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学名の編集履歴2023/04/20 22:55:19 版
編集者:じゅん
編集内容:見出し分け|由来が決定的でない例は本題が逸れるので別の例に差し替え|文法と献名が古生物にこだわる必要性がない(現生生物で珍しいわけではない)ので分けて整理、例外であるリンネソウ追記|星座の内容が一つのトピックになれるので別段にまとめる|全角・スペース・斜体調整

概要

生物の分類群を示す世界共通の名前で、ラテン語文法で表記される。18世紀生物学者であるカール・リンネが提唱し体系化した。

学名の基本的な表記法は動物だけでなく、植物原核生物などもすべて同じであるが、実際に学名を決めるための規約はそれぞれ異なる。「国際動物命名規約」と「国際藻類・菌類・植物命名規約」および「国際原核生物命名規約」がそれである。ウイルス細胞性生物ではないため命名規約がないが、分類のために原核生物のルールを準用して学名が命名されている。

属と種

種の場合、現生人類の学名「Homo sapiens」というように、同属ほど近縁な生物種をまとめた「属名」と、そのうち特定の生物を表す「種小名」を組み合わせた二名法である。これは特定の種を表す種名となり、属名は最初の1文字だけ大文字で、種小名は全て小文字。文献記載では、属名や種名をこのように斜体(イタリック字体)で特記されることが一般的。

ヒトの場合は今は同属の別種がいないので1属1種という扱いになるが、絶滅したネアンデルタール人は同属別種で、Homo neanderthalensis という学名がつけられている。

現在1属1種の身近な生物は、他にもカブトムシTrypoxylus dichotomus)やイチョウGinkgo biloba)などが挙げられる。

属全体を指すのに属名だけを単独で表記することはあっても、種小名だけ種を表記することはまずない。これは、属が違うと同じ種小名を使うことが認められているため、種小名だけだといずれの生物を指しているのかわからないからである。

  • 甲虫の一種ヘラクレスオオカブトDynastes hercules)で有名な種小名 hercules は、の一種ヘラクレスサン(Coscinocera hercules)にも使われている。
  • ヤマシマウマ(Equus zebra)の種小名でシマウマの英語表記でもある zebraクワガタムシの一種であるゼブラノコギリクワガタ(Prosopocoilus zebra)にも使われている。
  • imperialiselegansjaponica などに至っては常用される種小名であり、様々な生物のグループで該当する種が多く見られる。

亜種

種がさらに亜種(subspecies)として区分できる場合、種名の後ろにさらに「亜種小名」を付けられる。これは三語名法でそもまま足す(属名 種小名 亜種小名)、もしくは subspecies の略 subsp./spp. を挟んで表記される(属名 種小名 spp. 亜種小名)。そのうち基準の位置づけに当たる基亜種は、種小名と亜種名が同じである。

  • 前述したカブトムシ(Trypoxylus dichotomus)には Trypoxylus dichotomus septentrionalis(ヤマトカブトムシ)や Trypoxylus dichotomus takarai(オキナワカブト)などの亜種がいるが、基亜種は Trypoxylus dichotomus dichotomus(タイリクカブトムシ)である。

これも種小名と同様、属が違うと同じ亜種小名を使うことが認められているため、亜種小名だけだといずれの生物を指しているのかわからくなるため、亜種だけを表記する事はない。

  • 前述した imperialisヒラタクワガタDorcus titanus)の亜種であるフィリピンオオヒラタクワガタ(Dorcus titanus imperialis)の亜種名としても使われている。なお、Dorcus が属名の生物の内に imperialis という種小名が使われている生物はいない。

属より上位な分類群

学名といえば前述した属や種のイメージが強いが、属より上位な分類群(科・目・綱・門など)にも学名が設けられる。ただしこれらの場合、学名は下位分類の併記(二名法)をせず、最初の1文字だけ大文字で、斜体をしないことで属名や種名と区別される(例:ヒト科 Hominidae)。

語源

文法こそラテン語だが、語源はラテン語にこだわる必要はないため、別言語の言葉に由来する名称も多い。例えば日本語由来のものでは Nipponia nipponトキ)や Gojirasaurus quayiゴジラサウルス)、Fukuisaurusフクイサウルス)などが挙げられる。

特定の人物に敬意を表して、命名者がその名前を学名に織り込む場合も少なくない。これを献名という。例えば日本人の名前由来のものでは Futabasaurus suzukiiフタバサウルス・スズキイ)、Dorcus titanus yasuokaiスマトラオオヒラタクワガタ)などが挙げられる。英語では著名な生物学者チャールズ・ダーウィン由来の種小名(時には亜種小名) darwini様々な生物のグループで見られる

一方、命名者が自分の名前を学名に織り込むことは基本的にはなく、Linnaea borealisリンネソウ。1753年にカール・リンネが自分の名前を学名に織り込んで記載)のような早期のごく稀の例外しかない。

読み方

決まった読み方はなく、学名自体のスペルさえあっていればどのようにカタカナ転写や発音をしても構わない。例えば、Tyrannosaurus は「ティラノサウルス」の方が一般的であるが、「ティランノサウルス」でも「チラノサウルス」でもよい。前述した Dynastes hercules の和名は種小名由来で、それがヘラクレスオオカブトになったりヘルクレスオオカブトになったりする。

よくある誤解

Homo sapiens Linnaeus, 1758」ないし「Homo sapiens L.」のように、学名の最後には命名者(苗字かその略)や学名公表年を併記される場合もある。この文面全体がしばしば「学名」と紹介されることがあるが、命名者と学名公表年は学名の一部ではない。また、「ホモ・サピエンス」という表記はあくまで学名のカタカナ転写であり、学名そのものではない。

「学名」という文面から「学術的な名称」という漠然としたイメージを与えるからか、特定の言語での正式の生物名(例えば日本語では和名)が誤って学名と紹介されることもある。

シノニム

学名は1つに決められるべきであるが、種類の分け方は研究者によって見解が異なる場合があり、これにより同一の種や分類群が複数の学名を与えられた場合もしばしばある。これをシノニム(異名、同物異名)という。この状況を判明した場合は先取権に従い、先につけられた方は正しい学名(古参異名、シニアシノニム)、後につけられた方は無効の異名(新参異名、ジュニアシノニム)とされる。

例:アサガオの正しい学名 Ipomoea nil(1797年に記載)とそのジュニアシノニム Pharbitis nil(1833年に記載)。

ただし一般的な文脈での「シノニム」は、単にジュニアシノニムを指す場合が多い。

また、種の場合は所属する属が変えられた時、古い分類による命名の方をシノニムと呼ぶことが多い。

例えば前述したカブトムシ(Trypoxylus dichotomus)には、サビカブト属(Allomyrina)に分類された頃の Allomyrina dichotoma / Allomyrina dichotomus や、タマオシコガネ属(Scarabaeus)に分類された頃の Scarabaeus dichotomus といった古い分類による命名があって、これらが Trypoxylus dichotomus のジュニアシノニムともされる。

近年、現生する生物(特に植物)については遺伝子解析により分類の判断がされるようになってきたが(分類を遺伝子だけで決めることには異論もある)、化石でしか残っていない古生物は遺伝子解析のしようがないので、研究者により判断が大きく分かれることが多い。

動物の学名

動物の学名は、地域の言語にもよるが専門家以外にはあまり使われることがない。通称名に比べ長いことと、名付け方が直感的ではないためであろう。

なお、古生物の場合は日本語のティラノサウルスTyrannosaurus)やアノマロカリスAnomalocaris)のように、学名(特に属名。図鑑などでも属までしか記載されない事が多い)の音訳を通称として使われるのが一般的な言語もある。

動物の学名に特徴的なものとして「Gorilla gorilla」(ニシゴリラ)のように属名と種小名が同じ反復名(tautonym)がある。反復名は植物では許容されていない。

植物の学名

動物とは対照的に、一般の人にもなじみのある学名が多くある。アネモネ(イチリンソウ属 Anemone)、ロベリア(ミゾカクシ属 Lobelia)、コルチカム(イヌサフラン属 Colchicum)、デルフィニウム(オオヒエンソウ属 Delphinium)、ゼラニウム(フウロソウ属 Geranium)...など、属に和名があってもあまり使われず、学名のカタカナ転写で一般に呼ばれる植物は数多い。

しかし園芸分野で使われる学名は古い分類に基づくシノニムが多く、現行の分類と一致しているとは限らない。一般にゼラニウムと呼ばれる草花は実際にはペラルゴニウム(テンジクアオイ属 Pelargonium)の一部の種であり、しかも店によっては「ペラルゴニウム」の名も併用していたりするため非常にややこしい。

また、植物命名規約により、二名法の種名の後ろにさらに変種(variety を略して var.)の名を付けて表記されることもある。これは野菜果物などの園芸植物で特に多く見られる。変種名は他の生物では許容されていない。

例:ヤセイカンランBrassica oleracea)の変種キャベツBrassica oleracea var. capitata)。

原核生物の学名

原核生物(細菌古細菌)の分類は動物や植物に比べて難しい問題を多くはらんでいる。形態が似たようなものも多く外形で分類することが難しいことと、培養できる種が限られていること、そして遺伝子の水平伝播といって、異なる系統の細菌から遺伝子を獲得することがよくある(動物や植物でも遺伝子の水平伝播はないことはないが限定的)ことなどである。

前述した古生物や植物のように、ヘリコバクター・ピロリHelicobacter pylori)やビブリオ・バルニフィカスVibrio vulnificus)など、一部の病原菌は学名のカタカナ転写が知名度が高い。

シアノバクテリア藍藻)は原核生物だが、かつて藻類として扱われていた名残りから国際藻類・菌類・植物命名規約で取り扱われている。

フィクションでは

SF作品(稀にファンタジー作品にも)では架空の生物種に設定される事があり、フレーバーテキストとして機能している。

あくまでもフレーバーテキスト目的の命名であるため、現実の学名と違って詳細なルールが決められているというわけではない。日本語であればアルファベットではなくカタカナ表記にされ、それっぽさを出すために「〇〇ザウルス」や「〇〇・〇〇ス」というネーミングが付けられる傾向にあり、中には明らかに日本語文章の捩りや和名方式のものも見受けられる。

ウルトラ怪獣/円谷怪獣

出典怪獣名学名
ウルトラQゴメスゴメテウス
-リトラリトラリア
-パゴスパゴストータス
-ピーターアリゲトータス
ウルトラマンゴモラゴモラザウルス
-ヒドラボルカノ・プテリクス
帰ってきたウルトラマンテロチルステロチルス
ウルトラマンダイナギガンテスアウストラロピテクス・ギガンテス
ウルトラマンコスモスイフェメララ・ゾル=イフェメラ=ルー

東宝怪獣

出典怪獣名学名
ゴジラの逆襲アンギラスアンキロサウルス
大怪獣バランバランバラノポーダ
ゴジラ×メガギラスG消滅作戦メガニューラメガニューラ・ルイザエ
GODZILLA-ゴジラ-ゴジラタイタヌス・ゴジラ
ゴジラ・キング・オブ・モンスターズカマソッソタイタヌス・カマソッソ
-スキュラタイタヌス・スキュラ
-ティアマトタイタヌス・ティアマト
-メトシェラタイタヌス・メトシェラ
-モスラタイタヌス・モスラ
-ヤマタノオロチタイタヌス・ヤマタノオロチ
ゴジラS.Pカマンガクモンガ・ファルシペス
-クモンガクモンガ・サイトーデス
-ゼンブンガクモンガ・ウルティマ
-ハネンガクモンガ・アラートゥス
GODZILLAvsKONGコングタイタヌス・コング
-ダグタイタヌス・ダグ
-ワーバットベラム・ヴェスペルティリオ

その他

出典種族名/個体名学名
R-TYPEドプケラドプスドプケラドプス・マットウシス
ゼノギアスウーキィ族ドテスカチュチュポリン
テイルズオブエターニアクィッキーポットラビッチヌス
ドンキーコング3バナナバードゴルダス・フラッタース
にじさんじまめねこハツガソライロマメネコ
のび太の創世日記昆虫人ホモ・ハチビリス
バトルスピリッツソードアイズ疾風丸コルガノオオゾラノツバサ
ピクミンイヌムシ科oculus kageyamii
マリオシリーズヨッシーT.ヨシザウルス・ムンチャクッパス
ゼルダの伝説ムジュラの仮面ガロガロ・ローブ
リヴリーアイランドムシチョウphoenix penni-non
ルーニー・テューンズロード・ランナーハヤイッテ・シンジラレンス(他多数)
-ワイリー・コヨーテニククッテ・ガッツキス(他多数)
ONEPIECE象主(ズニーシャ)ナイタミエ・ノリダ象

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実在する学名の扱い

神話の場合、実在の生物を基にした星座英語名が該当生物の学名(もしくはその一部)と同じのケースが多いが、そのほとんどが元から該当生物を指している語(主にラテン語や古代ギリシア語)である。

近代のフィクション作品では、実在する学名がそのまま導入されることは一般的ではないが、元になった生物の学名がキャラクター名に取り込む事が多い。

例を挙げるとライオンを元にしたキャラクターにはライオン学名である Panthera leo が名前に使われている事が多い。

昆虫などのがモチーフの「王様戦隊キングオージャー」では、登場人物名の多くが昆虫の学名由来の部分がある。

一方、実在する生物をそのままテーマにした作品であれば、その学名まで忠実に導入されるものもある。

例えば「甲虫王者ムシキング」では学名が明記(「ドルクス属」「ディナステス属」など属名のカタカナ表記に属を付けて表示される)されるだけでなく、属名が同じ虫同士だと相性が良くなるシステムも存在する(ただし、攻略本では「学名や外見が似ている」という曖昧な表記になっている。その割に種小名や亜種名は意味をなさない)。そして当時の旧分類により、カブトムシの学名が一昔前の Allomyrina dichotoma となっている。一方、オオクワガタは属名は変わらなかったため学名の変更に伴いカードの記載も変えられている。

  • ただし、実在する生物を扱っている故に属名ごとの格差が大きい。「Allomyrina」「Dynastes」「Dorcus」「Prosopocoilus」といった属名の虫は多いのに「Augosoma」「Strategus(に限らずサイカブト族全般)」「Chiasognathus」「Homoderus」などの属名の虫は1種しか登場していない。

また、本作では種小名や亜種小名が和名の一部になっていれば、それが略称として用いられて甲虫名を呼ぶ事もある。ヘルクレスオオカブトの基亜種 Dynastes hercules hercules なら「ヘルクレス」、もう1つの亜種である Dynastes hercules ecuatorianos なら「エクアトリアヌス」など。

アニマルカイザー」では学名が導入されないが、カードには固有名詞付き動物含めしっかり記載されている。なお、こちらにもカブトムシが登場するが、こちらは登場時には既に変更されていたため、Trypoxylus dichotomus と記載されていた。

古代王者恐竜キング」ではジャークアーマー恐竜の固有名詞に元になった恐竜のシノニム・無効名・疑問名が固有名詞が使われた。

関連タグ

生物学 名前 分類

アンノウン(仮面ライダーアギト):名称が学名の法則に似通っている。

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