概要
機動戦士ガンダムSEEDの公式外伝・機動戦士ガンダムSEEDASTRAY・機動戦士ガンダムSEEDXASTRAYにて、サーペントテールのメンバー、リード・ウェラーが発したセリフ。
この時、サーペントテールはシーゲル・クラインから『ニュートロンジャマーキャンセラーのデータを、地球に住むマルキオ導師に渡すべきか否かを見定めた上で、データの処遇を決定する』の依頼により、ドレッドノートガンダムに搭載されたニュートロンジャマーキャンセラー(を内装したドレッドノートの頭部)を奪取した。
この行為にイライジャ・キールと風花・アジャーの2人は「地球のエネルギー問題の解決になる」「素直にマルキオに渡すべきでは?」と声を揃えた時、リードが「つまりよ 人道的なことが多くの人を殺すことだってあるってことさ」と発言し、イライジャの「そこまで地球のヤツらもバカじゃないだろ」に対しリードがこう返答した。
「賢者が百人いても良い意味で躊躇う事を、バカは一人でも悪い意味で実行してしまう」という意味合いであり、いわゆる『無能な働き者』を体現したセリフである。
後述するように、このリードの危惧は現実のものとなってしまった。
劇中では
一見すると「バカ一人で賢者百人はどうにもならない」と思われるが、ガンダムSEEDの世界では、正に『一人のバカ』によって多くの悲劇が起きたと断言出来るシーンが随所に見られる。
機動戦士ガンダムSEED
アル・ダ・フラガ
ムウ・ラ・フラガの実父。
妻と不仲から『彼女の血を継ぐ実子への遺産相続』を防ぎたかった彼は、クローン技術で死を乗り越えようとしたが、その過程で誕生したのがガンダムSEEDの黒幕のラウ・ル・クルーゼであり、キラ達の懸命な奮闘がなければ人類そのものが滅亡していた。
ムルタ・アズラエル/パトリック・ザラ
どちらも上記のクルーゼの掌に踊らされ、アズラエルもザラも周囲の制止を振り切り暴走し、人類滅亡の片棒を担いでいたのは間違いない。
特に前者はニュートロンジャマーキャンセラーをフレイを介しクルーゼから受け取った際に、プラントへの核攻撃の為にニュートロンジャマーキャンセラーを使用している。戦争の兵器として使用される最悪のケースであり、シーゲルが最も避けたかった事態である。
機動戦士ガンダムSEEDDESTINY
ロード・ジブリール
アズラエルと同じブルーコスモスに所属し、コーディネーターを敵視しつつ、ロゴスの盟主として戦争ビジネスも並行すると、戦争の悲劇を必要に応じて維持する死の商人である。
サトー
ザラと同じ血のバレンタインで家族を喪った過去を持つが、ザラと同じ『ナチュラルの殲滅』に妄執し『ブレイク・ザ・ワールド事件』を引き起こしてしまった。
ウナト・エマ・セイラン及びユウナ・ロマ・セイラン親子
前国家元首の娘を手中に納め、オーブの全権を我が物にしようとしたが、キラによるカガリ略奪を契機に陰りを見せ、上記のジブリールとの繋がりが明らかに成ったにもかかわらず、それを隠匿しようとした結果、最終的に再び国を戦火に見舞わす人災を起こした。
機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM
アウラ・マハ・ハイバル
劇場版における元凶。
前作で死去したデュランダルが提唱した『デスティニープラン』を(身勝手にも)継承し、それをC.E.世界全てに導入させるべく暗躍した。
しかし、デュランダルが「個人の自由を犠牲にする代わりに、世界規模で安定した秩序の構築」を模索して作った『デスティニープラン』を、アウラは「一握りの支配種とそれ以外の隷属種による完全二極化世界の創世」と都合良く歪曲した結果、 自らの意を汲む傀儡を作る、不要になった自国に核兵器を放つ、『デスティニープラン』導入を拒絶した国家にレクイエムを発射する等々のジェノサイドを躊躇なく決行した。
そして、ここで間違えないで欲しいのは、彼等は知性や知能の上では決してバカではない。それどころか発言や行動の一部一部を切り取ると、彼等の主張そのものには(どんなに微々たるものでも)一定の理自体は存在する。
しかし、彼等は共通して『自身の大願成就』に妄執し、それによって周囲との関係を断ち切り暴走した結果、微かにあった正当性を無に帰す大惨事を生んでしまったのだ。
他のガンダム作品では
ファースト
キシリア・ザビ
実兄との政争に勝つ為に、わざわざ自分の派閥を軍内に作るならまだしも、ギレンが実父を謀殺したのを知るや、連邦との最終決戦の最中にギレンを殺害、遂にジオンの実権を握ったが、それによって指揮系統が混乱しジオンの敗北、ひいては自身の死に繋がった。
ついでに言及すれば、彼女直属の部下もバカが揃っており、特にマレット・サンギーヌはジオンの敗北を認めず「自分こそがジオンだ(要約)」と称し、味方殺しをしてまで悪足掻きを続けた。
戦争序盤まで話を広げるとアサクラも、末端の兵士でしかない海兵隊に鎮圧ガス(催眠ガス)と偽り毒ガスを(彼等の大義名分的に「自らが守るべき」コロニーに)注入させ、リーダーのシーマ・ガラハウに深刻なPTSDを患わせた挙句、その責を全て海兵隊に被せて、海兵隊はアクシズへの亡命を拒絶されている。
機動戦士ガンダムサンダーボルト
グラハム
故郷のコロニー・ムーアとそこに住む自身の家族をジオンによって失ったのを契機に、復讐鬼に陥っている……のみならず「その原因を生んだのはムーアの上層部が無能なせいだ」として、その血族にまで理不尽な憎悪を向ける。
その結果、自身が所属する部隊のエースを人身御供にしようと目論む、覚悟を決め艦長の務めを果たそうとしたクローディアの行いと判断(=自分達の戦艦が大破寸前だったため、クルーに対し船からの脱出を指示)を非難した挙げ句、その場で彼女を射殺し道連れにするなどの暴走を起こした。
機動戦士Zガンダム
バスク・オム及びパプテマス・シロッコ
バスクは自身の『スペースノイドへの憎しみ』だけで、過去に敵味方の混戦時にソーラ・システムを発射する、本編では30バンチ事件事件等の凶行に及ぶ様は、部下のジェリド・メサやヤザン・ゲーブルからも嫌煙され、遂にジャミトフ・ハイマンからも監視としてパプテマス・シロッコを召集、結果的にティターンズの壊滅に繋がった。
そして、シロッコもキシリアと同じ徹を踏むに至った。
自らの才覚を思うがままに振るいたいシロッコは、召集後はティターンズの主だった運営陣を謀殺し、遂に同組織の実権を握ったが、こちらもキシリアと同じ決戦のどさくさに行った為、適当に揉み潰せば終わりだった程ズタボロのエゥーゴに、一発逆転のコロニーレーザーを使われてしまい、三日天下の如く呆気なく野望が潰えた。
機動戦士クロスボーン・ガンダム
クラックス・ドゥガチ
僻地の木星を死に物狂いで人が住めるだけの環境にした半生に対し、連邦が見せた誠意が『裕福でうら若き女性との婚約』で、自分がそれで容易く懐柔されると思われていると感じて以降、絶望と憤怒のままに『地球滅亡』の妄執に取り憑かれてしまう。その際、木星の人民には「美しい地球を民の為に手に入れる」と嘯く=自らの真意を隠し木星の人民を騙す所業まで行う。また「自らの手で地球を滅ぼす」のに拘泥してしまい、折角の地球を容易く滅亡させる兵器の運用を誤る采配ミスも犯してしまった。
実際、彼自身が独白している様に、彼に嫁いできた『うら若き令嬢』が「金や地位が目当てのゲスであったなら彼女だけを恨めば良かった」のだが、彼女は自分より2回り以上歳が上の老爺であるドゥガチを、夫として心から愛してくれた。
それが却って彼の劣等感を刺激してしまったあげく、その令嬢は木星の過酷な環境が原因で早くに亡くなってしまい、それを機にドゥガチは暴走に至ってしまう。
更にその令嬢を派遣してきたのは、F91のラスボスの鉄仮面=カロッゾ・ロナであり、彼自身が妻に裏切られた過去から「自分達に都合のいいことを言って擦り寄る以上、せめて嫁ぐ女性だけは誠実で美しい女性にするべきだ」と考え、最大限の誠意として全力を尽くした結果である(そもそも連邦の薄情そのものな行いも、地球圏の戦乱が長引き過ぎて木星に割ける余力が無かった為でもあり、地球から見れば最大限出来る限りの誠意は尽くしていた)。
全員がもう少し悪人なら防げた悲劇であるだけに、現実のやるせないものを感じざるを得ない。
尚、後にドゥガチの隠し子が現れるがこちらもコンプレックス等から、実父と似て非なる暴走を起こしてしまった。
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ
三日月・オーガス
本作の主人公。
実年齢に反して戦士として成熟かつ達観した感性・視野を備えているが、就学経験が皆無のストリートチルドレンかつ、政治的な取り引きや大規模な計画は相棒に丸投げしていたツケから、組織の幹部としては色々と欠落が見られる(三日月自身も己の不備を自覚してはいるが、それを改善する意識が極めて薄い)。
敵対勢力に関しては基本的に『殲滅』の一択にしかない視野の狭さから短期的には成功したが、後々に不都合な事態を招く場面も散見される。
特に参謀の死後落ち込むオルガへ掛けた発破が、致命的に方向を誤ったため、以後の組織崩壊の遠因となった。
イオク・クジャン
真面目で血気盛んな若きクジャン家当主。
部下からも慕われている反面、思い込みも激しさから頭に血が上り易い上に、一度思い込むと若さも相まって自分の正義を疑わず暴走してしまう欠点が有るなど、人間的には非常に未熟な青二才。
その未熟ぶりから……
・モビルアーマーハシュマルの復活の原因な上、その結果火星で多くの民間人が犠牲となる。
・戦闘の意思が無く停戦・降伏の意を示したにもかかわらず、それを無視してタービンズへの一方的な攻撃と虐殺を行う。
等々、その所業と反省の色が見受けられない姿から、視聴者の好感度は皆無に等しく、正に『無能な働き者』を体現した存在で有る。
非ガンダム作品では
スーパーロボット大戦では
スーパーロボット大戦シリーズでは一人の天才に対して、それこそ一人が賢者百人どころか万人の働きをするプレイヤー部隊の何十人の(ある意味、愛すべき)バカ共との激突が幾つも描かれている……。
特撮番組
軍隊やPMCに類する、武力を保有する組織の上層部に散見される。
ウルトラシリーズではウルトラマンZのユウキ・マイが挙げられる。
彼女は地球防衛隊に所属する人間だが、悪意ある地球外生物の策略に陥り、最凶最悪の兵器を造り上げ、地球文明を滅ぼす片棒を担いでしまった。
振り返ると、ウルトラマンギンガSで神山政紀が地球を滅ぼし兼ねない禁断の兵器ビクトリウム・キャノンを開発・運用するも、物語の黒幕により最悪の形で奪われる。
更にはウルトラセブンでは『「地球を守る為」の大義名分』により、徒に凶悪な兵器を開発・運用を目論む上層部に対し、モロボシ・ダンが「それは、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ…」と警鐘を発した。
仮面ライダーシリーズでは平成になって以降、該当するキャラクターが増加していった。
ざっと挙げても未知の存在に対抗する為『人命を軽視した兵器』の開発に妄執した女、『妹を蘇らせる』為だけに多くの人の運命を狂わせた男、『人間の解放』の許に暴走し因果応報の最期を迎えた男、不死の怪物の能力を解明・我が物にしようとした男、『家族を喪った恐怖』に囚われるままに暴走した父親達、姉の豹変を認めず世界を完成させようとした学者……と、枚挙に暇がない。
また、中には(結果的にだが)主人公がこのような行為に手を出してしまったケースも……。