概要
MARVELコミックの実写シリーズ「MCU」におけるネイモア・ザ・サブマリナーの本拠地。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で初登場した。
コミックでは古代ギリシャが発祥の伝説「アトランティス大陸」をそのまま流用しており、文化などもギリシャ風で描かれていたが、MCUではネイモアのデザインはほぼそのまま、マヤ・アステカを下敷きとしたオリジナルとなっている。
同作の監督曰く「私たちなりのバージョンとして再想像した世界」とのこと。
改変された理由は明言されていないが、おそらく大人の事情が絡んでいる(後述)。
詳細
オリジン
作中、ネイモアがワカンダの王女・シュリに語る形で明らかにされた。
だが大航海時代になって、ヨーロッパからやって来たコンキスタドールによって迫害を受け、土地を奪われ、さらに持ち込まれた病気の流行により滅亡の淵へと追いやられた。
そんなある日、一族のシャーマンが雨の神チャクからの啓示を受け、海中の洞窟でワカンダの物とはまた別の、大西洋の海底に落下していたビブラニウム隕石による影響を受けた海草を発見。
生き残りの一族全員でその海草を薬に煎じて摂取した。
すると……肌は鮮やかな青色に変色し、地上で呼吸ができなくなった代わりに水中で呼吸・生存が可能な肉体に変貌。
人々は海中へと移住し、築かれたのがタロカン帝国だった。
この時、一族の女性の1人は妊娠しており、胎内の子供に悪影響が出ることを危惧して摂取を躊躇っていた。
だがシャーマンに「生まれた子はタロカンの王にする」と説得されたことでようやく同意して海中へと移住し、やがて男子を出産した。
その子は「地上にいた頃のタロカン人と同じ褐色の肌」「他の同胞より先が尖った耳」、そして「足首から生えた鳥のような小さい羽」を持って生まれた。
胎内にいた頃に海草の影響を受けた彼は
- 呼吸器具の補助に頼らずに水中だけでなく、陸上でも呼吸と生存が可能な特殊な肉体
- 足首の羽によるハチドリを思わせる高速空中飛行
- 超人的な腕力
- 作中ではソーやハルクと同等かそれ以上と評されている。
- 実際『ワカンダ・フォーエバー』劇中でも、自身よりも一回りは大柄な体格をしているエムバクをパンチ一発で倒している。
- 成長や老化のスピードが他者よりも遅く、寿命が長い
等の特性を生まれながらに備えたミュータント(吹替版では単に「突然変異」)として誕生し、前もって交わされた約束の通り、神話における羽を持つ蛇の神の名を冠した支配者「ククルカン」となった。
時が経ち、彼の母が年老い亡くなると、その遺言に従い母の亡骸を「故郷の地」に埋める為に数人の仲間と共に地上に上陸。
だがそこで彼が見たのは、本来の住民である筈の人々を奴隷として迫害し、ヨーロッパ風の屋敷で暮らすスペイン系移民の姿だった。
移民達の屋敷が燃え落ちていくのを尻目に母の埋葬を行っていると、その場にいた宣教師が「お前は悪魔」「サタンの子だ」と罵り、彼の事を「El niño sin amor(エル・ニーニョ・シン・アモレ)」、スペイン語で「愛のない子ども」と呼んだ(この宣教師も直後にククルカンの手によって殺害されている)。
以来彼は敵対者に対して自らを、そのスペイン人の言葉を捩った「ネイモア(ノ・アモール=愛が無い、すなわち地上を愛さない者の意)」と名乗るようになったのだった。
文化・技術
母語はユカタン半島の先住民が今でも実際に使用するユカテコ語。
挨拶する際には顔の前で両手を揃えて掌を見せるポーズを取る。
ネイモア以外のタロカン人は水中でしか呼吸ができない為(よく見ると、首の周辺に鰓孔が存在する)、基本的に地上で活動する際には海水を含んだ半透明の青いマスクで口元と鼻を覆わなければいけない。
『ワカンダ・フォーエバー』劇中ではシュリをタロカンに連行する際に、アットゥマが自身が着けていたマスクをシュリに装着させる場面がある。
なお作中では内陸の川でも活動が鈍る描写はなく、海水と淡水の区別はない模様。
ちなみに前述の通りネイモア以外は青肌だが、実はそれは陸上や水上など空気に触れている時だけで、海中ではむしろ色白の肌に見える。
海中に石造りの巨大な都市を建設し、地上と海の境目にある空気が存在する天然の洞窟内にマヤ風の装飾がなされたネイモアの私室が置かれている。
また同じビブラニウム由来ゆえか、ワカンダの防衛システムを突破するほどの高度な技術力を持っており、首都らしき場所には人工太陽がある。
さらに陸上に対するステルス能力も高く、先進国はおろか、そのワカンダもこれまで存在すら認知していなかったほど。
ただし故郷の近くのカリブ海沿岸ではおとぎ話レベルで伝わっており、作中ではナキアがハイチの村の老婆からククルカンに纏わる話を耳にしたことが、潜入されるきっかけの1つになった。
この「高い技術を持つが今まで鎖国していた」という状況は、シリーズ前作『ブラックパンサー』ラストまでのワカンダと同じであり、対比して描かれている。ある意味では、ワカンダの辿る可能性のあったもう1つの姿がこのタロカンなのだろう。
クジラやシャチなどの大型海洋生物を家畜化しており、騎乗して海中の移動に用いる他、戦闘時には海中から地上や水上へと多数の兵士達を射出するカタパルト代わりを務めている。
- この映画を見たファンからは「クジラ達こそが真のMVPだ」という感想も上がっている(参照)。
その他、爆発と同時に大量の水を放出する爆弾や、歌を聴かせることで水辺にいる人間を入水させる催眠術を有しており、こと水上ではネイモア以外の戦士も相当な強さを持つと言える。
ネイモアも仮にワカンダと戦争になっても負けることはないと豪語しており、実際、劇中でも装備を整え、万全の状態で戦いに臨んだワカンダ軍を敗北寸前にまで追いやっており(最終的にシュリとの一騎打ちに敗れ、降伏したネイモアの命令でその場から撤退したものの、そうなっていなければ確実にタロカン側が勝利していたことは確実な状況だった)、その戦闘力は恐らく作中の地球に存在する勢力の中でもトップクラスであることは間違いないだろう。
ワカンダにおける『ワカンダ・フォーエバー!』や『イバンベ!』に相当する民を鼓舞する掛け声として『ウィーキー・タロカン!(訳・立て、タロカン!)』が存在する。
(※耳で聞いた発音を書いているので、正しい表記が分かる方は修正お願いします)
関連人物
- ククルカン / ネイモア
上記参照。
400年以上にわたり王国を支配する一方で「ネイモア」の由来となった事件のことは忘れておらず、「いつかは地上世界を燃やし尽くしたい」とも考えていた。
先述の一族の体質を変化させた海草を編んで作られたブレスレットを『母の形見』として現在まで大切に所有しており(元々は誕生前のネイモアがタロカンの王となる証として編まれた物)、これをシュリに渡したことが劇中後半におけるブラックパンサー復活の伏線となった。
ちなみに、海中の玉座に座る時は『ククルカン』の名の由来である『羽を持つ蛇』の頭部を模した王冠を被る。
- アットゥマ(Attuma)
- ナモーラ(Namora、邦訳コミックでは「ネイモラ」とも)
2人組の王の側近。軍の指揮もある程度任されている。
『ワカンダ・フォーエバー』では、ワカンダの王族親衛隊ドーラ・ミラージュ隊長にして同国屈指の女戦士であるオコエと戦って互角どころか圧倒しており、「深海でも活動可能な、頑健な肉体の持ち主」と「特殊能力を一切持たない、鍛えた武術(+ビブラニウム製の槍)だけで戦う生身の人間」の差を考慮しても、その実力の高さをうかがい知ることができる。
シュモクザメの頭骨を加工した兜を被った大柄な体格の男性がアットゥマ。コミックではネイモアの主要ヴィラン。
羽根飾り(?)が付いた冠を被った細身の女性がナモーラ。コミックではネイモアの従妹で、彼と同じ身体能力を持ち、独自にヒーローチーム「エージェンツ・オブ・アトラス」に所属している。
作中での動向
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
王であり守護者であるブラックパンサーことティ・チャラが亡くなったワカンダ。
これを好機とみた諸外国はビブラニウムを狙って関連施設を襲うが、彼の母であるラモンダが女王となったワカンダも反撃しており、国際問題に発展しかけていた。
さらにアメリカはワカンダにこだわらず、リリ・ウィリアムズが開発した探知機で海底を探していたが、その船が偶然にもタロカンの存在に気づきそうになったため、口封じのために襲撃され全滅してしまう。
だが各国はこの事件をワカンダの仕業だと勘違いし、対立が深まってしまう。
この状況を見たネイモアは自らワカンダに侵入し、秘密裏にラモンダとその娘の王女シュリと接触、問題解決のために協力を持ちかける。
その一方で、独自に探知機の開発者を特定したタロカンはリリを消そうとアットゥマとナモーラら数名を派遣。一足先に彼女を確保していたシュリとオコエを退け、リリとシュリを誘拐する(なお、オコエはこの失態の責任を問われ、隊長職を一時解任されることになる)。
ネイモアはシュリを丁重に扱い、自ら王国を案内するとともにタロカンのルーツを説明し、自分たちに協力して外国を滅ぼすか、真っ先に自分たちに滅ぼされるかの2択を迫るが、あくまでリリの存命を望むシュリからは前向きな返事を貰えず、交渉は事実上決裂。
さらに、直後にシュリが現場に残したキモヨ・ビーズを発信機代わりにヒントを得たワカンダ側に王国の入り口を特定され、しかもリリとシュリを逃がす際に世話役だった数名のタロカン人の女性が攻撃され、死亡してしまう。
情けをかけたことを後悔したネイモアは、直接攻撃を決意、遂にはワカンダとの全面戦争が勃発することになる。
余談
- 改変の理由
主に2つ考えられており、前者は公式から言及されている。
●ネイモアはハルクと同じくユニバーサル・ピクチャーズに映像化の権利があり、それをマーベル・スタジオが借りる形になったため。通称の「サブマリナー」が無く、デビューが単独映画でないのも同じ理由。
似たような例だと、1つ前の映画『ソー:ラブ&サンダー』のヴィラン・ゴアの得物「オールブラック・ザ・ネクロソード」はコミックではシンビオートだが、スパイダーマン関係はソニー・ピクチャーズが保有しているため、オミットされて「ネクロソード」名義になった。
●MARVELと並ぶアメコミの二大巨頭であるDCコミックに登場する、ネイモアと同じ海底人のヒーロー・アクアマンが先に実写化された際に「アトランティス」の名前をそのまま使ったので、重複を避けるため。
- 名前の由来
考察界隈ではアステカ神話に伝わる雨の神トラロックが支配する楽園「トラロカン」が挙げられているが、公式からは明言されていない。
- MCU内のつながり
『ワカンダ・フォーエバー』と同じく監督・主演ともに白人ではない、同名のヒーローチームを主役にした映画『エターナルズ』では、チームが一旦解散した理由がコンキスタドールになっているほか、アメリカの行為が(こちらでは明確に)悪として描かれている点も近い。
さらに終盤、地球に眠っていたセレスティアルズは海底の深くから目覚めようとしており、チームの活躍により途中で止まったものの、それでもタロカンへの被害は甚大だったと思われる。
なお、エターナルズの面々がタロカンの事を知っていたのかは不明。
なお、映画「エターナルズ」内では「エターナルズ達がビブラニウムの存在を知っていただけでなく、ワカンダとは別ルートで入手出来る可能性を示唆する発言(「どうせ、この机もビブラニウム製だろ!!」→ガシャン→机が大破→「それ、秋の新商品だったんだぞ……IKEAの……」)をする」という描写が(ギャグシーンでは有るが)存在しているのだが……?
またこれより前の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』にてオコエが「海底地震が起きている」「何もしないことが得策」と発言しており、結局関係は無かったが、コミックファンにはネイモア登場予定の示唆になっていた模様。
- 英語を話すタロカン人はネイモアだけ問題
何気に『ワカンダ・フォーエバー』劇中に登場したタロカン人の中で、母語であるユカテコ語以外の言語(原語版ではもちろん英語、日本語吹替版では日本語)を流暢に喋り、会話を行っているのはネイモアだけである。
ネイモア以外のタロカン人はシュリやリリ等の外部の人間に対してもユカテコ語のみで話しかけ、日本語吹替版でも台詞に字幕が表示されている。
関連タグ
ニュー・アスガルド、ター・ロー、ソコヴィア、オムニポテンス・シティ:同じくMCUに登場する地名
アクアマン:DCコミックの海底人ヒーロー。原作コミックにおけるデビューはネイモアが先(ネイモア:1939年、アクアマン:1941年)だが、実写化はこちらが先(2018年)。ファンからも両者は比較されているが、ネイモアを演じたテノッチ・ウエルタ氏は「モモア(アクアマン)との比較は光栄だ」、「2人が闘ったら、もちろんネイモアがアクアマンを倒す(笑)(意訳)」と語っている。
シートピア海底王国(ゴジラ対メガロ):「地上の古代文明にルーツを持つ海底人の文明」「地上人に安住の地を脅かされそうになったので攻撃を仕掛けた」という共通点がある。こちらは主戦力が敗北したことを受け復讐を断念したものの、最後まで地上人と和解することはなかった。
ノンマルト(ウルトラセブン):こちらも地上の人間に居住地である海底の安全を脅かされたために防衛と地上の奪還の両方を兼ねて地球人と抗争を起こしたが、最終的に全滅させられるという憂き目に遭った。ただし彼らは人間とはまた別の知的生命体で、自らを地球の先住民族と主張している。