元々の意味
スラムダンクとは、バスケットボールにおけるダンクシュートのひとつの種類。
ゴールリングに直接両手でボールを叩き入れることをダンクシュートと呼ぶが、その中でも、周りに相手チームのディフェンスがいない状態で、確実に得点できるダンクシュートの際にスラムダンクと呼ばれる。
(スポーツ用語辞典・S-Wordsから引用)
概要
井上雄彦による漫画、週刊少年ジャンプにて1990年42号から1996年27号にて連載された。正式名称は『SLAM DUNK』。
単行本全31巻、完全版全24巻。略称は「スラダン」。
テレビアニメ化やアニメ映画化もなされている。詳細は後述。
週刊少年ジャンプにおいて『ドラゴンボール』『幽☆遊☆白書』と並ぶ3大人気作の一角として、1990年代半ばのジャンプ黄金期を築き上げた。
ちなみに少年ジャンプは、当時のどんな人気漫画であったとしても最終回を巻頭カラーとして持ってこないことで有名であり、最終回で巻頭カラーを迎えられたのは2021年現在のところ、本作を含めて四作品しかない。
その中でも本作は、車田正美の『リングにかけろ』と、鳥山明の『ドラゴンボール』に続き巻頭カラーを飾った史上3作目の作品にして、同時にジャンプの中で初めて表紙も飾った作品でもある。
これは、20年後の2016年にこち亀が表紙と巻頭カラーでの最終回を迎えるまでは唯一の例であった。
芸能人のファンも数多く、実写映画化したらキャストは誰になるだろうか議論で必ず議論が白熱する漫画でもある。
2010年時点の累計発行部数は完全版を含め、国内で1億1700万部を超える。
単行本第21~23巻の初版発行部数250万部は、当時としての最高記録である。
第40回(平成6年度)小学館漫画賞少年部門受賞。
2006年の文化庁による文化庁メディア芸術祭10周年記念アンケート企画、「日本のメディア芸術100選」にてマンガ部門で1位。
本作の与えた影響。
本作が少年誌におけるスポーツ漫画界に与えた影響はとてつもなく大きく、連載が終了して20年以上経過している現在でもなお(続編や外伝などがほぼ一切だされていないにも関わらず)衰えることが全くない人気を誇り、上述した国内の累計発行部数はジャンプ漫画史上でもトップ5に入る記録である。
それゆえに少年誌で(特にバスケットボールを題材とした)スポーツ漫画を描こうものなら、ほぼ確実に本作と比較対象にされてしまう宿命を背負うことになる。
もちろん作者によって違った個性があり違った良さがあるのだが、本作の存在があまりにも大きすぎるため、大衆から評価される作品にするのは大変難しくなっているとされる。
実はスラムダンク以前は、そもそもバスケットボールの認知度そのものが低く、それもあってか漫画業界では「バスケットボール漫画は成功しない」とみなされていたのだが、それを見事に覆したのがこの『スラムダンク』であった。
作者はバスケ漫画を描きたいという思いはずっと温めており、自分が描くまでは誰も描かないで欲しいと神に祈っていたらしい。なお、バスケが漫画として最初に採り上げられたのは六田登のダッシュ勝平でアニメ化も果たしたものの、これは少年漫画的なコメディ作品であり、しかも後半にはバスケをやめて別のスポーツをやっている。一番古いバスケ漫画は八神ひろきのDEAR BOYSであるが、こちらも初期はバスケを題材とした純愛ストーリーで、バスケ漫画化していったのは同作の影響もあった。そんなわけで、本格的なバスケ漫画は同作が初といわれている。
ただ、作者は100%売れるという確信は持っていなかったため、もしバスケ路線で失敗したらヤンキー路線で行くつもりだったと発言している(桜木軍団のキャラが立っているのはそのため)。しかし、蓋を開ければ、少年漫画どころか青年漫画にまで多大なる影響を与えたスポーツ漫画のマイルストーン的作品となり、この作品以降、本格スポーツ漫画が増え続けることになった。また、同作連載中は他紙連載中のスポーツ漫画(特に競合他社)にまで影響を与えていくことになり、青春路線重視だった週刊少年サンデーでは桜木花道のアンサーキャラみたいな人物が多数登場している(健太やります!の緒方明、帯をギュッとね!の仲安昌邦など)。
少年ジャンプを例にとっても、アイシールド21、火ノ丸相撲、ジャンプ以外でははねバド!などが、それぞれの作者がスラムダンクに大きく影響を受けたと発言している。また、宇宙兄弟の小山宙哉、ゴールデンカムイの野田サトルなども同作のファンと公言しているなど、そのジャンルはスポーツ漫画の枠を超えている(二人ともデビュー作はスポーツ漫画)。
では、この作品の何が凄かったのかというと、ポイントゲッター(流川・仙道・沢北など)やゲームメイカー(宮城・牧・藤真など)が目立つスポーツ漫画において、漫画映え・読者ウケさせるのが難しいリバウンダー(桜木)を主人公とし、地味なリバウンド描写を奇跡的に格好よく描き上げ、リバウンダーの重要性を物語に上手に組み込んで、他のスポーツ漫画の華やかなポジションの主人公達に全く見劣りしない、少年誌を代表するにふさわしい主人公に築き上げたところである。
また、同じジャンプ系スポーツ漫画でも、上記のリングにかけろやキャプテン翼、後年のテニスの王子様等における、所謂「必殺技」といった派手で少年誌映えする超人的な技が存在せず(精々、初期におけるこれくらい)あくまで、実際にプレイ出来る技の範疇に収まっている事も(当時のジャンプ作品としては)異色さに拍車をかけている(ただし、高校生ではかなり難しい、本場NBA選手でしか出来ないような技を使ったり、一流のプロ選手にも匹敵する体格や身体能力を持つ者は何人かいる。作者もそれは自覚しており、リアルでは、子供が野宮に「ダンクして?」という問い掛けに対して、「できねえよ!」と即答している)。
このスラムダンクでの登場人物達の活躍に憧れてバスケットボールの道に入った当時の小中学生達は多かった。日本のみならず、中国、台湾、韓国でも圧倒的な人気を誇る。
ただ、バスケの本場アメリカではそこまでの人気にはならず、むしろアメフトを扱っただけあってアイシールド21などの方が人気は高かった。
ストーリー
湘北高校に入学した不良少年・桜木花道は、中学生までに50人と女にフラれ続けてばかりだった。しかも、50人目の相手の好きな人はバスケ部所属。それで彼は、入学後しばらくバスケを目の敵にするほどだったが、背の高さと身体能力からバスケットボール部主将の妹、赤木晴子にバスケット部への入部を薦められる。彼女に一目惚れした「初心者」花道は彼女目当てに入部するも、練習・試合を通じて徐々にバスケットの面白さに目覚めていき、才能を開花させながら、海南大付属、翔陽高校、陵南高校といった強剛ひしめく神奈川県内で、無名の湘北高校バスケ部によるインターハイ出場及び全国制覇を目指していくことになる。
登場人物
湘北高校(湘北)
陵南高校(陵南)
海南大附属高校(海南)
翔陽高校(翔陽)
三浦台高校
山王工業高校(山王)
豊玉高校(豊玉)
愛和学院高校
名朋工業高校
大栄学園高校
常誠高校
その他
テレビアニメ
東映動画(現:東映アニメーション)の手によってテレビアニメ化された。
しかし、後述の理由からテレビアニメは綾南との公式戦で県予選突破をした部分までで終わっており、最も人気が高い山王戦は未映像化となっている。
シリーズディレクター(監督)は西沢信孝(後述の事情により第62話よりプロデューサーを兼務)。
1993年10月から1996年3月にかけて、テレビ朝日系列局に加えて、テレビ岩手、北日本放送、四国放送(以上日本テレビ系列局)、テレビ山梨、山陰放送、テレビ高知、宮崎放送、琉球放送(いずれもTBS系列局、ただし琉球放送は途中打ち切り・琉球朝日放送に移管)、テレビ愛媛(フジテレビ系列局、ただし愛媛朝日テレビ開局に伴う移管のため途中打ち切り)および福井放送(原則日本テレビ系列局)にて放映された。全101話。
なお本作は『狼少年ケン』『デビルマン』『とんがり帽子のメモル』『聖闘士星矢』など、多くの東映動画作品に携わってきた籏野義文プロデューサーの手による最後期の作品、ひいては遺作のひとつとして数えられる。そして籏野は本作の製作途中に口腔癌に侵され、壮烈なる現役死を遂げた。
籏野の死後は、本作シリーズディレクターの西沢信孝がSDとPの両職を兼務する事で、その衣鉢を継ぐこととなった。
放送中の問題
放送開始当初から原作のストックが少なく、東映動画作品お得意のオリジナルストーリー挿入をもってしても(ただし全体的な流れは基本的には原則準拠)放送が間に合わず、放送半年後からテレ朝の事情による予算削減及び、原作ストックと製作スケジュールの確保の都合上、特番休止が目立った。
結局、放送期間の事情などからインターハイ出場決定の時点で原作準拠を断念、しのぎを削ったライバル校・翔陽と陵南の混成チームと「壮行試合」を行う、と言うオリジナル展開で締めを飾らざるを得なくなった。
一応EDにはアニメ未登場だった豊玉高校の南が登場しているものの、結果としてアニメ化されたのは単行本22巻ラストまでとなった。
この為、本作のクライマックスである山王戦をアニメ化してほしいという要望は根強く、令和の映像技術を駆使してのリメイクを望む声は多い。
令和に入り、本作の再アニメ化の話が上がっており、映像化されなかったインターハイ編の映像化が実現するか、期待が高まる。
作者もアニメの引き伸ばし展開には不満を抱いており、それでリアルにて「どこまで長いんだ、このコートは!」といったセルフパロディが登場する。
主題歌
オープニングテーマ
being系のアーティストが抜擢された。そのうち、大黒摩季、WANDS、ZARDのEDはいずれもミリオンセラーを記録。
- 「君が好きだと叫びたい」(第1話 - 第61話)
歌:BAAD/作詞:山田恭二/作曲:多々納好夫/編曲:明石昌夫
- 「ぜったいに 誰も」(第62話 - 第101話)
歌:ZYYG/作詞:高山征輝/作曲:織田哲郎/編曲:ZYYG
エンディングテーマ
- 「あなただけ見つめてる」(第1話-第24話)
歌:大黒摩季/作詞・作曲:大黒摩季/編曲:葉山たけし
- 「世界が終るまでは…」(第25話-第49話)
歌:WANDS/作詞:上杉昇/作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
- 「煌(キラ)めく瞬間(トキ)に捕われて」(第50話-第81話)
歌:MANISH/作詞:高橋美鈴・川島だりあ/作曲:川島だりあ/編曲:明石昌夫
- 「マイフレンド」(第82話-第101話)
歌:ZARD/作詞:坂井泉水/作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
劇場版
テレビアニメの放送期間中に4作作られている。ドラゴンボールZやDr.スランプなどとの同時上映の為、30分~45分程度の中編作品になっている。
- 「スラムダンク」
- 「スラムダンク 全国制覇だ! 桜木花道」
- 「スラムダンク 湘北最大の危機! 燃えろ桜木花道」
- 「スラムダンク 吠えろバスケットマン魂!! 花道と流川の熱き夏」
そして2021年1月7日、作者・井上雄彦が公式ツイッターアカウントを通じて『五度目の』映画化構想が存在することを明らかになり、8月13日に2022年秋に公開されることが明らかとなった。
そして、2022年7月4日に公開日と正式タイトルが決定した。
当初は秋に公開するとされていたが、公開日は2022年12月3日となった。
監督・脚本は井上雄彦先生が自ら担当し、キャラクターデザイン・作画監督は進撃の巨人のアクション作画監督兼原画で名を馳せた江原康之氏、音響監修は多くの人気作品で音響を手掛けたベテランの鶴岡陽太氏等が担当する。
余談
- アニメは当初、『美少女戦士セーラームーン』の次番組として放送が予定され、『ろくでなしBLUES』および『シュート!』と競合していたが、セーラームーンの続編の製作が決まったため、当初の予定より半年延期のうえで、『南国少年パプワくん』の後番組として放送された。なお、『ろくでなしBLUES』のTVアニメ化はお蔵入りし、『シュート!』はフジテレビのドリーム9枠で放送された。
- 家庭用ゲーム機でもゲーム化がされた事もあったが、実はそのままのタイトルでは出せなかった。このスラムダンクよりもずっと前にコナミがアーケードゲームで「SLAM DUNK」というバスケットボールのゲームをリリースしており商標として登録していた為。ただし、今作とコナミのものは内容は無関係であり1990年代後半あたりのコナミの商標騒動とも無関係。その為タイトルが「TV ANIMATION SLAM DUNK」の表記になっている。
関連イラスト
関連動画
関連タグ
SLAMDUNK(表記揺れ)
スラムダンク100users入り スラムダンク500users入り スラムダンク1000users入り
タッチ・・・桜木花道の即席養成は『タッチ』の主人公・上杉達也から影響を受けたが、原作漫画の達也は野球選手生命を断ったのに対し、桜木花道はバスケ選手への再起を目指しているのは対照的であった。
シュート!・・・ライバル誌にてスラムダンクと同時期連載されたライバル漫画。此方はサッカーだが、『タッチ』のコンセプトを引き継いだ後継作繋がりと言え、此方の久保嘉晴は上杉和也を範に取った。
あひるの空・・・ライバル誌で連載されているバスケ漫画。作者である日向武史先生は本作の大ファンであることを公言している。
黒子のバスケ・・・後年、おなじ週刊少年ジャンプに掲載されたバスケ漫画。こちらの作者もスラムダンクに影響を受けたと話している。
ロウきゅーぶ!・・・バスケを題材としたライトノベル。やはりこちらの作者もスラムダンクに影響を受けたと語っている。
ビーロボカブタック…主人公の中の人が花道の特撮作品で、第9話のスターピース争奪戦の対決がバスケットボールであった。敵対ロボの1人の中の人が牧真一と同じである。
獣電戦隊キョウリュウジャー…こちらは、花道の中の人がバスケモチーフのゲスト怪人を演じた特撮作品。登場した第32話と第37話では、スラムダンクのパロディ要素が数多く登場した。