コーラス:大木理紗
第2話から第35話まで使用され、最終話のEDとしても使用された。
シリーズで初めて、劇伴音楽の担当者が制作に関わらない主題歌となった(佐橋俊彦によると、当初は三宅が音楽担当者になる予定もあったという)。インストゥルメンタル版は予告編音楽として使われた。また、クレジット表記のフォントが途中で変更されている。
- 後期OPテーマ「仮面ライダーAGITO 24.7 version」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:三宅一徳/リミックス:三宅一徳・鈴木浩之・篠笥孝/歌:石原慎一/コーラス:大木理紗
第36話から第50話までと、テレビスペシャルで使用された。
「仮面ライダーAGITO」の伴奏をリミックスし、新しい歌詞で歌い直したもので、テレビシリーズでは2番の歌詞がオープニングテーマとして、劇場版では挿入歌としてそれぞれ使われた(24.7は『百獣戦隊ガオレンジャーVS仮面ライダーアギト』によれば「24時間7日」の意味)。なお、この曲以降、歌詞に仮面ライダーの単語が入るライダー主題歌は、「仮面ライダーセイバー」まで存在しなかった(海外版であればその間に「KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT OPENING THEME」もある。名前を呼ぶだけであれば平成二期は多くが該当するが、いずれも「仮面ライダー」という歌詞はない)。
- 前期挿入歌「BELIEVE YOURSELF」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:三宅一徳/歌:風雅なおと
3ライダー共通の戦闘テーマ。TVSPや最終回でも使用された。
- 「searching for myself」
作詞:藤林聖子/作曲:佐橋俊彦/歌:きただにひろし
仮面ライダーギルステーマソング。劇中未使用。
- 「Stranger in the dark」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:佐橋俊彦/歌:坂井紀雄
仮面ライダーG3戦闘テーマだが、唯一の使用シーンは氷川誠ではなく北條透が装着したG3の戦闘シーンである。
- 「The usual suspects」
作詞:藤林聖子/作曲:大橋恵/歌:坂井紀雄
劇中未使用。
- 「NEVER DIE」
作詞:藤林聖子/作曲:佐橋俊彦/歌:橋本仁
G3もう一つのテーマソングで、劇中未使用。
- 「One&Only」
作詞:藤林聖子/作曲:三宅一徳/歌:風雅なおと
津上翔一テーマソング。劇中未使用。
- 「MACHINE TORNADER」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:三宅一徳/歌:石原慎一
マシントルネイダーテーマソング。マシントルネイダー スライダーモードの登場シーンでは毎回使用された。
- 「Emergency Guard Chaser」
作詞:藤林聖子/作曲:佐橋俊彦/歌:橋本仁
ガードチェイサーテーマソング。劇中未使用。
- 「Overlord」
作詞:unknown/作・編曲:佐橋俊彦/歌:Overlord Choeur
闇の力テーマソング。劇中未使用。
- 「Home Sweet Home」
作詞:藤林聖子/作曲:三宅一徳/歌:秋山莉奈、広川順子
風谷真魚キャラクターソング。劇中未使用。『アギト』唯一のキャラソン。
- 「もうひとつの仮面の戯曲」
日本語作詞:藤林聖子/作曲・編曲:佐橋俊彦/歌:白石圭美
オンボーカル版に加えてInstrumental版も数回使用されているが、後者は未収録となっている。
- 「Burnin' your heart」
作詞:藤林聖子/作曲:三宅一徳/歌:石原慎一
バーニングフォームとシャイニングフォームのテーマソング。劇中未使用。
- 「extremes meet」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:三宅一徳/歌:風雅なおと
劇中未使用。
- 後期挿入歌「DEEP BREATH」
作詞:藤林聖子/作曲:野村義男/編曲:RIDER CHIPS/歌:ROLLY (RIDER CHIPS Featuring ROLLY)
トリニティフォーム登場以降、使用された。
- 「Sitting On The Dynamite」
作詞:藤林聖子/作曲:野村義男/編曲:RIDER CHIPS/歌:橋本仁 (RIDER CHIPS Featuring 橋本仁)
「DEEP BREATH」のカップリング曲。劇中未使用。
- 「Touch」
作詞:藤林聖子/作曲:野村義男/編曲:RIDER CHIPS/歌:橋本仁 (RIDER CHIPS Featuring 橋本仁)
「DEEP BREATH」のカップリング曲。第47話でカラオケ版を使用。
- 「事件だッ!」
劇場版主題歌。
終始シリアスな展開だった映画を最後まで見届けた客の心に爽やかな風を吹かせるような快感をくれる一曲。
各話リスト
話数 | サブタイトル | 登場怪人 |
---|---|---|
1 | 戦士の覚醒 | ジャガーロード |
2 | 青の嵐 | ジャガーロード |
3 | 俺の変身! | トータスロード |
4 | パズル解読 | トータスロード |
5 | 第3の戦士 | スネークロード |
6 | 哀しき妖拳 | スネークロード |
7 | 記憶の一片 | クロウロード |
8 | 赤い炎の剣 | クロウロード |
9 | 2人のG3 | オクトパスロード |
10 | 銀の点と線 | オクトパスロード |
11 | 繋がる過去 | ゼブラロード |
12 | 湖の激突! | ゼブラロード |
13 | 父の手掛り | スコーピオンロード |
14 | 最強キック | スコーピオンロード |
15 | 罠の始まり | ジャッカルロード |
16 | 怪しい女… | ジャッカルロード |
17 | 捕獲作戦! | ジャッカルロード |
18 | 新しいボス | ハイドロゾアロード |
19 | 解散決定? | ハイドロゾアロード |
20 | 或る目覚め | クイーンジャガーロード、ジャガーロード |
21 | 暴走する力 | クイーンジャガーロード、ジャガーロード |
22 | 運命の対決 | ビーロード |
23 | 資格ある者 | ビーロード |
24 | 完璧マシン | スティングレイロード |
25 | 激突再び! | スティングレイロード |
26 | 甦った記憶 | クイーンクロウロード、クロウロード |
27 | 涼、死す… | クイーンクロウロード、クロウロード |
28 | あの夏の日 | シーアーチンロード |
29 | 数字の謎!? | フィッシュロード |
30 | 隠された力 | クラブロード |
31 | 人の居場所 | オルカロード、クラブロード |
32 | ギルス復活 | 水のエル、オルカロード |
33 | 現れた敵 | 水のエル、オルカロード |
34 | 呼び逢う魂 | 水のエル、マンティスロード |
35 | 謎の救世主 | 水のエル、クロウロード、フィッシュロード |
36 | 4人目の男 | 水のエル、クロウロード、フィッシュロード |
37 | 暗闇の戦士 | リザードロード |
38 | その正体… | リザードロード |
39 | ギルス咆哮 | リザードロード |
40 | 共同戦線! | ジャッカルロード |
41 | 光と闇 | 水のエル・強化体 |
42 | あかつき号 | 水のエル・強化体 |
43 | 動き出す闇 | 水のエル・強化体、オウルロード |
44 | 父と姉と… | ファルコンロード、オウルロード |
45 | 奪われた力 | ヘッジホッグロード、ファルコンロード |
46 | 戦士その絆 | ヘッジホッグロード、ファルコンロード |
47 | 天空の怪! | 風のエル |
48 | 星の支配者 | 風のエル |
49 | 絶滅の足音 | 風のエル、地のエル |
50 | 今、戦う時 | 風のエル、地のエル |
51 | AGITΩ | 風のエル、地のエル・強化体 |
劇場版
TVスペシャル
余談
『アギト』のテーマが「神殺し」であるためか、主要ライダー4人はそれぞれ神の反逆者に対応したモチーフないしはポジションになっている。
- アギト:龍(ドラゴン)。中間形態の色が赤い。赤いドラゴンはサタンを表すともされ、力を与えた張本人がサタン(というよりプロメテウス)のような立ち位置だったりする。
- G3:(ただの)人間。AIを備えたスーツで戦闘をするため、「ロボット」のポジションであるとも解釈できる(派生型のG4は実質装着者が部品のロボットのようなものである)。
- ギルス:他媒体ではネフィリム=ギルスと紹介されており、ネフィリムは大抵巨人のことを指す。また、アギトと根源は同じであるため、神から見た悪魔と解釈することもできる。
- アナザーアギト:堕天使(デザインにはエルロードの意匠がある)。
本作も前作同様にハイビジョン撮影を行なっているが、前作でのやり方とは異なり「スクイーズ(撮影時に収録した映像を4:3画角へと圧縮し、編集時に本来の比率である16:9の画角に戻す)」という手法が用いられた(本放送は4:3画面に16:9レターボックスという形で放送)。これは『仮面ライダー響鬼』までこの撮影方法が用いられた。2006年放送の『仮面ライダーカブト』以降は「最初から『16:9』画角で収録する」という前提で再度撮影方法が変更された(なお『侍戦隊シンケンジャー』以降の撮影方法はこれらとは別である)。
ただし、第28話のみ演出上の都合で「放送上では『過去の場面を4:3フルサイズ』で『現在の場面を16:9レターボックス』に分けて放送」した(その意味では平成ライダーシリーズでは唯一『4:3』画面で制作された回ともいえる)。
なお、再編集が煩雑(先述とは逆に「過去の場面を4:3レターボックス」に「現在の場面を16:9フルサイズ」にすればピッタリと画角にはまる)なのかどうかは定かではないものの、YouTubeでの配信では画面表示がおかしく(いわゆる「超額縁放送」状態)なって配信されてしまった。
本作は企業とタイアップしていないのに、なぜか焼肉を食べる描写が多い。
当時は狂牛病(BSEという単語はまだなかった)問題で焼肉業界が苦境に立たされていた時期であり、番組スタッフが焼肉の業界団体から感謝状を贈られたという逸話もある。
初期案では、「人間とモンスターがカードを使って契約する」という設定があり、これは翌年の『龍騎』で採用された。
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主なゲスト出演者
てらそままさき(18話−19話)
京本政樹(TVスペシャル)
仮面ライダー555、仮面ライダー響鬼(後半):プロデューサーと脚本家が同じライダー作品。
仮面ライダーOOO:平成二期第2作目、「主人公はマイペースでお人好しな性格の年齢が21歳の青年だが、家族に関する暗い過去を持っていて諸事情で本名とは別の名前を名乗っている」「主役ライダーは複数の色の形態を持つが、二回しか登場していない強化形態もある」「銃使いの2号ライダーの変身者は生真面目で正義感と責任感が強い性格の警察官で組織に所属している」「ヒロインは主人公の理解者で優しい性格の少女」「サブヒロインは2号ライダーの上司」「年齢が30代のドクターライダーが登場する」「別の2号ライダーのシステムが登場する」「二種類の怪人が登場する」「物語が進むにつれて様々な謎が明かされていく」「ヒロインが特殊な力で仲間の危機を救う展開やヒロインが苦悩する主人公の為にお弁当を作る展開がある」「最終決戦時に2号ライダーが主人公の危機に駆けつけてその命を救う」「前作から受け継いだ要素が多いが、直接的な繋がりはない」といった多くの共通点がある。
ウルトラマンダイナ:平成のシリーズ第2作目。前作の主役ヒーローによく似た容姿、複数の色の姿にチェンジする(スピード型である青い形態が第2話、パワー型である赤い形態が間を置いてから登場)、前作の人気を引き継いで新しいシリーズを展開した、平成のTVシリーズで初めて劇場版が製作・公開されたと共通点が多く、比較される事も多い。ただし、こちらは前作と完全に同じ世界観の続編である。
サイボーグ009:同作品の「神々との戦い編」が本作品の原案とされている。
ニチアサ同期 | |
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30分前 | 百獣戦隊ガオレンジャー |
30分後 | も~っと!おジャ魔女どれみ |
仮面ライダークウガ → 仮面ライダーアギト → 仮面ライダー龍騎