演:奥田達士
概要
『仮面ライダーディケイド』の登場人物の1人。
第2話から登場し、「預言者」を名乗って世界の先々でディケイドの邪魔をする謎の人物。
フルネームは不明。
仮面ライダーディケイドこと門矢士を激しく敵視し、各世界でディケイドが「世界の破壊者」であるという警鐘を鳴らしているとされる。
しかし、実際には士が様々な世界の危機を救っているにもかかわらず、「この世界もディケイドによって破壊された!」などと罵倒したり、他の世界に存在する仮面ライダーを刺客としてけしかけたり、ディケイドを排除するよう告げ口して回ったりするなど様々な妨害を行う。
士たちの拠点である光写真館にキバーラをスパイとして送り込むが、キバーラにも独自の意図があり、両者の利害がどれだけ一致しているのかは不明。
第7話では光夏海に「この世界、時代では会うのは初めてかな」と接触し、「君を死なせる訳にはいかない」「ディケイドはライダーバトルの中で悪魔に目覚める」等と発言していたが、その意図は不明。
ディケイドのライバルである仮面ライダーディエンドこと海東大樹とも面識があるらしく、彼の能力も把握しているため、むしろ彼に協力する形で対ディケイド要員として駆り立てようとしている節もあるが、海東の気まぐれな性格上それが上手くいくことはほとんど無い。
目的は全世界の崩壊を防ぐことにあると公言し、"世界の破壊者"であるディケイドを潰すためにスーパーショッカーの幹部になった(『MOVIE大戦2010』)こともあれば、一方で大ショッカーが総攻撃を仕掛けた際は、目の仇であるはずのディケイドを援護した(『オールライダー対大ショッカー』)こともあった。
あたかも、世界によって違った役割を与えられる士と同じように。
シナリオライターの交代など様々な大人の事情が関係しているのか、『仮面ライダーディケイド』の展開が終わってもなお正体が明かされることはなく、また「前日譚」としての「ディケイド=門矢士を憎む経緯」が特に映像作品として描写される事も未だに無いまま現在に至っている異色なキャラクターでもある。(件の経緯こそ『オールライダー対大ショッカー』でその一端が明かされているものの、ディケイドとの邂逅から憎悪に至るまでの詳細な描写が存在しない)。
正体
こういった経緯から、記憶喪失で自分探しの旅をしている門矢士以上に、正体のつかめない謎の人物といえる。
『ディケイド』のプロデューサーを務めた東映の白倉伸一郎氏はさほど細かい設定を考えていたわけではなかったようで、2012年の『スーパーヒーロー大戦』当時、「今度こそ鳴滝の謎を解こうと鳴滝役の奥田さんともどもがんばったんですけど、もう鳴滝は私たちの手には負えませんw」(†)とコメントしている。
そうなると彼の設定については、『ディケイド』前半でメインライターを務めていた會川昇氏が独自で考えていた可能性が高いと思われるが、會川氏は中盤で降板して以降は『ディケイド』本編には関わっていない。当時の脚本にも「謎の男」としか書かれなかったようで、スタッフの中でも彼の設定を把握している人はいなかったとのこと。
後に氏は『ウィザード』終盤でディケイドが登場する特別編の脚本を書いたが、こちらは鳴滝に言及しなかったため、特にその辺りの謎は明かされなかった。なおファンの間では、この特別編を踏まえて考察する人もいる。
ただ、そもそも意味があったとしても、降板して以降は物語が大きく激動し、劇場版でも米村氏などによって色々と新設定が追加されたため、当時の會川氏が考えた可能性がある初期構想が今の鳴滝の設定に当てはまるかというと微妙な所である。
中盤以降で會川氏に変わって脚本を書いた米村正二は「本当は仮面ライダーのことを一番愛していて、「壁」となることでライダーを人々の心に残してくれる天使のような存在ではないか」と自説を述べている。現在の鳴滝の設定はこうなっているのかもしれない。
また、『仮面ライダー大戦』撮影後の雑誌『THE仮面ライダーEX』インタビューで、門矢士を演じた井上正大は「鳴滝はディケイドに対する仮面ライダーシリーズファンの声を体現したもの」という説明を受けて納得した旨を述べている。
召喚したライダー
鳴滝はオーロラを使用して世界から世界へ移動する能力の他に、異世界から仮面ライダーを召喚する能力を持っており、殆どがオリジナルキャストのライダーである。この事から紅渡ら原典の世界の仮面ライダーとなんらかの関わりがあると思われるが詳細は不明。
ちなみに、召喚するライダーの傾向はダークライダーが中心であり、『HERO SAGA』や客演作品で見せた怪人に変身する能力とも符号する他、後に登場したアナザーディケイドの能力とも重なる。
声はオリジナルキャスト。
キックホッパーが原典で初登場した古寺にて、ディケイドとクウガの戦いに乱入しディケイドを倒そうと目論むが、本来の標的ではないクウガと戦い始めた事から撤退させられる羽目に。捨て台詞に「また別の地獄が待っている」と言っていたが、これが何を示しているのかは不明である。
クウガとの関連に関しては、グロンギのバッタ兄弟や青いクワガタ繫がりと思われる。
オーロラの中にシルエットが確認できる。タイガの変身者は恐らく東條悟。デルタの変身者は召喚するライダーの傾向から北崎か。
しかし、これらのライダーが召喚される事はなかった。
クウガとの関連に関しては、デルタはアルティメットフォーム同様に暴走の危険性がある黒いライダー、タイガはクウガのオープニングテーマ歌詞にもある「英雄は只一人で良い」と思われる。
- 仮面ライダーカイザ(第4話)
声はオリジナルキャスト。
直接鳴滝が召喚した描写はないがディケイドを標的にしていた為、鳴滝傘下である可能性は高い。
原典において、草加雅人がラビットオルフェノクと戦闘を繰り広げた場所であるさいたまスーパーアリーナに移動させられたディケイドの前に現れ、カイザブレイガンでディケイドを追い詰めたが、アタックライド「イリュージョン」を使用されて形勢が逆転され、撤退した。
キバとの関連に関しては、メインライターが同じ人物である事と、カイザの原典の主役ライダーであるファイズの変身者がキバの変身者同様に亜人であるが故と思われる。
- 仮面ライダーリュウガ(第11話)
ある理由から変身できない士を倒すために用意した、鳴滝曰く「最高のライダー」。
オーロラでとある海岸まで転移させられた士に襲い掛かるも、そこに駆け付けた海東が変身したディエンドに妨害され、ドラグブラッカーを召喚してドラゴンライダーキックを放つも、ディエンドの繰り出したディエンドファングに敗れ爆死した。
ファイズとの関連に関しては、ドラゴンの怪人繋がりが見られる。
- 仮面ライダー王蛇(第19話)
声はオリジナルキャスト。
響鬼の世界で封印されていたバケガニの封印を解くために召喚された。
音撃金棒を得物としているが戦闘を行う事もなく、ただひたすらに塚を破壊するだけの登場に終わる。
響鬼との関連に関しては、紫の漢字ライダー繫がりが見られる。
劇場版や後続作品での動き
『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』
大ショッカーを敵視しており、大首領となってしまった士と相対する形で夏海を助ける善人ポジションになっている。その後は一切姿を見せないが、海東などのセリフから、大ショッカーへ対抗するためのオールライダー(Wを含め)を集めたのは鳴滝なのではないかと想像されることが多い。このため、表立って手を組んだわけではないが結果的には士と協力して悪を打ち破った形となる。
『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』
打って変わって、何故かスーパーショッカーの幹部としてゾル大佐に変身。しかし実際には本人は戦わず手下の怪人をけしかけるのみで、「ディケイドォー!お前は、お前はなんなんだー!!」という台詞を吐いた。誰もが「お前こそなんなんだ」と思ったことだろう。色々と考察されることはあるものの、結局のところ彼の本当の目的が何だったのかは最後まで一切不明である。
『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』
奥田達士がリ・イマジネーションドクトルG役で出演。その正体はやっぱり鳴滝であり、いつも通りの捨てゼリフと意味深な言葉を残して消え去った。「おのれディケイド!お前がいる限り私の旅も終わらない……」 これにはさすがのディケイドも「鳴滝…… お前は一体……」と困惑していたが、正体はやはり不明のまま。
『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』
昭和ライダーと平成ライダーの争いの解説役の様なポジションで登場。敵対こそしていないが「おのれディケイド!」もやはり健在。ただし最後は「ライダーってのは、なんて素晴らしいんだ」といいセリフでまとめており、士とようやくお互い和解したかのような印象となった。
『烈車戦隊トッキュウジャーVS仮面ライダー鎧武 春休み合体スペシャル』
2014年3月30日に放映された『仮面ライダー鎧武』と『烈車戦隊トッキュウジャー』のクロスオーバー作品であり、映画『仮面ライダー大戦』の前日譚。
ディケイドを差し置いてゲスト出演。「全てのライダーの味方」を自称し(もっとも、この中にディケイドが含まれるかは不明)、葛葉紘汰にレインボーパス(オレンジ色の特別仕様だが、これは後のトッキュウ6号とは無関係のアイテムである。実際の6号こと虹野明が使用するのはこのオレンジ色のレインボーパスではなくレインボーパスの機能も兼ね備えたアプリチェンジャーである)をプレゼントして去って行った。また、レインボーラインの車掌さんとチケットくんとは面識があるらしく、彼らに対抗するかのごとく右手に鳴滝パペット人形を装備していた。
『RIDER TIME 仮面ライダーディケイドVSジオウ ディケイド館のデス・ゲーム』
『仮面ライダーディケイド』と『仮面ライダージオウ』をメインとしたスピンオフドラマ。
彼によく似た声の、ピエロのような仮面をつけた謎の男が現れるが…。
そっくりさん
ネット版『仮面ライダーディケイド オールライダー超(スーパー)スピンオフ』では鳴滝にそっくりな一般市民がディケイドに変身ポーズを教わり、仮面ライダーに変身するエピソードが配信されている。ことわっておくが、鳴滝にそっくりな一般市民なのであって、鳴滝ではない。
名前 | ライダー | 備考 |
---|---|---|
大田原正一郎(40) | 1号 | 妻に逃げられた建築作業員。改造人間でもないのに1号に変身できていた。 |
細山田マサユキ(40) | アマゾン | IT企業の株が大暴落し、一文無しになりかけた男。ディケイドに変身ポーズを教わった結果、腰巻一丁でアマゾンに変身するという奇行に出た。 |
寺林ハマグリ(40) | クウガ(※1) | 腰痛に悩まされるサラリーマン。何故か小野寺ユウスケに変身してしまい、腰痛も治らなかった |
郡山郡司(40) | 龍騎 | 僧侶風の男。龍騎に変身するが、デッキが中々Vバックルに収まらず、ようやく変身を遂げたは良いものの、ライダーバトルに巻き込まれ、リュウガと王蛇の襲撃に遭う。何故龍騎がミラーワールドから出れないんだ |
神田川優男(40) | 電王(※2) | 片足を骨折した松葉杖の男。セブンイレブンでナナコをスキャンしただけで、何故かガンフォームに変身出来ていた。ベルト使えよ。 |
たいら一平 | ディケイド | 寿司屋風の男で、ガタックのソフビを買うつもりが、ロッドフォームを購入してしまった(※3)。ディケイドライバーでディケイドに変身したはいいが、なぜかソフビになってしまった |
(※1)この回のサブタイがどこぞの忍風戦隊っぽいのは、突き出した指を曲げすぎると某忍風戦隊のポーズになってしまうから。
(※2)変身ミス時にエラー音が鳴っているが、ファイズドライバーの音声を流用している。尤も、デンオウベルトにエラー音はない。
(※3)当時、ガタックのソフビが販売終了していた事に引っ掛けたネタ。
小説
『小説 仮面ライダーディケイド 門矢士の世界〜レンズの中の箱庭〜』
鐘弘亜樹が執筆した小説作品。
本編と繋がりのないパラレル作品ではあるものの、鳴滝の正体が与えられている。
*以下ネタバレを含みます。
自分の暮らす世界に絶望して数々のパラレルワールドを渡り歩くも、理想郷が見つからないまま、ついには怪人二十面相の如く自分の存在を失い、自分の存在を繋ぎとめるべく飢餓感のままに人々の生命エネルギーを貪る怪人(あたかもリ・イマジネーションアポロガイストのように)と化したモノとして登場。
変身後である鳴滝怪人態の姿は鬼のように禍々しい代物であり、必殺技の一撃で街を吹き飛ばすという核兵器のような攻撃力を有する。
同じように世界に絶望していた海東大樹と手を組み、各世界のライダーたちの力を宿したライダーカードのエネルギーで進化を遂げ、全ての世界を無に帰し理想の世界を築き上げようとした。
『S.I.C. HERO SAGA』「MASKED RIDER DECADE EDITION -ストロンガーの世界-」
早瀬マサトによる二次創作小説。本編とのつながりは示唆されているがあくまでも東映公式ではない。しかし、上記の『レンズの中の箱庭』とは異なる鳴滝の目的についての説明が与えられている。
*以下ネタバレを含みます。
本作においては「ディケイドの介入によってその世界が本来の歴史から変わってしまう事により発生する、他の世界への影響を防ぐ」という鳴滝の役割が明らかになる。
だが、その結果発生するその世界の滅亡を平然と望んだり、茂にディケイドの抹殺を指示する等、手段を選ばぬ冷徹さで暗躍する。
しかし最後はストロンガーに殴られるというその所業にふさわしい末路を迎えた。
その後…後続作品でも登場している為、やはりというか「オーズの世界」で登場。
『MOVIE大戦2010』同様ゾル大佐としての役割であり、今回初めて原典のゾル大佐と同様の黄金狼男の姿に変身し、グリード軍団を呼び寄せるも、自らは力及ばす、クウガとディケイドに敗北した。
この後オーズの世界は鎧武の世界⇨五色の世界と移り変わっていくのだが、奇しくも五色のライダーが登場する作品に黄金狼男が久々に出演する事となった。それもご丁寧にカニレーザーも一緒に。
ディケイドが他の仮面ライダーに変身する「世界の破壊者」ならば、鳴滝は他の怪人に変身できる「世界の創造者」たる存在である事が明かされた。そもそも世界を乱す側の怪人になれる人物が何故「世界の創造者」と呼ばれる存在なのかというと、仮面ライダーが悪と同じ力から生まれる存在だからだと思われる。悪役がいる事、それが仮面ライダーの存在証明に他ならないのである。
また、チノマナコディエンド変身態がカイジンライドなる能力で怪人を召喚していたが、鳴滝が前述のように歴代の怪人に変身してみせた点や仮面ライダーの起源などから、彼がカイジンライド…ひいてはカメンライドという能力の原典になった人物なのかもしれない。
余談
- テレビ朝日の公式サイトに「プリキュアとなら私も一緒に踊るかもしれない」と書かれていたことから、ファンの間では「プリキュア好きのおっさん」という二次設定が定着している。「鳴滝ホイホイ」といえばプリキュアのことである。類似した事例に「キュア梅盛」がある。
- 代表的な台詞に「おのれディケイド!」があり、視聴者の間で「何か不都合なことがあるとディケイドのせいにする」というインターネットスラングが発生した。pixivでは仮面ライダーとまったく関係ないイラストでも、キャプションなどに「おのれディケイド!」などと書かれていると、ツッコミとして「鳴滝」タグがつくことがある。
- 第17話のラストでは鳴滝が変身音叉 音角を鳴らしてまるで仮面ライダーに変身するかのような描写となっていた(実際には光で隠されていたため不明、その後映ったのは別シーンの響鬼)。もし変身したらさしずめ鳴滝鬼といったところだろうか?
鳴滝はあまりにも謎が多いためファンの間の考察も盛んであり、ディケイドはショッカーに作られたベルトで、鳴滝はその設計者だからディケイドを悪のライダーだと思っている説などや、本来のディケイドの変身者は鳴滝であったため嫉妬で憎んでいる説、ディケイドが世界を滅ぼす未来を見たためそれを変えるために頑張った説、未来の門矢士説、そもそもディケイド自体が特別企画なので特に意味はない説など、様々な説が提唱されている。
関連タグ
スーパーヒーロー大戦 仮面ライダー大戦 春休み合体スペシャル
桜井侑斗:桜井としての彼の姿にそっくりとよく言われる。(電王の世界での士の姿も桜井を意識したものであった)
アナザーディケイド:オーロラからのライダー召喚能力など色々似通っている。
葛葉紘汰:上記の春休み合体スペシャルでレインボーラインの乗車キップであるパスを手渡した。一見その程度の関わりしかないと思われるが実は『ディケイド』以降の主役ライダーで鳴滝と直接会合したのは現時点では彼のみである