ドイツ
どいつ
概要
ドイツ連邦共和国(ドイツ語:Bundesrepublik Deutschland、英語:Federal Republic of Germany)は、中央ヨーロッパ西部に位置する連邦共和国。同国の領域は1990年10月のドイツ再統一によって、東ドイツを構成していた15県と東ベルリンが編入されて現在の16州となった。
主要都市としてフランクフルト、ハンブルク、ミュンヘン、ケルン、デュッセルドルフ、ドルトムント、ドレスデン、ヴォルフスブルク、シュトゥットガルト、ボンなどがある。他はドイツの都市・地域名一覧を参照して欲しい。
中東・アフリカなどからの移民も増えているが、国民の大半は民族としてのゲルマン系のドイツ人である。宗教はキリスト教のプロテスタントとカトリック派がそれぞれ約30パーセントを占める。
1993年11月にヨーロッパ連合へ発展した1957年3月の欧州諸共同体の原加盟国である他、1995年3月以来シェンゲン圏・1999年1月以来ユーロ圏の国でもある。またNATO加盟国・G7及びG20参加国などである。
世界第4位の経済力を有し、世界最古の国民皆保険制度を含む包括的な社会保障を特色とする、非常に高い生活水準が実現されている国である。
地理
北はデンマーク、東はポーランド、チェコ、南はオーストリア、スイス、西はフランス、ルクセンブルク、ベルギー、オランダと国境を接する。北部は北西側が北海、北東側はバルト海に面する。大きく分けると北部は比較的やせ地が多い平原で、それが徐々に標高が高くなっていく中部、アルプス山脈のふもとの南部と移り変わっていく。国土全体は低地や平地が多く、海に面する北部よりも山岳地帯の南部の方が寒冷とされる。最高峰は「ツークシュピッツェ」(Zugspitze)というアルプス上の山で、標高は2,962メートルである。
歴史
紀元前から中世前期
紀元前にライン川の東からエルベ川に至る森林地帯にゲルマン民族と呼ばれる人々が居住した。多くの部族に分れていた彼らは度々西方のガリアへの侵入を繰り返し、ついにローマ帝国と対峙する事になったが、交易などの交流も続いた。
やがてローマ帝国の弱体化に伴い、多くのゲルマン人が傭兵などとして西方へ移住した。4世紀にはさらに東方からの民族移動がきっかけとなって、後に「民族大移動」と呼ばれる大移住が行われた。ゲルマニアには多くの部族が小国を築き、やがてカール大帝がこれらの諸国をフランク王国へ統合された。これが9世紀に分裂し、中世の東フランク王国を経て後の神聖ローマ帝国が形成される。
中世後期
神聖ローマ帝国の皇帝は、肩書きとしてはローマ教皇に認められたキリスト教世界最高位の世俗君主とされていた。しかし建国から長くはドイツ諸国の君主達によって選出される存在であり、帝国は地方分権が非常に強い連立国であった。
歴代の皇帝は諸侯の力を削ごうと努力したが、神聖ローマという名目とローマ教皇との対立などからイタリアへの介入が長く続いた時代もあってドイツの統一化が進まなかった。ようやくオーストリアのハプスブルク家が皇帝の世襲化に成功するが、プロテスタント勢力の勃興を発端とする宗教戦争・さらに周辺国に巻き込まれた30年戦争を機に、皇帝の権力が一気に下がって諸侯が乱立しているのとそう変わらない状態となってしまう。
近世から現代
こうした状態の中、後にドイツ人地域の覇権を巡って争うことになるオーストリア帝国とプロイセン王国が台頭した。プロイセンは北東部を中心に、オーストリアは南東部を中心にまとまりを見せながら対立を深めていく。ナポレオンの侵略を受けて神聖ローマ帝国が瓦解した後には、民族主義を掲げてのドイツ統一運動が始まった。
1871年1月にオーストリアとフランスに続けて勝利したプロイセンが、ドイツの統一を実施してドイツ帝国が建設される。この頃のドイツは重工業の一大発展を遂げて列強の1つと見なされるも、当時のヨーロッパの中では植民地獲得に出遅れて後に周辺諸国との軋轢を生むきっかけとなる。
1914年7月から1918年11月まで続いた第一次世界大戦に敗北して帝政は廃止された。民主制のワイマール共和国体制となるも、戦勝国側による戦後処理に著しい不備があった上に、世界恐慌をきっかけとする大不況の中で民主制は機能不全に陥る。また共産党とナチスという民主主義を否定する立場の政党が、現状への不満を吸収して議会を左右するようになり、議会の機能停止を受けて大統領命令で実質的な政治が動くようになった。
1933年1月にヒトラー率いるナチスがヒンデンブルク大統領の信任を得て台頭した。モータリゼーションや再軍備政策などによって深刻な経済状況をある程度立て直すものの、強大な恐怖政治を行使し、ドイツの生存圏の東方拡大を掲げイデオロギーとしての第三帝国を宣言した。ポーランド・チェコを侵略し、アメリカ・イギリス・フランス・ソ連と対立して第二次世界大戦を引き起こすも敗北した。
1945年9月の終戦後は冷戦体制下で上記4カ国軍による占領により、国土は西ドイツと東ドイツに分断された。ベルリンの西側占領地域である西ベルリンは東ドイツの領内に取り残され、ソ連の圧力などもあって東ドイツが建設した壁に囲まれる。その後ソ連の弱体化と東側諸国の民主化運動が進み、1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、1990年10月にドイツ連邦共和国として再統一を果たした。
民族
同国の民族の歴史は驚くほど新しく、中世初期にはドイツ人という概念すら存在せず、神聖ローマ皇帝の支配下にあるフランク人・ザクセン人・アレマン人・バイエルン人といった諸民族の集まりに過ぎなかった。言語は同じ「高地ドイツ語」の派生とは言え、もはや違う言語のようであったし、文化の差も大きかった。
ドイツ(Theodisci)というのはイタリアから見たこれらアルプス以北の諸民族を指し、ずっと後世の16世紀になって神聖ローマ皇帝の称号にドイツ人の皇帝という概念を含むようになる。これら諸国がドイツという一つの民族であるという自意識を持つのは、ナポレオンの侵略をうけてフィヒテが「ドイツ国民に告ぐ」という講演で国民国家形成を呼びかけて以来となる。言語については、マルティン・ルターが聖書を翻訳する際に、ドイツ各地の言語を分析しながら出来るだけ分かりやすい標準的なドイツ語表現を作り上げた。このルター訳聖書を元に広まったのが現代ドイツ語ということになる。
普仏戦争でついにドイツ帝国が成立するが、これもプロイセンをはじめとした諸邦の集合体に過ぎず、旅券が領邦ではなくドイツ国から発行されるようになるのはヒトラー政権下のことであった。少数民族にはデンマーク人、ソルブ人、シンティ、ロマがいるが、移民の受け入れも多くトルコ系が最も多い。
政治
かつて世界で最も先進的・民主的と称賛されたワイマール共和国が、ナチスによる破滅的な世界大戦の敗北に終わった経験が強く政治体制に反映している。西ドイツ成立時に東西統一の後に憲法を制定することにして、暫定的な憲法としてドイツ連邦共和国基本法という法律が作られたが、結局東西ドイツの統一が果たされた後も、この基本法が実質的な憲法として用いられている。
帝政時代・ワイマール共和国は皇帝・大統領といった元首に強大な権限があったが、その暴走が大戦を招いた反省から今の大統領は象徴的な職務に徹している。連邦議会は比例代表制で議員を選ぶ。しかしその比例代表制の小党乱立による政治混乱もナチス台頭の原因となったので、5パーセント条項が導入された。つまり得票率5パーセント未満の政党は議席を得られず、議員が1人や2人しかいないような小政党の乱立を阻止する。さらに自由民主主義を破壊する目的を掲げた政党や個人の活動と人権を禁止・あるいは一部停止する「闘う民主主義」という制度を取り、共産党やネオナチ政党は実際に活動禁止処分となった。連邦議会における首相選挙で過半数を得た者が首相となり、実質的なドイツの行政権の最高責任者となる。
ナチスはドイツ史上稀に見る中央集権体制を取ったが、これも連邦制に戻る。ドイツは州に分かれて各州は憲法と首相を持ち、行政権・司法権とも州レベルの権限が強くなっている。中央には先述の連邦議会に加えて連邦参議院という諸国の上院にあたる組織がある。これは各州から送られた代表による会議で、中世の諸侯会議の流れにある組織である。なお基本法の改正をはじめとした、州の権限に関わる法案の審議と議決を行う権限がある。
経済と科学
概ね近代以降は政治・自然科学・工学・医学・哲学・芸術など様々な分野が著しく発展し、多くの外国の政府・企業・個人が人材派遣や留学するなどして規範としてきた。
現在はG7と欧州連合の一角を成す国であり、世界屈指の工業製品輸出国である。自動車ではガソリン四輪車やディーゼルエンジンが発明される。メルセデス・ベンツ、ポルシェ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなどのメーカーやブランドは世界的に有名で人気も高く、主要産業として経済を支えている。第二次大戦中には液体燃料ロケットの技術開発も進んでおり、現在は航空宇宙工業や軍備装備工業も盛ん。なおインテルとAMDの最先端プロセッサのパターン焼着装置は現在世界で3社しか製造しておらず、その1つがドイツのカール・ツァイス社である(残り2社は日本のニコンとキヤノン)。医療産業も発達しており、メルクやバイエルといった世界的な製薬メーカーがある。
社会
ドイツの治安は良く、スリなどはごく一部の治安の悪い区域でしか見られない。また官民共に環境問題への関心が高く、長い歳月をかけて脱炭素といった問題に取り組み、一人当たりのCo2排出量において日本を下回ることに成功した。
他の国同様社会問題も多く抱え、低学歴層の失業率の高さ・地域による経済格差はたびたび問題視されている(旧西ドイツ側が富裕層が多く、旧東ドイツ側が貧困層が多い)。他の先進諸国と同様に少子高齢化も深刻で2013年に超高齢社会に突入し、国民の中央年齢は日本とほぼ同じ約45歳である。
移民問題については誤解する人も多いが、西ドイツ・東ドイツ・現在のドイツはそもそも移民に寛容である。西ドイツは戦後の労働力不足を補うためにイタリアやトルコから労働者を多数受け入れたし、東ドイツはベトナム・中国・セネガルなど、他の社会主義国家から留学生を受け入れた。そういった層の一部がドイツに移民して今はその2世3世が「ドイツ生まれのドイツ人」として生活している。象徴的なのがトルコ移民の子孫たちで、かつては中道左派の社会民主党を主な支持層としていたが、現在ではドイツ社会に同化し、一方で家父長的気風を強く残すことからキリスト教民主同盟の重要な支持層となりつつある。
2010年代に発生した各国からの大量の移民については社会のキャパシティ不足や、キリスト教社会に馴染みの無い価値観を持ち込むことが多いなどのことから、一時期混乱が広がった。しかし、難民達が住居と仕事を得ると安定に向かい、2016年以降は犯罪件数・犯罪率ともに下降傾向に入り、2019年には統一以来最低水準を記録した。
なお東ドイツにおいては他の社会主義国と同様に、国家による厳格な監視体制が問題視されていた。当時の様子は映画「善き人のためのソナタ」に詳細に描かれている。
スポーツ
同国はテニス、アイスホッケー、バレーボール、ハンドボール、モータースポーツ、スキーなどのウインタースポーツが盛んであるが、中でも世界屈指のサッカー強豪国であり、西ドイツ時代も含めてワールドカップで数回の優勝を誇る。ドイツのブンデスリーガへ移籍する日本人選手も多い。
料理
小麦やジャガイモを主食とする。地理的に長く食材に恵まれて来なかったのでレパートリーが比較的少ないとされるが、味付けは素朴で癖がなく、外国人にも合うものが多いともされる。現代以降は世界各国の料理も入り込んでおり、それらとの融合も含めて新たなジャンルの料理も増えて来ている。
飲料ではビールやワインの生産が世界的に有名で、お茶よりコーヒーがよく消費される。かつてはビールは男性のもの、女性はワインと性別による棲み分けもあったが、現在はその風潮は薄れてきている。
余談
日本のアニメファンの間では、「よく空気の読める国」として話題になる事が多い。まずアニメ作品の海外進出に関して、基本的には主題歌は現地語に吹き替えたものが利用される。その結果原曲のイメージとは大きく異なったり、現地オリジナルの全くの別の曲になる事も少なくない。ドイツの場合は歌詞を意訳にしながらも原曲のテイストを残したものが多く、特にデジモンシリーズなどでは日本のファンからの評価が高い。
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