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北欧神話の編集履歴2020/05/12 11:25:54 版
編集者:温州蜜柑
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北欧神話」はキリスト教が伝わる前にゲルマン人が持っていた神話ゲルマン神話)のうち、ノルウェースウェーデンデンマークアイスランドなど北欧に伝わっていたものの総称。

概要

エッダ』と呼ばれる伝聞伝承を基盤とする、スカンジナビア半島を中心に伝えられる古代神話。

世界樹ユグドラシルを基盤に据えた独特の世界観を有し、巨人精霊怪物と多くの存在が登場し、非常に幻想的かつ壮大な物語を紡いでいる。

またそれと双璧を成すように『戦い』についても非常に多くの逸話を持ち、その残虐で現実的な雰囲気は幻想的な雰囲気と入り混じり、世界観に一層の特異性を与えている。

神は巨人と絶え間なく争い、また神はそのための戦力を人間界に求めて人間同士を争わせ、人もまた神々の思惑に踊らされながらも戦い続ける。そして最後には『ラグナロク神々の黄昏』が訪れ、すべてが滅び、また始まるという予言によって締めくくられている。

野望と戦いが連鎖する「血と炎の彩る神話」は、現在に至るまでの創作作品にも多大な影響を及ぼしており、多くの物語が画題や楽曲、文学作品などとして描かれ、今日でも人々の創造の糧として生き続けている。

世界観

北欧神話の世界は大きく分けて三層からなっている。それぞれ神々の住む世界アースガルズ、人間の住む世界 ミズガルズ、死者の住む世界ニヴルヘイムニブルヘイム)である。また三層全てを貫く巨大な樹ユグドラシル、この三層論では語られない南方の地ムスペルヘイムについても触れよう。

アースガルズ

アースガルズには世界を支配するアース神族の館が立ち並び、強固な城砦によって囲まれている。この世界にはまたアース神族と同盟するヴァン神族の国ヴァナヘイムエルフの国アールヴヘイムが含まれている。アースガルズを支配する神々の長はオーディンであり、その館はヴァルハラと呼ばれる。ヴァルハラには戦いにおいて戦死した勇敢なる者たちがオーディンの使者たる戦乙女ワルキューレによって運ばれる。彼らは毎朝互いに戦いを開始し、敗れて死んだ者も夕刻には再び立ち上がって宴に列席するという。彼らはオーディンの命によって互いに闘って技量を高め合い、最後の戦いラグナロクに備えているのだ。ヴァルハラではまた、オーディンの妻にして女神の第一位にある女神フリッグが夫と共に玉座から世界の全てを見守っていた。

ミズガルズ

ミズガルズとは北欧神話において人間が住む世界のことである。その周囲は大洋に囲まれ、大洋の中には大蛇ヨルムンガンドが潜んでいる。ヨルムンガルドの全長はミズカルズを囲む大洋を一巡りし、その尾を咥えることができるという巨大なものである。

ミズカルズの東の果て、あるいは大洋を越えた遠方に巨人族の国ヨーツンヘイムがある。ヨーツンヘイムには多くの巨人が住むが中でも著名な都市は巨人の城砦ウトガルドであり、その王はウトガルド・ロキと呼ばれる。

ミズカルズの北方には小人(ドワーフ)の国ニタヴェリールがあり、小人たちは洞窟や洞穴に住むという。またその地下に黒妖精(闇エルフ)の国スヴァルトアールヴヘイムがあるという。しかし後世のファンタジー文学とは異なって、小人たちと黒妖精の区別はいささか曖昧であり同一種族を指すという説もある。

アースガルズとミズガルズをつなぐのは炎を上げる虹の橋ビフレストである。この入り口は番人としてヘイムダルという神が守っている。また別伝では、アースガルズとヨーツンヘイムの境界には決して完全には凍らないイヴィング川という川があったともいう。

ニヴルヘイム

ニヴルヘイムは死者の国である。ミズガルズから地下あるいは北方に馬で九日進んだところにあるという。雪と氷に覆われて寒気と夜に閉ざされ、その女王はヘルという。ヘルが治める同名の城砦ヘルよりさらに遠くに死者の世界ニヴルヘイムがあり、悪人はその地まで流れていって死ぬという異説もある。

ユグドラシル

ユグドラシルとは、上述のアースガルズとミズガルズ、ニヴルヘイムの三層構造全てに根を伸ばすトネリコの大樹である。いうまでもなく世界で最も巨大な木であり、世界の起源も知れぬ過去より存在してラグナロクの後も存在する。三層構造を貫いてそびえかつ支えるこの木は、それゆえ世界樹の名でも知られる。アースガルズに伸びた根の下にはウルドの泉があり、そこに住む三人の運命の女神ノルン、すなわちウルズ(運命)、スクルド(存在)、ヴェルザンディ(必然)は、未来についての予言をなすという勤めとは別に泉の水によってユグドラシルを育み守る役割も持っている。

ムスペルヘイム

ムスペルヘイムとは、先の三層の世界論では無視される土地である。しかし世界の始まりにおいて、北方には寒きニヴルヘイム、南方には暑きムスペルヘイムがあったともいう。ムスペルヘイムは炎が燃える灼熱の地であり、その地に生まれた者以外は耐えられないという。その守護者は燃える剣を持つ黒き者スルトである。

九つの世界

北欧神話において全世界を指すのに「九つの世界」という言葉がよく用いられるが、その数え方は不明である。アースガルズ、ヴァナヘイム、アールヴヘイム、ミズガルズ、ヨーツンヘイム、ニタヴェリール、ニヴルヘイムで7つ。これに(ニヴルヘイムと別世界と仮定した)ヘルの国、(ニタヴェリールと別世界と仮定した)スヴァルトアールヴヘイム、ムスペルヘイムのうち2つを含めることが多い。

神話内の歴史(天地創造から神々の黄昏まで)

後述するように北欧神話の原典はさまざまな出典に依拠しており、統一した時間軸は明らかではない。ここでは一般的な流れを挙げる。

ユミル

最初にあったのは南方の灼熱の地ムスペルヘイムと北方の極寒の地ニヴルヘイムであった。その間にあったのはギンヌンガガップ(欠伸する裂け目を意味する)で、北からの氷雪が氷河となって流れ込んでいた。この裂け目の中心では南方の暖気が北方からの氷河と出会い、穏やかな気候となっていた。暖気に暖められた氷河は溶け、その滴が生命となって巨人ユミルが生じた。ユミルの眠っている汗から男女が生まれ、こすり合わせた足からも息子が生まれた。かくして生まれた者たちはみな巨人であり、霜の巨人と呼ばれる。

ボルの息子たち

ギンヌンガガップで溶けた氷はまた一頭の牝牛アウドムラともなった。アウドムラは氷を舐めかつ食べ、その舐めている氷からブーリという人間が表れた。ブーリの息子はボルといい、ボルは霜の巨人ボルソルンの娘ベストラと結婚してオーディン、ヴィリヴェーの三兄弟をなした。

天地創造

オーディンらボルの息子たちは乱暴な霜の巨人族が気に入らず、ユミルを殺してその血に溺死させて霜の巨人族の大半も殺してしまった。三兄弟はユミルの体から世界を作った。肉塊は大地、骨は山脈、血は湖と海、頭蓋骨を天空とし、ムスペルヘイムが発する火花と燠から太陽と月、星々を配置した。ユミルの肉から生まれた大地は一部を生き残った霜の巨人に与えてヨーツンヘイムとし、ユミルの眉からこしらえた垣根に守られた地をミズガルズとした。また大海の波打ち際でトネリコとニレの流木を見つけ、そこからアスクエムブラという人間の男女をこしらえてミズガルズの住人とした。

大地が人間や巨人たちに溢れてくると、三兄弟は虹の橋ビフレストの向こうにアースガルズの輝く宮殿を築いた。三兄弟とその子孫らこの地に住む神々がアース神族であり、オーディンは彼らの最長老として君臨したのである。

ヴァン神族との戦い

先述の通り、ヴァン神族とはアースガルズに隣接するヴァナヘイムに住む神々である。アース神族の元にヴァン神族の魔女グルヴェイグが訪ねてきた時、アース神族はこの黄金への欲にしか関心を示さない魔女に腹を立てて、拷問にかけて殺してしまう。しかしこの偉大な魔女グルヴェイグは平然と復活したので、神々は三度魔女を殺し、三度ともグルヴェイグは復活した。ヴァン神族はこのようなアース神族の仕打ちに激怒して戦いを挑んできた。この戦いは長引いて決着がつかず、ついには両陣営は和睦することになった。和睦を誓う証しとして、双方の指導的な神々が人質として交換された。かくしてアース神族と共に暮らすことになったヴァン神族が海の神ニヨルドとその子である豊穣伸フレイと愛の女神フレイヤの兄妹である。

主要な神話の時代

このヴァン神族との和解の後の時代、オーディンの息子バルドルが死ぬまでの時代が、北欧神話との主要な舞台となる。神々は巨人殺しの必殺の武器ミョルニルを持つ雷神トールを中心にして巨人と争い、その争いをあるいは始めあるいは神々の勝利に終わらせるために狡知の神ロキが活躍する。この構図を中心とした数多くの神話が残されている。

ロキには多くの子があるが、そのもっとも奇怪なのが女巨人アングルボダとの間に生まれた、巨狼フェンリル、大蛇ヨルムンガンド、半身が腐った女神ヘルの三兄妹であった。運命の三女神ノルンは、この三兄妹が神々を滅ぼす場に居合わせると予言する。かくして神々は三兄妹を捕えることにした。オーディンはヨルムンガルドを大海に投げ込み、ヘルをニヴルヘイムに投げ落とした。またヘルにニヴルヘイムの支配者として死者の世話をすることを命じた。フェンリルは神々には手におえないほどに強大な狼となっていたが、勇敢な神テュールが片腕を犠牲にしてついにこれを捕えた。

この時代の最後に美しく罪のない神バルドルが殺され、その犯人がロキであることが暴かれる。ロキは神々に処罰されて幽閉されるが、それはもう既にラグナロクの前兆であった。幽閉されたロキが苦しむと大地は揺れ動く、これが我々の体験する地震の正体であるという。

神々の黄昏

神話中の様々な予言が、最後に起こる神々の黄昏、すなわちラグナロクのことを語っている。このラグナロクが始まると、巨人の子たちによって太陽が呑み込まれ月が切り刻まれる。大地が揺れて山も崩れ落ち、フェンリルがそのいましめから解放される。ヘルの死者たちが目覚め、ヨルムンガルドやフェンリルと共に攻め込んでくる。スルトに率いられたムスペルヘイムの軍勢も押し寄せてくる。またすべての巨人たちも幽閉から逃れたロキの下に動き出す。彼ら全ての神々の敵が目指すのは、言うまでもなくアースガルズである。

ヘイムダルがその角笛ギャラルホルンを吹きならすとその音は全世界に轟き、それを合図に全ての神々が集ってオーディンの号令のもとに反撃に出る。オーディンは真っ先にフェンリルと闘うがこれに呑み込まれて死を迎える。トールはヨルムンガルドと相打ちになり、ロキとヘイムダルも斬りあって互いに力尽きる。神々も巨人も、またヴァルハラの勇士たちも戦って倒れ、生き残った者たちはスルトが放った全世界を焼き尽くす炎の中に消える。人間も妖精も含め、何もかにもが死に絶え、大地は海中に没して消える。

そして大地が海中から現れ、青々とした緑が蘇ってくる。生命が再び世界に戻り、かつての神々の息子たちが現れ、また死んだ神バルドルらも復活してくる。かくして世の再生を描いて北欧神話は幕を閉じる。

北欧神話の周辺

現存する北欧神話の原典は多くが十三世紀のアイスランドに遡る。その一つはアイスランドの司教が1643年に発見し、その後の発見部分を含めて1270年ごろに執筆されたという34篇の神話詩・英雄詩、通称『詩のエッダ』(『古エッダ』)である。もう一つの原典は、アイスランドの文学者スノリ(1179-1241)が『散文のエッダ』という著作によって数多く引用した、スカルド詩とよばれる神話を題材とした賛歌や悲歌である。

当時のヨーロッパはすでにキリスト教化しており、北欧神話は過去のものとして忘れ去られていた。

ノルウェースウェーデン等その他のスカンジナビアに残る神話の資料はより断片的なものである。

が、アイスランドは辺境ゆえにキリスト教の影響が少なく、原点に近いものが残されていたと考えられる。

(といってもスノリはキリスト教徒だったので、内容には少なからずキリスト教の影響が見られる。ラグナロクのあとに復活する神は、キリストそのものだと見る研究者もいる)

北欧神話は、ゲルマン人の共有していた失われた神話の一部を現代に伝えている。ドイツの国民的叙事詩『ニーベルンゲンの歌』は北欧神話の英雄シグルズの物語と同じ伝承に起源をもつ。のちにワーグナーが、この叙事詩を中心に様々な北欧神話を素材として、楽劇『ニーベルングの指環』を書いた。また英語のTuesday(火曜日)、Wednesday(水曜日)、 Thursday(木曜日)、Friday(金曜日)は、それぞれテュールの日、オーディンの日、トールの日、フレイヤの日(フリッグの日とも)を意味する。

北欧神話に関連するタグ

ルーン文字 ラグナロク

ワルキューレヴァルキリーベルセルクバーサーカーエインフェリア

エッダ サガサーガ) … 物語群の名称 ※ほとんどのタグは別の用途に使われている

神々と人物

北欧神話をモチーフにした作品

ヴァルキリープロファイルシリーズ

オーディンスフィア

神々の悪戯

斬撃のREGINLEIV

聖闘士星矢(アスガルド編)

世界樹の迷宮

Fateシリーズ

ポケットモンスターXY

マイティソー

魔探偵ロキ

ゆるドラシル

ラグナロクオンライン

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