概要
手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』を原作として、1980年から1981年にかけて日本テレビ放送網をキーステーションとして放映されたアニメ作品(一部例外あり。後述)。
長年、他のアトムアニメ作品との区別には「カラー版」、TVアニメ第3作である『ASTROBOY 鉄腕アトム』の放映後は、昭和期に制作された唯一のカラー作品ということで「昭和カラー版」などと称された。また、Wikipediaの項目名は「鉄腕アトム (アニメ第2作)」となっている。
しかし、現在は権利者である手塚プロダクションが正式に『鉄腕アトム(1980)』としているため、本項ではこれに倣うこととする。
作品解説
第1作『鉄腕アトム(1963)』(モノクロ版)に対する、手塚治虫の不満を解消する予定で、原作の設定を整理してスマートなアニメとして製作された。特にアトムの無版権デッドコピー機として登場した本シリーズのアトラスとアトムとの戦い、その中で育まれる複雑な関係性は、今なおアトムシリーズ最高作と評価される向きもある。
手塚プロダクションが24時間テレビの中で放送されるアニメの製作を請け負った縁で日本テレビ系列局(他)にて放送されたが、その一方で手塚プロダクションの契約ミスで日本テレビへ移籍してしまったと言う噂もある。
加えてずばりタイトルそのまま『アトムの初恋』なるエピソードがある。 ⇒ ニョーカの項へ
試行錯誤の連続だった1963年版に比べて、テレビがカラーになりその性能も向上してきた時期ということもあって、アクションアニメとしての色を強く出している。しかしその一方で、「ロボットと人間の関係、交流」といった鉄腕アトムシリーズのテーマは本作も強く押し出している。
手塚治虫が直接携わったアトム作品は、本作が最後である。
原作・第1作との相違点
タイトルロゴ
原作・1963版では、“ 鉄腕アトム ”とやや斜体で、さらに「ト」と飛び出し部分が波線になっていた。これは、原作の最初期『アトム大使』の第4話(アトム初登場回)で使われたロゴのイメージを継承していたものである。
本作では“鉄腕アトム”と斜体ではなくなり、極力曲線を廃したロゴになった。本作以降は手塚自身もこのロゴを主に使うようになり、講談社の手塚治虫全集の内扉もこちらになっている。
作中世界の年代
A.D.2030年とされている(原作は2003年、1963版は2013年)。
アトム誕生と天馬博士との離別の経緯
原作では天馬博士は、「交通事故で息子・トビオを失ったことを理由に、代わりになるロボット(アンドロイド)としてアトムの製作を決定、しかし、アトムの身体が成長しないことを理由に腹を立て、ロボットサーカスに売り飛ばしてしまう」となっている。他の映像作品でも、基本はこれを継承している。
だが、本作ではこのあたりがかなり違っている。まず、アトム製作のプロジェクトはトビオが死ぬ以前から始まっていた。
“人間のように感情をも表現できるロボット”の製作というプロジェクトが先にあり、科学省長官である天馬博士率いる科学省精密機械局のチームがこれに挑んでいたが、本編開始冒頭までで4度失敗し、そこにスカンク草井の挑発もあって、天馬博士自身が精神的にかなり追い詰められていた。また、この為に天馬博士が科学省に詰めっぱなしになっていたことが、トビオが放置児気味になっていた原因でもある。なお夫人に関しては言及はないが、他の作品同様シングルファザーだったと思われる。
後がない天馬博士は「子供のロボットにしたらどうだろう」という息子の提案にすがり、こうして後にアトムとなる5号機の開発・製作が始まった。ただし、この時点では“10万馬力と7つの威力”を持つスーパーロボットというわけではない。
その後、父親に放置され拗ねたトビオがロボットカーを乗り回し、事故を起こして死亡するのは他の作品と同じ。だが、トビオが今際の際に「かっこよくて最強のロボットを作って、それに自分の名前をつけて可愛がって欲しい」と言い遺した。
この遺志を受け継ぐ形で、天馬博士は5号機を“10万馬力と7つの威力”を備えたスーパーロボットに設計し、製作を続ける。あまりの性能に部下から「こんなロボットの完成は悪魔の誕生だ」と反対意見を受けるが、天馬博士は「悪魔かどうかは私が決める!」「この子が悪魔なもんか!」と製作を断行する。
だが、科学省長官、つまり大臣職である天馬博士にとって上司である首相からも中止・破棄を指示されてしまう。この「部下と上司からの圧迫」を受ける辺りも、独裁者然と振る舞う他の作品での天馬博士と異なる部分である。
しかし結局、自身のエゴとトビオの遺志を優先し、首相から「明日中に破棄」するように言われた日の深夜、5号機を起動してしまう。部下にそれを咎められるも、「訴えるなら好きにすれば良い!」と言って、5号機“トビオ”(アトム)を自宅に連れ帰ってしまう。
ただ、その後は、起動直後はカタログスペックに反して滑らかに動くことも出来ない“トビオ”が人間らしくなっていく“内面の成長”を満足そうに見守っていた。父親として「叱る」事はあっても、身体が成長しないことに不満を抱くこともなかった。
ある日、“トビオ”が突然自我を失い、暴走を始めてしまった(原因は後述)。しかしその時も、分解処理を主張する部下に対し、「分解処理だけはやめてくれ!」と懇願し抵抗する。この時にロボット処理車に言い争いをしながら異常操作をした為、処理車が暴走を始めてしまう。この時の天馬博士の助けを求める声に、異常状態から復旧した“トビオ”が反応し、ロボット処理車から天馬博士らを救出、余波で炎上したマンションから逃げ遅れた人々を救出した後、暴走したロボット処理車を破壊して海に投棄した。
この事で“トビオ”の存在が公になったと感じた天馬博士は、“トビオ”を連れてアメリカに移住することを決める。船でアメリカに渡る最中、些細なトラブルから癇癪を起こして「お前なんか息子じゃない、ロボットだ!」と言ってしまう。批判されるべきではあるが実際の親子でもありがちな出来事で、天馬博士に捨てられたと感じた“トビオ”は、ロボットサーカス団長のハム・エッグに騙され、自ら身売り当然の契約書にサインしてしまう。
天馬博士はすぐに自身の言動を悔い、謝罪の言葉を口にしつつ“トビオ”を探す。しかし、巨大氷山の接近や、その際のアトラスの襲撃により、エネルギー切れで動けなくなった“トビオ”を、ハム・エッグは巨大カバンに詰め込んで無理やり連れ去ってしまう。その際、意識が途切れる寸前に天馬博士の声を聞いた“トビオ”も、「助けて、お父さん」と言っていた。
しかし、ハム・エッグの元でロボットサーカスに従事させられ初めた時、天馬博士と一緒にいた頃の記憶に欠損が生じており、「トビオ」という名前も思い出せなくなっていた。一方、天馬博士も失踪扱いとなり、以降、直接登場することはなくなる。
アトムの方も、お茶の水博士に回収された後、天馬博士の存在を知っても、記憶の欠損のため親子だった事は思い出せなくなっていた。
エゴイズムと息子を失った事による精神錯乱の気はあるものの、人格破綻とまでは行かず、離別する寸前まで親子関係も破綻していなかった。そんな歴代の“天馬博士”の中でもっとも「まとも」な彼がこうした形でアトムと離れ離れになりそれっきりと言うのは、ある意味皮肉ではある。
一応、お茶の水博士がその技術の高さを褒めたり、中性子爆弾搭載自律行動ロボットの設計をボツにし封印したことを「正しい判断だ」と言ったりなど、フォローは入っている。
アトムのスペック
動力源は原作・1963版の原子力(核分裂)から、核融合動力に変更された。それによりエネルギー補給関係もウラン溶液の「エネルギーチューブ」から、重水素を充填された「エネルギーカセット」に変更されている。
核融合炉は炉内に抱えているエネルギー量が多くなく、常に燃料を供給してやる必要があるが、本作は原作・1963版ほど頻繁にエネルギー切れを起こす描写がない。
「7つの威力」は次の通り
- 胸の中に電子頭脳セット。160か国語(※1)を同時通訳ができる。
- 耳は音を1000倍に聞ける。
- サーチライトの目。
- 10万馬力の力。重水素燃料による核融合エネルギー。
- 腕と足はジェットで空を飛べる。
- お尻にマシンガン。1分間に600発(※2)撃てる。
- 両手人指差し指にレザーブラスト(※3)を装備。
※1:1963版の60ヶ国から大幅に増えているが、これは国連加盟国の数に基づいている為。
※2:1963版の500発から増加しているが、いずれにせよ零戦にも搭載されていた、エリコン『FFL20』の日本海軍による後期改良型とだいたい同じ。同銃はAPIブローバック機構の不利で、同世代の銃と比較してもあまり速い方ではない。
※3:「LAZER」のカタカナ表記だが、本作では「レーザー」と「レ」を伸ばさなかった。
登場キャラの整理
レギュラーキャラ・準レギュラーキャラも、長期にわたる連載と、それと並行して制作された1963版でやたら増えたキャラクターがかなり削られた。アトムの家族でもコバルト、チータンが登場していない。ただしコバルトの設定の一部を思わせる設定が、他のキャラに継承されている。
- 原作の「アトムの準同型機」「アトムと呼び合う」→アトラス
- 1963版の「天馬博士が造ったアトムの試作機」→ニョーカ
アトムの小学校での同級生である四部垣は、原作本編・1963版の「坊主頭にタラコ唇」ではなく、『アトム今昔物語』で登場した「帽子がトレードマークの出っ歯」が使われている。
アトラスについて
本作のアトラスは「アトムの設計を基に、オメガ因子を埋め込んだスーパーコピーとして製作される。デザインは褐色肌に「ライオンのたてがみの様な髪を持つ少年」。
「オメガ因子」は原作では「人間に敵対視する悪の心を持つようになる回路」とされているが、本作では明確に説明されなかった。
この時点では、アトムとほぼ同じ体格で、アトムと同じ「7つの威力」を持っていた。
製作者はワルプル・ギス伯爵。原作青騎士編に登場する差別主義者ブルグ伯爵に顔はそっくりだが、身長は低い。
アトラスの世話役にしていたメイドロボのリビアンを、その些細なミスからギス伯爵は腹いせにバラバラに破壊してしまう。それを見たアトラスは激昂し、ギス伯爵を攻撃しようとするが、ギス伯爵はクルマで逃走、追跡してくるアトラスをクルマに搭載されたミサイルで攻撃し損傷させるが、アトラスは左半身を失った状態からギス伯爵をクルマごと谷底に落とし殺害した。
その後、自らを新しい身体に改造。褐色肌のイメージはそのままながら長身のイケメンになった。同時にリビアンも美女ロボットとして再生している。
この身体になってからは、ケツマシンガンや指のレザーブラストなどは使っておらず(おそらく撤去されたと思われる)、ジェット推進器は脇の下に移設されている。戦闘には主に「ゼロブレード」という西洋剣を使う。これはアトムが触ると痺れてしまうという、原作青騎士の剣を思わせる物になっている(アトラスが意図したものではない模様)。
ギス伯爵の元にいた時は「善悪の判断がつかない子供」として、伯爵や草井の言われるままに悪事を働いている感じだったが、復活後は自ら人間を激しく憎むようになる。
もともとの設定がアトムと同じであるため、知能回路がアトムと共振を起こすことがある。第1話でアトムが自我を失い暴走したのは、アトラスの初回起動時にこの現象が起こったため。
しかし、後にリビアンも同じ現象を起こしている。
お茶の水博士が感心するほどの知識と技術力を持つ反面、アトムへの対抗心が抑えられず、アトムが自らとの対決を避けて隠れると、アトムを挑発するために周囲の人間の命を軽視した八つ当たりに近い行動を採るという、子どもじみた面ももっている。
しかし、そんな彼の最後は────
なお、北米・西欧圏での放映・ソフト頒布は当時、アトラス製作からギス伯爵殺害に至るエピソードはカットされていた。これは、「ほぼ同型でありながら、白人に近い姿のアトムが善、明らかに非白人でしかも非キリスト教徒風のアトラスが悪」という構図が、特にアメリカで人種差別問題に繋がりかねないと忌避されたためと考えられる。この為、北米・西欧圏へのバージョンは第1話と第2話を短縮して1話分にまとめており、アトム暴走の原因、アトラスの出自と草井との関係、などが解らなくなってしまっている(復活後のアトラスは普通に放映・ソフト頒布されていた)。2013年のBlu-ray版において、ようやく海外でも全52話視聴可能になった(北米版Blu-rayには短縮版も収録されている)。
スカンク草井はギス伯爵の手先として、天馬博士に製作中のロボットにオメガ因子を組み込むよう要求したり、アトムの設計を盗み出す実行犯になるなど、ギス伯爵の下でアトラス誕生に貢献するが、第4話でアトラスと再会した時には、チンケな犯罪を繰り返す集団のボスという小悪党に成り下がっていた。
なお、再会したアトラスに路上のATMを破壊して現金を取り出せと命令している。アトラスが応じず未遂に終わった。これは後々同様の犯罪が現実のものとなるが、よく「これを予言したのは『機動警察パトレイバー』」(同作TV版第42話)と言われるが、それより8年前に本作で描かれていた。手塚先生、流石である。
「地上最大のロボット」
アトム最高のエピソードとして知られるこの話は、本作でも映像化された。話のアウトラインはほぼ1963版と同じである。だが、いくつかの変更がある。
プルートウはウランに対し紳士的な振る舞いを見せるのは原作からだが、本作ではその部分が少し掘り下げられている。
プルートウが飛行時に、上半身を旋回させて竜巻のようになって飛ぶのも原作・1963版と同様だが、1963版では上昇後に旋回軸を水平方向に向けるティルトローター機のように飛ぶのに対して、本作では通常、垂直方向のままヘリコプターのように飛行する(アトムとの戦闘時に一度だけ水平飛行している)。
阿蘇山噴火阻止の際、原作では「アトムが岩を運んできて、プルートウが噴出箇所までそれを運び、埋める」という形になっているのだが、1963版ではこれに従いつつもリミテッド・アニメの工程削減のため、「プルートウが1ヶ所に立ってアトムから岩を受け取って火口に放り込む」という、「アトムが直接放り込んでもあまり変わらなくね?」状態になってしまっていた。
そこで本作では立場を入れ替え、「カルデラの広い火口上でホバリングできるアトムが待機し、プルートウが岩を運んできて、受け取ったアトムが噴出箇所に投下する」という構図に変更されている。
原作・1963版では、ボラーはプルートウの自爆時に自身も破壊されるが、本作ではプルートウを破った後、アトムと戦い、破壊される。
アトムとプルートウ以外のロボット、特に巨大ロボットのモンブランとヘラクレスはスーパーロボット風にデザインが変更されている。ついでにヘラクレスは顔つきが手塚先生というよりジャンプのあの2人っぽくなっている。
ボラーに至っては完全に別物。
主題歌
オープニングテーマ『鉄腕アトム』
作詞:谷川俊太郎 / 作曲:高井達雄 / 編曲:三枝成章 / 歌:アトムズ
1963版のOPを原曲としたアレンジバージョン。ブラスをバックにした原曲に対して、1980年代らしくドラムセットで立ち上げてエレキギターとシンセサイザーをメインにしたジャパニーズ・ロック曲調になっている。
この為、アップテンポしているように聞こえるが、曲の速度とボーカルのキーは同じである。原曲ではコーラスラインを優先してスタッカートでワンフレーズを言い切りテヌートで伸ばすという部分が多いが、本曲はバックバンドのラインに合わせてボーカルが抑揚する。
- 例:「ゆくぞ アトム」
- 原曲:「ゆくぞーぉ アトムーぅ」
- 本作:「ゆーくぞー アートムー」
この為キーは同じだがボーカルのメロディラインの配置が異なっており、本バージョンしか知らないと、カラオケなどでメロディラインが合わせられない。なお、2023年2月27日(JST基準)現在、本作のバージョンを配信している通信カラオケ事業者は存在しない。
また、原曲は
- 前奏→第1コーラス→第2コーラス→間奏→第3コーラス~終奏
となっていたが、本作では
- 前奏→第1コーラス→第2コーラス→間奏(ギターソロパート)→第3コーラス→第1コーラス(リピート)→終奏(ギターソロパート)
という構成になっており、演奏時間は原曲の2分14秒から3分に延長されている。
いくつかのバージョンがあり、原曲を意識してシンセサイザーのみで立ち上げるもの、最初からドラムセットで立ち上げるものがあるが、テレビ放送で使われたのはどちらでもなく、後者をベースにまた若干違うアレンジの入ったものである。この他、EDのANKHが歌った男声キーバージョンがあり、アルバム版サウンドトラックに収録されている。
OPについてあれこれ
放映開始後、「なぜ前作の曲をそのまま使わなかったのか」と、テレビ局などに抗議や批判が来た、と、森晴路が自著『図説 鉄腕アトム』に記述している。しかし、同時期にモノクロ時代からカラー初期に製作されたアニメのリメイク作として、『鉄人28号』(カラー版は『太陽の使者 鉄人28号』)『サイボーグ009』『ルパン三世』『ドラえもん』が前年~同年に放映を開始しているが、これらは新たな楽曲が使われており、特に強く批判を受けたということはなく、同じ曲を使った本作に殊更強い批判があったのかは疑問が残る。
実際本作も、別の曲が用意されるはずだった。だが、出来上がってきた曲が「これの何処が『アトム』なんだ?」となってしまい、放映で使われることはなかった。その為、下記EDのANKHの曲を手掛けていた作曲家の三枝成章が編曲した本バージョンが使われることになった。
事程左様に、1963版を見て育った高年齢層には原曲の支持が強い。しかし、時代背景的に、テレビの普及台数も違う上、コンポーネントステレオは一般家庭が気軽に買えるような値段ではなく場所も取るキャビネット型のアンサンブル型ステレオ、カセットテープはまだ登場したばかり、という1960年代前半に対して、1980年当時はCDの普及こそまだ先だが、前年発売の『ウォークマン』によってコンパクトカセットの普及が決定的になり、システムコンポーネントステレオも贅沢品とは言え1960年代よりは遥かに普及率が高い。更にはこの当時、家庭用ビデオデッキも普及黎明期にあった(ちょうどVHS・ β 戦争の真っ最中)。更にはかつて日本テレビ系17:30枠にあったアニメ再放送枠でも何度か放映されたことから、1970年代~1980年代生まれの世代(現在アニメ制作に多大な影響がある世代)にとっては、「鉄腕アトムOP」と言えば圧倒的にこのバージョンである。
『鉄腕アトム』の海外への展開も、中華人民共和国を除いてはほとんど本作からだったことから、海外での邦訳カバーも本バージョンを意識したものが多い。
アレンジ版とは言え本放送キー局が違うにもかかわらず同曲が使用されたことは極めて異例で、本作以外に類を見ない。
エンディングテーマ
『未来に向って 〜ニュー鉄腕アトム〜』
作詞:手塚治虫 / 作曲・編曲:三枝成章 / 歌:ANKH
『ウランのテーマ』
作詞:荒木とよひさ / 作曲・編曲:三枝成章 / 歌:ウランズ
- ウラン主役回(第14話、第30話、第45話)たった3回のために用意された専用曲。
なおWikipediaには「この3曲を収録したEP盤が発売された」と書かれているのだが、7インチEP盤(45rpm)には3分前後の曲を3曲収録するのは不可能ではないがかなりギッチギチになって非現実的(CDと異なり曲間のギャップも総演奏時間に含まれるため)。実際、「この3曲を収録していた」とするEP盤の中古は見かけられず、本項の執筆者が保有しているのも『鉄腕アトム』OPと『ウランのテーマ』の2曲だけが収録されたものである。
(もともと『未来に向って』はアニメ曲としてではなく、ANKHのA面曲として発表された。前述の男声キー盤『鉄腕アトム』は、このB面である)
あるとすれば7インチLP(EP盤の大きさだが、回転数は33.5rpm)の可能性がある。アニメ曲でよく使われた手で、4曲収録されている。実際存在は確認できたが、『ウランのテーマ』は収録されていない。
CDで再販されたとあるので、そちらには『未来に向かって』が追加で収録されていた可能性がある(8cmCDでも3分前後の3曲は余裕で入る)。が、こちらも確認できない。
誤解による評価
放送期間は1年3ヶ月・全52話だが、これは読売ジャイアンツのホームゲーム(後楽園球場)中継の影響で放送順延が発生したためで、元から全52話で組まれている。
これに対し、裏番組として1981年4月にフジテレビ系列局(ただし一部系列局では放送日時差し替え)で放映開始した『Dr.スランプ アラレちゃん』は延長が繰り返され243話まで続いたことから、よく「読売新聞グループのジャイアンツ優先主義の為に延期が繰り返され、『Dr.スランプ』に視聴率を奪われた」とされがちだが、実際には当時は東京キー局(当時はテレビ東京はローカル局扱い)はどこも似たようなものであり、『Dr.スランプ』もフジが放映権を持っていた東京ヤクルトスワローズのホームゲーム(神宮球場)の中継のために何度となく順延されていて、これはあまり適当な評価ではない(もともと、高視聴率番組を引き伸ばすのはフジの傾向)。
『Dr.スランプ』は強力ではあったが、盤石となるのは1981年10月改編でその後の19:30枠に『うる星やつら』(第1作)の放映が始まり、この援護射撃の効果が出てからである。この時には、既に本作はスケジュール通り終了する予定だった。
「野球中継が視聴率競争の足枷になっている」と判断されるようになるのは、1995年以降である。
放送局について
本作の制作テレビ局は日本テレビだが、放映開始時点ではまだテレビ東京がローカル局扱い(局名もまだ「東京12チャンネル」)で、現在のNTV・TBS・FNS・AXの4大ネットワークも構築途上であり、関東広域圏4大局の複数の番組を放映している所謂「クロスネット局」がまだ多く残っていた。
日テレと同時ネット(水曜19:00)で放映したクロスネット局
NTV・AXクロスネット局
- この2局はクロスネットを解消し、現在はNTV単独ネット局となっている。
NTV・FNS・AXクロスネット局
- 同局は現在もクロスネット局だが、FNSには正式に加盟していない。AXからは離脱。
遅れネット局
NTV単独ネット局
- 福島中央テレビ:木曜17:00~17:30 (第26話まで)/ 水曜19:00~19:30(第42話から)
- 11月から追いかけ再放送で全話放映。
- 秋田放送:木曜17:00~17:30
- 北日本放送:木曜17:00~17:30 (中断)/(再開後) 水曜19:00~19:30
- 中断時期、中断期間の補填については不明。
- 福井放送:金曜18:00~18:30
- 1981年4月24日放送分を持って打ち切り。
- ここは当時NTV単独ネットで、1989年にAX系にも加わってクロスネットになった変な局。
この他に四国放送が遅れネット局とされているが、詳細不明。同局はクロスネット局になった時期はない。
クロスネット局
- 山形放送:NTV系 AXクロス / 1993年クロスネット解消
- 木曜17:00~17:30 → 日曜7:00~7:30(枠移動時期不明)
- 新潟総合テレビ:FNS系 NTV・AXクロス / 1983年クロスネット解消
- 木曜17:20~17:48
- 1981年3月・NTV単独ネット局テレビ新潟開局に伴い放映終了。
- 鹿児島テレビ放送:FNS系 NTV・AXクロス / 1994年クロスネット解消
- 月曜17:45~18:15
TBS系ネット局
- 信越放送:金曜17:25~17:55
- 当時既にNTV系(ただしAX系とのクロス)のテレビ信州が開業していたが、こちらでは放映されていない。
- 長崎放送:詳細不明。
- 熊本放送:木曜19:00~19:30
- 27話で打ち切り
- 宮崎放送:木曜19:00~19:30
- 琉球放送:詳細不明。
- ちなみに沖縄県には未だにNTV系局がない。
この他TBS系列局では北陸放送も放送していたが、放映開始が1981年からと番販に近い。
関連動画
「鉄腕アトム」アニメ映像_80年版 © TEZUKA PRO / KODDANSHA