曖昧さ回避
もしかして
→ 火炎放射
→ かえんほうしゃ
概要
書籍等によって「放射能火炎」「放射熱線」と呼称が異なる場合もある。詳しくは下記の余談にて。
当初は強靭な肺活量を活かして放射能を多量に含んだ息を吐きかけ、あらゆる物質を発火・溶解させてしまう技であり、名称も白熱光であった。
やがてその設定は変わっていき、体内で核分裂を起こしてそのエネルギーをビーム状にして発射する、いわゆる熱線になった。なお、ビームのようなまとまった形状になるのは体内の反応袋(核物質をエネルギーに変換する器官で、いわゆる原子炉)で生じる電磁気の作用によるものらしい。
(一部の作品を除いて)、発射の直前に背びれが青白く発光するのも特徴。言い換えればゴジラが背びれを発光させているということは放射火炎を発射する準備に入ったということである(作中では背びれが発光したことからゴジラが熱線を発射すると予測し、行動した例もみられる)。
核エネルギーの反応による発光とも、放射エネルギーを排熱のごとく背びれから放射して、熱線の威力が過度になって自身の身体を傷付けたり、熱線だけでは処理仕切れないエネルギー放射を補助しているとも考えられる。つまり、背びれの発光と放射火炎は、つまりは体内の核エネルギーの放出としても役立つ、いわば排尿などと同じく生命維持の行動とも言える。
また、いわば攻撃色にも該当する。敵に対する「威嚇性」や警戒心を煽る、驚かせたり戸惑わせたり次の行動を迷わせるなど、奇襲性にも優れる。
これはX線の影響と考えられており、放射火炎の色が青白いのも同様の理由によると思われる。『決定版ゴジラ入門』によると「放射火炎を吐く時は全身が放射線を帯びるが特に背びれの先に集中するために背びれが光って見える」としている。また、体内や口中などを傷付けないために熱線を電磁波?や気流?などが螺旋状に覆っているのでは?という考察もされていたが、特に後年では普通に口いっぱいの太い熱線を放射していた。
なお、作品によっては熱線や発光する背びれの色が青白色ではないこともある(詳細は後述)が、「背びれが発光する」という演出は全作に共通して見られる。
ゴジラを象徴する技であると同時に最大の武器であり、多くの敵怪獣をこれによって撃破している。
ただ、使用頻度は作品によってまちまちで、平成シリーズのようにバンバン使用していた時もあれば、昭和シリーズやミレニアムシリーズのように格闘がメインでここぞという時にのみ使用していた時もある。
また、ゴジラは対空迎撃能力が非常に高く、目標が大きい飛行怪獣はおろか音速で飛ぶ戦闘機すらも上手に撃ち落とす(避けられた場合は首を動かして薙ぎ払いにして当てる)。ピンとこない人は人間が屋外で飛ぶ鳥に水鉄砲を当てようとするとどうなるかを考えてみるとなんとなく実感が湧くだろう。
昭和シリーズ
(左側は「vsメガギラス」で見られた熱線に近い)
「ゴジラ」~「ゴジラの逆襲」では「白熱光」と呼称されている。
10万度の熱量を持ち戦車や戦闘機を一撃で破壊するほどの威力。さすがに怪獣相手では一撃で致命傷を与える程の威力はないが、初代モスラ、クモンガ等この技でトドメを刺された怪獣も多い。資料によっては「白熱線」とするケースも。
初代の白熱光は火炎やガス状だが撒き散らすような放射型(一部俗称「放射噴霧」)と弾速が速くて爆発力がある熱線状がある。ちなみに初代の特殊技が絵で表現されたのはこちらも一緒。
ヘドラとの戦闘時には空中を飛行するヘドラを追撃するためにこれを使って空を飛ぶという荒業を披露し、理論上では歴代最強の威力を発現した。
ミニラの放射火炎は当初はドーナツ型で威力も弱かったが、ゴジラから猛特訓を受けたことにより、ゴジラと同様のビーム状の熱線を吐くことができるようになった(ただ怪獣総進撃で再登場した時はリング状に戻っている。瀕死のキングギドラにトドメを刺した)。
平成VSシリーズ
基本的に「青い色のビーム」として描写される。
威力は昭和シリーズとは比較にならない程に上昇し、通常技としてジャンジャン使用しまくるのも他シリーズとの大きな差であり(ただし、例外的に『ゴジラ』ではあまり熱線を吐いていない。これは『VSビオランテ』以降で特技監督を務めた川北紘一氏が光線技の多用を好んだのに対し、『84ゴジラ』の特技監督であった中野昭慶氏が光線技よりも格闘や肉体のぶつかり合いなどを重視していたという演出の違いによるものである)、トドメにもよく使われる。発射したまま薙ぎ払う事もできるので、出撃した東宝自衛隊がほぼ一撃で全滅ということも良く見られる(特に顕著なのは薙ぎ払われる自衛官の姿が明確に描かれた上、本当に一撃で全滅させられた84年版の上陸シーンであろう)。
84ゴジラでは軽く発射する光球または火球型、最終作では発射不良なのか正式な攻撃なのか不明だが、口から青い近接型の光を瞬時に放ち、敵にショックとダメージを与えていた。また、倒れた同族に火炎のような熱エネルギーを吐いてパワーや生命力を譲渡していた。
『ゴジラ』~『ゴジラVSビオランテ』までの段階でも直撃した場合はスーパーXシリーズぐらいしか耐えられる存在は無かったが、『ゴジラVSキングギドラ』で未来人の策略の失敗の結果、前作までよりも遥かにパワーアップしてしまった。しかも同作品でのみ強化型の「スパイラル熱線」も使用。未来人のコントロール下におかれたギドラには致命打にならなかったもののコントロールが解かれ戦闘能力が低下したギドラに対しては後述の体内放射との連続攻撃により真ん中の首を吹き飛ばした。また、後述のウラニウム・ハイパー熱線の熱量から『vsキングギドラ』以降の放射火炎の熱量は50万度とされる。
ゴジラジュニアも使用可能。
リトルゴジラの段階で不完全ながらも既に使用できるようになっており(口から泡のような複数の光る球体を吐き出すというものだった)、ゴジラジュニアへ成長した際にはゴジラと同様の熱線状になっていた(ただし、口周辺部に小さな光る粒子が出現している点が異なる)。デストロイア集合体を撃退するほどの破壊力を誇るが、まだ未発達でありゴジラの放つ熱線の破壊力には及ばないらしい。
劇中で放射火炎に耐えられた人類側の存兵器 | |
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スーパーX | パワーアップ前の放射火炎に4発まで耐えた。 |
スーパーX2 | パワーアップ前の放射火炎をファイヤーミラーが融けるまで反射した。 |
スーパーXⅢ | パワーアップ後かつ暴走寸前の放射火炎を受けてなお計器から火花が出る以外まったくのノーダメージで完全に防御した。 |
スーパーメカゴジラ | ミラーコーティングと超耐熱合金NT1で完璧に防いだ。 |
MOGERA | 理論上はメカゴジラ以上の熱線耐久を持つが、ゴジラとの本格的な対決が実現しなかったため、劇中では一撃も喰らってない。 |
放射火炎があまり効き目が無かった怪獣 | |
バトラ幼虫 | 硬い甲殻に防がれてあまり効かなかった(ただし、シナリオ段階では『ゴジラ、とどめの熱線をバトラ幼虫に。』との記述がある)。 |
スペースゴジラ | バリアによってほぼ完全に防御。さらに本体も高い防御力を誇っていたため、バリアが使えなくなるまでは事実上まったく通用しなかった。 |
体内放射(エネルギー体内放出)
ゴジラVSビオランテより使用。
放射火炎のエネルギーを全身から周囲全体に放射する技。
ビオランテの触手に巻き付かれたりキングギドラに首を締め付けられ、拘束された際や放射火炎が吐けなくなった際の起死回生の一撃となっている。成虫モスラとの戦いにおいては電磁鱗粉で放射火炎が反射されて使えない状態から、向かってくるモスラを正面から弾き飛ばし鱗粉を相殺した(それ以外にも成虫バトラとの戦いでも自身を生き埋めにしたビルの残骸から脱出する際に同様の演出が見られ、使用していた可能性がある)。また、体内放射の応用かメカゴジラにより体に打ち込まれた電流兵器ショックアンカー(Gクラッシャー)のワイヤーからエネルギーを逆流させ、メカゴジラ内部にダメージを与えたり、Gクラッシャーの装置を破壊したこともある。
バーニングゴジラがインフィニット熱線と同時に使用(暴発)した際は威力が格段に上昇しており、熱線との併用でデストロイアがズタボロになった上に余波だけで周囲が炎上している。
ミレニアムシリーズでも『ゴジラ2000 ミレニアム』でオルガを体内から粉砕。『ファイナルウォーズ』では自身のエネルギーを吸い取っていたカイザーギドラに対し、一気に多量のエネルギーを流し込むことで拘束を破った。
当時の書籍では「背びれの付け根から放射する」「ビオランテ戦とそれ以降の体内放射では放射形式が異なる(ビオランテ戦のみスパークやカッター状に放射しており、以降は衝撃波として放射)」等様々な記述が見られる。
ゴジラ2016の背鰭と尻尾からの熱線(後述)も体内放射の一種とする意見がある。
余談だが『ウルトラマンX』第15話に登場した古代怪獣ゴメスもダークサンダーエナジーを浴びた影響でこれとよく似た技を使用できるようになっている(ゴメスは元々ゴジラの着ぐるみを改造して生まれた怪獣である。また、この回が放送された日はちょうどゴジラの誕生日である11月3日であった。確実に狙ってやったものと思われる)。
赤色熱線
ゴジラVSメカゴジラより使用。
色が赤くなり通常の放射火炎と比較にならない程にパワーアップしている。バーニングゴジラでは常時この状態(しかも後述の2種より威力が上がってる可能性も)。
ウラニウムハイパー熱線 | ファイヤーラドンのエネルギーを吸収し発動。ミラーコーティングが融けていたとはいえスーパーメカゴジラの超耐熱合金NT1でも7発までしか耐えられなかった。熱量は100万度と通常の放射火炎の2倍の熱量を持つ。 |
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バーンスパイラル熱線 | 宇宙エネルギーを吸収し発動。スペースゴジラにトドメを刺し、既に満身創痍だったとはいえメカゴジラ以上の防御力を持つMOGERAの頭部を粉砕した。熱量は90万度 |
赤色熱線 | 暴走しバーニングゴジラとなったことで常時熱線が赤色となっている。メカゴジラと同等の防御力を持つスーパーXⅢでも完全には防げなかった(とはいえ前述通り計器から火花が散る以外はほぼ無傷である)。炉心温度上昇時にはデストロイアのボディを破壊し、血を吹かせた。 |
インフィニット熱線 | メルトダウン寸前で怒りとジュニアの死の悲しみもあり、炉心暴走が末期になった状態。発射前は背ビレが破壊力を持つ凄まじい熱風を出しながら融け出す。発射中は強化された体内放射も暴発し、ゴジラが息切れするまで無限に熱量が上昇し続ける。再生したデストロイアでさえ手も足も出ずにズタボロにされ逃走した。おそらく、間違いなく熱量でいえば最強クラスの放射火炎だが、それ以外とくに貫通力や射程などに関しては後年の作品での描写の方が上回っている感もある。 |
ミレニアムシリーズ
- GMK版はGMKゴジラを参照。
VSシリーズに比べると使用頻度は非常に少なく発射の溜めも長くなっているが、その分高い威力とくに貫通力および爆発力、射程と命中(というか弾道の)精度が従来よりも強力であると描写されており、当たれば大抵の相手は致命的なダメージを追う。GMKでの初撃は地震とキノコ雲を発生させた。またバースト効果が見られるようになったのもGMKからである。加えて航空機を狙い撃ちするシーンも増えた。
「ゴジラ2000 ミレニアム」「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」の二作品中でのみ赤色で描写されている(後者の世界観の場合、初代ゴジラの熱線も同様のタイプということになる)。これらのタイプは、歴代でも特に「炎」感が強い。なお、初期2作の熱線が赤色だったのは東海村の原発事故に対する配慮があったためという噂があるが、真偽のほどは不明。本来なら、こんなカラーリングだったのかもしれない。
- ちなみに、パチンコ「CRゴジラ3S-Tバトル」では往年のカラーリングだった。
機龍二部作に登場するゴジラは熱線を放つ際、準備段階の背びれが光るシーンでは「ボンッボボボンッ」とストロボのような効果音が付いている。また、以前のミレニアムシリーズ作品よりは平成シリーズの熱線寄りになった。威力がかなり変動するらしく、崖崩れを起こす程度からビルを貫通しただけでなく機龍を空中で半回転させながらぶっ飛ばすレベルのケースもある。発射の際には口元から青い爆炎が吹き出す。口を開けて静止したまま熱線を吐き出したこともある。
FWでは、プロレス的な表現が多いためか、ほとんどチャージなし&至近距離で走りながら敵に発射したり、足を地面に踏み入れアンカーとし、大気圏外の巨大隕石を正確に撃ち抜き破壊する、巨大で重い怪獣を撃ち上げて文字通り汚い花火にしてしまうなどの伝説を作った。描写だけなら歴代最強クラスと呼ばれている。
なお、VSシリーズまで放射火炎は光学合成で表現されていたが、ミレニアムシリーズからはCG合成になっており、この表現変更に対しては賛否両論となっている。
引力放射熱線 | GMKで使用。キングギドラの引力光線を吸収して放つ熱線。通常熱線には耐えたギドラさえ爆散させた。 |
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ハイパースパイラル熱線 | 宇宙から落下してきた隕石(モンスターX)を迎撃する際に使用。普段より長くチャージして撃つ。大気圏外まで射程距離があり、その名のとおり通常の熱線に比べ、螺旋を描きながら放たれていくのが特徴。絶大な破壊力を持つが、前述のようにチャージに時間がかかることや、エネルギーの消耗が激しいのが欠点・・・だが、直後のモンスターXとの戦闘ではバンバン熱線を放っている。 |
バーニングGスパーク熱線 | 尾崎真一操る新・轟天号より、G粒子エネルギーを授けられて復活・パワーアップしたために使用可能となり、発動。人間の助力やエネルギーを使用した唯一の熱線。色は赤色熱戦と同じく赤で、カイザーギドラを大気圏外まで吹き飛ばしトドメを刺した。おそらくインフィニット熱線と並ぶ最強クラスの放射火炎。なお、発射の際にはなぜかゴジラ自身も一回転ターンする予備動作が入った。 |
シン・ゴジラ
作中では「放射線流」と呼称。
本作のゴジラはメインビジュアルである第4形態より使用する。
発射の際はまず体内の発光色が赤から紫に変わり、眼球が水銀のような遮光膜で覆われ(この膜は自衛隊との戦闘中にも見られた)、実在する蛇と同様に下顎が左右に割れるのが特徴。また、この時の口内を観察すると顎には舌がなく、ブレスの発射に特化した形態をしていることが確認できる。
初使用時には先んじて口から大量の黒煙と暴風を噴射し、エネルギーが増すことで真っ赤な熱焔…というか爆炎状へと変わるという演出が取られた。指向性を持たない流動的な核焔であり、まだ熱線としては不完全な状態であるが、この段階でも相応の破壊力を持っており、超広範囲のビル街一帯を猛烈な熱風と炎で焼き払い、吹き飛ばすという凄まじい威力を見せた。
- 文字通り、その爆発的な火炎の拡大と威力から、後述のエメリッヒ版ゴジラ同様、最初の段階のブレスに可燃性のガスや物質が含まれているのではないかという考察もある。
なまじ流動性がある分、炎が洪水の如く爆発的に周囲へ広がるがゆえに市街地でやられるには最高にタチが悪く、折しも初使用時には逃げ遅れていた多くの都民が一時的に地下鉄に避難していたため、この時点で被害範囲内では流れ込んできた爆炎で相当数の人的被害が出ていたであろうことは想像に難くない。
- のちに株式会社カラーより公開された香盤表によると「地下街に熱焔が流れ込む」というシーンがあったことが確認できる。
- 焼死の他、圧死、ガス中毒、大量の酸素が燃えたことによる酸欠、気管の損傷、熱線の直撃、衰弱死など、様々な死因が考えられる。救助されず終いの人もいたと思われる。
そしてエネルギーが最大化することで焔は急速に集束し、プラズマジェットよろしく細い紫色の熱線へと変化、対空兵器となり得る長大な射程と、ビル数棟をもまとめて焼き切るほどの熱量を有する貫通性と破壊力を併せ持つ恐るべき殺戮光線へと変貌を遂げる。放射時間にも優れるが、これが肺活量だけでなくエラによる呼吸の確保が関係しているのかは不明。
さらに口からだけでなく、あろうことか背ビレの間からも数十本の熱線を拡散放射してレーザーファランクスのように後方や上空の外敵にも対処し、熱線を解禁して以降はまさに生きた戦略兵器と化した。(アメリカ軍の攻撃を受けた傷痕によるものではなく、進化により会得した迎撃機構である)
しかし、その破壊力に対してやはり消費エネルギーも甚大(特に無数に発射する背部熱線で顕著)で長時間の使用や頻発はできず、照射中にエネルギーが低下してくると熱線の集束を維持できなくなって熱焔に戻ってしまう。初使用時には15分弱の間に通常熱線と背部熱線を連続で使用した後は活動を停止して休眠状態に陥り、活動再開可能までのエネルギーチャージに19日という長い時間を要した。
この燃費の悪さはゴジラ自身も自覚していたようであり、休眠の間にエネルギー効率の改善を行い、活動再開後のヤシオリ作戦の際には「背中から熱線を何本も出すよりも自在に動かせる尻尾から1本の熱線を出して大きく振り回した方がエネルギーの消耗も少なく効率的」と判断して、長大な尻尾の先端からも同様の熱線を発射して標的を薙ぎ払う能力を発現。
結果、熱線の集束状態を約1時間もキープできるようになり、一度熱焔に戻っても20分後にはまた熱線を吐けるほどチャージサイクルも早まっていた。
ちなみに爆炎状の際には背鰭の発光とブレスのカラーリングが一致しておらず、これも実写作品では歴代初。この時の様相は原子力や火力発電所などの施設での放熱を思わせる。海外の観客の感想は「スペースシャトルの離陸みたい」らしい。
また、厳密に「火炎」を吐いたのも今回が初であり、放射「火炎」と放射「熱線」を両方発現したのも異例中の異例。
他のゴジラと違い、完成したブレスが歯や肉体のどこにも触れていないほど口が大きく開いている&舌がないので、もしかすると自身の熱線で傷付くからこその大口である可能性も否定できない。
長射程や破壊規模、熱線発射前などはGMKゴジラに近いが、目黒区一帯を一瞬で文字通りの火炎地獄に変えたインパクトや演出から、与えられる絶望感という点では歴代ゴジラでも随一。GMKゴジラの体躯は2016ゴジラの半分程度なので、清水市を死の街にした熱線のエネルギーの凝縮度の方が上にも思えるが、2016ゴジラの熱線は非常に細く切断攻撃に特化しているため、やはりこれも単純な比較考察によって優劣を決められない(*)。
ただ単純な威力比較だけでもFWゴジラ、バーニングゴジラの後に続く、歴代上位に食い込むほどの放射火炎であることは間違いないだろう。
(*).....《GMKゴジラは清水市を一撃で蹂躙、広範囲に人間がよろめくレベルの地震を誘発、着弾時には巨大なキノコ雲が立つ、自らの肉体を破壊できる唯一の手段という歴代でも一番踏み込んだ描写であるので、かなりヤバい代物であるのは間違いないが、公平な条件下における比較ができないのが実情》
ちなみに、最初の段階の描写から、第二のゲロゴジと呼ばれることもある。
背鰭からのエネルギーが他の部分に流出するのはレジェンダリー版に、赤熱化するのはデスゴジに似ているという声もある。また、今作での効果音は、爆炎が昭和やVSシリーズの放射火炎のものを、熱線がゴジラVSモスラで使われたもの(もしくはデストロイアのオキシジェン・デストロイヤーレイのもの)、拡散放射が初代ウルトラマンのスペシウム光線と同じものが使用されている。
余談だが、樋口氏と庵野氏が関係している平成ガメラの『大怪獣空中決戦』の樋口氏によるコンテでは、プラズマ火球を吐く際には口が大きく裂け、首元が発光するなど放射線流との共通点が見られる。また、後述のエメゴジのアニメ作品でも首元が発光する。
アニメ映画版
本作においては電気や電磁波を伴う熱線という設定になっている。
小説やパンフレットでは高加速荷電粒子ビームと説明されており、発射の際には身体と背鰭が帯電し、そうして生み出したエネルギーを鼻先辺りに集束させた後、それをフッと吹き飛ばすような感じで青白い細長い強烈な熱線を放射する。
英語音声の第一章では従来通りに「Atomic breath」と呼称されていたが、口から吐くわけではないことを反映したのか、第二章と第三章では「Heat Ray」という呼称に変更されている。劇中に登場する英語字幕も同様。
そのエネルギー規模たるやコロラドの山を一撃で貫くどころかヒマラヤ山脈の一部を融解させるというなんだかよくわからない威力になっているが、出力および射程の調整は自在なようで小型かつ高速で動くホバーバイクが標的でもかなり正確に射抜くことが可能。なお最大射程は30kmにも及ぶという。
おそらくは世界中で億単位の犠牲者を生み出してきた熱線であり、ゴジラによる被害の大部分を担っている可能性がある。
なお本作のゴジラはその電磁波を放出しない肉体構造ゆえに普段はほとんど探知ができないとされるが、熱線を発射する際には強力な電磁パルスを放出するという。
さらに、非常に長期間に渡るエネルギー充填と極圏の低温海水による冷却によって放たれた史上最大規模の熱線は「紅蓮の龍が天に昇っていく」と表現される程の巨大な火柱状で、“直径30kmで月と同等の質量を持った光速の数%で地球へ飛来する小惑星”を一撃で破壊するというとんでもない威力を発揮した。この時の閃光はアイスランドでは「北からの夜明け」として、日本の北海道では「真っ赤な虹」として観測できたと言われる。その際に発生するEMPも半端な規模ではなかったとされ、影響範囲は半径300km以上に及び、異星技術で防護されていた電子機器類を破壊しただけでなく、北半球上に存在する多くの人工衛星にも多大な影響を与えた。
なお、最大出力がどの程度かは判明していない。そのため月や火星に移住しても狙撃される可能性が浮上したため、人類はゴジラから逃げるために太陽系から脱出するという決断を余儀なくされた。
この他に本編第二章では数万年かけてさらに成長を遂げたゴジラ・アースが体内電磁波を重力波振動に変換して周囲一帯に高熱を放つ能力を披露しており、描写は異なるもののこれも体内放射のバリエーションの一種と言えるだろう。
ゴジラS.P
第2形態ゴジラテレストリスと第3形態ゴジラウルティマで使用。
テレストリスは背鰭を発光させながら口の前方に光のリングを形成し発射。突如出現した巨大ラドンを一撃で撃破している(ちなみにこのリングの中は空間をねじ曲げており、直撃した巨大ラドンは回転しながら墜落した)。
そしてウルティマは大小七つのリングを射線上に展開、喉の3つの穴から違う化学物質を噴射して口内で融合させ、一気に息を吐くことで化学反応で発火し、リングを複数重ねた重力レンズにより熱線を収斂圧縮、「原子ビーム」として発射するようになり、その一撃は戦車やビルを焼き払い周辺一帯を火の海に変える。
第10話終盤で見せた初弾の威力はシン・ゴジラ版のそれを若干マイルドにしたような具合であり、その破壊力が弾着地点の爆発ではなく熱量による溶断や貫徹に由来する点も共通している。また射程距離も長大で、劇中では一点に照射することで東京都庁舎をはじめ複数棟の高層ビルをまとめてぶち抜く様子が確認できる。
その後ゴジラの成長と連動するように威力も上昇の一途をたどり、マンダとの戦闘時にはマンダもろとも廃ビルを一瞬で溶断しているほか、体高100m以上へと成長を遂げた際にはラドンの群れを一瞬で灰にし、紅塵の雲をも切り裂いていた。
ゴジラのテーマのアレンジが流れる中、爆発の中からウルティマに進化した姿を現し、熱線発射からゴジラの眼光を見せつけるようなカットで終わる一連の演出は必見。
また、第1形態のゴジラアンフィビアの時にはリングや熱線の代わりに「マイナス20度のガス状物質」を口から放出しており、それが自衛隊の攻撃で引火すると高温のガスへと変化、それによって自らも巻き込む原因不明の大爆発を引き起こしていた(これは攻撃というよりは更なる姿へ進化するための行動だった模様)。
ゴジラが爆発を起こした後の周辺ではまるで前衛芸術のように不自然に同じ形に曲がった街灯などが発見されており、単なる爆発現象ではなく空間そのものに干渉しねじ曲げている可能性がある。
その後のインタビューにてテレストリスのリングはゴジラの息子のオマージュであるほか、今回の熱線やリングの原理は脚本担当の円城搭氏によるものであり、「原子でもビームができる「レーザービームの原子版」」として手掛けたものであり、熱線自体は普段のゴジラと同じであるらしい。
Blu-ray第三巻の付録座談会によると、怪獣デザイン担当の山森氏曰く輪の発案は高橋監督(若干経緯が食い違っているが、円城氏の助言を受けた高橋監督が山森氏に伝達したのかもしれない)。山森氏自身は大きく口を開けて極太の熱線がロケットのジェット噴射の如く出ていくイメージだったが、太いと遠くまで届く印象にならないため、輪っかがレンズとして熱線を収束させレーザーポインターのように照射するイメージになったとのこと。
ウルティマの口内に化学物質が充満するプロセスも山森氏による座談会解説による。劇中描写をよく見るとガス状の煙が口腔に溜まっており、冷凍ガスを吐くアンフィビアからの延長線上の能力であると見てとれる。
ハリウッド版
放射火炎の最も一般的な英語表記は「Atomic Breath」であるため、ドラゴンの炎のイメージが文化的なバックグラウンドにあるためなのか感性の違いなのか、はてまた向こうでは昭和シリーズの方がより知られてきたなのかは不明だが、「熱線」というより「ブレス」感が強い感がある。どちらかと言えば昭和の放射火炎に近い。
トライスター社
ヤン・デ・ボン版
デルガドザウルス、通称「ゴジラ」は、地球の古代人が遺した生物兵器であり、口からは高温の水蒸気ブレスを発射する。
- PS4のゲームでは、水蒸気熱線は射程が少ないが最強クラスの威力を持っている。
エメリッヒ版
1998年に登場したゴジラ”は放射火炎を吐く能力を持っていない。
その代わりに口からおそらく大量の可燃性ガスを含んだ吐息(竜巻並みの暴風)を地面や車などに吐きかけ、おそらくは発生した火花などに引火&酸素爆発を誘発させ、軍用車両を燃やすというシーンがあった(ノベライズ版などの一部資料では「パワーブレス」「パワーブラスト」「ホットブレス」等と呼称されている)。
「アスファルトを巻き上げる」、「軍のジープを250m吹き飛ばす」など、地球上で発生しうるレベルの風力を越えているかも知れないので、物理的な圧力や破壊力では初代の白熱光を上回ると考えられる。雨天&発火物に直撃していない状況ながらあの発火力は恐ろしいものがあり、ひょっとすると、たとえばビルに吹きかければ一撃で建物全部を爆破炎上できるのではないだろうか。放射能を含んでいるかは厳密には言及されていないが、強靭な肺活量を活かすという点では白熱光の原案に近い。
ただ、日本のゴジラの熱線と比べるとあまりにも地味かつ分かりにくいためか能力としては非常に印象が薄いのも否めず、これも日本のゴジラファンには不評とされる一因となっている。
- 実際のイグアナなどが発する「吐息」に近いらしく、歴代でも一番「ブレス」感が強い。
- 実は撮影開始直前までは熱線を吐く予定だったらしい。ちょうど初代の白熱光と二代目の放射火炎との中間的なイメージであり、これもゴジラ・ザ・シリーズのゴジラの強さ設定に近いものである。鼻からも噴射するアイディアも。参照画像① 参照画像② 参照画像③ 参照画像④ 参照画像⑤ 参照画像⑥ 参照画像⑦
- 制作予定があった続編ではしっかり火炎を吐けるように進化する設定があっただけでなく、東宝版の初代ゴジラのように海中で積極的に使用する。下のアニメ版同様、武器以外にも生態機能として機能性に優れる。余談だが、ドラゴンの生態を科学的に考察したドキュメンタリーでも、道具としての火炎の応用が描かれている(参照)。
このゴジラの子供である「キング・オブ・モンスター ゴジラ」は突然変異の影響で日本版ゴジラ同様に熱線(この熱線も一部資料では「パワーブレス」と呼称)を吐けるようになった。
火炎にしては弾速と射程、連射性能、貫通力と質量、寸止めや威力の調整などに優れており、万能性は全シリーズでも随一(オミットされた実写続編の名残)。その他、火炎自体が太いので命中率も良い。ハイパワー型でなくとも、米軍の戦車・ヘリ部隊を一瞬で殲滅する、エイリアンの宇宙船を撃墜する、巨大な怪獣を吹き飛ばすなど、「東宝版の初代以上二代目以下」という強さ設定が果たして生きているのかと思える弾速と威力もあり、使い勝手の良さはかなりのもの。貫通性を持たせる事もできる。一部の資料ではそのまんま火炎放射や日本のゴジラのを太くした感じだが、オレンジ色などがある。が、実際は明緑色の火炎を纏った白熱光であり、東宝版の昭和と平成の放射火炎をミックスさせた感がある。
背鰭の発光は後方から流れるように波状に一度だけ蒼白などにフラッシュし、目が黄や赤に発光するなどの特徴がある。首元や目まで発光することから、発光のパターンは後年のレジェンダリー版やシン・ゴジラの尻尾熱線に似ているらしく、通じるものがある。首元だけが発光する場合もある。
三段階に威力が調整可能で、目の発光と連動する。
- 映画で予定されていたエメゴジの熱線も、線の細さがシン・ゴジラのそれに似ているという意見もある。
「東宝版の初代以上二代目以下」の通常型や「ハイ・パワーブレス」、使用することは稀だが火球バージョンもある。相当な熱量を持っており、鉄を溶かし、砂をガラスに変え、冷気とぶつかれば瞬時に竜巻や嵐を引き起こす。
また、親が熱線を吐く段階にあったコンセプトアートにも見られたドラゴンハートのドレイコよろしく「鼻からの熱線」は、一度だけジュニアが鼻から火球を発射する事でフォローした。
また、エイリアンが親ゴジラの死体を改造して誕生した「サイバーゴジラ」も口から熱線を吐くことが可能となった。この他に二代目の嫁のコモディスラックスは冷凍系のパワーブレスを使用している。
『ファイナルウォーズ』に登場した「ジラ」は強酸を含んだ火炎「Acidic Firing Beam」(英名)を吐くという設定があり、直接吐いている場面はないものの、発射したと思われる火炎が犠牲者を襲うシーンはある。
レジェンダリー版
2014年公開のハリウッド版に登場する個体も放射熱線を吐く能力を持っている。
体内で放射能エネルギーと生体電気による引火現象であり、エフェクトは日本のようなビーム状ではなく、青白い火炎を勢いよく放出するような形態となっている。また日本のゴジラとは異なり、絶大な威力を持つ反面、膨大なエネルギーを消耗するというリスクがあり、奥の手として使用する(そのため、使用後にゴジラは疲労困憊して倒れこんでしまい、しばらくの間行動不能に陥っていた)。
もっとも、その威力はどちらかというと昭和時代の熱線に近いレベルなようで、劇中ではMUTO(雌)に対する決め技として使われたものの、自身に匹敵するほど硬い外皮を持つMUTO(雌)には一時的に怯ませるくらいの効果しか無かったため、これで相手の仕留める際には少し工夫を要している(その時の雌への止めの刺し方から「ゲロゴジ」という俗称が付けられたのはそれなりに有名な話である)。
なお、日本のゴジラと同様、熱線を放つ直前に背ビレが青白く発光するが、発光の仕方がやや異なっており、尻尾の先端から背中、首と段階的に光が登っていくようになっている。
2019年公開された続編『キング・オブ・モンスターズ』では、五年の歳月を経て成長・進化したことで熱線を積極的に使用出来るようになったほか、熱線そのものも太く強力になっている。意図的な核爆発を経た後は目が発光している。
また同作におけるゴジラが終盤で変化したヒートウォーク形態で使用した体から放つ超高熱波攻撃も上記の体内放射を彷彿とさせる技となっている。
『ゴジラvsコング』においても「好敵手」に対する怒りから更にパワーアップし、地上から地下空洞へ貫くほどの史上最大クラスの熱線を発射している。
さらにコングが地下空間で発見したコングアックスの刃にはゴジラの同族とおぼしき生物の背びれが用いられており、これに熱線を直撃させることで背びれがエネルギーを吸収し斧の威力が上がるという応用も見せている。
その他
他の媒体ではホーミング熱線、熱線ソードなどの技も登場しているが、飛んでしまった事を思えばそんなに変ではないだろう…?ちなみにこれらの形への発展はガメラの火球も(やはり非リリースで)達成している。
ハンナバーベラ版
主役の武器だけあって威力はなかなか。ある意味では、原典とも言えるリドサウルスの放射性火炎に近いのだろうか。
火炎とレーザー状の武器の関連性を考えると、もしかするとシン・ゴジラの先行者なのかもしれない…。
水木しげる版
ゴジラ須賀川に現る
2019年1月11日に福島県須賀川市で開館した円谷英二ミュージアムにて上映されている特別映像「ゴジラ須賀川に現る」において描写された放射火炎は、二代目のような炎型で被弾したメーサー戦車を熱で溶解、直後に爆発させるという昭和と平成の中間のような描写となっていた。(ゴジラのデザインは初代を再現したもの)
余談
- 「ゴジラの原点」と推測されている『原子怪獣現わる』のリドサウルスが、当初は放射性の火炎を吐く予定だった。
- 当初はゴジラと共通する怪獣化の原因を持つ初代アンギラスも放射火炎を吐く予定だった。
- 「白熱光(放射火炎)」や「背びれが発光する」という設定は最初から想定されていたものではなく、54年版『ゴジラ』の検討段階で「かっこつけ」で生まれたものであるという。だがこれは結果的に核兵器のエネルギー解放時に出る閃光をメタファーとして視覚化するという側面も持つことになり、核の申し子たるゴジラにとって欠かすことのできない設定となった。
- 「放射火炎」という名称は昭和シリーズのゴジラ関連の書籍等で呼称されており、平成以降の書籍では「放射熱線」等と記載されている場合が多く、劇中での呼称も「熱線」のためその頃から放射熱線と呼ぶファンは多い。ただし平成VSシリーズ公開時に発売されていた「てれびくんデラックス愛蔵版ゴジラVS〇〇超全集」シリーズ等では「放射火炎」と記載されていることもあるため、VSシリーズ世代までは放射火炎(または放射能火炎)と呼ぶ場合もある。ミレニアムシリーズでは完全に「放射熱線」で統一されている。
- 資料によっては「白熱光と放射火炎は別物」としているものもあり、白熱光は蒸気型だとされる。『三大怪獣地球最大の決戦』でゴジラが白熱光を使用していたのは先の戦いで負傷していた影響とする説もある。
外部リンク
関連項目
メカンダーロボ:こちらも必殺技として核エネルギー由来の火炎を放つ。