「俺には夢がない。でもな、夢を守ることはできる」
「俺はもう迷わない。迷ってるうちに、人が死ぬなら・・・、戦うことが罪なら、俺が背負ってやる!!」
演:半田健人
概要
フリーターとして全国を気ままに旅していたが、成り行きで園田真理が持っていたファイズギアを使い、仮面ライダーファイズに変身した。
その後、菊池啓太郎と知り合い、バイクの免停による罰金(しかも講習で居眠りをしている)をきっかけに、真理と共に彼の営んでいるクリーニング店「西洋洗濯舗 菊池」に下宿することになった((時給100円)が、勤務態度は基本的にいい加減。
真理からは「巧」、啓太郎からは「たっくん」と呼ばれており、ファンからもたっくんの愛称で呼ばれることも多い。
一方、後年の客演時を指す場合は演じる半田健人氏の渋みがかったオーラのお陰で、ファンより敬意を込めて「たっさん」と呼ばれる事も。
極度の猫舌なため、熱いものが苦手(幼少期に火事に巻き込まれたのが原因)で、九州を旅していた際には冷や汁を頼む徹底ぶり。『ハイパーバトルビデオ』では、歌の中で「猫舌たっくん」と呼ばれており、真理からの嫌味で周りがカレーを食べているのにもかかわらず、お子様ランチを出されたこともある。頭にきて捨てようとするも、流石にマズイと思ったのかチキンライスに刺さった旗を引っこ抜いて立ち去るだけに終わる位には良識があり、この類のキャラでは珍しく真理の食事のような野蛮な食べ方(第1話)でもケチをつけることも無い。
序盤からの女友達(厳密には腐れ縁)である真理にはその弱みを握られており、機嫌を損ねてしまった日には鍋焼きうどんが出された事も…。
神経質で気怠げな態度が多い上に本人も認めているほどに口が悪く、人付き合いが苦手で何かと勘違いされることが多い。しかし根は仲間思いで友情に熱く、心優しい性格である(いわゆるツンデレ)。
また、自身の行動についてもその真意や目的を周囲に打ち明けないことが多く、誤解されたり濡れ衣を着せられたりしてもそのまま反論しないことが多い。
無愛想ではあるが、自分と同じ猫舌である木村沙耶に親近感を持った際には笑顔で自己紹介をし、握手を求めるなど好意的な態度を見せた他、第2話の青空美容室では子供を怖がらせないために、柔らかい口調を使っている。
他者には初対面であろうと基本的に敬語を使わない。しかし警察が自分の荷物を見つけた際(第1話)やスマートブレインにて真理共々村上峡児と対面した際(第9話)は敬語を使っており、恩人や目上の相手を敬える最低限の行儀は弁えている模様。
但し、村上と敵対して以降はタメ口を利いている他、「あんた等のことを裏切っても一つも悪いと思わないんでな」とかなり悪辣な態度で接していた。
巧は加点方式、木場は減点方式で人付き合いをするとファンからの評価を戴いているが、実際に第一印象が余り良くなかった真理や啓太郎と共同生活する内に彼等の持つ長所を理解し、後述のとある事情を知って恐怖を隠せないながらも、自分に対して弁当を作ってくれる啓太郎に対して感謝の意を述べたり、終始剣呑な仲であった草加雅人に対しても彼なりに「仲間」として接していた(後述)。
泥棒の濡れ衣を着せられた巧の無実を信じ続けていた喫茶店のマスターの様に理解者が全くいない訳ではなく、啓太郎達の様に付き合いを重ねていく内に彼の理解者となっていく人物も多い。
しかし彼自身は自身の素性を明かすことを極度に恐れており、加えて「親しくなった人々との別離」への忌避感が強く、孤独になることを選びがちである。
本人が自身の素性を語りたがらない性格ということもあり、それまでの生い立ちや家族等については不明な点が多い。
変身直後や戦闘中に手首のスナップを効かせる癖がある他、パンツは赤い派手な物を履いている事が分かっている。今でこそパンツ+仮面ライダーといえば『オーズ/OOO』だが、それ以前は555だったのである。
そもそも、真理と行動を共にするようになった最大のきっかけは自分のパンツが入っていたバッグとファイズギアの入っていたバッグを取り違えられたからである(2019年ではとある鬼戦士が履く下着が判明したそうだが…)。
「夢」というものを持っておらず、「夢を持ってる事がそんなに偉いのかよ!」と語っていたが、実は内心ではそのことを自分なりに悩んでいた。
木場勇治とは度々すれ違いが生じ、中盤で一度は和解するも終盤のある出来事から巧はオルフェノクを倒すファイズの変身者、木場はホースオルフェノクとしてまたもや対立してしまう。
仮面ライダーカイザの変身者である草加とは日常では反りが合わず、策略に振り回されることも多かったが、いざ戦闘になると実に息の合ったコンビネーションを披露する。巧自身も、草加の事を気に入らないと言いつつも1人の仲間だとは思っており(事実、草加と共に客演した『仮面ライダージオウ』では「お前のことは嫌いだが、仲間だと思っている」とはっきり口にしている)、彼の心の傷を知ってからは何とか彼を救おうと試みていた。
そして彼が(因果応報ながら)悲惨な最期を遂げた折には、散々酷い目に遭わされたにも拘らず、その死を悲しむと同時に怒りを抱いた。後述の『仮面ライダー大戦』の描写からも、巧が草加のことをどんなに強く「何とかしてやりたかった」と思っていたかが窺える。
それまで平成ライダーの主人公は極度の努力家且つお人好しばかりだったため、巧は当初は無気力で人付き合いが悪いように見えたが、結局は精神的に未熟なだけで彼も話が進む度に先輩のようなお人好しであるのが分かり、本人なりに努力する場面もある。
後の主人公達も努力家且つお人好しとヒーロー然とした性格の為、巧のような性格の者は主人公全体で見ても少数派である。
ちなみに服装は初期と劇中終盤(主に冬の時期)で黒色のピーコートを着ていることが多く、『平成VS昭和』などの客演でも同様のものを着用していた(これには演じた半田健人氏も驚いたらしく、「東映さんは物持ちがいい」と思ったとのこと)。
また、「Φ」の意匠が刻まれたペンダントを着用していることが多いのも特徴。
中盤でファイズギアを手放していた際、第38話で場当たり的に仮面ライダーデルタに変身したこともある。→仮面ライダーデルタ(乾巧)
正体(ネタバレ注意!!)
仮面ライダーファイズとして戦う巧だが、彼の正体はウルフオルフェノクだという事実が明かされる。
オルフェノクが使うためのツールとして開発されたファイズギアを使いこなし、ファイズへと変身できるのも当然のことだった(第1話では、巧自身もオルフェノクであるため、スティングフィッシュオルフェノクを目撃しても驚いている様子を見せなかった)。
また、普通の人間である啓太郎がファイズの変身に失敗した場面があったため、その時点で巧が普通の人間でないことが視聴者に示唆されていた。
巧は幼い頃に事故で死亡してオルフェノクに覚醒したオリジナルであり、戦闘力は並のオルフェノクよりも遥かに高い。
巧が他人と親しくなることを避け、一つの場所に馴染まずに各地を放浪していたのも、自身がオルフェノクであることを知られ、拒絶される事を恐れていたためである。劇中にて「人に裏切られるのが怖いんじゃない、俺が人を裏切るのが怖いんだ」という巧自身の本音は特に顕著である。
主人公なので当然ながら、劇中でオルフェノク化していない人間を殺害したり使徒再生を行ったりはしていないが、オルフェノク化した後に一度もしたことが無いとも明言されていない。
流星塾の同窓会の日に流星塾の生徒達を襲ったと誤解されていたが、実際はスマートブレインに命令されていたドラゴンオルフェノクこと北崎と、スロースオルフェノクこと流星塾の青沼の仕業であり、偶然にも通り掛かった巧はそれを止めるために戦っていたというのが真実であった。
ただし、巧はスロースオルフェノクは倒したものの、ドラゴンオルフェノクには返り討ちに遭ってしまった上に、その時のショックで事件前後の記憶を失ってしまっていた。
その結果、その時の映像を編集した物をスマートブレイン社長の村上に見せられた巧は、記憶が無かったこともあって、自分でも流星塾の生徒達を襲ってしまったと思い込んでしまい、真理達の元には戻れないと諦めてしまう形でラッキークローバーの1人になってしまったこともある。
巧自身もオルフェノクであるものの、人間として生きようとしているが故に、時にはオルフェノクに対して激しい憎しみを見せる面があり、上述の草加が殺害された際には怒りを露にして「オルフェノクなんて滅べば良いんだよ一人残らず!! この俺もな…!」とまで口にした。
ある意味巧がどれほどオルフェノクではなく、人間として生きていきたいと思っているかをよく表していると言える(オルフェノクとして蘇生しながらも人間として普通に生活していたドルフィンオルフェノクが、スマートブレインに強要されて不本意ながら自身を襲った際には、敢えて手加減して倒さず「あんたは人間だ。これからも人間として生きてくれ」と伝えて見逃したこともあった)。
本来、仮面ライダー自体「正義の心を持った怪人」という概念であるが(もし正義の心が無ければ彼等はショッカーライダー、奇械人スパーク、コマンドロイド、世紀王ブラックサン、改造兵士Lv3、グロンギ、レッドオーガイマジン、大ショッカー首領、ウェザー・ドーパント、エルロード、恐竜グリード、オーバーロードインベスなどといった人類の敵になっていた事だろう)、純粋な怪人が主人公の作品というものは『555』が最初であり、オルフェノクの立場から描かれるエピソードも多かった『555』を象徴するかの様な人物となった。
結末
「見つけようぜ、木場、三原・・・・・・。俺たちの答えを、俺たちの力で!!」
最後はオルフェノクとしての死期が近付きつつも人間として生きる道を選び、再び人間を信じる決意を固めた木場の犠牲によってオルフェノクの王であるアークオルフェノクを撃破。
最終決戦後、アークオルフェノクが完全に灰化していない形で生き延び、「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいにみんなが幸せになりますように」という夢を持つことが出来た。
他媒体の乾巧
『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』
「木場…お前本気か!本当に理想を捨てたのか!?」
木場「そうだ!その証拠に俺はお前を倒す!例えお前がオルフェノクであっても!」
「良いぜ…お前のやりたかった事は俺がやる。お前の理想は俺が継ぐ!!」
TV本編とは異なるパラレルワールドが舞台となった本作では、ファイズに変身し人間解放軍の一員として戦っていたが、劇場版の物語開始以前にライオトルーパー部隊の襲撃によって行方不明になっていた。
詳しい経緯は不明だが、倒れていたところをミナの父親に発見され彼の知り合いの医者によって記憶を改竄され、ミナの幼馴染「隆」として彼女と共に暮らしていた(記憶喪失中は猫舌ではなくなっていた)。
その後、真理との再会を経て記憶を取り戻しファイズとして前線に復帰。ファイズギアの奪取を企んだ水原の凶弾に倒れたミナの死を乗り越え、レオ/仮面ライダーサイガに攫われた真理を救うためにスマートブレイン・スーパーアリーナへ向かう。
草加雅人が変身した仮面ライダーカイザを圧倒的な実力で倒したサイガとの戦いでは、フォンブラスターによる零距離射撃でサイガのフリーフォールから脱出し、アクセルフォームによる超高速戦闘でフライングアタッカーを破壊。その後、真理が投げ渡したファイズエッジによるカウンター攻撃からのスパークルカットでサイガを撃破した。
その後に現れた木場勇治こと仮面ライダーオーガとの戦いでは、最初は嘗ての戦友だった彼と本気で戦うことが出来なかったが、上述の会話と巧の正体に驚愕しながらも巧を信じる真理の激励により、オートバジンが持って来ていただろうファイズブラスターでブラスターフォームに変身。アリーナを半壊させる程のクリムゾンスマッシュとオーガストラッシュのぶつかり合いの末、オーガを破った。その直後、真理を捕食しようとしたエラスモテリウムオルフェノクをブラスターフォームの必殺技の1つであるフォトンバスターで撃破。その際、エラスモテリウムオルフェノクの毒針から真理を庇い致命傷を負った木場から人間とオルフェノクの共存という理想を託され、彼とオーガギアの最期を見届けた。
戦いが終わった後、自分と真理を囲むオルフェノク達に対して、「どけ。俺が歩く道だ」と言って道を開けさせ、真理と共に手を繋ぎながらスマートブレイン・スーパーアリーナを後にしたのだった。
小説『仮面ライダー555 正伝 ―異形の花々―』
「お前の場合はちょっと最低なだけだ。本当に最低な奴は、自分のことを最低だなんて思ってやしない」
小説版ではたかがジャンケンのためにファイズに変身しようとしたり、猫舌なのを皮肉るために真理が作った氷漬け料理をバリバリ齧ったりと、原作以上にムキになり易いキャラとして描かれている。
一方でTV本編に比べどこか達観しているような箇所も見受けられ、真理がボーイフレンドである木場と上手く行ってないことに勘づいたり、木場や草加の人間性を一早く見抜くなどの鋭い一面も持ち合わせる。
また、本作オリジナルの設定として、ギターが得意であるという一面が付け加えられた。TV本編同様にギタリスト生命を絶たれた海堂直也に彼の夢を継いで欲しいとせがまれるが、それに応じる事は無かった。
終盤、ファイズの力が通じないかつての友人ホースオルフェノクに対し自らもオルフェノクとなって反撃し、死に物狂いで漸く勝利を掴んだ。
また、彼の死因についてTV本編よりも独自の掘り下げがなされている。幼少期に火災現場からとある少女を救い出すために逃げそびれて焼死、後にオルフェノクとして覚醒した。猫舌は、この火事が原因となって発生した「熱いもの」=「火を連想させるもの」に対する強いトラウマとする説がある。
『小説 仮面ライダーファイズ』で加筆された後日談「五年後」では数年の間失踪していたが、変わり果てた草加によってオルフェノクの巣と化した森に攫われた真理と彼女を救おうとする啓太郎と結花の息子・勇介のもとに駆け付け、再びファイズに変身する。
戦いに勝利した後は勇介にファイズギアを託し、真理と共に巣の外へと歩き出した。
仮面ライダーディケイド
リ・イマジネーションライダーとして、尾上タクミが登場する一方で、最終回では彼が変身したと思わしきファイズが登場している。
スーパーヒーロー大戦
メインではないが、登場ライダーの一人してファイズが登場。声は渡部秀が担当。
この作品での活躍よりもネット版に於ける「ファイズさんの奢り」ネタの方が有名かもしれない。
尚、店の予約を予約する際にファイズフォンを使用した。
仮面ライダーウィザード
魔宝石の世界にてライダーリングの力により、仮面ライダーファイズとして召喚されている。
仮面ライダー大戦
「昔愛する者のために戦い・・・死んでった仲間がいた。いけ好かない奴だったけど…少なくとも俺よりは生きる意味を見出していた」
オルフェノクとの戦いが終わってから10数年が経った後も「西洋洗濯舗 菊池」に滞在していた。
草加雅人が死に際に自分に言い放った言葉は今も巧の心を苦しめており、門矢士にバダンを倒す為に協力を迫られるも拒否し、「世界中の洗濯物を真っ白にすることで忙しい」と語りつつ衝動的に旅に出てしまう。
そこで彼は強盗に対し心を開く謎の町医者と出会い、戦う意味について彼に問い掛けるのだが、そこにライダー狩りを行うタイガーロイドとコンバットロイドが現れ…。
上述の台詞はその謎の町医者に嘗ての仲間=草加の事を語った際のものであり、テレビ本編と比べるとより草加に対する仲間意識をはっきりと明言している。また、何故か仮面ライダーXのことを知っていた。
この作品の巧は「テレビ本編では既に死期が近かったにも拘らず未だに存命」「テレビ本編最終回で破壊された筈のオートバジンに乗っている」「草加の死の描写が異なる」など、テレビ本編とは矛盾する部分が多く、テレビ本編とはパラレル上の存在と思われるが、一部の情報誌などでは「オルフェノクとしての死期が近いと言われていた巧は10年以上経った今も生きていた」と書かれており、テレビ本編と同一人物である可能性も決して無い訳ではない(巧の草加を救えなかったトラウマで回想が誇張されているとも考えられる)。
また、TV本編の放送から10年が経過しているため、彼を演じる半田健人が声・容姿共に渋くなっていることにより前述の「たっさん」が発祥した。
「空っぽなら…戦う事で埋めてやるよ。喜びと悲しみを一つずつな。その罪は…俺が背負う!」
スーパーヒーロー大戦GP
「仮面ライダーとして、子供の夢くらいは守ってやることにした」
ショッカーの支配する世界で戦う仮面ライダーの一人。当初はショッカーの刺客と思われたが、実際はライダー、ショッカーのいずれの側にも属さない第三勢力として活動していた(他のショッカーライダー達とは異なり、脳改造による洗脳は受けていなかった可能性がある)。
作中ではライダータウンに向かおうとする黒井響一郎等の前に現れ、詩島剛/仮面ライダーマッハと対決するも、途中で「飽きた」と言って戦闘を中断した。
その後は正義のライダーの側に加勢し、ライダーグランプリで仮面ライダードライブを妨害しようとした仮面ライダーカブトの足止めを引き受け、ドライブの勝利に貢献。終盤のライダー対ショッカーの決戦にも参戦した。
余談だが、今回は髪型が前作と比べると当時に近いものになっている。
上記のセリフは前作に於ける神敬介の「俺達が守るべきは子供達の未来じゃないのか」というセリフへのアンサーになっており、本作の巧は前作の戦いを経験しているとも解釈出来る。
仮面ライダー4号
「悲劇? 笑わせるな。ハッピーエンドに変えてやるよ」
「・・・悪いな。けど、あの時笑って死んだ自分に嘘をつきたくないんだ」
「今でも信じてる! 意味無く死んだ奴は… いないってな・・・!」
『スーパーヒーロー大戦GP』での事件が無かったことにされた世界で、ショッカーにより時間が繰り返されている。泊進ノ介/仮面ライダードライブや桜井侑斗/仮面ライダーゼロノスと共に、ショッカーの野望を食い止めるべく闘っていたのだが…。
実はこの作品の巧は既に死亡していた。(回想では実際のTV本編の映像が使用されており、エピローグともとれる演出がなされている)。
しかし、嘗てオルフェノクとの戦いで多くの仲間を失った巧は「誰にも死んで欲しくない」という思いを抱くようになり、その思いにシンクロして歴史改変マシンが作動、自分が歴史改変マシンを動かしているという自覚も無いまま蘇った。これが『スーパーヒーロー大戦GP』、そして『仮面ライダー4号』で起こった事件の真相だったのだ。
終盤で真相に気付いた巧は、マシンを破壊すれば巧自身の存在が消えるという事実を侑斗から伝えられる。だが、嘗て笑顔で亡くなった自分に嘘をつかないために、歴史改変マシンを破壊して時間を元に戻すことを決意。嘗ての戦いで生き残った仲間である海堂直也の制止も振り切って歴史改変マシンを破壊し、進ノ介達にこれからの世界の事を任せて消えていった……。
歴史が元に戻って巧の存在が消えたため、進ノ介達はその時間内にいた巧のことを覚えていなかった。
そんな中、海堂は青空を眺めて、死んだ巧を思うのであった。
海堂「・・・さて、この空を守ったのは、一体誰なんでしょうか? なあ、乾・・・」
『555』本編を全話執筆した脚本家の井上敏樹は一切関わっていないが、『4号』の脚本を担当した毛利亘宏は、乾巧の登場が決定したこともあってか、「(『555』の)ファンの想いは汲みつつも顛末をしっかり描写すべき」と考え、『555』の結末に関連して執筆したことをコメントしている。
また、前々作の1号ライダーのセリフ「バダンとは死者の国、お前達平成ライダーの死んだ者への未練が地上への道を作り、バダンを呼び入れたのだ」というセリフから、大戦から4号の出来事が繋がっているとも受け取れる。
なお、この作品で進之介や剛から巧の記憶は消えたはずなのだが……記憶の片隅には残っていたらしく、ゲーム『ライダーレボリューション』ではファイズに出会った際にデジャブを感じていた(無論、このゲームのファイズは4号の出来事を経験しておらず、これはマッハとの掛け合いで判明している)。
仮面ライダージオウ
EP05・EP06に登場。
改変の影響で普通の人間ではあるものの、元の歴史と草加達と同じ様な出会いを経験している様で、流しでクリーニングの仕事を続けている。
名刺代わりに「西洋洗濯舗 菊池」のポイントカードに自分の名前を記入した物を持ち歩いている。現在は店では働いていない様だが「世界中の洗濯物を真っ白にするのが俺の夢だな」と語っている事から、『555』本編最終回で語った「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに皆が幸せになりますように」という夢を実践している様子が窺えた。
ちなみに猫舌は相変わらずである。
また『ジオウ』放送当時、『555』と『ジオウ』のプロデューサーを務めた白倉伸一郎のツイッターで彼が一度死亡してオルフェノク化した事故は他のオルフェノクの仕業によるものという裏設定が追加されたことが後に明かされている。(『ジオウ』にてアナザーファイズの誕生による歴史改変後巧がオルフェノクでなくなって、2019年まで生きていたのもこのため)詳細は不明なものの、スマートブレインが関与していた可能性もある(参考ツイート)。
活躍
- EP05『スイッチオン!2011』
2018年で山吹カリンを襲おうとしていた草加雅人と、山吹カリンを守ろうとするツクヨミの前に現れた。
- EP06『555・913・2003』
山吹カリンを救った後に常磐ソウゴと知り合い、彼女を襲った草加雅人について語った。そしてカリンを守るためにソウゴと共に彼女に付き纏うが、そこへやって来た草加から、カリンが既に交通事故で亡くなっていること、佐久間龍一が変身したアナザーファイズの能力(アナザーファイズの力が弱まってからはアナザーフォーゼの力を使っていた)によって仮初の命を得ていること、これ以上無実の人を犠牲に生きることに耐えきれなくなったカリン自身に殺して欲しいと頼まれたことを聞かされる。
そこへカリンを傷付けられたと誤解し、逆上したアナザーフォーゼによって草加が襲われると、果敢に立ち向かいこれを阻止。そして草加に「お前は俺の仲間」なのだと苦々しい顔で白状した。
その後は追い付いて来たソウゴ達に救われ、アナザーフォーゼとその中にあるアナザーファイズの力を倒す為に、自らが持っていたファイズライドウォッチを託した。
事件解決後はソウゴが過去に飛び、過去の巧が彼からブランクウォッチを受け取った模様。
漫画『仮面ライダー913』
第2話『園田真理』にて初登場。
大泉クリーニングというクリーニング店で働いている。無愛想なのは相変わらずで、草加が真理に会うために来店した時は居眠りしていた。草加に無愛想なことを注意され、出禁を言い渡した。
その後オルフェノクが出現。真理からの通報を受け、現場に駆け付けファイズに変身した。
原典第1話とほぼ同様の経緯で初変身したことが明かされているが、この世界でのファイズギアの仕様が不明であるため、巧がオルフェノクであるかも現状定かではない。尚、この世界でも安定の猫舌であることが判明した。
『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』
「俺は疲れたんだ…」
本編の正当続編と銘打たれている本作にも勿論出演。
本編終了後も真理たちと共に暮らしていたようだが、数年前に突如として失踪。そのまま長らく消息不明となっていた。
また、その時既に手の灰化が進行し始めていた……。
そして、オルフェノクを迫害するスマートブレインのオルフェノク殲滅部隊に対して、抵抗する真理たちの前に巧が姿を現す。スマートフォン型の新型デバイス「ファイズフォン20 Plus」をベルト「ファイズドライバーNEXT」にセットして新世代のファイズに変身する。
しかし、巧は新生スマートブレインの尖兵として、かつての仲間であった真理たちを攻撃し始めた。
【CAUTION】以下、ネタバレ注意!!
上述の台詞を口にするほどに、巧はオルフェノクとしての寿命を悟り死の恐怖に苛まれていた。
そのため、スマートブレインの庇護を受け延命治療を受ける代わりにオルフェノク殲滅に加担していた。
巧本人も「オルフェノクをファイズとして倒す。それ自体は変わっていない」と他人だけでなく自分にも言い聞かせながら戦いに身を投じていた。
しかし、真理が胡桃玲菜の謀略によりワイルドキャットオルフェノクとして覚醒してしまう。それを察知し彼女の元に駆けつけ説得し踏みとどまらせることには成功するものの、彼女の絶望を拭うことはできず、真理は飛び降り自殺を図ってしまう。その姿を見た巧は彼女を廃校の保健室へと運び介抱した。
真理が目覚めた後、裏切りと自身を助けた真意を聞かれるも彼女がオルフェノクとなって苦悩する姿を「いつものお前と違う」と指摘し、人間として生きていきたかったと吐露する彼女に「今を生きろ」と励ました。しかし、彼もまた誰にも吐露できない恐怖心を抱えており真理に「助けてくれ…」と遂に弱音を零した。このことがきっかけとなりオルフェノクとしての姿のまま互いの愛を確かめ合った。
その行為を以て2人は誤魔化しもなく語り合える関係へと遂に至ることができた。
しかし、それもつかの間、玲菜達オルフェノク殲滅部隊に見つかってしまいオルフェノクの姿で交戦。直後に乱入した北崎に真理/ワイルドキャットオルフェノクとともに立ち向かうが、彼が北崎を模したアンドロイドだったこともあり苦戦し、撤退を余儀なくされる。
その後、玲菜が追跡するも彼女は初恋の相手だった巧と彼の想い人の真理を手にかけることができず逃がそうとするが、北崎が彼女の裏切り行為を見逃すわけがなくそのまま玲菜は惨殺されてしまう。
その凶行に巧は激怒。再度ネクストファイズに変身して北崎と交戦するものの、北崎は胡桃が遺したミューズドライバーを拾い上げて仮面ライダーミューズに変身。途中で海堂直也/スネークオルフェノク、ケイ/クイナオルフェノクが援軍として参戦し3対1で立ち向かうものの、北崎/ミューズは数的不利をものともせず圧倒。アクセルフォームに移行するもののそれすらも完封され必殺技を喰らい変身解除に追い込まれてしまう。
しかし、啓太郎の甥っ子である菊池条太郎がアタッシュケースを抱えて駆けつけ…
条太郎「たっくん…!」
「お前は…?」
条太郎「菊池啓太郎の甥の菊池条太郎と申します!つまらないものですが、これを…!」
巧が受け取ったアタッシュケースの中には馴染み深いあのファイズギアが収められていた!!
「条太郎、お前わかってんじゃねーか!」
「俺はやっぱり…こっちで行くぜ!」
Standing by
「変身!」
Complete
巧はファイズギアでオリジナルの仮面ライダーファイズに変身。
ミューズの予測AIすらも超える予測不能な攻撃で圧倒、途中で草加型アンドロイドが変身した仮面ライダーネクストカイザの標的にされ2対1となるものの、巧の操作無しでオートバジンが加勢。更にファイズの武装を使いこなし新型ライダー2体を寄せ付けない力強さで形成逆転。
最後はワイルドキャットオルフェノクの切り裂き攻撃に続いてクリムゾンスマッシュを放ち、草加型アンドロイドと北崎を撃破した。
戦いを終えた後は真理、海堂、ケイ、条太郎とともに食卓を囲み、物語の幕を閉じた。
尚、この時のやり取りにおいて巧自ら
『生命線が伸びてる』
と発言しており、オルフェノクとしての寿命が若干延びた事が示唆されている。
『仮面ライダー555殺人事件』
「おいおい、ちょっと待て!俺は反対だぞ!こんなお荷物が4人もいんのに、その上ペットなんざあり得ないだろうが!」
「いっぱい食べろよ♪」
パラダイス・リゲインドのパラレルワールドである今作では相変わらず『洗濯舗菊池』に居候をしているが、仕事もせずに居眠りをして、犬猿の仲の草加からも『働け!』と怒られるなどプータローと化しており、リゲインドの方との落差が酷いことになっている。
真理が拾った金魚のキンを飼うことに唯一反対していた……と思われていたが、実際は(最初から気に入っていたが性格上素直になれなかったのか、それとも他のみんなが可愛がっているのを見ているうちに情が湧いたのかは不明だが)1番キンのことを気に入っており、夜中にこっそりと餌を与えて可愛がっていたり、翌朝起きたら金魚鉢からいなくなっていたことにめちゃくちゃ動揺していた。
「ん…ん?ん?!お?!キン?!おい、キン…!?」
「大変だ!…キンがいない!」
一方で、啓太郎の甥の条太郎が啓太郎の『困っている人がいたら助けろ』と言う教えを忠実に守ろうとしているのに対して
「啓太郎の真似すんな!奴みたいな奴は、世界に1人だけで良いんだよ!」
と、言い方こそアレだが、20年経っても啓太郎の人柄をなんだかんだで認めているようではある。
テーマ曲・イメージソング
「ファイズ」
劇伴曲。パラダイス・ロストにおけるファイズ復活シーンに用いられ、『555』本編でもファイズがブラスターフォームに初変身したシーンで使われた。
「Double Standard」
劇中未使用。イベント等で半田健人が歌唱することも多い。
余談
- 昭和の「仮面ライダーは実際善玉怪人」という裏設定を除けば、ライダーでありながら怪人でもあるの二股をかけた主人公はシリーズ初である。寧ろちゃんとした怪人態を持つ主人公は2021年現在でも『剣』の剣崎一真、『オーズ/OOO』の火野映司の3人と非常に少なく、ましてや設定上最初から怪人でありながら怪人態を有した主人公はシリーズを通しても巧一人だけである。
- 演じた半田健人は、第1話でオルフェノクを見ても大して驚かなかったシーンを演じて巧は人間じゃないのではと思っていたが(実際、同シーンの撮影の際、当初半田は驚いた演技をしたが、監督の田崎竜太からは「もっと堂々としてて良いから」と指示を出されたとのことで、その理由についても当時は聞いてもはぐらかされたという)、完全にオルフェノクだと知らされたのは『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』を撮影していた時だったと後に話している。
- 後に佐藤健や菅田将暉などに更新されるが、当時半田健人は仮面ライダーシリーズの主人公役としては史上最年少の18歳であった。しかし、いざオーディションに合格すると東映から高校を辞めるようにと要望があったため、高校を辞めたくなかったので『555』の役を断ろうとしたとのこと。その後紆余曲折を経て高校に通いながら、乾巧の役を演じ切った(そのため、序盤は巧の出番がやや少ない)。
- 因みに劇中ではファイズだけでなくデルタにも変身しているが、仮面ライダーシリーズの主人公で主役ライダー以外のライダーに変身したのはG3-Xを装着した津上翔一、ナイトに変身した城戸真司に続いて3人目である。
- 尚、当時の公式サイトでは『職についてもすぐにクビになり、これまで500以上の仕事を経験』と書かれていた。たっくんェ…
関連イラスト
関連タグ
仮面ライダーファイズ ウルフオルフェノク仮面ライダーデルタ 仮面ライダーネクストファイズ
カップリングタグ
平成ライダー主人公