概要
1984年(日本では85年)からスタートした『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』と、その翌年に公開された『トランスフォーマー2010』の間を描いた劇場アニメ映画である。
アニメーションの制作は東映動画が担当し、日本円にして40億円もの莫大な予算が用意されたものの、使い切れずに余った半額を返したという。
この時の利益やノウハウが後の『聖闘士星矢』等のアニメ制作に活かされた。
原語版にはオーソン・ウェルズ、レナード・ニモイ、ロバート・スタック、エリック・アイドル等の名優が多数出演しており、ユニクロンを演じたオーソン・ウェルズは本作が遺作となった。
現在ではただ単に「ムービー」だけだと実写映画版と混同してしまうゆえ、区別をつけるために「ザ・ムービー」と呼ばれる場合が多い。
日本での公開中止
アメリカでは1986年8月、イギリスでは同年12月に公開され、日本でも1987年夏に公開が予定されていたが、ハズブロとの契約によって国内公開ができず、89年に東京と大阪でチャリティー上映やビデオ、LDの販売が行われるに留まった。代わりに「コンボイが死んだ!」キャンペーンやファミコン用ソフト『コンボイの謎』が空白となったストーリーを補完する目的で展開された。
2001年にはパイオニアLDCよりDVDも販売されたが、それ以来再販は全く行われていないため、現在ではプレミア価格が付き、オークション等でも高値で取引されている。
作風
カオスと評されるTVシリーズからは想像つかないほどの鬱展開となっており、特にテレビでは描かれなかった「キャラクターの死」が最大のポイントであろう。とはいえ、TVシリーズは当時の米国の規制によりキャラクターの殺傷が禁じられていた部分もあるのだが。ファンには馴染み深いキャラクターたちが銃撃一発で死んでしまう。特にテレビではコンドルに中枢部を爆撃されようが、崖から転落しようが死ななかったコンボイを始めとしたサイバトロン戦士達が、デストロンの攻撃によって次々と命を落とすシーンが多い。
しかし、その直後からの熱い展開の数々や、莫大な予算からくる上質な作画など、『トランスフォーマー』ファンからは伝説級の映画といっても過言ではない。なお、作画ミスは健在(?)だったりする。
キャラクターたちの最期
上述の通り、規制の反動かと思えるほどにキャラクターたちが次々と命を落としてゆく本作だが、衝視聴者にトラウマを刻みつけるだけならまだいい方で、あまりにも戦死者が多すぎて尺の都合でいつの間にか死んでた者まで存在する。
- スタースクリームが持つ拳銃形態のメガトロンに体を撃ち抜かれるゴング。
- スカベンジャーの銃撃で体を撃ち抜かれ煙を吐きながら死亡するプロール。死の間際に目がオレンジに光るので、体内が誘爆していたのかも知れない。
- デストロン軍団の一斉射撃によりハチの巣にされるアイアンハイドとラチェット。アイアンハイドはなおも食い下がろうとメガトロンの足を掴むが、融合カノン砲でトドメをさされる。
- デストロン軍団のサイバトロンシティ攻撃により、気づいたらスクラップになってたホイルジャック。尺の都合だが、本来は虎の子の秘密兵器が暴走して仲間を巻き添えに爆死というギャグのようで笑えない最期だった。
- 同様にいつの間にかスクラップになってたチャージャー。タイミングを考えると↑で巻き添えにされた被害者は彼である可能性が高い。
- メガトロンとの戦闘で負傷しそのまま命を落とすコンボイ。
- コンボイとの戦闘で負傷し、アストロトレインの重量オーバー解消のため宇宙に放り出され、ユニクロンによってガルバトロンとして転生させられるメガトロン。
- 同じく放り出されサイクロナスとスカージとして転生させられるサンダークラッカー、スカイワープ、インセクトロン達
- ガルバトロンによって今までの主従漫才が嘘のようにあっさり粛清されるスタースクリーム。
- ユニクロンの攻撃による基地の崩落で死亡した設定だが、尺の都合でフェードアウトしたレーザーウェーブ。
- マトリクスの解放に失敗し、ガルバトロンにより文字通りバラバラに…されたのにあっさり蘇生するウルトラマグナス。仲間たちが次々死亡する中この扱い、今なお続く彼のヘタレ伝説の始まりである。
なお、戦死とされるキャラクターの内、明確に復活が描かれたコンボイ以外のキャラクターの何人かは後のシリーズで何の説明も無く復活しており、
- 2010では第14話でドラッグとゴングが銃撃をしていたり、第26話ではトルネドロン襲撃をセイバートロン星基地から伝えるチャーの後ろをチャージャーが走っていた。
- HMでは第1話でウルトラマグナスと共に地球でデストロンと戦うプロールが確認出来、第27話では後ろ姿のみだがアイアンハイドが登場していた。
- Vでは第26話よりホイルジャックが登場しているが、声はもとより性格も初代の頃とは全く異なっていた。これに関しては後付けでバイナルテック世界から来たホイルジャックが記憶喪失になった状態であるとされた。
など、様々な場面で再登場していたが、作画ミス説やHM以降の再登場キャラはザ・ムービーが当時日本未公開による情報不足による結果ではないか?と言われる事もある。
ストーリー
地球歴2005年。
セイバートロン星はデストロンの支配下にあった。
劣勢のサイバトロンは、月面基地「ムーンベース」に隠れ反撃の機会を窺っていた。
度重なる激戦で多くのサイバトロン戦士が殉職、更にはリーダーであるコンボイまでもが命を落としてしまう。
だが、コンボイはサイバトロンのリーダーが代々受け継いできた叡智の結晶「マトリクス」を新たなリーダーに託す。
一方、宇宙では惑星規模の超巨大トランスフォーマー「ユニクロン」がセイバートロン星に迫っていた。
ユニクロンは唯一の脅威であるマトリクスを排除するため、宇宙に放逐されたメガトロンを「ガルバトロン」にパワーアップさせマトリクス破壊を命じる。
かくして、デストロン・サイバトロン・ユニクロンの三つ巴の戦いが始まった。
登場キャラクター
太字は新キャラクター。CVは括弧にて「原語版/吹替版」の順で表記。
尚、製作がシーズン1とシーズン2の間に行われたため、シーズン2で登場したキャラ(エアーボットやコンバットロン等)は一切登場しておらず作中存在に言及もされていない。コミックスでの後付け設定で、デストロンはサイバトロンシティと同時にアーク基地にも別働隊で攻撃をかけており、未登場キャラはそちらで戦っていたことになっている。
サイバトロン
ホットロディマス / 総司令官ロディマスコンボイ(ジャド・ネルソン/石丸博也)
パーセプター(ポール・エンディング/城山知馨夫)
マイスター(スキャットマン・クローザース/稲葉実)
クリフ(ケイシー・ケイサム/喜多川拓郎)
バンブル(ダン・ギルベザン/塩屋翼)
アイアンハイド(ピーター・カレン/速水奨)
ラチェット(ドン・メシック/江原正士)
プロール(マイケル・ベル/石井敏郎)
ゴング(コーリー・バートン/稲葉実)
これ以外にも初稿ではアラート、トレイルブレイカー、リジェも戦死とされていた。
カセットボット
ダイノボット
グリムロック(CV:グレッグ・バーガー 吹き替え:喜多川拓郎)
スラッグ(CV:ニール・ロス 吹き替え:山口健)
デストロン
メガトロン/ガルバトロン(CV:フランク・ウェルカー レナード・ニモイ 吹き替え:加藤精三)
サイクロナス(CV:ロジャー・C・カーメル 吹き替え:稲葉実)
スタースクリーム(CV:クリス・ラッタ 吹き替え:鈴置洋孝)
サウンドウェーブ(CV:フランク・ウェルカー 吹き替え:政宗一成)
レーザーウェーブ(CV:コーリー・バートン 吹き替え:島香裕
カセットロン
フレンジー(CV:フランク・ウェルカー 吹き替え:城山知馨夫)
ランブル(CV:フランク・ウェルカー 吹き替え:山口健)
ビルドロン
グレン(CV:ニール・ロス 吹き替え:江原正士)
ロングハウル・スクラッパー(CV:マイケル・ベル 吹き替え:難波圭一)
ミックスマスター(CV:フランク・ウェルカー 吹き替え:城山知馨夫)
スカベンジャー(CV:ドン・メシック 吹き替え:難波圭一)
ボーンクラッシャー(CV:ニール・ロス 吹き替え:石井敏郎)
デバスター(CV:アーサー・バーグハート 吹き替え:島香裕)
トリプルチェンジャー
アストロトレイン(CV:ジャック・エンジェル 吹き替え:喜多川拓郎)
ブリッツウィング(CV:エド・ギルバート 吹き替え:江原正士)
ジェットロン
サンダークラッカー(CV:吹き替え:島香裕)
スカイワープ(CV:フランク・ウェルカー 吹き替え:江原正士)
ラムジェット(CV:ジャック・エンジェル 吹き替え:阪脩)
スラスト(CV:エド・ギルバート 吹き替え:城山知馨夫)
ダージ(CV:バド・デービス 吹き替え:難波圭一)
インセクトロン
ユニクロン
クインテッサ星人
CV:レジス・コーディック 吹き替え:石井敏郎 難波圭一 城山知馨夫 政宗一成 速水奨
シャークトロン(CV:山口健 稲葉実 難波圭一)
処刑人(CV:ロジャー・C・カーメル 吹き替え:江原正士)
ガード(CV:山口健)
その他
ジャンキオン指揮官レックガー(CV:エリック・アイドル 吹き替え:石井敏郎)
スパイク・ウィトウィッキー(CV:コーリー・バートン 吹き替え:江原正士)
ダニエル・ウィトウィッキー(CV:デヴィッド・メンデンホール 吹き替え:田中真弓)
クラニクス(CV:ノーム・アルデン 吹き替え:石井敏郎)
アーブラス(CV:ノーム・アルデン 吹き替え:山口健)
コンバット・ロボ(CV:フランク・ウェルカー 吹き替え:江原正士)
ナレーター(ビクター・カロリー 政宗一成)
関連イラスト
アメリカではどのような評価だったのか?
日本では前述のように「多額の製作費」、「衝撃的な内容」、「諸事情で公開できなかった」点でなんだかんだでポジティブな評価をされている本作であるが、普通に公開されたアメリカでは(作品の質は置いといて)半ば失敗作として受け止められていた。あちらでもキャラクターの死は、当時劇場でその様を見た人やトランスフォーマーに携わった人たちからは否定的に捉えており、その後の商品展開に悪影響を残している。(というのもハズブロとしては、古いラインナップを捨てて、新しいラインナップを展開したいという思惑があり、結果的にあのような虐殺劇が行われた)
また、映画の内容に関しても当時の映画批評家たちから「壮大な玩具のコマーシャル」とあんまりな、だが的を得た評価を下している。そして、何より興行面で、製作費以上の売り上げを出せなかった点で商業作品としては失敗作の部類に入っている。