「ゾフィーさん!」
『ゾフィー!』 『ヘァッ!』
「ベリアルさん!」
『ウルトラマンベリアル!』 『デアァッ!』
「光と闇の力、お借りします!!」
『フュージョンアップ!』 『ヘアッ!』『ヌァァ!』
『ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!』
「闇を抱いて...光となる!!」
データ
身長 | 55m (※1) |
---|---|
体重 | 5万5千トン (※2) |
飛行速度 | マッハ7 |
走行速度 | マッハ3.5 |
ジャンプ力 | 1100m |
水中潜行速度 | マッハ2.9 |
地中潜行速度 | マッハ2.5 |
腕力 | 15万トン |
握力 | 9万トン |
※2 スペシウムゼペリオンやバーンマイトに比べ、5千トン体重が重くなっている
概要
ウルトラマンオーブがゾフィーとウルトラマンベリアルの力でフュージョンアップした姿。『ウルトラマンフュージョンファイト!』での属性は「暴」(赤属性)。名前の由来は恐らくベリアルジェノサンダー+ウルトラブレスターではないかと思われる。
メインカラーは黒・銀・赤。
変身時に流れるメロディは、ハリケーンスラッシュと同様、オーケストラ調だが、より荘厳で禍々しいものになっている(戦闘BGMも、勇壮さよりも禍々しさや絶望感を前面に押し出したような曲調になっており、ヒーローのテーマ曲というよりもラスボスのテーマ曲とでもいった方がしっくりくる仕上がりになっている)。
変身時の動作は初回は右腕を掲げた状態から腕を大きく乱暴に振り回してからリングを掲げるもの、以降は右腕を掲げるのを省略し腕を振り回す速度を遅くしたものになった。
変身シーンでは一瞬、ベリアルがかつて幽閉されていた宇宙牢獄が映し出されており、そこに、『ウルトラマンメビウス』最終回で見せたゾフィーの変身シーンが組み合わさる形でサンダーブレスターのぐんぐんカットが映し出される。背景は、『ウルトラマンゾフィー』のオープニングの青と黄色の光、赤黒い闇、緑色の光が順番に映る(最後の緑色の光はかつてベリアルが狙っていたエメラル鉱石が元ネタなのではという説があり、アークベリアルの色でもある)。
変身音についてはゾフィーの変身音がウルトラマンの流用であるためウルトラマンのものと同じなのだがベリアルの闇の力の影響か光が迸る音の部分からピッチが低く、変身音はドスのあるピッチの低い音になっている(ベリアルはそもそもゾフィーや他のウルトラマンのように変身シーンがないため変身音がない)。
サンダーブレスターの姿が形成される時のフラッシュ音はウルトラマンのベーターカプセル点火音をそのまま流用していてこの効果音はピッチが低くなってない。
この形態では、掛け声が野獣の雄叫びのような野太く荒々しいものになり、しゃべり方もドスが効いたものになる。
当初飛行の際には他の形態とは異なり、両腕を後ろに伸ばす姿勢を取っていた。
暴走を克服した第21話以降では、掛け声の荒々しさは抜けないものの野太くは無くなり、他のフュージョンアップ形態同様の両腕を開いた飛行ポーズで飛び去っている(ちなみにオリジンは初代ウルトラマンのような両腕を合わせたポーズ)。
初登場は第12話「黒き王の祝福」。
このエピソードでは、本来はメインを務める怪獣が描かれるOPサブタイトルの影絵にサンダーブレスターのオーブが描かれるという、異例の扱いを受けた(その後、第17話「復活の聖剣」でもオーブオリジンが描かれた)。
マガオロチに敗北し、すべてのウルトラフュージョンカードをジャグラーに奪われてしまったガイが、玉響姫から手渡されたゾフィーとベリアルのカードを使って変身。
ベリアルのカードは「闇」の属性であるためか、最初はオーブリングでリードすることが出来なかった。が、マガオロチの攻撃を防ぎぎれなくなった玉響姫を目の前で消滅させられたガイの感情の昂り(ニコ生一挙放送での田口監督のコメントによれば殺意)に合わせるかのようにリードが可能になり、この形態への変身を果たした。
そのため、他の形態と異なりただ激情に任せるような叫び声を上げて変身しており、前口上も一切言わなかった。第15話での変身から変身の際のコールを使用したが、この時はゾフィーからではなくベリアルのカードからリードしたためか「闇と光の力、おかりします!」と逆になっている。
逆の順番でリードした理由は諸説あるが、ジャグラー役の青柳氏によればこれはガイの「ゾフィーに救いを求めている心情」からであり、ベリアルの闇の力をゾフィーのカードで蓋をしようとしていたらしい。そう考えればそんな甘えた感情の元で変身したオーブが下記の惨劇をやらかしたのも当然と言えるだろう(ちなみに、ウルトラシリーズに『闇と光』というサブタイトルの回は存在するが、第15話の「サブタイを探せ!」の正解は残念ながらこれではない)。
上述したコールは当初次回予告やCM、ゲームでのみ使われていたが、第17話でついに本編初披露を果たした。同時に「闇を抱いて、光となる!」という雑誌媒体で紹介されていた決めゼリフも使用している。
容姿
赤くつりあがった両目に両肩のリベット(ウルトラブレスター)、尖った指先と言った具合に、ゾフィー、ベリアルのそれぞれの特徴を併せ持ち、ベリアル同様にかなりマッシブな体肢を持つ。
べリアルをよりヒーロー然とした姿と言えなくもないが、あまりにヒーローらしからぬ容姿であるのは否定しようも無い。
身も蓋もなく一言でぶっちゃけてしまうなら「ゾフィーの皮をかぶったベリアル」といったところだろうか。
また、初登場時にはカラータイマーと目に赤いヒビ(充血?)が入るような演出があった。
戦闘スタイル
「守るべきもののないウルトラマン」であるベリアルの姿を体現したかのような、強大なパワーを周囲の被害などお構いなしに振るうラフファイトスタイルで戦う。
つまり、守る為の戦いでは無く殺す為の戦いである。
光と闇という相反する力が合わさったそのパワーはこれまでの形態の必殺技すら通用しなかったマガオロチやギャラクトロンを、ただの肉弾戦だけで一方的に追い詰めたほど。
攻撃の際に赤黒い稲妻やオーラのようなものを纏うこともある。
防御力も相当高く、マガオロチのマガ迅雷を生身で受けても平然としており、ギャラクトロンの光線を食らっても若干たじろぐ程度でほとんどダメージを受けなかった。
下記の通り制御が可能になった後もこのような能力から、劇場版でとある相手に敗れるまではフュージョンアップ形態で唯一一度もこの姿のまま負けた事がない(後にライトニングアタッカーとエメリウムスラッガーが無敗のフュージョンアップ形態になった)という圧倒的な戦績を有している。
ちなみに「光と闇の力で戦う形態」というのは光と闇の属性を持つオリジンとの共通項であり、見方を変えればサンダーブレスターは「オーブオリジンの直接的な強化型」とも言える。
実際、最強形態であるオーブオリジン復活後も純粋な肉弾戦ではオーブオリジンをも超える強さを発揮しており、身体能力で劣るオーブオリジンは肉弾戦に持ち込まれると苦戦する事が多く、サンダーブレスターでは互角以上に戦えていたマガタノオロチや劇場版のギャラクトロンには肉弾戦で明らかに劣勢になっていた。
ちなみに意外な事にスペック上はTV版に登場した4タイプよりは腕力面が高いものの、後に登場したライトニングアタッカーとエメリウムスラッガーには逆に大きく水をあけられている(というよりもこの二つのスペックがオーブトリニティ並に高い)。
この強さを初めて目の当たりにしたジャグラーは、闇のカードを使うという想定外の事態であったこともあって
「何でだよガイ! 何なんだよ!! 一度くらい俺に勝たせろよ! コノヤローッ!!」
と珍しく感情を露にした。
第12話では変身して早々、着地と同時に現れる衝撃波で周囲のビルを破壊。
さすが暴走形態、登場時から見境なしである。
マガオロチに対しては、
頭を掴んで勢いよくビルに叩きつけた上で執拗に頭部を殴打する(しかも、肉が潰れるような妙に生々しい音まで聞こえてくる)
ヤクザキックで蹴り飛ばす(しかも2回)
尻尾を掴んで振り回しビルに叩きつける
壊れたビルを持ち上げて思いっきり投げつける
至近距離の八つ裂き光輪で尻尾を根元から切断
その切り落とした尻尾で本体を殴打した挙句、(生身で受けても平気であるにもかかわらず)マガ迅雷をガードする
といった、あまりにも荒々しい傍若無人な戦い方を見せた。
この戦いぶりは、一般市民にも不安を与えたのは言うまでもなく、ナオミの母・圭子が「なんか乱暴な人ねえ」、ジェッタが「ちょっと怖いな」と感想を漏らしていた。
特にマガオロチをビルに叩きつけるのは相当インパクトがあったのか、後期OP、『ウルトラマンオーブTHE_CHRONICLE』のOPでも映像が流用され、サンダーブレスターの象徴のようになっている。
さらに第15話のギャラクトロン戦では、登場早々ギャラクトロンに対して攻撃を加えていたゼットビートルを邪魔だとばかりに払い除けて撃墜(しかも、このシーンがゼットビートルとオーブが初めて同じ画面上に登場したシーンであった。幸い、パイロットは墜落する直前に緊急脱出装置が作動したおかげで無事だった)。
防衛チームの戦闘機を攻撃し撃墜するという主役ウルトラマン史上類を見ないことをやらかした(主人公の乗っていた航空機と事故で正面衝突した人や、敵に奪われた戦闘機を攻撃した人はいたが)。
この時は場所が人気のない森林であったため周囲に被害を及ぼすことはなかったものの、暴力を楽しんているかのような笑い声を時折上げ、体内に取り込まれていたナオミの悲痛な絶叫を無視してギャラクトロンへ激しい攻撃を加えるという見るに耐えない光景を繰り広げることとなった。
ベリアルの力に目が向きがちでもう一方のゾフィーの力はベリアルの力に押されてサンダーブレスターにあまり反映されていないように見えるが、登場時に体の赤い部分が発光しており、第12話では敵を倒した後普通に何もせず飛び去り、第15話ではジェッタの叫び声を聞いて一瞬我に返ったり、ギャラクトロンを撃破した後放心状態になったまま消え去ったりと、良心が全く残っていないわけではないような描写があることから、ガイ本人が闇の力を制御できていないのにこれだけで済んでるのはベリアルの力に飲み込まれて過度に暴走しないように必死に抑え込んでいるからではないかという解釈も存在している。
また「オーブの変身はカードから力の片鱗を借りているだけであり、そこに強い意志の類は介在していないため、最強クラスの光の力と闇の力を制御するのはガイの責任であり、闇を認めないから暴走したのでは」という解釈もある。
また、ベリアル自身もウルトラゼロファイトでのゼロとの会話から「守るべきもの」の重要性に気がついたこともあり近年のヒーローショーなどでは単純な悪役以外の役回りも多くなっている(もちろん純粋な正義の味方では無いが)。そのため、サンダーブレスターはベリアル以上にタチが悪いとも言われている(そもそも悪役であるため理性を失っての暴走は一度も行っておらず、毎回目的を果たすために闇の力を行使している)。
ちなみにここまで読んでベリアルの闇が原因でオーブが暴れているかのように感じたかもしれないが、ウルトラフュージョンカードは本人が人形化しているスパークドールズと違いウルトラ戦士の力を宿しているだけであり、そこに元の戦士の意思や思想は一切反映されていない。
つまりオーブが暴走したのは、闇の力を使うと決意したにもかかわらず自分の持つ心の闇を恐れて認められず、自身の心の闇を制御できなかったガイ本人の心の弱さが原因だったのである。上述したように特に今回の一件は「甘え」ともとれる感情込みであったため、暴走してしまったのも当然と言える。
そしてこの姿を制御できるようになるのは、自分の闇を受け入れた上で光を失わず、そして自分を信じる勇気を取り戻すまで待たなければならないのであった。
必殺技
詳細は後述するが、技名を叫んで繰り出した必殺技は必ず決まっていないという妙なジンクスがある。
- ゼットシウム光線
右手に闇、左手に光のエネルギーをチャージした後、両手を十字に組んで発射する必殺光線。
発射時はスペリオン光線同様前面に光の輪(白と赤黒い稲妻)が出現する。また、十字に組む際の腕の振り回し方はネオマグニウム光線に似ている。
マガオロチに命中した際には命中した個所から肉片が飛び散っていた。
第12話でマガオロチを、第15話でギャラクトロンを、第21話ではハイパーゼットンデスサイス・リザーバーを倒した。しかし第17話でゼッパンドンに使用した際はゼッパンドンシールドに防がれ通用しなかった。
他の形態のように技名を叫んだのは第17話のみ。また、初使用時以降は前面に発生する光の輪の演出がやや省略されている(チャージ動作なしのものだと考えると、必殺光線の中では相当な威力を持っていると思われる。省略せずにしっかりとチャージしていれば、ゼッパンドンのシールドも破れたかもしれない)。
『ウルトラマンR/B』ではオーブリングNEOを使用することでウルトラマンロッソフレイムも使用した。なお、この時、カツミは技名を言ってないが、オーブリングNEOから音声が流れたためかある意味またジンクスが発動したようである。しかし、第12話で倒してはいないものの、ダメージを与える事は出来た。そして『セレクト!絆のクリスタル』ではロッソグランドが使用してメカゴモラを撃破し、(本人ではないものの)ようやく負のジンクスから解放された。
ウルトラマンゼットの必殺技の一つのゼスティウム光線はゼットシウム光線とは逆に技名を叫ばないと不発に終わり、叫ぶと敵を倒すというジンクスがある。
総じて本編後では「サンダーブレスターはパワーを生かして活躍するものの、ゼットシウム光線は効かない!とネタにされたスペリオン光線よりも活躍していない」という本編の強さが嘘のような不遇光線となってしまっている(唯一活躍したのがエックスダークネスとジードダークネスの牽制技連発を相殺した時くらい)。
名前の由来はZ光線+デスシウム光線。
技名に対し実際の技はおそらくM87光線とデスシウム光線の要素が強く出ている可能性があり、光線音と光線エフェクトはM87光線、雷エフェクトはデスシウム光線のものと思われる。
- ゼットシウム光輪
ウルトラマンの八つ裂き光輪と酷似した赤い色の光輪を作り出す。ただし一度も投げつけて使った事はない。
かつてウルトラマンマンがキングジョーブラックなどに使用したように手持ち武器状に使用し、マガオロチの尻尾を一撃で切断するほどの凄まじい切れ味を見せた。
ギャラクトロン戦ではメリケンサックのように、マガタノオロチ戦でのはバリアのように防御用途で使うなど応用性は高め。
名前の詳細は不明だったが、『ウルトラマンフュージョンファイト!』の第4弾にて追加された技でついに判明した。
ちなみにゾフィーもベリアルも(ニセ物の方が使用するまで)八つ裂き光輪系列の技を披露したことはなかったため、オーブトリニティ同様に光輪系の技を主体としているオーブ自身の要素と言えるか。
- サンダークロスガード
防御技。バリアは展開せず、腕をクロスさせて発動。
第23話で初使用し、ジャグラーの蛇心剣新月斬波を辛うじて防いだが、威力を完全に殺すことはできず、衝撃で吹っ飛ばされてしまった。
由来は『ベリアル銀河帝国』にてウルトラゼロキックを防いだ時のベリアルの構えあるいはベリアルジェノサンダー+『ウルトラマンゾフィー』でゾフィーが宇宙船の攻撃を防ぐのに使用したウルトラクロスガードだと思われる。
- Zクロー霞斬り
相手に高速で接近し、クローで敵をすれ違いざまに斬り裂く。
名前の由来はカイザーベリアルクロー+ゾフィーがウルトラマンボーイのウルころで使用したウルトラ霞斬りだと思われる。
存在が「完全超全集」にて判明した劇中未使用技。
- Zクローウィップ
クローから伸びた電撃をムチのように振るう技。ベリアルが使用していたベリアルウィップが元ネタと思われる。
存在が「完全超全集」にて判明した劇中未使用技。
- スピンドルZアタック
回転ダブルラリアット。第21話にてハイパーゼットンデスサイスに対して使用し、ハイパーゼットンデスサイスをグロッキー状態にした上でゼットシウム光線に繋げた。
- 光の斬撃(正式名称不明)
第24話にて使用。マガタノオロチの触手を切り落とした。
暴走の危険性とその経緯
サンダーブレスターは、中間タイプに相当する位置づけでありながら他3タイプに並列する扱いをされており、他3タイプに続く形で初回放送開始直前に姿と名前が公開されたが、能力の詳細は本編に登場するまでほとんど明かされなかった。
しかし片割れのベリアルが悪のウルトラマンであることから、情報公開当初からファンの間では「嫌な予感しかしない」「悪落ちや暴走してしまう危険性も孕んだ形態なのではないか?」といった憶測が立てられていた(実際本編でも、第7話にて予知能力を持つ少女:ハルカが、悲しげな表情でベリアルのウルトラフュージョンカードに手を伸ばすガイの予知夢を見るという少々不吉な演出がとられている)。
そしてついに登場した第12話ではファンの予想通り、荒ぶる力で街の被害を拡大させている。
とはいえ町の被害こそ気にしていないような戦い方はしたものの、前述したように敵を倒した後は普通に何もせず去っており、「対戦相手どころか見境なく街を破壊する」などの暴走状態にまでは陥ることはなかった。
しかし、玉響姫からは「その力はあまりにも強大…強すぎる力は、災いをもたらすこともあります」と警告され、ジャグラーからは「楽しかっただろう? 強大な力を手に入れて、すべてを破壊するのは」「所詮おまえも俺と同類だ。楽しめ」という意味深な言葉をかけられており、ガイが怒りに身を任せるように叫び声を上げながら変身していたことも相まって、今後その強大な力に飲み込まれていく展開がないとは言い切れないことが示唆されていた。
そしてガイも第15話で「俺にはあんた(ベリアル)を制御できない」と発言している。
第15話ではギャラクトロンの暴挙を止めるべく意を決して変身したものの、視聴者からの心配通り力を制御できずに暴走してしまう。
その様子を見たジェッタが「オーブ止めてよ!」と泣きながらシンに懇願しても、シンはカラータイマーの点滅を見て「オーブはもうすぐ消えてくれます」と匙を投げる始末であった。
ジェッタの悲痛な叫びを耳にして一瞬逡巡するような仕草は見せたものの、ギャラクトロンが攻撃を仕掛けたために戦闘が再開されてしまい、最後にはナオミを救い出すことなく、しかも抵抗をやめたギャラクトロンに容赦なく光線を打ち込んで爆砕するというヒーローにあるまじき行動を取ってしまい、体内に取り込まれていたナオミに瀕死の重傷を負わせるという失態を犯してしまう。
それは強大な力を制御できずに周囲に甚大な被害をもたらし、大切な人をも失ってしまったあの時と全く同じ状況でもあった。
結果、ジェッタからは「オーブは味方だって信じてきたのに」と失望されるまでになってしまっており、さらには一般市民からも怪獣と同列の危険な存在と見做されるようになってしまい、国会前で連日「オーブを許すな!」と叫ぶデモが発生。ビートル隊も「次に出現した際には攻撃対象とすることもあり得る」という一触即発の関係になってしまう(過去のシリーズでもウルトラマンの行いが一般人の不信感を買ったケースやウルトラマンを怪獣と同列の存在と見做す差別的な一般人自体は何度もあったが、ここまで悲惨なものはなかった)。
ガイ自身も「俺は、オーブを許せない」と自虐的な言葉を漏らし、自責の念から彼女の元を離れ、二度とベリアルの力は使わないことを固く心に決め、「闇の力を制御できる強さ」を求めて再び放浪の旅に出るのであった。
第16話のゼッパンドン戦では、闇に堕とそうと目論むジャグラーに「闇の力を頼れ…このまま滅びるか、闇に堕ちるか、お前にはそれしかないんだ!」と挑発されたが、上記の事件のためにサンダーブレスターに変身することなく撤退している。
暴走の克服
しかし第17話では、マガゼットン戦で死亡したと思っていたナターシャ・ロマノワが生存していたことと、ナオミがナターシャの子孫であることを知ったために、ガイは『闇を恐れない』決意を抱いて3度目の変身を行った。この時点で今まで口にしていなかった決めゼリフを口にしており、自我を取り戻していることがうかがえる。
はじめはいつも通りと言わんばかりの勢いで鉄塔を武器にゼッパンドンに攻撃したが、効かなかった。また、建造物を武器に転用したウルトラマンはこれまでにも存在する、さらにゼッパンドンのみならず、オーブを攻撃対象とすることを決定したビートル隊からの攻撃をも受けてしまう。
しかしナオミの呼びかけが功を奏し、完全に暴走を克服。苦戦しつつもSSPメンバーをゼッパンドンの攻撃から庇い、さらにはオーブオリジンへの覚醒を果たすこととなった。
その後、SSPの中継映像を根拠に、ビートル隊もオーブを攻撃対象から除外することを決定している。
この回ではほぼ無双していたマガオロチ戦やギャラクトロン戦とは一転して苦戦していた事から、闇の力を制御できるようになるとサンダーブレスターの強さ自体も弱まるという皮肉な解釈もできる(オーブオリジンの強さを際立たせるための大人の事情かもしれないが、ティガダークのような類例は存在する)。
それでも、ゼッパンドンの猛攻を浴びながら大ダメージを受けた様子がなく、カラータイマーが点滅しないどころか人を庇う余裕もあるほどのタフさを見せている。
以降は、強敵相手に度々変身している。
第21話では、ハイパーゼットンデスサイス・リザーバーをオーブカリバーで空中に弾き飛ばした後に変身、背後から拳の一撃で地面に叩きつけてからスピンドルZアタックをたたき込み、満身創痍になったところへゼットシウム光線でとどめを刺した。
相手がコントロールを失っていたとはいえ、オーブオリジンでも苦戦した相手を撃破するという、強さの健在ぶりを見せつけた。
そしてこの時は決めゼリフを口にせず、ゼットシウム光線の技名も叫ばなかったものの、暴走を完全に克服したため、これまでの戦いで見せた周囲の物を破壊する行為は一切していなかった。
第23話では、巨大化したジャグラスジャグラー魔人態に対して変身。序盤の格闘戦こそ善戦するものの、ジャグラーの会得した必殺技・蛇心剣新月斬波の攻撃は防ぎきれず、その後、オーブオリジンに変身する。
なお、今回は登場時に身体の赤い部分が光るだけでなく、カラータイマーが白く光る演出がなされている。今回も、第21話に続き暴走することはなかった。
第24話ではマガタノオロチに対して変身。多彩且つ圧倒的なマガタノオロチの攻撃をすべてさばききって接近戦に持ち込み善戦したが、ほぼ無双できたマガオロチの成体だけあって次第に劣勢になっていき、オーブオリジンに変身した。
平成以降のウルトラシリーズでのラスボスとの初戦では、ほぼ一方的に叩きのめされるケースが大半を占める中、互角に近い戦いを展開、さらに、苦戦した状況からオーブオリジンに変身するだけの余裕すら作れたのはやはりさすがというべきか。ちなみに他の登場時と異なりこの時の構えのみ、ゾフィーに近いヒーローらしい構えとなっている。
劇場版ではガピヤ星人サデスとの市街地戦にて、活動時間内に決着をつけるべくスペシウムゼペリオンからこの形態に変身。相変わらずの圧倒的戦闘力を見せつけサデスを追い詰めるが、デアボリックにエックスが宝石化されたのに気を取られ、その一瞬の隙を突いたサデスに一撃を食らい吹っ飛ばされてしまい、唯一の敗北を喫している。
『ウルトラファイトオーブ』ではTVシリーズに登場したフュージョンアップ形態の中で唯一の未登場となっている。完全超全集によれば「ベリアルの要素を持つサンダーブレスターはあえて外されている」とのことで、一部視聴者からはゼロの横でベリアルの力を使うわけにはいかないからでは?という意見もあったが、最終話でのことを考えると……。
その次回作の劇場版では、心置きなくこの形態も登場。プリミティブとの共闘も実現した。この時、ジードからは父親のベリアルの力を使っていたことから、「(ベリアルや自分と)似てる!?」と困惑されたが、オーブからは「気にすんな!」と一蹴された。
ギャラクトロンMK2相手にかつてのギャラクトロンと同様に格闘戦で攻めるが、ゼットシウム光線の技名を言ったら決まらないジンクスが今回も発揮され、レッキングバーストとの同時攻撃で撃破できなかった。
『ウルトラギャラクシーファイト』ではジードダークネス、エックスダークネス戦で使用。2対1という不利な状況であっても二人のダークネス相手に格闘戦で互角に渡り合うなど相変わらずの強さを見せつける。その後は両者の光線をゼットシウム光線で相殺後、ライトニングアタッカーと交代した。
第3作である『ウルトラギャラクシーファイト運命の衝突』でも登場。
ギナ・スペクターの光の鞭を引き千切り、ゼットシウム光線を放ったが、技名を叫んでしまったので命中出来ず、避けられてしまった。
そして共闘してた後輩のブルグランドの「アースブリンガー」も巻き添えで避けられてしまった。
余談
配信版では、よりにもよってマガオロチに対して上記のような荒々しい戦いを繰り広げているシーンで、赤い通り魔ことレッドマンの配信の宣伝が挟まれた。どう考えても円谷は狙っていたとしか思えない。ちなみにこれは『ウルトラマンオーブTHE_CHRONICLE』の該当回でも行われた。
上記の例は後の回でも続き、ついにはレッドマンのイベントである赤いアイツ展にてサンダーブレスターのグッズが先行販売されるなど、やはり確実に狙っているようにしか見えない。以前、田口清隆氏が呟いた『「レッドマン』撮りたい。』が間接的にだがサンダーブレスターで叶っているのかもしれない……。ちなみに田口氏は雑誌インタビューで「建物を盛大に破壊するウルトラマンがやりたかった」という趣旨のコメントをした事もある。
挙句の果てにはニコニコ動画にサンダーブレスターの戦闘シーンのBGMをレッドマンのものに差し替えた動画が投稿される始末(タグも「だいたいあってる」「違和感仕事しろ」「予算のあるレッドマン」「消されたから勝ち」って…)。
初登場の回となった第12話の「ウルトラヒーロー大研究」で紹介された怪獣はブラックキング(2話前に登場している)。ウルトラマンジャックはこの怪獣と初めて戦った際、愛する人を奪われた直後の激しい怒りと復讐心をむき出しにして変身しており、奇しくも今回のガイの変身状況と似ている。
そして、二度目の登場となった第15話の「ウルトラヒーロー大研究」で紹介されたウルトラ戦士は、奇しくもかつて闇に魅入られたことがある戦士・ウルトラマンティガだった。
そのヒーローらしからぬ戦いぶりに衝撃を受けた視聴者は多かったらしく、Twitter上でも放送終了後の数時間にわたって、「#ウルトラマンオーブ」「サンダーブレスター」「ベリアル」といったワードがトレンドに上がっていたほどである。また公式配信の動画もYouTubeでは1週間の累計で当時過去最高の75万再生を突破、中国の動画サイトでも4億回再生を記録している。ちなみにその後YouTube公式配信での再生回数記録を塗り替えたのはこの人。
これまでの特撮ヒーローものにも闇の力(あるいは悪しき力)に染まって暴走してしまう展開がなかった訳ではないが、「悪落ちした姿」「敵に操られた時の姿」としてしか描かれず、克服するにしても何らかの形で捨て去り使われなくなるのがほとんどだった。しかし、このサンダーブレスターは捨て去るのではなく文字通り「闇を抱いて」暴走を克服し、以降もヒーローとしての活躍を披露したという点で異色の姿である。
最強タイプたるオーブオリジン登場までの活躍期間こそ短かったが、それが返ってオーブが心の弱さを克服するストーリーを印象付け、以降も中間タイプのジンクスに反して高い身体能力を活かした活躍をした事から、視聴者からの人気も高い。
次回作『ウルトラマンジード』は、この闇の戦士でもヒーローとなったサンダーブレスターの活躍がなければ生まれなかったかもしれない。ちなみにサンダーブレスターが初登場した回の時期に『ジード』の企画が始まっていた。
そして、闇の力を内包したウルトラ戦士の戦闘形態はこれ以降も登場し続けることになり、いずれも暴走することはなかった。
これまでのシリーズでは光と闇の対決が描かれた『ティガ』や『ネクサス』では、「光=絶対正義、闇=絶対悪、闇は否定されるべきもの」という悪い言い方をすれば極端な描かれ方をされてきたが、本作を皮切りにシリーズは「闇の力も使い方、向き合い方次第」という闇を否定しない新しい路線へと大きく舵を切ることとなった。
シリーズの作劇の面においてもこのサンダーブレスターの登場は極めて大きな転換点になったといえるだろう。
ゾフィーとベリアルの共通性に関してはわかりにくい所があり、登場当初はハリケーンスラッシュと同じく「なんでこの組み合わせなの?」という疑問の声が多かった。
これについては、「光の国の出身」以外では「5人組の上司」であろうか。ゾフィーは「ウルトラ六兄弟の長男」、ベリアルは「ダークネスファイブの主」となる。
このほか、
- 「光と闇・両勢力の“最強戦士”」(ゾフィーは宇宙最強クラスの光線・M87光線の使い手であり、ベリアルも最凶最悪と謳われたほど強大な力を持つ悪トラマンである。ただゾフィーはベリアルに二度も負けているため「最強」という言葉で釣り合うのかを疑問視する意見もある)
- 「明確な人間態を持っていない」
- 「エンペラ星人と関連がある」
- 「ウルトラの父との関係」(ベリアルは言わずもがな、ゾフィーも亡父がケンの親友だった。後者は初期の児童誌設定だが、後の『ギャラクシーファイト』などでも両名の絡みは少なからず見られる)
- 「力を追い求めた時期があった」(ベリアルはともかくゾフィーにそんな頃があったか?と思う人もいるだろうが、そもそもM87光線は競技会で光線温度87万℃の新記録を叩き出したことからの命名であり、ゾフィーもそういう面で力を追っかけた時期はあったのかもしれない)
などが挙げられている。
更に言えば、ウルトラマンジードの形態プリミティブの例を考えれば、「最初」という共通点も当てはまる(ゾフィーはウルトラ兄弟の長男という最初の立場、ベリアルは悪人の存在しない光の国で初めて悪に落ちたウルトラマン)。
二度も戦って敗れたベリアルを抑え込んでいるという立場もあり、pixivではサンダーブレスター絡みで描かれるゾフィーが苦労人扱いされる事も多い。
念のために二度言っておくが、ベリアルはそもそも悪役であるため理性を失っての暴走は一度も行っておらず、毎回目的を果たすために闇の力を行使しており、ウルトラフュージョンカードは本人が人形化しているスパークドールズと違いウルトラ戦士の力を宿しているだけであり、そこに元の戦士の意思や思想は一切反映されておらず、オーブが暴走したのは、闇の力を使うと決意したにもかかわらず自分の持つ心の闇を恐れて認められず、自身の心の闇を制御できなかったガイ本人の心の弱さが原因であり、少なくともこれに関してはベリアル(それ以外では散々悪行を行ったが)に非がない。
それどころか、一方で上記のように「むしろ昭和作品での扱いでストレスの溜まったゾフィーが暴れており、ベリアルはそれを抑えている」というネタも存在しており、その後のベリアルの力を使った戦士が一切暴走しなかったこと、さらには厳密には別人だがこの人などの行動も相まってその説が盛り上がることになった。
当初のデザインは、目から口元にかけてを他の形態と共通の形状で検討されていたが、ベリアルの要素がうまく取り込められなかったため、全面的に異なる形状とされた。また、頭部の色は黒で検討されていたが、こちらは逆にベリアルの要素が強くなりすぎるため、通常のウルトラマンと同じ銀色となった。
それでもデザイン面において「ゾフィーの要素がほとんどない」と言われることが多いが、その一方で胸回りはゾフィー要素が濃く、またカラーリングそのものは本来の姿及び全形態に共通している赤、黒、銀のみであり、むしろ「ベリアルの要素が顔と筋肉だけでそっちの方が少ない」という意見も存在する。
掛け声は演者の石黒英雄の声を加工したものではなく、石黒英雄自身の地声であり、手で口を覆う形で声を出している。
関連タグ
ウルトラマンオーブ オーブ(ウルトラマン) フュージョンアップ
鬼畜ヒーロー レッドマン バカヤロー!! 帰ってくれウルトラマン
イーヴィルティガ - 力を制御できず暴走してしまった戦士繋がり。その経緯から悪のウルトラマン扱いされる事が多いが、こちらの暴走は一体化した人間側に理由があり、本人はあくまで正義の戦士である。
ゼロダークネス - ベリアル陛下に体を乗っ取られたウルトラマンゼロ。ある意味先駆者。ちなみに玩具『DXオーブリング』ではゼロとベリアルのカードを組み合わせるとゼロダークネスの音声が聞ける。
サンダーアロー - ベリアルの元ネタでは?と一部から言われている悪のウルトラ戦士。ネーミング構成が近いのとベリアルにサンダーのイメージがほとんどないためか、彼の要素もあるのではと一部で言われている。
サンダーミラクル - ベリアルとウルトラマンダイナ・ミラクルタイプのフュージョンアップ形態。こちらは「大力無双の超能力を発揮するが、それゆえにパワーの制御にも注意が必要なフュージョンアップ形態」と説明されており、さらにサンダーブレスターよりもベリアルの要素が強く外見に出ている。「大丈夫なのか……?」と思われていたがストロングタイプが元とはいえダイナの別のフュージョンアップも似た体系だったため両方の要素が出たのだと思われる。
サンダーストリーム - こちらは悪のウルトラマンであるベリアルと(地球のためとはいえ)一度人類滅亡を企てたウルトラマンアグルというもはや嫌な感じしかしない組み合わせである。本編に出なくて本当によかった。
ブレスターナイト - ゾフィーとウルトラマンヒカリのフュージョンアップ形態。ゾフィーを使った至って普通の組み合わせであるため、サンダーブレスターの扱いを知るファンからは「ゾフィーは元々こちらでフュージョンアップしたかったのでは?」という声もちらほら。また、ヒカリは後述するジードの使用するアイテム「ウルトラカプセル」を開発した科学者であり、数奇な運命にある。
プリミティブ - ウルトラマンジードのベリアルと初代ウルトラマンのフュージョンライズ形態。ジードはベリアルの息子であるためか、サンダーブレスターのような暴走は起こっていない。
ロイヤルメガマスター - ジードのベリアルとウルトラマンキングのフュージョンライズ形態。こちらもある意味で「光と闇の最強戦士」な組み合わせである。
アトロシアス - 『ウルトラマンジード』において登場したベリアルの新たなる姿。最終話でジードに折れた橋を持ち上げ叩き付ける凶器攻撃を披露し、奇しくも本家に当たるはずのベリアルがサンダーブレスターの凶器攻撃を逆輸入することとなった。
ウルトラマンオーブダーク - オーブの力が悪用された存在。変身者は別人。
戌神ころね - PS用ソフト「ウルトラマン」にて、ヤクザキックやマウント連打を多用するというサンダーブレスター顔負けの荒々しいプレイを展開したことがある。
ザンドリアス(道理サチコ - 「身に宿した強大すぎる力を制御できずに暴走してしまい、街に甚大な被害を齎す」という同じような事態を引き越こした人物。これが原因なのか次回作『ジード』でも似たような形で登場した。