メアリー・シェリーによる怪奇小説
概要
フランケンシュタインと言われて、われわれ日本人が真っ先に思い浮かべるのはツギハギだらけの巨漢の姿だろう。しかしながら、この男には名前が無い。
フランケンシュタインというのは怪物の名前ではなく、本来は彼を生み出した科学者「ヴィクター・フランケンシュタイン」を指す。この製造者は、創り出した人造人間に名を付けることが無かった(作中ではただ単にモンスターと呼ばれている)ため、後の世において、そのまんま「フランケンシュタインの怪物」と呼ばれている。
また、製造者のフランケンシュタインも、科学者のイメージから「博士」とされることが多いが、原典では一介の学生であり、博士号は持っていなかった。あまりに有名であるが故にいろんな作品で子引き、孫引きが繰り返されるうちに誤解が多くなった。
脳天にねじが突き刺さり黒いシャツを羽織った巨漢……と言う姿は、1931年のアメリカ映画『フランケンシュタイン』でボリス・カーロフの演じた怪物がモデルになっている。
腕力に加えて知能も高く、作中ではドイツ語とフランス語を独学で学び、終盤では英語も話せるようになっている。
また感情や感性も豊かで、彼が旅の途中で様々なものに触れ感情を知ってゆく様は正に人間の成長そのものであり、簡単に「怪物」と蔑むのも憚られる程に内面は繊細。
前記のように名前のない怪物ではあるが、本人は生みの親であるヴィクターに対し、ある種の皮肉を込めて「あなたの労働者アダム」と名乗っている。
来歴
大学生ヴィクター・フランケンシュタインは、墓場から死体を盗み出して繋ぎ合わせ、遂に長年の夢だった人造人間を作り出した。しかしその醜い外見に絶望したヴィクターには「怪物から逃げたい」という気持ちが芽生え、怪物を見捨ててスイスに逃走。
残された怪物は次第に知恵を付けていき、ヴィクターを追いかけてスイスに向かい、「こんな醜いオレには恋人などできるわけもない、オレの伴侶を作ってくれ」と懇願する。
しかし、「もしこいつに生殖能力が有ったら世界は怪物だらけ」になると危惧したヴィクターはこれを拒否して逃走。生みの親から「お前など子ではない」と言われた怪物は、怒りに任せヴィクターの家族や恋人をその怪力で殺してしまう。
ヴィクターは恐怖したまま北極海まで逃げるが、無理が祟って船上で死んでしまった。
彼が死んでしまった事を知った怪物は、その遺体を引き取った北極探検隊の隊長に「やり残すことはない」と告げると、不死身の肉体を滅する為に北極点へ向かい、自らの身体を火中に投じるのだった。
二次創作
『怪物くん』『ゲゲゲの鬼太郎』などの作品では、生命力が高くパワーはあるもののやや鈍重な怪物とされることが多い。
また日本の巨大ロボット物の元祖である『鉄人28号』について作者の横山光輝は、映画版のフランケンシュタインの怪物にヒントを得たと後に語っている。なお『鉄人28号』では、悪役キャラとして「不乱拳博士」が登場している。
ドイツではキングコングや仮面ライダー等、創作上の「怪力を持った人外」はみな「フランケンシュタイン(の怪物)」と称される事が多いようだ。
『エンバーミング』においては、人造人間と書いてフランケンシュタインと読ませ、例の怪物と同様の方法で造られる人造人間たちの総称となっている。
また、例の怪物は「ザ・ワン」と呼称され、最初の人造人間という位置づけになっている。
『マジック:ザ・ギャザリング』の『フランケンシュタイン』など「ゴシックホラー」をモチーフにした世界、イニストラード次元においては、「フランケンシュタインの怪物」をモチーフとした死体から造られる生ける屍「スカーブ」を製作する技術が存在し、スカーブがゾンビの一種としてカード化されている。
モチーフとしたキャラクター
正式名が長いためか、「フランケン」やその捩りが多く、「フランケンシュタイン」をそのまま使うものは少数派。
原典のような知的(?)な所は再現されずパワーファイターなキャラ付けが多い。また某作品の影響かもう二人とセットでいることも多い。
なお一般にイメージされる、頭にネジの刺さった黒シャツの男というビジュアルの「本家本元」は、ユニバーサル社が権利を持っている。だが、名前自体は原作からの流用であり、その原作の著作権も消滅している。また、単なる「つぎはぎだらけの巨漢」というビジュアルは事実上パブリックドメインである。
スーパー戦隊シリーズ
仮面ライダー
その他特撮
- フランケン(変身忍者嵐)
- フランゲン(アクマイザー3)
- 改造巨人フランケンシュタイン(フランケンシュタイン対地底怪獣)
- サンダ/ガイラ(フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ)
- 人造恐獣フランケン(恐竜戦隊コセイドン)
- フリーケンシュタイン(スモール・ソルジャーズ)
漫画
- フランケン(怪物くん)
- フランケン/ヴィクター・フランケンシュタイン(ゲゲゲの鬼太郎)
- 人造人間8号/ハッチャン(ドラゴンボール)
- ザ・ワン(エンバーミング)
- 人造人間モンスター(鉄人28号)※にやけ顔ロボではありません。
- フランケン・シュタイン(ソウルイーター)※怪物と科学者両方のデザインが取り入れられている
- チェホ(魔神のガルド!)
- 斑木ふらん(フランケン・ふらん)
ゲーム
- フランケン(悪魔城ドラキュラ)
- ビクトル・フォン・ゲルデンハイム(ヴァンパイアシリーズ)
- ダストフランケン/イゴール(メタルマックスシリーズ)
- フランキー(真・女神転生Ⅱ)
- バルナバ(FINAL FANTASY Ⅳ)
- メガボーグ、エビルフランケン(ドラゴンクエストⅥ)
- フランケンシュタイン(Fate/Apocrypha)
- こづれフランケン(ぷよぷよ)
- ガランゴルム(モンスターハンター)
その他
フランケンっぽいもの
- イゴール(メタルマックス)
- スパーキー(フランケンウィニー)
- フランドル(怪物王女)
- フランケンシュタイン(手塚スターシステム)
- フランケン(鉄腕アトム)※上記とは無関係。AIの呼称で暴走した巨人ロボット
- フランクリン=ボルドー(HUNTER×HUNTER)
- フランクリン(ガイキングLOD)
- 稲葉先生(三丁目の夕日)
- 腐乱剣(SWOT)
- 収穫祭の従者 ドズラ(ファイアーエムブレムヒーローズ)※2019年のハロウィンイベントの仮装。なお、同イベントにおける主人のラーチェルは科学者の仮装をしている。二人の原典作品は「ファイアーエムブレム聖魔の光石」。
- ガンダムボルトクラッシュ(機動武闘伝Gガンダム)
- エンダーク(スーパーロボット大戦K)
- フランケルゲ(超人バロム・1)※モチーフはフナムシ他、磯の生物
- フランケンザウルス(特捜戦隊デカレンジャー)
余談
家族や恋人が殺された以降のヴィクターや怪物の行動は、抄訳家によっては微妙に異なり、ヴィクターは『大切な人達を殺された復讐の為に、怪物を追ったが無理が祟って死亡』した。
怪物の場合、最期が『ヴィクターの死骸と共に、自らを北極海に沈めた』ともされる。
関連タグ
ハロウィン:定番の仮装。
ボリス・カーロフ、ロバート・デ・ニーロ:映画作品でフランケンシュタインの怪物を演じた俳優達。
アイ・フランケンシュタイン:フランケンシュタインの怪物が成り行きでヒーローとして活躍する映画。