単語としての『GODZILLA』
ゴジラの英語表記。現在では一部の英和辞典にも載っているなど、英語圏における固有名詞の1つとして完全に定着している。
この綴りは1956年に東宝がアメリカで『Godzilla, King of the Monsters』を放映した際に最初に設定された。
日本でこのゴジラの海外名が知られるようになったのは1998年のリメイク作の公開、ひいてはその後の松井秀喜選手のメジャーリーグにおける活躍あたりからであろう。
ゴジラをそのまま英語表記すると「Gojira」となるが、あえてこのような変わった綴りにしたのは神を意味する「GOD」を入れることで強そうなイメージとゴジラが唯一無二の存在であるということを欧米人に認識してもらうという意図があったためと言われている。ただし「GOD」にまつわる慣例に倣って「ゴッドジラ」ではなく「ガッドジラ」若しくは本記事のよみがなにも書かれている「ガッズィーラ」といった発音になってしまっている。
なおモンスターバースシリーズ(後述)に出演した渡辺謙は作中で“ガッズィーラ(Godzilla)”という英語発音ではなくあえて“ゴジラ(Gojira)”という日本語の発音に拘っている。「リテイクが出たら仕方ない」と思っていたが、完成した映画では渡辺の日本語発音版がそのまま使用されることになった(ちなみに、本作のインタビューで判明したが、渡辺謙はガメラ派らしい)。
アメリカのファンが劇場でこの日本語発音の“ゴジラ”に熱狂し喝采を送ったのを見た渡辺は「嬉しかったですね」と述べている。
アメコミ版におけるタイトル
GODZILLA KING OF THE MONSTERS
恐るべき凶悪怪獣としてアメリカの街を破壊し、ついにはあのアベンジャーズと対戦するというもの。今にしてみればかなりカオスかつ夢の競演な展開。
そこからレッドローニンなる巨大ロボが造られることとなる。
他にもファンタスティックフォーと対決した事もあった。
トランスフォーマーでも第3話でニック・フューリーがゴジラの存在をほのめかしている。
なお、契約が切れた後もリヴァイアサンという似た怪獣が出ていたとか(参照)。
その他
出版の権利が移行され、ダークホース社やIDW社などからいくつかタイトルが出された。
ちなみにダークホース社版は「vs大魔神!?」、さらには「巨大化したバスケットボール選手との対戦」といった物語も。
IDWでは『ゴジラ in Hell』というアメコミのシリーズもあり、内容はなんとゴジラが地獄に落ちてそこで亡者や極卒などと戦い地獄を脱出するというものである。
『ルーラーズ・オブ・アース』や『ハーフセンチュリー・ウォー』、『ゴジラ in Hell』などは邦訳もされている。
ハリウッド版におけるタイトル
ハリウッドではこれまでに2作『GODZILLA』と題した作品が作られている。
1998年版
(デルガドザウルスも参照。)
人類に打つ手はない
Size Does Matter.
最初に制作されたアメリカ版ゴジラ。製作したのはトライスター・ピクチャーズ。
監督は『インデペンデンス・デイ』や『スターゲイト』などで大迫力のSFアクションを描いた、ローランド・エメリッヒが務めた。
本来は『vsメカゴジラ』の後に製作される予定だったが、トラブルによる製作の遅れにより、平成ゴジラシリーズ終了後に公開された(東宝は『VSメカゴジラ』を最後にゴジラ製作を休止し、代わりにハリウッド版の製作を許可するつもりでいたのだが、トライスター側がゴジラに関する権利の一切を永久的に買い付け、東宝が以降ゴジラを製作出来なくなる形の契約を提示してきたためにこじれる事となった。最終的にはトライスター側の希望は却下されている)。
大都市ニューヨークの摩天楼を舞台に、ゴジラという名前の付けられた怪獣と人類との決戦が描かれている。
本作において“ゴジラ”と呼称されている怪獣は、イグアナが核実験による放射能の影響で変異した生物という設定(出典不明。本編でもノベライズでもとくにそんな説明はないので中傷のための捏造の可能性が高い。ただ、映画冒頭部の核実験場面でイグアナがしきりに描かれており、素直に解釈すればそうなる)。
魚(マグロ)を好む、口から熱線などは吐かず(その代わり炎に吐息を吐きかけて威力と規模を増大させる“パワーブレス”という技を持つ)驚異的な運動能力を駆使して暴れ回る、ミサイルや銃器による攻撃でダメージを受ける(最終的に戦闘機F/A-18からハープーンミサイルを撃ち込まれて絶命する)など、日本版のゴジラと比べて生物として比較的真っ当な描写が為されている(ただ、営巣して単為生殖で増えるなどSF生物学しているシーンも多い)。
ちなみに、本作においてゴジラという名前は、この怪獣に襲われた日本人漁師が原作シリーズの大戸島の住民のように「ゴジラ…ゴジラ…」とうなされていた事から名付けられている。
1998年版ストーリー
南太平洋上で日本の漁船が沈没した。唯一生還した日本の老人は謎の保険会社派遣員のフィリップに「ゴジラ」という謎の言葉を呟くばかりで沈没原因は不明だった。
一方、チェルノブイリで放射能による生物の突然変異の研究をしていた学者のニックは米国政府の要請で、とある調査チームに参加させられる。
何か巨大な生物が船を沈めながらニューヨークへと向かっているというのだった。
誰もが怪物の正体をつかみきれないまま、とうとう巨大生物がニューヨークに出現し、街は大混乱に。
フィリップ、ニック、その元恋人でジャーナリストのオードリー、そして米軍は巨大生物の恐るべき力に翻弄されながらも何とかその謎を解き、倒そうと奔走する。
キャスト
キャラクター名 | 演者 | 吹き替え(劇場公開・ソフト版 / TV版) |
---|---|---|
ニック・タトプロス | マシュー・ブロデリック | 森川智之 / 高木渉 |
オードリー・ティモンズ | マリア・ピティロ | 勝生真沙子 / 深見梨加 |
ビクター・パロッティ | ハンク・アザリア | 堀内賢雄 / 同じ |
フィリップ・ローシェ | ジャン・レノ | 菅生隆之 / 銀河万丈 |
アレキサンダー・ヒックス | ケヴィン・ダン | 小山武宏 / 谷口節 |
オリバー・オニール | ダグ・サヴァント | 梅津秀行 / 内田直哉 |
エルシー・チャップマン | ヴィッキー・ルイス | 野沢由香里 / 小山茉美 |
ルーシー・パロッティ | アラベラ・フィールド | 松本梨香 / 雨蘭咲木子 |
チャールズ・ケイマン | ハリー・シアラー | 牛山茂 / 野島昭生 |
エバート市長 | マイケル・ラーナー | 青野武 / 石田太郎 |
メンデル・クレイブン | マルコム・ダネア | 福田信昭 / 塩屋浩三 |
評価
当時、『ジュラシック・パーク』などの公開により、CGを用いた新世代のVFXが世界に衝撃を与えていた。そんな中でのハリウッド版ゴジラ製作発表当初は当然大いに期待されたが、95年公開のはずが3年もずれ込むなど、製作のトラブルが目立った。
その後ようやく完成した最初の予告で明らかにそれまでのゴジラとは違う超巨大な恐竜らしき足がビルを突き破った辺りから、一部のゴジラはファンは不信感を抱き始めた。
そして蓋を開けてみれば、そこにいたのは“今時のティラノサウルスっぽいフォルム”の“放射熱線を吐かない”“たくさん出てくるベビーゴジラ”“ミサイルを数発喰らっただけで死んでしまう”といった日本のオリジナルとは悉く乖離した設定で作られた「ゴジラの名を借りただけの巨大イグアナ」、あるいは「『ゴジラ』じゃなくて『原子怪獣現わる』のリメイク」との評が大半を占める怪獣であり、到底ゴジラとして受け入れられる代物ではなかった。
公開当時、日本版ゴジラのスーツアクターであった中島春雄と薩摩剣八郎は本作を一緒に観ており、上映終了後の「これはゴジラじゃない」とする旨の発言が『朝日新聞』で伝えられたり、俳優の土屋嘉男(昭和ゴジラシリーズの常連俳優)が、アメリカでのファンイベントの講演でこの映画について質問された際に「あれはただのイグアナだ!」とコメントして満場の喝采を浴びるなど、日本版ゴジラ関係者の間では本作は受け入れられていない。
また、熱烈なゴジラファンでもある映画監督のジョン・カーペンターも本作に対して「最低だ!」というコメントを寄せており、後述する2014年版の監督を務めたギャレス・エドワーズも、講演の際に本作について質問されたところ「あれは本当のゴジラ映画ではない」と断言している。さらに自身もゴジラファンであるSF映画の巨匠・スティーブン・スピルバーグが、エメリッヒに対する激怒を隠さずに「私はこの映画を生涯見ることはないだろう」とぶった切ったことでも有名である。
良い点であるが、エメリッヒの迫力満点の演出手腕は今作でも遺憾なく発揮されており、ゴジラ映画ではなくただのモンスターパニック映画として見ればそれなりに面白いとの評価は得られいる。配給収入(当時でいう「興行収入」)も日本国内だけで30億円(現在でいう51億)、全世界合計で約400億円(当時のゴジラ映画歴代最高興収)となり、一応は興行的に成功を収めている。また日本では360万人の動員記録であった。
また日本ではゴールデンタイムに何度もテレビで放送されていた。
しかしその一方で作品自体はその年の「ゴールデンラズベリー賞」の最低リメイク賞にまで選ばれる結果となり、遂には『GINO【ジーノ】:Godzilla Is Name Only』≒「ゴジラとは名ばかりのパチモン(意訳)」という不名誉なあだ名を頂戴することとなってしまった。
これは裏を返せばゴジラでなくともいいということでもあったわけだが、こうした評価はこの時点で世界中の人々が、既にオリジナルのゴジラを知り過ぎていたという事を証明する事にも繋がっているという見方もある。
後作への影響
続編の製作も示唆されていたが、上記の大不評故か結局実現することはなかった。ただ、それとは別に『ゴジラ・ザ・シリーズ』という続編アニメが製作されている。唯一生き残ったゴジラの若い個体が主人公で熱線を吐く、モンスターと戦う等、本家ゴジラに似た内容となっている。
この映画の公開後、国内外で「正真正銘の日本のゴジラ作品が観たい」という気運が強まり、結果、ミレニアムシリーズが製作されることになった。
1999年に『ゴジラ2000 ミレニアム』が公開されるものの200万人の動員数であり『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』において「以前ニューヨークに巨大な生物が出現し、ゴジラと名付けられているが日本の学者は同類とは認めていない」という台詞が登場しゴジラファンの大喝采を生んだが、240万人しか人が入らなかった。『ファイナルウォーズ』でジラという名前にでハリウッド版ゴジラが登場するもゴジラに秒殺され、それを見ていたX星人の統制官から「やっぱりマグロ食ってるようなのはダメだな」と駄目出しするも104万人の動員しか生まなかった。1998年に公開された本作と比べると雲泥の差である。また長年に渡りゴジラ映画の海上・ラストシーン等に使われてきた東宝大プールは老朽化によって本作の撮影をもって取り壊しが決定し、実写ゴジラ映画はシン・ゴジラを除いて制作されることはなかった。以前トライスター側がゴジラに関する権利の一切を永久的に買い付け、東宝が以降ゴジラを製作出来なくなる形の契約を提示してきたが結果的にそのほうがよかったのかもしれない。
余談であるが、ミサイル攻撃はゴジラに有効である設定は国産ゴジラシリーズに受け継がれゴジラ2000 ミレニアムではフルメタルミサイルで怯むゴジラ、
ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃では潜水艦がゴジラの体内からミサイルを発射した結果ゴジラを撃退。シン・ゴジラではバンカーバスターでゴジラが重傷を負っている。(但しエメリッヒ版ではゴジラに対艦ミサイルを発射したが、国産ゴジラでは貫通ミサイルを用いている。)
また、今作でベビーゴジラがたくさん出てくる演出はシンゴジラのゴジラの尻尾から多数の分裂体が発生する演出に影響を与えたと思われる。
2014年版(後述)の監督を務めたギャレス・エドワーズ氏も撮影のためにカナダに入国した際、入国管理官にゴジラの撮影のために来たことを告げると「ぜったいに変なもんつくるんじゃないぞ!」と言われ、その後20分間に渡って入国管理官らとどうしたらより良いゴジラ映画を作れるかを真剣に語り合ったと話している。明言はしていないが入国管理官の述べた「変なもん」というのは十中八九本作を指しているとみて間違いないだろう。
- なお、本来なら制作される予定だった続編のプロットは簡易版が公開されており、一部設定や途中まで翻訳されたものは、ここで公開されている。
- 「続編の制作が決定した」という旨のCMが流れたり、「2首のキングギドラが出る」などの話もあったらしい。
製作陣の交代について
ちなみに、製作遅延の背景には監督交代劇があった。
当初の監督は熱狂的ゴジラファンとして有名なヤン・デ・ボン(『ダイ・ハード』の撮影監督、『スピード』の監督など)であった。彼の予定ではゴジラの姿は従来どおりで、グリフォンという新たなオリジナル怪獣との戦いを描くはずだったのだが彼の理想通りのゴジラを作ろうとすると予算がかかり過ぎるという理由で降板させられたのである。
彼を監督とした製作は結構進んでいたらしく、高倉健を日本から呼んでスクリーンテストまでしていた。
降板させられた後、彼は巨大竜巻の脅威を描くパニック映画『ツイスター』の監督を務め、ゴジラの代わりに竜巻を暴れさせることで、今作への思いの幾分かを発散している(同作での竜巻の描写は彼が考えていたゴジラの演出法ほぼそのままであったという)。
ヤン・デ・ボンの他にはやはりゴジラシリーズに思い入れを持つティム・バートン、ジョン・カーペンター、ジェームズ・キャメロン、スティーブン・スピルバーグなどが候補として上がっていた。
そんな彼らとは対照的にローランド・エメリッヒには(迫力ある破壊描写などにおいては高い評価と実績があったものの)ゴジラには全くと言っていいほど思い入れが無く、今作については「第1作のスタッフが現代のVFX技術を持っていた場合、どのような映画を作ったか」という構想の下、従来のシリーズの伝統に則ることは考えずに作ったという。
その姿勢の是非自体は問えるものではないが、功を奏したかどうかは上記の作品評価が如実に物語っているといえる。
その後、十年以上の時を経て本作のプロデューサーが「本当は『原子怪獣現わる』のリメイクがやりたかった」という旨を暴露しており、曰く「それだと予算が取れなかったからネームバリューを借りた」とファンが聞けば殴り込み待ったなしの事情を打ち明けていたりする。
が、この発言は日本の雑誌にしか載ってない発言で、英語関連の記事でそんな発言をしたという記録が見当たらないためデマ説が囁かれている。そもそも、プロデューサーのディーン・デブリンは最初に企画が立ち上がった段階では関わってない。もし本当に『原子怪獣』のリメイクが目的なのであればヤン・デ・ボン版のゴジラが日本版通りのデザインになるはずがない。
また、エメリッヒ監督も隕石衝突モノの映画の製作に意欲を燃やしていた時期に、映画会社から唐突に白羽の矢を立てられた上、上層部や東宝側の軋轢の板挟みに遭い、モチベーションの維持に苦労したと後年語っている。
一方で彼は別の映画のコメンタリーにて「前作(GODZILLA)がファンの期待を裏切る結果になったことを残念に思う。」ともコメントしていた。
その他
本作が不評だったことで、2005年のピーター・ジャクソン版『キング・コング』や『クローバーフィールド』の製作に支障をきたしたという話が出回っているがまったくのデマである。
05年版コングが企画段階で一度中断したのは事実であるが、ユニバーサル・スタジオがストップをかけたのは1997年のことで98年公開の『GODZILLA』の評価はまったく関係ない。ジャクソン監督は『ロード・オブ・ザ・リング』三部作製作のために一旦抜け、三部作完成後すぐにキング・コングの製作に取り掛かっている(ニュージーランドヘラルド「The 'Rings' movies, a potted history」より)。
『クローバーフィールド』の場合、そもそもJ・J・エイブラムスは2006年に『ミッションインポッシブルIII』のプレミアで来日した際に、ゴジラのフィギュアを見て話を思いついたので、すでに05年版コングが公開されているのに製作に支障が出るはずがない。映画の公開は2008年で企画から公開まで2年ほど経っているがアメリカの映画製作期間としては普通の部類なので支障は一切発生していない。
それから16年後……
2014年版
The world ends, Godzilla begins. (世界が終わる、ゴジラが目覚める。)
It can't be stopped. (あきらめろ こいつには勝てない)
正式なタイトルは“GODZILLA ゴジラ”(日本語の表記が入る)。
2010年、アメリカのレジェンダリー・ピクチャーズとワーナーブラザーズが共同出資してハリウッドでゴジラの新作を製作することが発表された。
レジェンダリーとワーナーのコンビはこれまでに『ダークナイト・トリロジー』や『マン・オブ・スティール』、『ハングオーバー!』シリーズ、そしてあの『パシフィック・リム』等を制作し、アメリカ国内外から高い評価を得ている。
当初は2012年に公開する予定だったが、「大人の事情」により実現する事が出来なかった。そこで生誕60周年となる2014年に公開するという形に変更された。
監督はイギリス出身で本作でなんと2度目の映画監督を務める事になった、ギャレス・エドワーズ。本作公開当時は39歳という若手ながら、2010年公開の低予算の怪獣映画『モンスターズ/地球外生命体』にて一気に高い評価と注目を浴びた気鋭である。また、彼はエメリッヒと違って根っからのゴジラファンでもある。
脚本としては『魔法使いの弟子』を担当したマックス・ボレンスタインや、『ショーシャンクの空に』『ミスト』を担当したフランク・ダラボンなどが参加している。
また、日本人2名が製作総指揮として参加している。ただしその面子の1人はゴジラ映画の怪作といわれる『ゴジラ対ヘドラ』の監督を務めた坂野義光(IMAX版『ゴジラ3D』の企画などゴジラ作品の復活のために活動していた)。もう1人は奥平謙二(今作以外には『Pups』という映画を10年以上前に製作しているくらいで、その活動経歴が全く不明。少なくとも簡単に言える事はほとんど情報がない謎の人物であるという事)といささか馴染みの薄いものとなっており、公開前の日本では不安と戸惑いの声もあった。
主演は『キック・アス』のアーロン・テイラー=ジョンソン。日本を代表する俳優の1人である渡辺謙も劇中で最初に「GODZILLA」と言う固有名詞を発する際に「ゴジラ」と言う芹沢猪四郎博士役で出演している。なお、『54年版ゴジラ』で主演を務めた宝田明も入国管理官役で撮影に参加したものの出演シーンは全てカットされている(宣伝されていたにもかかわらずカットされた理由は現在のところ不明)。
監督曰く「オリジナルを参考にシリアスな作品を作る」「SF要素を排し、徹底して現実的な路線で制作している」とのこと。また、その後の発表によると今作におけるゴジラは「核の申し子」ではなく、「自然が生み出した驚異」「“別の現代的な問題”を踏まえた存在」として描かれる予定であり、さらにゴジラの他に2体の新怪獣が登場するということが報じられた。
なお、前回のゴジラ作品がとんでもないことになってしまった反省からか、東宝は「これまでの『ゴジラ』映画のレガシーを受け継ぐ作品にして欲しい」と製作陣に釘を刺したらしい。
それに答えてギャレス監督は「日本のファンに受け入れられなきゃゴジラじゃない」として東宝が要請する前に自ら出向いて作品のチェックをしてもらうなどの徹底振りを見せたという。
撮影は2013年3月18日から同年6月にかけて行われた(ただ、出演者の1人である渡辺によるとクランクアップ後も再撮影が続けられたとのこと)。
なお、渡辺が公開後に明かした所によると撮影を終えて映像を全て確認した結果、なんと4時間を超えるほどの膨大な内容になってしまったため、登場人物の背景や原爆について語られるシーンなどが大幅にカットされてしまった模様。上記の宝田明氏の出演シーンカットもこれが原因ではないかとする見方もある。
事前情報
2012年7月、アメリカ国内のイベント「コミコン」にて1分強のトレーラー映像が公開された。ちなみにこの映像は事前の告知なしに突然流されたため、会場を訪れていた人たちは誰もこの映像を録画することができなかった。そのため、今のところ(トレーラー映像の一部を撮影した画像は存在するものの)この映像そのものを視聴することは不可能となっている。その当時はこうした事もあり、新生ゴジラのビジュアルは「日本版と極めて近いデザインであった」ということ以外殆どが不明であった。
翌・2013年のコミコンにて2つ目のトレーラー映像や本作のポスター、そして新生ゴジラのデザインがようやく公開された。首と尾が太くなり、全体的にどっしりとした感じになったものの、デザインは兼ねてからの情報通り、日本版のゴジラのそれを踏襲したものになっており、「また今回も違ったデザインだったらどうしよう」という一抹の不安を抱いていた世界中のファンたちをとりあえず安堵させることになった。また、鳴き声も(アレンジは加えられているが)日本のゴジラに近いものになっている。
なお、コミコンの後も映画に関する情報の詳細は徹底的に秘匿されており、新しい予告編が公開される毎にゴジラの姿やストーリーが少しずつ明らかになっていく……という方法が取られていた(なお、新怪獣であるMUTOの姿は予告編では断片的にしか映されず、詳細な全身像は映画公開まで徹底的に秘匿されていた)。実際、出演者の1人が「今作の描き方はスピルバーグの『ジョーズ』に似ていてゴジラの姿を大っぴらにさらけ出すのではなく、その存在感を暗示してほのめかすことで観客が恐怖を覚えるような演出がされている」と答えている。
そして(説明する必要はないと思うが)本作は2006年のあの方の他界や、2011年のあの日以降初めて公開される事になる、新作ゴジラ映画でもある。
そして公開へ…
公開はゴジラ生誕60周年となる2014年に決定。
アメリカではワーナーブラザーズの提供で5月16日より公開が開始された。
初日だけで3850万ドル(約39億円)の興行収入を記録し、世界オープニング興行収入も1億9621万ドル(約196億円)で第1位と快調な滑り出しを見せた。
日本では東宝の配給により7月25日より公開(※1)。日本だけ公開が遅れたのは公開初日を夏休みに合わせたためであるが、日本のファンからは「ゴジラの本家本元である日本での公開を2か月以上も遅らせるのはいかがなものか」といった批判の声も多かった(※2)。日本では公開初日の7月25日~27日の3日間だけで46万人近くの観客動員数と6億8000万円以上の興行収入を記録し、全国映画動員ランキングで初登場1位を飾った。なお、観客の男女比は84:16と男性が圧倒的に多く、年代別にみると幼少期にゴジラに親しんだ40代以上の往年のゴジラファンが多かった模様である。
最終的な興行収入は日本国内だけでも32億円、全世界合計で570億円となり、興行的に大成功を収めた。そして観客動員数は日本国内で218万人を記録。残念ながら、初期の昭和ゴジラシリーズや平成ゴジラシリーズ、ミレニアムシリーズ最大のヒットである『大怪獣総攻撃』や2番目のヒット作である『ゴジラ2000ミレニアム』には及ばなかったが、こちらもゴジラの新作としては十分及第点と言える成績を残しただけでなく、全世界的に98年版を上回る大ヒットを記録する事となった。この大ヒットにより、同年の第38回日本アカデミー賞にて優秀外国映画賞を受賞している。
※1:偶然にもこの日は54年版『ゴジラ』で芹沢大助役を演じた平田昭彦の命日でもある。
※2:ただ、洋画全体を見渡せば、日本での公開が異様に遅いのはそこまで珍しい事ではなく、平均的に1年はかかる(たとえば、『GODZILLA』と同年に公開され、一世を風靡した『アナと雪の女王』の日本における公開日はアメリカ本国での公開から4ヶ月以上遅れている)。このため、本作のように2か月というのは比較的早い方で非常にまれなケースである。
2014版ストーリー
1999年、フィリピンで芹沢猪四郎博士は謎の巨大生物の化石を発見した。同じ頃、核物理研究者のジョー・ブロディは日本の雀路羅市(ジャンジラ市)の原発に勤めていたが、謎の地震が起こり原発は崩壊。共に働いていた妻のサンドラ・ブロディを失ってしまう。
十数年後、ジョーの息子で軍人のフォード・ブロディは日本の警察に捕まったジョーに会いに日本へ行くが、封鎖された原発で2人は謎の巨大生物の存在を知る。その謎の生物は姿を現して東へ向け移動。ハワイに出現し、アメリカ西海岸へと向かっていた。そればかりか、“あいつ”までも謎の生物を追うかのように出現し、謎の生物の2体目まで現れる。
フォードは芹沢博士と出会い、協力して対策に臨むも事態は恐ろしい方向へ動いていた。
謎の生物と“あいつ”の正体と目的とは? 芹沢博士の知る“あいつ”の秘密とは?
ついに2つの生物はサンフランシスコで激突する…。
キャスト
キャラクター名 | 演者 | 吹き替え |
---|---|---|
フォード・ブロディ大尉 | アーロン・テイラー=ジョンソン(※3) / CJ アダムス(幼少)) | 小松史法 / 青木柚(幼少期) |
エル・ブロディ | エリザベス・オルセン(※3) | 波瑠 |
芹沢猪四郎博士 | 渡辺謙 | 渡辺謙 |
ジョー・ブロディ | ブライアン・クランストン | 原康義 |
サンドラ・ブロディ | ジュリエット・ビノシュ | 山像かおり |
ウィリアム・ステンズ提督 | デヴィッド・ストラザーン | 佐々木勝彦(※4) |
ヴィヴィアン・グラハム博士 | サリー・ホーキンス | 高橋理恵子 |
サム・ブロディ | カーソン・ボルド | 櫻井優輝 |
トレ・モラレス軍曹 | ヴィクター・ラサック | 櫻井トオル |
ラッセル・ハンプトン大佐 | リチャード・T・ジョーンズ | 乃村健次 |
ヘイロー降下監督官 | ジャレッド・ケッソ | 阪口周平 |
入国審査官 | 宝田明 | |
ゴジラ | アンディ・サーキス(モーションアクター)(※5:ノンクレジット) | ― |
※3 本作で夫婦役で共演したアーロン・テイラー=ジョンソンとエリザベス・オルセンは翌年公開の『アベンジャーズ2』では姉弟役で再度共演している。
※4 吹き替えを担当した佐々木勝彦は『ゴジラ対メガロ』で主演の伊吹吾郎(ジェットジャガーの製作者)役や『メカゴジラの逆襲』で同じく主演の一之瀬明(海洋学者)役などを務め、以後も何作か出演した。また、祖父の佐々木孝丸は『怪獣大戦争』、父の千秋実は『ゴジラの逆襲』とそれぞれ親子三代でシリーズ出演経験がある。
※5 ゴジラ役の「アンディ・サーキス」(モーションアクター)がノンクレジットなのは当初ゴジラは全て3DCGだけで描くつもりだったらしいが、監督が途中で「ゴジラは動物として描いてはいけない」とこれではだめだという事に気付いたのだ。そのため、モーションアクターとして急遽サーキスが選ばれたのだ(この時は彼の方もちょうどスケジュールが空いていたので約20ショットを撮影する形で参加する事が出来た)が、それにも係わらず、クレジットがサーキスが参加する前の状態のまま使用されたためである。
- アンディは、これでキングコングとゴジラの両方を演じたことになる。
評価
前回のハリウッド版が色々とアレだった反動などもあり、作品に対する批評は概ね良好。
「あきらめろ こいつには勝てない」というキャッチコピーの通り、前作ではミサイルで撃退した米軍も今回はゴジラにまったく歯が立たないと言う描かれ方をしており、SFフィクションものでここまで米軍が役立たずに描かれる事が稀である事から、地球の守護神的立場で描かれるゴジラの無敵っぷりが良く解るようになっている。
しかし批評も少なくなく、公開直後から『エコノミスト』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』、『IGN』などを始めとする様々な媒体での批判が掲載されており、「ゴジラの出番が少ないし、ゴジラがいなくても物語が成り立ってしまう」「日本のゴジラに込められていた反核のメッセージが弱められ、むしろ核兵器の肯定をしている」「(唐突な人類のゴジラへの称賛を含め) 3.11や第五福竜丸事件への諷刺とも捉えられかねない表現がある」「MUTOの生態とゴジラの関係も合わせてどこかで見たような展開となっている(当事者も類似点を指摘している)」「怪獣および人間のキャラクター性や設定、作り手の思想などが噛み合っておらず違和感を覚える部分がある」「全体的に暗くて展開がよくわからない」などといった声も出ている。また、「ゴジラによる脅威」を謳った宣伝文句 (国内外の両方で) と実際の内容の乖離をよく思わない声もある。
また、出演したブライアン・クランストン自身も作品の出来映えを認めていないことも複数の媒体で紹介されている (参照)。さらに、シネマサカーことAVGNも2016年に「こんなこと言いたくないけど、見直すとぶっちゃけエメゴジの方が面白い」と再レビューしている。
米国での動員の傾向を見ると初週がトップスピードで行ったのだが、次週以降は激減しており、その後も一気にランクダウンしていた。これは日本の興業でも同様であった。また、「Yahoo!映画」におけるレビューがステマではないかと疑う声も少なくなかった。
- この「ゴジラの出番が殆どない」という批判に対してギャレス監督は「誰もが認め絶賛する『ジョーズ』にはサメが6分しか出てこない。もっと観たい、と思わせた方がいいと思うんですよ。料理と一緒で美味しいものでも食べ過ぎたら具合が悪くなりますよね。どうせならおいしい上にまた食べたいと思わせたいじゃないですか」というコメントを残している。この事からギャレス監督は最初からこの評価を狙っていたという可能性がある。
続編企画
本作の世界的な大ヒットを受け、公開3日目にして続編の制作が決定した。
また、これとは別にレジェンダリーはキングコングの映画化権も獲得し、さらにワーナーブラザーズが2017年公開の『コング:スカル・アイランド(邦題:キングコング 髑髏島の巨神)』の提供先をレジェンリー・ピクチャーズに変更したことを伝え、その後に同社はゴジラとコング両作の世界観を“モンスターバース”としてつなげる構想があるということを公表、2015年10月14日にはその世界観の中でのゴジラとキングコングの対決を描くという『GODZILLA VS KONG(仮)』の制作も予定していることが発表された。
ちなみに一時期、レジェンダリーは『パシフィック・リム』シリーズの3作目にゴジラをゲスト出演させることを計画しているらしいとの情報も流れていたが、会社側はそのことを否定している。
日本・東宝における新たな動き
厳密には続編企画ではないが、東宝はこのレジェンダリー版の製作の始まった2013年頃よりゴジラシリーズ復活のための企画を検討していたとし、その後同作の世界的な大ヒットを受けて東宝は本格的な国産シリーズの再開を決定。そして2014年12月8日に『ゴジラ FINAL WARS』以来12年ぶりとなる新たな日本オリジナルのゴジラ映画を製作する事を発表し、それと同時期には国産では初とも言える“アニメ映画化”の企画も進められたという。シン・ゴジラは動員数569万人という例を見ない大ヒットを記録したものの、その後実写ゴジラ映画は日本では作られず、そしてアニゴジは不評でありゴジラシリーズは衰退してしまった。東宝大プールの損失のダメージは相当に大きかったと思われる。
関連動画
Official Teasaer Trailer
Official Main Trailer
日本版予告動画
GODZILLA:KING OF THE MONSTERS
上述した2014年版の続編作品。
詳細はキング・オブ・モンスターズを参照。
アニメ映画『GODZILLA』
2017年から2018年にかけて日本で展開されたアニメーション映画シリーズ。
詳細はGODZILLA(アニメ映画)を参照。