概要
基本的には正体が(誰かに対して)隠されていたキャラクターに幅広く生じうる出来事である。
ただし、これが大きなイベント性を持つのはことに変身ヒーロー、変身ヒロインの変身者の正体が知れるという事態であるため、本記事ではこれを中心に解説する。
変身からの正体バレの状況
正体が発覚するシチュエーションはさまざまであるが、例えば以下のようなものがある。
変身するところを目撃される
最も頻度が高いだろう正体バレのシチュエーション。
偶然見られることも多いが、仲間や一般人を敵の攻撃から守ったり、窮地を救ったりするため、人前で変身せざるを得なくなってバレるというケースも珍しくない。あるいは、バレてもいいと見込んだ相手の前で堂々と変身するというケースもある。中には変身した様子がTV中継され世間一般に知られたケースも。また防犯カメラが変身シーンを捉えていたというケースもあれば、人目を避けて変身したつもりが場所が場所でプリクラに写っていたというケースもある(似たようなパターンで証明写真に写ってしまったが誰かに見られる前に回収してバレを免れた例もある)。
何らかの覚悟を決めて、自ら正体を明かすという場合は「バレた」と言うより「バラした」だが、これも一般には「正体バレ」に含めて語られることが少なくない。
変身が解けたところを目撃される
上記とは逆のパターン。たま~に人目に気付かず変身を解いてしまううっかり者もいるが、大ダメージを負うなどして変身が解けてしまったところを見られるケースが大半。
その場に居合わせた人に知られるだけでなく、中にはその状況がTV中継されてしまったため、正体が世間一般に知れ渡ってしまったケースも存在する。
また、変身解除とまではいかなくとも戦闘中に敵の攻撃から人々を庇ってマスクが破損することで正体がバレたケースもある。
使用アイテムを発見される
それが変身アイテム、あるいは変身してから使う武器である事がわかった場合は、その時点で正体が発覚することになる。
また、普通の人間には認識できないはずのアイテムでも、発見者が普通の人間ではなかったためにバレてしまうパターンもある。
変身前後の照合
「変身前に受けた傷が変身後も残っている」「特定の人しか知らないはずの情報を、変身後も知っている」(いずれも、逆の場合もあり)、「変身前後とも同じ行動原理に基づいて動いている」「変身前と後とで同じ技能を用いる」などの共通点から、正体が推察されてしまうことがある。
「声が変身前後で同じだから」という理由でバレることが滅多に無いのは、お約束として受け入れるしかないかもしれない。アニメでも特撮でも、ほとんどの作品では変身前後で声の演者は同じである。変身ヒロインものの場合、声はおろか、変身後も仮面等もつけておらず晒している顔も変身前と似通っていることが多いが、それだけが理由でバレることがないのも同様のお約束であろう。
(但しこれに対する理由付けか、特撮ものでは変身後に殆ど声を発さなかったり、声に強いエフェクトがかかっているケースもある。変身ヒロインの正体推察がされにくいのは、コスプレイヤーがコスプレ前後で別人に見える現象に近いものかもしれない)
言動からの推察
変身している間は元の人は当然仲間の前からいなくなっているわけだから、同様の状況が繰り返されれば察せられても不思議ではない。
このシリーズではよく突っ込まれる点であるが、中には行動パターンをコンピューターで解析して正体を高い確度で推定した、姿を消した先からヒーローが現れたのを見て正体だと察したというケースも存在する。
挙動不審のみならず、何かを隠している、一人で抱え込んでいるといった様子から仲間にいつの間にか推察されていることもある。正体を見抜いていた仲間からそれを指摘されることがあり、この作品ではとりわけドラマティックなシーンもあった。
周囲の仲間たちはとっくに見抜いており、隠しているつもりなのは本人ばかりなりというパターンも出てきている。
その他
「敵の策略に嵌まって正体を明かさざるを得ない状況に追い込まれる」、「本人のミスで脳波測定をされた結果バレた」、「初対面の先輩戦士に直感で見抜かれる」というケースもある。
また、「感情が昂ぶり変身前の本名を世界中に盛大に名乗ってしまう」、あるいは「正体を既に知る者から公然と呼ばれる」という形でバレることもある。
バレるとどうなるのか
正体秘匿のルールがある場合
所属する組織や力の授与者から正体秘匿を厳命されている場合、正体発覚の際には何らかのペナルティが設定されていることも多い。例えば「動物に変えられる」「変身能力を剥奪される」「記憶を消される」、最も厳しい場合は「自爆させられる」といった具合である。正体を知られたら「災いが及ぶ」と力の授与者から警告されながらも、全てを語る前にその授与者が絶命してしまったため、具体的に何が起こるのか不明なままだったケースもある。
厳しすぎる罰則の場合は最後まで正体がバレないか、たとえバレても何らかの事情で処分が免除されるなどして、実際にはそのままでは適用されないことのほうが普通である。
正体秘匿を「掟」として設定してはいるものの、「そうなっている」というだけで、罰則規定は設けられていないケースもある。その掟を申し渡した者も後には事情によりそれを後悔していた。「他人に知られてはならない=人以外ならセーフ」という寛大なんだかいい加減なんだか分からないケース(しかもこの後何かしらのネットワークを通じて情報が共有されたのか、彼と同種族の仲間の目の前でも変身できる(=正体が既にバレていて隠す必要が無い)ようになる。本気でガバガバだ)もある。
敵に正体がバレると危険である場合
敵に正体を隠していた場合は逆に言えば敵に知られたら困る事情があったということであり、「変身前の無防備な状態を襲撃される」「敵が自宅や学校、職場などの生活圏を攻撃してくる」といった実害を被ることも少なくない。実際、「どこに敵が潜んでいるかわからないから」と後輩に正体を隠す事を促した者もいる。
敵方に正体バレを恐れる変身者・変装者がいる場合もこれは同じ事が言え、例えば「どうにかして正体を看破しないと攻略できないほどの強敵」「主人公サイドからの裏切り者だった」というケースなどがある。
味方に正体がバレると危険である場合
「地球は我々人類自らの手で守らなければならない」が大きなテーマとなっているこのシリーズの初期では、正体を隠すのを「地球人が安易に頼ってくる事を避けるため」と理由付けられていた。
つまり、世間一般に正体を知られてしまうと、人々が主人公らに完全に頼りきりになってしまい、彼らのためにならないどころか、最悪危機に陥っても助けてくれないなんて事もあり得る。
毎回勝つ事を求めてくるその期待が逆にプレッシャーとなって主人公を襲うケースもある。実際この作品の場合、世間一般に正体を隠していなかったがために市民達から心無いバッシングを浴びせられて精神をすり減らす原因となったケースもあった。
また、命を救われながら何の感謝もせず後に正体を世間に言い広めて意図的に周囲から主人公を疎外させてやろうと目論んだり、正体を知ったのをいい事に己の欲望を満たす為に主人公らを陥れ利用したりという恩知らずな不届き者に付け入られてしまう事も。
極端な例としては、主人公の力を欲する勢力に捕らえられ人体実験まがいの事をされてしまうケースもある。
主人公にとって、守る人々が必ずしも純粋な味方とは限らないのだ。
変身者が普通の人間で無い場合
当人が宇宙人、人造人間、改造人間など、いわゆる「人外」の場合は、その正体が周りの大切な人たちに知られた場合に「異質な存在」として受け入れられなくなることを懸念することも多く、その正体を知った人たちが彼(女)らをどう受け止めるかはしばしば物語のキーポイントとなる。
周りに迷惑をかけたくない場合
変身者が普通に人間であった場合でも「危険な戦いに身を投じている」ことが知れて周囲の人たちに心配をかけ、さらに「家族や友人を人質に狙われる」ように巻き込んでしまうことを恐れて正体を隠していることも多く、「マスクは大事な人を守るために着けるんだ」と発言した者もいる。この場合も正体発覚後にそれを仲間たちがどう受け止めるかがたいていは物語のカギになる。
ダークヒーローである場合
一方、怪盗等のダークヒーロー的存在は正体バレは死活問題である。巨大な陣営を擁する者でもない限り、正体がバレれば彼らのように失踪するしかない。
正体がバレたら連載が終わる場合
漫画などの連載では「正体を秘匿すること」をテーマに連載を引っ張っているケースもあり、「正体がバレたら連載終了ですよ」となるケースも多い。
『らんま1/2』では早乙女乱馬の変身体質が彼の母親である早乙女のどかにバレた後、数エピソードを得て連載終了した。
おまけ
怪人の場合
古典的な怪人の場合、人間に化けたり、怪人の姿に戻る所を見られるのは秘密結社の構成員としては失格であり、目撃者を消そうとあの手この手で襲ってくる。ヒーローが助けに来れば万々歳だが、名無しのモブの場合は大抵、あっさりと殺される。
正体を知った側の反応
上記のように正体を知った側、特にその人物の仲間がどのように向き合うかが大抵「正体バレ」というイベントの根幹を成している。
悲劇を生む場合
「異質な存在」として親しい人たちからことごとく疎外されてしまった悲劇的なケースも現に存在しており、加えてそれまで隠し事をしてきたわけだから一時的にせよ人間関係に蟠りを生じることもある。
疎外した人々と和解する例もなくはないのだが…。
理解してもらえる場合
一方でそれを進んで受け入れてくれる仲間に恵まれているヒーロー、ヒロインも珍しくない。代表的な例として友里アンヌの「ウルトラセブンでもダンはダンじゃないの」という台詞を挙げておこう。
伝統的にこのシリーズでは「正体を知られたら今いる世界から去る」のがお約束だったが、後年には正体を知られながら仲間たちもそれを受け入れて引き留められ、長期間共に戦い続けた作品も作られており、それ以降の作品でも「少なくとも主人公の仲間は正体を知っている」ケースが多い。
遂には第1話から関係者には正体がバレている作品まで作られるようになった(何の偶然か、令和3年の三大特撮ヒーローは揃って第1話の時点で同居している家族に主人公の正体が知られている)。
更にラッキーなケースでは、正体をバラした後に、身を犠牲にする形で世界を救う偉業を果たした事で、その後の人類の歴史に名を残し、記念日まで制定される程の英雄として世界中の人々から讃えられる事となったヒーローもいる。
秘密にしておいてもらえる場合
また正体を知ることになっても秘密を守ると約束したり、口には出さずにさりげなく協力したりなどして、結果的に正体が広く知れ渡らずに済むというパターンも多い。上記の防犯カメラの件では、発見者が変身者の友達であったためその情報はすぐにクシャポイしてしまい、自身も程なくして仲間に加わっている。また正体を知るに至りながらも、それまでの功績への尊重・敬意と本人たちの秘密にしておきたいという気持ちに免じて、敢えて知らないことにしてあげたケースもある。
事件で知り合った人物には正体がバレているが、活動拠点の協力者以外の情報屋は正体を知らないというパターンもある。
夢だと思われる場合
人前で変身しながらも、あまりに非現実的なことなので目撃者が夢の中のこととしか思わず、バレずに済んだというケースもある。
正体だと信じてくれない場合
こんな人が正体のはずがないと最初から思い込んでいるため、間接的ながらあらゆる状況証拠を見せられても一切信じないケースも。
死人に口なしの場合
また中には、正体を知った者が死亡してしまったため、皮肉にも秘密が守られるということがある。正体秘匿が厳格な作品にはしばしば見られ、正体を知ること自体が死亡フラグとなってしまう(特に旧アニメ版セーラームーンでは敵がセーラー戦士の正体を知ることは死亡or退場フラグであった)。
仲間が増える場合
伝統的にこのシリーズでは「正体を知った者は変身して戦う仲間に加わらなければならない」というジンクスが存在していた(お笑い芸人とかこの人は例外)。しかし、近年は「変身者の正体を知る一般人レギュラー」が確立しており、このジンクスはほぼ崩れたといってよい。最初の例は一応変身したと言えなくはないし、後にはイレギュラーな形で変身した者も出てきたが…。
後継者になる場合
「F-ZEROファルコン伝説」におけるキャプテン・ファルコンの正体は長らく不明であるとされ、終盤に差し掛かる辺りで???その人である事が主人公達の間で判明し、最後は???が受け継ぐこととなる。
「スカルマン」(アニメ版)では主人公がスカルマンの正体を知って、2代目となっている。
余談
敵に関しては「最初から主人公の正体を知っていたのになぜか世間にはバラさない」場合が割と多い(ちゃんとした理由があるケースもあるが)。
関連項目
J・ジョナ・ジェイムソン:正体を隠すからこそヒーローを怪しんでいる御仁。