概要
『機動戦士ガンダム』に代表されるロボットアニメ作品には大抵の場合、「機体数は極めて少ないものの主人公や敵軍のエース、ラスボスが搭乗するような1機でも存在するだけで戦局を左右しかねない実験機やプロトタイプの超高性能機」と「1機あたりの性能や能力を二の次にして大量生産のみを至上命題とした量産機」が存在する。
こういった作品では量産機は自軍、敵軍問わず相対したフラッグシップ機やそれに乗るエースパイロットの前に為す術もなく大量に撃破、破壊されるという「かませ犬」、「やられ役」のような立場になるのが半ばお約束と化している。
これは当然と言えば当然であり、そもそも「量産機」は文字通り量産されるのを前提で建造、開発されているため1機あたりの生産コストを抑えなくてはならない。すると1機あたりの性能や機器の質も抑えなくてはならなくなるため必然的に総合性能はコスト度外視で建造されているフラッグシップ機とは雲泥の差となってしまう。
しかし、中には「敵のフラッグシップ機のデータを盗用して開発された量産機」や「新技術で圧倒的な性能向上に成功したモデル」など主人公側の機体にも匹敵するほどの量産機が存在する。こうした機体はそれまでの量産機とは桁違いの性能や能力を持ち、時として主人公陣営の人物や機体を撃破するまでに至るほどの力を発揮している。
こうした機体は「フラッグシップ機に相当する高性能」と「量産機の物量」を両立した極めて強力な存在となる。
これこそが「お前のような量産機がいるか」と言われる所以である。
こうした凄まじい性能を持つ量産機というのは大抵敵陣営にのみ存在し、主人公陣営のアドバンテージを一気に無効化する強敵、という印象づけに用いられる。
意外とこの構図が成り立つのは難しく、例えばリグ・シャッコーのように戦争の期間自体が短かったがために十分な数を投入できなかったり投入されたのが主人公勢のいない戦場の方が多かったがために活躍が描かれなかったりした、ゲルググやジャベリンや105ダガーのように何らかの理由で戦線投入が大幅に遅れてしまい実戦投入された頃には下の下の強さになってしまっていたなど、超高性能に不釣り合いな活躍しか出来なかった哀しい運命を辿った量産機も存在する。
逆にリーオーやムラサメのように性能面では格下にもかかわらず、戦況がうまく噛み合って主役級を追い詰めたり負かしたりした例もある。勝負は時の運とはまさに。
稀に味方や主人公側にも配備される事があるが、敵はそれ以上の性能を持つ機体を所有していたり、主人公側の何倍もの数で攻めて苦戦させるなど敵側として登場するよりは活躍しない傾向にある。(『劇場版ガンダム00』のGN-XⅣなど)
そして往々にしてこういった高性能量産機が登場する作品はバッドエンドに近いものだったり主人公陣営壊滅など後味の悪い結末になることが多い。
一方で、陸戦型ガンダムのように、主人公機自体が量産機に分類されるパターンもあり、その場合主人公専用にカスタマイズされていたり、エース用の少数量産機として登場する事が多い。
代表例
- EVA量産機『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ
「お前のような量産機がいるか」の筆頭候補。永久機関「S2機関」を動力源として導入する事でエヴァンゲリオン運用上の問題の一つだった短い稼働時間の問題を根本から解決。パイロットはダミーシステムに移管した事で無人化にも成功した上に、暴走したEVA初号機が見せたような自己再生能力まで有するなどその能力はエヴァンゲリオンよりも使徒に近くなったとも言える。
単体の性能ですらEVA初号機やEVA弐号機を超える上に、本機は「量産機」であるため5~13号機の計9機が建造されている。
劇中では一度は9機全てがEVA弐号機に敗れたものの、前述した自己再生能力により何事もなかったかのように復活。弐号機を惨たらしく蹂躙するというトラウマレベルの戦闘能力を持つ。
ネオ・ジオン軍が第1次ネオ・ジオン抗争時に開発した高級量産機。
ザクⅢはバランスに優れているも、後の時代のMSさえも圧倒する高機動、ドーベン・ウルフは全身に相当な腕利きでないと使いこなせないほど武装を内蔵した高火力。お前らのようなのが量産機であってたまるか!
ネオ・ジオンが敗北したことも相まって、案の定少数の機体だけが生産された。
なお、ネオ・ジオンと同盟関係にあるジオンマーズは、ジオンマーズの主力としてザクⅢR型を、ネオ・ジオンへ提供する目的で武装をオプション化したり数割のパーツをザクⅢR型と共通化させてコストダウンや操作性の向上を実現したリーベン・ヴォルフを開発し、それぞれ100機近く量産している。
- トーラス『新機動戦記ガンダムW』シリーズ
元々は「モビルドール」という人工知能用に開発された機体だが、有人機も存在する。
初陣は舞台が宇宙に上がってからで、トレーズ派をはじめOZに反抗する地球圏統一連合の残党を皆殺しにした他、ガンダム達も地上戦に特化した性能だったのもあって本拠地だった宇宙要塞バルジに誰一人近付けさせず事実上の降伏に追い込んだ。無機質にビームライフルを乱射するバンクシーンは中々怖い。
だが後述のビルゴ登場にあたって次々と有人機に変更された。ただし機動性ではビルゴを上回るため、ビルゴに勝利しているシーンも存在する。
- ビルゴ『新機動戦記ガンダムW』シリーズ
劇中で登場する「ガンダム」の開発者チームが新たに開発したヴァイエイト、メリクリウスの2機の攻撃能力と防御能力を統合し開発された無人モビルスーツ。
トーラスと違い、運用は最初から「モビルドール」用に特化している。
コンピュータ制御ゆえの恐ろしく正確な攻撃と連携能力、人間が乗らない事で人体への負荷を無視した凄まじい戦闘機動、やっとの思いで潰しても湧いてくる機体、何よりも死を恐れずに襲いかかってくるなど有人機とは一線を画する性能を持つ。
装甲材質も主人公陣営のガンダムと同等のガンダニュウム合金を採用しており、ヴァイエイト由来の大型ビームキャノンによる大火力と、メリクリウス由来の電磁シールドユニットであるプラネイトディフェンサーを装備した事で誇張抜きにガンダムクラスの性能を持つ量産機となった。
ビームサーベルといった格闘戦を想定した武装が一切無いが、そもそも並大抵の機体とパイロットにビルゴを格闘戦をさせなくてはいけない程追い詰める事が出来るはずが無いとしてさして問題にはならなかった。
- GN-X『機動戦士ガンダム00』シリーズ
主人公勢力である「ソレスタルビーイング」が所有する第3世代型ガンダムの動力機関であるGNドライヴ(太陽炉)とほぼ同等の性能を持つ「GNドライヴ[T]」、通称「擬似太陽炉」を初めて搭載したモビルスーツ。
ソレスタルビーイングの第3世代型ガンダムはこのGNドライヴによる恩恵で圧倒的な性能を有していたが、アレハンドロ・コーナーの裏切りにより国連軍に擬似太陽炉とGN-Xの設計データがリークされた事で建造された。
1機1機の性能が主人公達が搭乗するガンダムとほぼ同等の性能でありながら量産機でもあるため性能差を量産機の強みである物量で補完している事で実質的に主人公側のガンダムのアドバンテージを一気に無くす事に成功している。
本機は武装自体はビームサーベル、ビームライフル、バルカンとシールドという極めてシンプルなものであり、ソレスタルビーイング陣営のガンダムの様な「大火力、重装甲」「近接戦闘に強い」などの際立った特色を持つ訳ではないがこれは逆に言えば「おおよその局面に対応可能な高性能汎用機」とも呼べるものであり、むしろ好都合な点とも言える。
さらに搭乗する国連軍パイロットは全員国連軍に統合される前の三大国家群「UNION」、「人類革新連盟」、「AEU」陣営からそれぞれ抜擢された選りすぐりのエースパイロットのみであり対ガンダム戦をかなり重視している。
劇中では幾度となくガンダムと交戦し苦戦を強いた上に最終的にはソレスタルビーイングを敗北させるという大戦果を上げている。
恐らく初めて公式設定で「主役機より強い」と明言された量産機。主役3機の能力全部載せ機体で主役機をお払い箱扱いに追い込みかけた(その後強化改造を受けて対面を保ったが)。流石に番組的な都合もあって劇中では初登場期以降は(主にパイロットの錬度の問題で)そこまで強そうには描かれていない。
- 量産型バクシンガー『銀河烈風バクシンガー』
主人公勢力である「銀河烈風隊」のスーパーロボット。
オリジナル機が5体合体で5人乗りであるのに対し、量産型は合体機構がオミットされた1人乗りであるが、外見と戦闘力がオリジナルと変わらない。
むしろ5人のパイロットが全員いなければ分離メカが合体できないというオリジナル機の弱点を克服しており、当初は5人分生産する予定であったが、資金不足で1体しか作れず、その量産型もパイロット1人諸共特攻で失ってしまった。
更にはもう1人のパイロットも死亡した事でオリジナル機も運用不可能となって銀河烈風隊は滅びの道を歩む事となった。
主人公であるエルネスティ・エチェバルリアが自身のアイディアを盛り込んで設計した新型試作機テレスターレをベースに母国であるフレメヴィーラ王国の国立機操開発研究工房が開発した新型量産機。
従来機を大きく上回る出力等を有しつつ、従来の長所である高い操縦性を維持した傑作機。
加えて操縦するフレメヴィーラ兵の練度の高さもあって、やられ役になる事は非常に少ない。
互換性・カスタマイズ性にも優れ、主力キャラの専用機も本機のカスタム機で、広義の意味で言えば主人公機も本機の派生である。
上記のカルディトーレの前身であるテレスターレを強奪したジャロウデク王国が開発した新型量産機。
テレスターレに使用された新機能を独自に解析し、欠点であった操縦性の悪さを、装甲を増加し無理やり抑えつける方法で解決した事で、従来の機体平均よりも大型化した重量機となっている。
しかし、テレスターレの長所のみならず短所まで大きく伸ばしてしまい、稼働率や整備性などに大きな欠陥を抱えてしまっている。
当初は重装甲による防御力や新機能、新発明である飛空船との連携で対立国を蹂躙し続けたが、フレメヴィーラから送り込まれた援軍の介入・技術提供により、アドバンテージを徐々に失い、戦争の長期化につれて機体の抱える欠陥も如実に表れ、大敗を喫してしまった。
初登場時こそ新型機の名に相応しい快進撃を見せたものの、主人公サイドがそれ以上に優れていたため、あっという間にやられ役に落ちてしまった。
その上敗戦後は財政難でコストダウンを迫られ、殆どの機体が廉価版のものに差し替えられてしまった。
ペダン星で開発されたスーパーロボット兵器。サブカル史上初の合体ロボであり、その(設定も含めた)汎用性の高さはテレビ初登場から約60年が経過する令和の現在も依然健在。
高出力駆動系に由来するパワー、チタニウム系合金製のボディは高い堅牢性を実現しており、カスタム性にも優れている。
劇中で登場した派生機は、ペダン星製のものは全て右腕を換装して塗装を変えただけというとてもシンプルかつ合理的なもの。しかもこれで普通に強いのだから言うことなしである。
通常のキングジョーの手は三本指マニピュレータだが、これを「ペダニウムランチャー」というレーザー砲に換装したキングジョーブラックやキングジョーカスタム、「ペダニウムランサー」というランスに換装したキングジョースカーレット、ゲーム限定だが剣に換装した機体もある。
こうした性質故か非常に量産性に長けているらしく、ウルトラギャラクシー大怪獣バトルではキングジョーブラックが、キラー・ザ・ビートスターではビートスターが生産したキングジョー(キングジョー(BS)と呼ばれている)が、それぞれ大量に登場している。また大量とまではいかなくとも、時間を開けて2機目3機目が同じ世界観内で登場することもある(最近ではウルトラマンデッカーの劇中でデッカー世界由来のキングジョーが残骸として本編中に、完全体として劇場版に登場。しかも全て別の機体である)。
ビートスターの例を見てもわかる通り、その汎用性とカスタム性からかペダン星以外でも改造、生産、運用されている様子がしばしばみられる点も特徴。このため、ゼットン星人製キングジョーやキングジョーストレイジカスタムなど、他星系による魔改造機が出てくることもある。なんならペダン星もショー限定だが他の星系と共同で開発した魔改造機を造ったことがある。
- スペースリセッター『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス』
宇宙正義の執行者を名乗るデラシオンが、いずれ宇宙正義に反し得ると判断した生命体を星系ごと処刑するために遣わすロボット機兵の総称。
大きくグローカーとギガエンドラが存在し、いずれもデラシオンの任意でいくらでも製造可能。グローカーは母艦グローカーマザーによって製造される尖兵グローカーボーンおよびグローカーボーンが2機合体したグローカールークが存在するだけでなく、グローカーマザー自体のバトルモードであるグローカービショップも存在する。
グローカーボーン以外はウルトラマンを単騎で圧倒し得る戦闘力を持ち、グローカーボーンもまた、両手の主砲の射程が衛星軌道に届くほど長い。またギガエンドラは「ファイナルリセッター」とも呼ばれ、文字通り恒星系まるごと消し飛ばす力がある。
デラシオン自体が、元来宇宙の調和を望むが故に軍事力を増強している存在のため、ある意味ウルトラマンとスペースリセッターは類似した存在とも対になる存在とも言える。そのため、いずれ何らかの理由でウルトラマンと共闘する可能性が噂されている。
エンペラ星人が開発した皇帝専用軍用ロボット機兵。
頭部が3連装レーザーガトリング砲になっており、肩にも砲塔を備えている。両手は通常ボクシンググローブのような形状だが必要に応じて様々な武器に変形する。キングジョーのような機動性はないがより重厚堅固なボディが特徴で、しかも両肩の砲塔に自己修復システムがあるためちゃんと潰さないとしつこく復活してくる。
このめんどくさい歩く要塞がメビウス本編だけで14機も出てきており、しかもうち13機はエンペラ星人が地球に無条件降伏を迫った時に一斉に世界各地に送り込まれている。
よほど量産性が良かったのか、後にビートスターはインペライザーも大量生産している(インペライザー(BS)と呼ばれている)。
ウルトラマンベリアルが宿敵ウルトラマンゼロを模して開発したロボットの偽ウルトラマン。
偽ウルトラマンとして、前日譚であるVSダークロプスゼロに登場した、サロメ星人製偽ウルトラ兄弟が霞んで見えるレベルで大量生産されている。その数驚異の100万体。これが次から次へと光の国に送りつけられていたのである。しかもその数倍の数が出荷前の状態で保管されており、そのさらにもう数倍の数が生産途中だった。さらにこれらにカウントされているか不明の機体が多数、機兵軍団の指揮機として運用されていた。つまりゼロがベリアルと対決した時点で1千万を軽く超える数のダークロプスの製造がされていたということである。
戦闘能力は初期スロットのダークロプスゼロの大量生産用デチューンだが、オミットされたのがディメンションコアくらいなので並のウルトラマンでは手も足も出ない連中が、通常複数体同時に襲いかかってくる。
なおベリアルは他にもレギオノイドというロボット機兵を大量生産していたが、こちらはわりとただの雑兵であり、ただ1機の例外を除き善戦した機体が出てきていない。
サイバー惑星クシアから送り込まれた量産型ロボット兵器。
宇宙に平和をもたらすべく、巨大人工頭脳ギルバリスが様々な惑星に贈っている……と言えば聞こえはいいのだが、実際は「宇宙の平和に知的生命体は不要」「他者からエネルギーを奪う食物連鎖そのものが、争いを産む根源」というギルバリスの一方的な価値観の下、ギャラクトロン達は訪れた星の文明はおろか、自然環境すらも殲滅していく……という途轍もない迷惑な存在である。そのため、前述のデラシオンの方がまだマシだとしばしば称されている。
浮遊砲台や大剣「ギャラクトロンブレード」に変形する武器腕、後頭部に備わった大型クロー「ギャラクトロンシャフト」、魔法陣バリア、広範囲を焼き尽くす「ギャラクトロンスパーク」……等々豊富な武装を有しており、攻守共に隙がない難敵。初登場時は諸々の事情があったとはいえオーブを一方的に叩きのめして変身解除させる戦果を上げており、後続作品でも一筋縄では行かない強敵として扱われる。
2018年に上映された『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』では親玉ギルバリスの軍勢として無数に登場(しかもこの手の扱いにありがちな雑魚キャラ化はほぼされていない)し、挙句の果てには「対ウルトラマン用」に調整された格闘特化の上位機種ギャラクトロンMK2がロールアウト。とりわけこのMK2は主役ウルトラマン3人との戦いで、たった一機ながら互角以上に渡り合ってみせた。
以上のような暴れぶりや上述の独善的な行動から、ファンの間では親玉ともども「クソコテ野郎」と呼ばれる事もあるとか。