メイン画像は陰謀論の対象とされることが多いアポロ計画。
概要
陰謀論とは、「何らかの事象に対し事実は特定の存在(たいていは有力な団体や個人)により隠蔽、あるいはプロパガンダされており、真実は別に存在する」という考え方である。陰謀を「謀略」と呼ぶことがあるように、陰謀論を「謀略論」と呼ぶこともある。
偶発的な事件や事故に対し、「誰がその事件で得をしたのか」と考えることで、「結果的に利を得た(と思われる)人物や団体が事件の黒幕だった」と結論づけるのが典型的な陰謀論である。(例:本能寺の変秀吉黒幕説)
陰謀論と真実
「陰謀論」として扱われていたことがその後の調査等により、まさかの真実であったり、あたらずとも遠からずという……場合も稀にある(「明らかになった主な陰謀」を参照)ものの、実際にはそのような「不都合な真実」は一般的にはそう容易には見つからないものであり、陰謀論が依拠する仮説が部分的には正しい面があるとしても、不確かな憶測に憶測を重ねることで現実離れしたものになってしまう。
陰謀によって情報が隠されていると説明する事で、根拠の弱い意見を補強することができる。情報が少ない場合にこそ"ツジツマ"はあってしまうため、人は陰謀の存在を信じてしまう。
政治社会作家の古谷経衡は、陰謀論を信用する人々を分析し、「彼らに共通するのは思想的な部分ではなく『特に社会科学(政治・社会)や歴史について基本的な知識が全然ないが、好奇心が強い』ということ。そして『自分だけが世界の真実を知っている。まだ真実に気づいていない人々はバカだ』という自己肯定、自意識、優越感が強い場合も多い。もちろん、それはさまざまなコンプレックスの裏返し』と述べている。
陰謀論を安直にバカ発見器としたり、信用する人を短絡的に情弱として見下すことは相手にもその人にもいい影響とならない。
人の見方にバイアスが入ることは避けられず、人間は信じたいものを信じる性向がある生物であり、大衆の一部である自分が今現在陰謀論を信じていないのは「たまたま」に過ぎないからである。
陰謀論に影響された人にとっては「陰謀論」という言葉自体が否定的に捉えられるため、上述のコンプレックスなどから逆に自説を再補強してしまう。
仮説と陰謀論の相違
仮説とは | 陰謀論とは |
---|---|
情報に基づいている | 憶測に基づいている |
可能性を論じる | 結論を断じる |
批判に反論を試みる | 批判を無視、あるいは曲解する |
都合のよいゴシップを排除する | 都合のよいゴシップは組み込む |
都合の悪い検証結果を精査する | 都合の悪い検証結果は陰謀と信じる |
事実を探求している | "事実"を定義しようとしている |
説の補強や更新が存在する | 補強や更新が存在せず、年月を経ても内容に変化がない(例外もあるが) |
仮説は作業であり、陰謀論は作業的ではない。陰謀論と仮説との差異は、反証可能性である。
何らかの観点、という部分だけ見れば、どれだけ既存の常識に反していようが仮説と陰謀論との間に違いはない。
陰謀論は、事実の検証を経ることなくそれ自体が事実として断定的に流通する点で、仮説と根本的に異なっている。
陰謀があるとする見方そのものがいけないのではなく、理論としての取扱・プロセスが全く異なっているわけである。
ただし、反証可能性への過剰な信用もまた慎むべきである。権力への懐疑的な見地を一概に「陰謀論」と切って捨てることで批判の封殺に繋がりかねず、根拠のない説話を無批判に信用するのと同じくらいに有害である。
もし体制批判の中に疑問点が見出される場合、いきなり陰謀論という言葉を使うのではなく、現段階で相手の主張に根拠がないことを説明し、「こうした理由で主張の説明力が欠ける」ということを提示するところから始めなければ知的に建設的ではない。
これは、陰謀論そのものへの対抗としての意味に限らない。レッテル貼りの使用は、まだ陰謀論を信じていない人に対する潜在的な対応を含むからである。レッテルを貼るのは行為水準において「(レッテルを貼った対象)の言うことは信じるな。お前は俺よりも馬鹿だから俺の言うことを信用しておけ」というに等しく、相手の知性への信頼を欠いたメッセージとなりかえって有効性を下げてしまう。
陰謀論の分類
事例
この項目で具体例を挙げて説明を行うと膨大なものとなり、このページでは収まりがつかなくなる可能性が高いため、以下にいくつかのパターンを記す。また、この複合をなすことがある。
政治系
「~国は政府により統治されているのではなく、実際は~という団体に支配されている」
「~という政党には~という団体が一枚噛んでおり、その団体の操り人形に過ぎない」
経済系
「~という組織が経済を牛耳っているが、報道を抑えているため事実は公表されない」
「~は通貨を変更して今までの発行した負債を無効にするつもりである」
歴史系
「~という事件では~と説明されているが、実は~により~されたのが真実である」
「~戦争は実は~という組織が行った壮大なやらせだった」
事件系
「~という不可解な事件があるが、実際は~により隠蔽されているだけで真実は~である」
「~事件の犯人は~とされているが、実は冤罪であり、~がかかわっている」
※現実の裁判でも警察などが無理やり自白を引き出すなどの不正捜査による冤罪事件、国鉄三大ミステリー事件や帝銀事件など、無理やり誰かを犯人に仕立てたと思しき事件がいくつか存在し、そのことが事件系陰謀論をもっともらしくしてしまっている。
科学系
「~は既にに実用化の段階にあるが、利権団体等の圧力により発売できない」
「~は~が研究するふりをしているが、それは見せ掛けだけであり、実際には実現不可能である」
「~という現象が発生しており、国はそれを試験しているが、その事実は明らかにされていない」
「~は~の状態であるが、国はそれを故意に隠しており、~であるという誤った情報、あるいは限定された情報を述べている」
報道系
「~ということは業界内では知られているが、ある団体の意向により報道しない自由を駆使している」
「~と報道されているが、実際には検閲された情報、あるいは誤りであり、~であるのが正しい」
「~という事件の報道は~という事件をカモフラージュするために行われた」
人種差別系
「~民族は世界経済を裏からコントロールしている」
「~民族がわが国に入り込んで国家を弱体化させようとしている。今日の危機は全て~民族のせいである」
超常現象系
「宇宙人が人類を奴隷として創造し、各国政府は彼らの配下にある」
陰謀論の主体とされる団体
陰謀論は、以下のような団体にしばしば関連づけられる。基本的に大きな権力や影響力を持ち、かつ実際の活動や活動の詳細がわかりにくい団体が関連付けられることが多い。
- 国家
- 情報機関
- 秘密結社
- 宗教団体
- サタニスト
- 陰謀論は、起源を辿ると宗教的な観点から発したものや、そうしたものが他の説に組み込まれたものが少なくない。それらでは、真の黒幕を悪魔崇拝者とすることが多い。
- 日本には海外発祥の陰謀論が多く輸入され、特に宗教的でない人間が感化されて宗教の信者のように悪魔崇拝者を陰謀の背後にいるとして攻撃する例がある。
- 特定の民族
- 政治結社
- 企業および業界団体
- 王室・王族や皇室・皇族
- 消滅した団体
- 大手マスコミ
- 陰謀論の黒幕というよりも加担者として語られることが多い。
- ポップカルチャー・アーティスト
唱える側
多種多様の団体や個人が唱えている。また、出版社が陰謀説を収集し、興味本位の読者へ向けて事実への検証を行わず書籍として商業的に一般流通させていることもある。
陰謀説の拡散主体として無視できないのが、宗教団体や信奉者らである。歴史的には、「反キリスト」が世相の退廃や価値観の混乱の背景にいるとしたり、民族差別や魔女狩りを引き起こしたり、キリスト教的な価値観に反する社会変革が起こった際に啓蒙主義者を攻撃したりしていた。こうした陰謀論は現在も引き継がれ、しばしば「悪魔崇拝者」が事件の背後にいるという宗教的な陰謀論が流布されている。
日本語圏では旧生長の家などの宗教団体が右翼化し、宗教右翼として一定の影響力を持っているが、そうした団体が共産主義者が○○を企んでいるであるとか、左翼の背後に外国人がいるだとかいった反共陰謀論をネット上に書き込んだことで、今日見られる膨大なネット右翼言説=陰謀論発生の根本的な原因となった。2ちゃんねる創設者の西村博之は、2ちゃんに右翼団体の青年組織による同一IPからの書き込みがあると認めているほか、過去の2ch内での活動から生長の家信者による書き込みがあったことが判明している。
ソフト化した宗教としてのスピリチュアリズムのコミュニティも、陰謀論を創作・発信する主体となることが多い。
政府中枢や支配者がこれらを信じている、あるいは大衆に信じさせるほうが都合がよいと判断した場合、公式見解としてプロパガンダに用いられることがある。現在でもロシアの国営ラジオ局であるラジオスプートニクやイランの国営ラジオ局であるイランラジオ等では陰謀論をしばしば用いている。
明らかになった主な陰謀
これらは一時期は陰謀論でありとるに足らないものである、と片づけられていたものの、後に真実であることが明らか、あるいは通説となった事例である。
事件 | 事実 |
---|---|
柳条湖事件 | 当初日本は中国軍の仕業と発表したが関東軍の謀略だった |
日本人拉致問題 | 北朝鮮によるものであると北朝鮮自身が認めた |
戦後におけるCIAから自民党・民社党などの有力者への資金提供 | 2006年の外交史料集に明記されていた |
戦後におけるソ連から日本社会党などの有力者への資金提供 | ソ連崩壊後秘密文書の流出で明らかになった |
トンキン湾事件 | 実際には攻撃を受けても仕方のない任務に遂行しており、2日後の事件は完全なでっち上げだった |
タバコ産業から反喫煙運動批判への資金提供 | 大手タバコ会社、たとえばJTなどが行っていたことがWHOにより明らかにされた |
エシュロン | アメリカ合衆国を中心とする通信傍受ネットワーク、欧州議会の最終報告書に存在が断定的に記載 |
ロッジP2事件 | イタリアにおいて政府転覆をもくろんだフリーメーソンを隠れ蓑とした反共組織。破門された後も秘密結社として活動 |
砂川事件 | 在日米軍の駐留が違憲という判決が出た際、最高裁や外務省に対して在日駐米大使が政治的圧力をかけて、判決を覆らせていたことが公文書から判明した。 |
B-CASカード | TVやレコーダーの裏に刺さないと放送が見られないアレ。朝日新聞など各社の報道で、ほぼ利権と天下りの為のものだったことが周知の事実になっている。 |
また、実際はソ連の仕業でありながらナチスの仕業にされていたカティンの森事件のような例(発見・告発(というかプロパガンダ)したのはナチス・ドイツ)もある。
無論、これらの事例があるからと言って、あなたの信じている陰謀論が正しいとは限らない。
社会的影響
陰謀論の影響は多岐にわたる。
中でもハードなものとして、戦争、虐殺、差別、歴史修正主義、特定のカテゴリの団体や人々に対する冷遇や不公正、医療拒否などの重大性の高い問題につながってしまった事例がいくつもある。
特定の民族や人種に対する差別感情は、それそのものが陰謀論とわかちがたく結びついて発現している。例えば、ユダヤ嫌悪ではユダヤ人の世界政府が世界を裏から操っている、朝鮮・韓国嫌悪では朝鮮人が日本人になりすましているなど。
陰謀論は、多くの人々に信じられている。陰謀論はしばしばモラルパニックなどの原因となる。
陰謀論の影響の極大化したところでは、一国の運営にまで支障をきたすことがある。例えば、米国のジョセフ・マッカーシー上院議員は実際には具体的なことや大したことを知らなかったのにもかかわらず、「アメリカ政府内に共産主義者がいる」と発言し、「政府部内に共産主義者がいないことを証明すべきだ」という「悪魔の証明」を行った。結果的に政府は無意味な確認や証明作業にリソースを割かれ、有能な人材の流出などを招き、膨大な損害をもたらした。
大衆的影響という面でいえば、日本では電車男のヒットで大衆化した2ちゃんねるおよび00年代に勃興したアフィブログにネトウヨ的な価値観を肯定的に広めたものが多く、それらはオタク文化の一部とも結びつきながら、日本が在日に秘密裏に侵攻されている・裏から支配されているなどの陰謀論に基づいたものや虚構を多く含んでいた。結果的に非常に多くの人々が影響され、マスコミや教育界、政界などの背後に在日の陰謀があるとしたり、ある人物が在日の成りすましだとする中傷を信じ込んでしまったネットユーザーが多く発生した。2020年代にも影響が引き続き残っており、ネトウヨ陰謀論を信じた人々による被害での訴訟や懲戒解雇、ヘイトスピーチなどが日常的に発生している。
今日の日本で最も影響力のある陰謀論はネトウヨ系陰謀論である。
ソフトな影響としては、創作方面への影響が挙げられる。
大衆文化の中には陰謀論を題材とした作品がいくつもある。陰謀論的世界が作中で実際に存在したり、実在の陰謀論を題材に取ったり、エキセントリックな人物として陰謀論を唱える人間が登場することもある。
陰謀論は筋書きとしては面白く、創作と相性がいい。
主な陰謀論者
※Pixivに記事のある人物に限ります
一般的に陰謀論とされるもの
ウォーギルトインフォメーションプログラム ケムトレイル 在日特権(愛国カルト)
よく陰謀論のターゲットとなる事柄
アポロ計画 9.11 地球温暖化 東日本大震災 フランス革命 第二次世界大戦 三億円事件 選挙 原子力 宇宙人 COVID-19 欧州連合 ムーンショット計画 5G 地球平面説/フラットアース 人工地震 731部隊 CIA イルミナティ 神智学 カバール Qフォン ネオナチ 背乗り グレートリセット 世界緊急放送 三浦春馬
かつて一部で陰謀論とされていたもの
陰謀論をテーマにした作品
ゼイリブ トランスフォーマー ダークサイド・ムーン メンインブラック
本pixiv百科事典において
当サイト内の記事においても、陰謀論が書き込まれている。
そもそも本記事はネット文化やオタク文化とのつながりが深く、ネット文化の消費者たちによって編集されるサイトであるため、上掲したネットを通じて大衆化した陰謀論の影響を被ることは不可避である。
また、運営はそうした問題のある記事をこれまで放置してきており、陰謀論をそのまま陰謀論として書き込んでいる記述が是正されても再び書き込まれるなどで手の施しようがない状態である。
例えば、かつてイルミナティの記事においては内容が「解説」ではなく陰謀論そのままの状態であった。
よって、本サイトの閲覧に際しても、ネット右翼系、スピリチュアル系、オカルト系など各種の陰謀論が含まれることを留意して行うべきである。
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トンデモ本:疑似科学(似非科学)との評価を受けている事象を真正の科学であると主張したり、陰謀論やオカルトを本気で主張している本、さらには単にでたらめや考証不足、即ちとんでもない内容の本の意味などで使われる。と学会、日本トンデモ本大賞の記事も参照。