概要
『ヒーリングっど♥プリキュア』における敵対勢力。
人間界とは別世界にある「ビョーゲンキングダム」を発祥とする邪悪な病魔の集団で、支配者であるキングビョーゲンの命令の元、地球を病気にして自分達の住み易い環境に変える事で、地球征服を目的に活動している。
彼らはすこやか市の様な澄んだ空気や綺麗な水、豊かな自然の地を徹底的に忌み嫌っており、そのような場所は容赦なく蝕もうとする。
彼等に襲撃され蝕まれた場所は草木が枯れ、周囲にウイルスを思わせる赤い粒子が漂い、ビョーゲンズ以外の生命体は生きていけない、荒廃した死の世界と化す。
手始めに自分達の邪魔となる、地球を癒やしてきた秘密の世界「ヒーリングガーデン」を襲撃し、そこに暮らすヒーリングアニマル達の大半を討ち倒した事で、ほぼ壊滅状態に追い込んだ(但し、この戦いでキングビョーゲンもかなりのダメージを受け、当初は喋る以外に不可能な状態に追い込まれた)。
ヒーリングガーデンが機能を停止している間に、地球を蝕もうと人間界に侵略を開始するが、見習いのヒーリングアニマル達と、彼等のパートナーとなったプリキュア達が、そうはさせまいと立ちふさがり、熾烈な戦いが繰り広げられる事になる。
幹部の言語能力や知性は人間に近いが、その実態は地球の生物とは全く異なっており、むしろウイルスに近い。
彼らは既存の生物に寄生して宿主の性質をコピーすることで変異増殖していく(ビョーゲンズたちはそれを進化と呼ぶ)。
そのため、作中でも新たな幹部が生まれたり、既存の幹部が進化してパワーアップしていく様子が頻繁に描かれた。
作中に登場した幹部は宿主である地球の生物の影響を受けているためか、どこか人間臭い仕草を見せたり人間の文明を真似た行動も見受けられるが、その本質は目的の為なら非道な行為も躊躇なく行い生命を理不尽に弄ぶ、産まれながらに地球を蝕む病気の化身である。
彼らは他の生命に一切関心を抱かないばかりか完全に軽蔑しており、蝕んだ場所で苦しむ生物を見て嘲笑ったり、自然や作物を愛する心を踏みにじったり、他の生物を道具として扱ったり、身勝手な理由で他者の大切な物を傷つけたり、他の生物を「下等生物」と侮蔑したり、更には弱って抵抗出来ない者に容赦なくトドメを刺そうとするなど、全員が例外なく他者を蔑み見下す根っからの悪党揃い。
さらにその危険性は性格面だけに留まらず、未成熟状態で生み出されたケダリーですら「自分の使命は地球を蝕み病気にすること」と本能的に理解して地球を蝕もうとするなど、生まれながらに危険極まりない性質まで持つ。
それ故に地球上の人間や他の生命体とは根本的に相容れることの出来ない存在である。
そして幹部たちは自由気ままに動き作戦を遂行する個人主義者の集まりで、同胞同士であっても言い争いはもちろんのこと、どちらがより多く地球を蝕めるかで争ったり、時には追い落とそうとする等、協調性は皆無で足の引っ張り合いは日常茶飯事。
当然ながら仲間意識も一切持たず、同胞の消滅にも一切同情しないばかりか罵倒したり見下す等、仲間とも馴れ合わない姿勢が徹底されている(一応ダルイゼンは、バテテモーダが浄化された際には、彼の消滅を惜しむ様子を見せていたが、ダルイゼンはあくまで、効率よく地球を蝕むのに必要な戦力が減ってしまった事を不満に思っただけであり、バテテモーダの事を信頼していた訳でも、彼個人に対し友情を感じていた訳でもない)。
地球への侵攻ははるか昔から繰り返されており、首領のキングビョーゲンはいにしえのプリキュアと戦った末に身体を失って意識体のような存在となり、本編の第1話時点でも身体を再生できていない。
構成員
使役する怪物を含め、構成員全員が同一の種類と明言されている珍しい敵勢力である(プリキュアでは敵の黒幕が異なる種族である場合や、幹部が使役する怪物がエネルギー体など別の存在であることが多い)。
支配者
キングビョーゲン(声:郷田ほづみ) |
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ビョーゲンズの支配者。古のプリキュアとの戦いで身体を失う。第42話で「ネオキングビョーゲン」へと進化するが、最後はプリキュアに倒された。 |
テラビョーゲン
ビョーゲンズにおける幹部的な存在。彼らはメガビョーゲンやギガビョーゲンといった怪物を生み出し、使役することができる。
いずれもメガビョーゲンの一部(種やメガパーツ)が進化した存在で、それが人間や動物を「宿主」にする形で進化し、その後宿主から分離・独立した病原体のような存在である。
三幹部
いずれも本編開始からキングビョーゲンに仕えている3人のテラビョーゲン。
3人とも元はメガビョーゲンの種で、それが人間を「宿主」にする形で進化した存在。
プリキュアが「スペシャルヒーリングっどスタイル」へと進化した第31話以降、三幹部は「メガパーツ」を体内に取り込む形で進化を果たす。
ダルイゼン(声:田村睦心) |
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気だるげな少年風のテラビョーゲン。花寺のどかを宿主にして誕生した存在で、彼女に執着する。第42話でキングビョーゲンに吸収されて消滅。 |
シンドイーネ(声:伊藤静) |
妖艶な美女風のテラビョーゲン。キングビョーゲンへの忠誠心は高い。第43話でキュアアースに吸収されて自我を失う。 |
グアイワル(声:安元洋貴) |
筋骨隆々な巨漢風のテラビョーゲン。野心家。第40話で「キンググアイワル」へと進化するが、最後はキングビョーゲンに吸収されて消滅。 |
新幹部
いずれも本編の途中で誕生した新たなるテラビョーゲン。
三幹部同様、メガビョーゲンの種もしくはメガパーツから進化した存在。
バテテモーダ(声:保志総一朗) |
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チャラい獣人男性風のテラビョーゲン。ヌートリアを宿主にして誕生した存在。第12話から登場した、三幹部の後輩。第20話でキュアアースに倒された。 |
ネブソック(声:竹内栄治) |
幼稚な鳥人男性風のテラビョーゲン。雛鳥を宿主にして誕生した存在で、ダルイゼンの弟分。第24話で登場したが、キュアアースに倒された。 |
ケダリー(声:渡辺明乃) |
ダルイゼンに酷似した少年風のテラビョーゲン。キュアグレースを宿主にして誕生した存在。第28話で登場したが、プリキュアに倒された。 |
怪物
メガビョーゲン(声:後藤光祐) |
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テラビョーゲンが使役する怪物。ナノビョーゲンが自然界や人工物に宿るエレメントさんに憑依することで発生する。「メガパーツ」を取り込むことで強化も可能。 |
ギガビョーゲン(声:後藤光祐) |
第31話から登場。「メガパーツ」で進化したテラビョーゲンが、人間にナノビョーゲンを埋め込むことで誕生する強力な怪物。広範囲を蝕む能力をもつ。 |
素体
行動傾向
ビョーゲンズの作中における基本方針は、キングビョーゲン復活の為に、メガビョーゲンやギガビョーゲンを駆使して地球を蝕む事とされており、プリキュア討伐は優先順位としては2番目である。
プリキュアに挑む場合でもこちらから探す必要はなく、メガビョーゲンを出現させて誘き出すのがテンプレになっている。
「プリキュアが活動拠点にしている、すこやか市より遠く離れた場所から、侵略を広げる方が効率的なのでは?」と言うツッコミもされがちなのだが、キングビョーゲンはヒーリングアニマルとそれに与するプリキュアの存在を危険視しており、『プリキュア討伐』および『ヒーリングアニマル討伐』もビョーゲンズの重要な使命となっていることは間違いない為、それ等の事を考えると、ビョーゲンズの幹部達がすこやか市ばかりを狙うのは、「プリキュアを討伐して功名を得たいから」と言うのが主な理由だと思われる(だが、ダルイゼンに関しては、「キュアグレースに興味を惹かれているから」と言う理由ですこやか市を狙っている事が窺える描写が度々あるが)。
尤も「世界征服を狙うような敵が主人公がいる町ばかりを狙う」と言うのは、本作に限らず子供番組特有のご都合主義としてよくある事で、ツッコむだけ野暮なのだろう)。
それに、本作ではメガビョーゲンの存在は世間で認知されている為、人目の付く所で暴れさせれば、直ぐにTVやネット上で取り上げられる上に、メガビョーゲンが地球を蝕めば、ラテにその存在を感知させられる為、遠い場所で暴れさせようと遅かれ早かれプリキュア達の介入は入ってしまうので、完全にプリキュア達の目を掻い潜る事はどの道不可能であり、これ等の点についてはやむを得ない(しかし後述する通り、メガビョーゲンがプリキュア達に発見されるのが遅ければ遅い程、ビョーゲンズ側は有利になる為、どちらにせよ遠い場所でメガビョーゲンを暴れさせた方が得策な事に変わりはない)。
ビョーゲンズの幹部は一度に1人しか出撃しないが、別にそう決まっているわけではなく、互いに協力するチームワークが皆無なので、1人が出撃しても他のメンバーは気にしてないだけであり、実際に第10〜11話では、幹部3人がそれぞれの個人的思惑で、同時に出撃すると言う偶然が発生し、3箇所で同時にメガビョーゲンが発生。
上記のプリキュアの居ない場所を狙うが半ば現実化した結果となった。
プリキュア達は当初、3箇所に1人ずつバラバラに赴いて、メガビョーゲンに対処しようとしたが、やはりそれでは敵わないと言う事で再合流した後、3箇所のメガビョーゲンを順番に浄化する戦略を採る。
しかし、後の方に退治したメガビョーゲンは、完全体に近いレベルまで成長を続けており、なんとか浄化には成功するも、既に蝕まれた大地の生命力は極端に弱まっており、元の自然が戻るには相応に時間が掛かる上に、同話ラストにて更なる災禍を残してしまう。
幹部3人が偶然に同時に出撃して、何の連携も取らずにこれだけの事を成し遂げたのだから、彼らが本当の意味で協力してしまえば、恐ろしい事態になるのは想像に容易いだろう。
十分に育ったメガビョーゲンは、自立歩行の出来る種やメガパーツを生成する事があり、これが他の生物に寄生する事で、新たな幹部を生み出してしまう(上記の災禍もこの一種である)。
これで生み出された幹部クラスの知性を持ったビョーゲンズはテラビョーゲンと呼ばれている。
種に寄生された生物は体がほぼ動かなくなるほどの重く苦しい病に侵される(メガパーツを直接埋め込まれても同様の症状が起きる)。
人間が宿主の場合は、現在の人間の医学では種に寄生されている痕跡すら発見することができず、原因不明の病と診断される。
治療法は寄生しているテラビョーゲンを追い出す(あるいは育ったテラビョーゲンが自ら宿主から出ていくのを待つ)ことであり、テラビョーゲンが出て行った後の宿主は何事もなかったかのように健康体になる(因みに、もし種やメガパーツを埋め込まれた生物が、テラビョーゲンが誕生する前に何らかの理由で死んでしまった場合、その生物に寄生している真っ最中のテラビョーゲンはどうなるのか不明)。
この通り、成長し切ったメガビョーゲンは強大な力を発揮してプリキュア達を苦しめる上に、仮にプリキュア達に倒されたとしても、種やメガパーツを生み出す形でタダでは消えない上に、ばら撒かれた種が人間や他の生物に寄生し、次々とテラビョーゲンが生み出され、それ等の個体はメガパーツの力でパワーアップを遂げてしまう為、プリキュアにとっても地球にとっても更なる脅威となるのは必至である。
更に、第24話にてダルイゼンはメガパーツを有効活用をするべく、プリキュアの初動対応の遅れの狙いも兼ねて敢えてすこやか市以外の場所で新たなテラビョーゲンを誕生させており、プリキュア側は幸いにも、アスミが新たに発動したワープで対処し、そのテラビョーゲンを浄化する事に成功したが、これが不特定多数で行われれば対処がより一層困難になるのは想像に難くない。
また、ダルイゼンがキュアグレースを見て「あの古の…?」と呟いた一方、後の回でシンドイーネもキュアフォンテーヌを見て「プリキュアって1人じゃないの!?」、グアイワルも「興味が湧いた」と言う反応を取った辺り、3人ともプリキュアと会った事が無く、それどころかその詳細すら知らない事が窺える。
その為、当初からダルイゼンたち三幹部は少なくとも太古のプリキュアが活躍していた時代より後になって誕生した存在だと予想されており、実際にダルイゼン達は、ごく最近進化して生まれた存在だと言う事が判明した。
この事についてペギタンは、テアティーヌがまだ戦線に立っていた頃に、討ち漏らしたメガビョーゲンが存在していた為、それ等の個体が先述の自立歩行できる種をばらまいた事で、ダルイゼンら知性を持ったテラビョーゲンが現れたと推測しており、実際にダルイゼンは、メガビョーゲンが生み出した種がある幼い少女の体に入り込み、長い年月をかけてダルイゼンとして育ったことが本人の口から明されている。
- シンドイーネとグアイワルも同様に育ったと思われるが、2人の「宿主」については描写される事は無かった。
- シンドイーネは41話の回想で「せっかく相性の良い宿主の中で気分良く育ったのに、一体どんなヤツよ? この私を呼びつけたの」と語っている。27話でダルイゼンに語った事からするとこの「宿主」の事ももはや忘れてしまったのだろう。
彼らの在り方について
以下の通り、ビョーゲンズは一般の地球上生物とは全く異なる増え方をする。
1.ナノビョーゲンが自然界の精霊であるエレメントさんに寄生することでメガビョーゲンに進化する。
2.そのメガビョーゲンは種を生み、その種が他の生物に寄生してテラビョーゲンを生む。
3.そのテラビョーゲンはナノビョーゲンを生み出し、メガビョーゲンを作り出す事ができる。
この繰り返しのサイクルで彼らは増殖していくのだ。
ここで重要なのは、彼らは何かに寄生しないと増殖できない存在であることだ(この辺り、細胞を持たず単独では増殖できないので他の生物の細胞の中に侵入し増殖するウイルスと似ている)。
彼らは自分たちだけが住みよい世界を作るために地球のすべてを蝕もうとしている。
そして、「ビョーゲンズによって完全に蝕まれた世界は、ビョーゲンズ以外は生存できない」と第1話の時点で明言されている。
更に、第39話にてビョーゲンズの発生源であるビョーゲンキングダムにプリキュア達が潜入した際、アスミは「エレメントさんの気配がまったく感じられない」と動揺していた。
- 尚、ビョーゲンキングダムに入った途端、「地球の異常を感知する」ラテの具合が悪くなっている事から、「ビョーゲンキングダムもまたヒーリングガーデンと同じ地球から産まれた異世界なのでは?」という疑惑があるが、その詳細は不明である。
先述の通り、新たなテラビョーゲンを誕生させるにはメガビョーゲンを作り出し、そのメガビョーゲンを作り出すにはエレメントさんが必要不可欠な為、エレメントさんの存在しないビョーゲンキングダムでは、ビョーゲンズが増殖不可能な状態に陥っているということが薄々ながら窺える(ただし、この点については作中では最後まで直接的な指摘はなかったことも付記しておく)。
彼らは数を増やし繁栄したいならば、地球を侵略せざるを得ないのである。
だが、その地球もビョーゲンキングダムと同じようにすべてを蝕もうとしている。
これでは同じことの繰り返しだ。
彼らは自身の生存に必要な環境を、自らの手で破壊し尽くそうとしているのだ。
そして彼らは地球を蝕みきったなら、また別の世界を狙うのであろう(彼らに地球外や異世界に進出する術があるのかは不明だが)。
このようなビョーゲンズのあり方は人間や他の生物とは決して相容れないものだ。
一見すると愚かなことをしているように見えるが、首領のキングビョーゲンの考えを理解すれば納得いくところも見えてくる。
キングビョーゲンは「種の進化とは数を増やすことではなく、強力な一つの個体を作り出すことだ」と考えており、同胞を吸収してパワーアップできる自身こそが究極の個体となるのにふさわしいと自負している。
つまりは、キングビョーゲンにとってビョーゲンズの増殖とは、自分自身を強化させるエサを育てることに過ぎない。
キングビョーゲンが掲げている「地球をビョーゲンズの同胞たちが暮らせる世界にする」という侵略目的もただの方便に過ぎず、キングビョーゲンは同胞の繁栄に興味がないのだ。
もちろん、他のビョーゲンズ(特にダルイゼン)はこの事を知る由もなかった。
戦いの結末
人類と決して相容れない「病気の化身」
上述した通り、人間を含めた他の生物と決して相容れる事が出来ず、和解や共存が不可能な存在であるが故に、過去のプリキュアの敵対者達とは異なり、最終的に全ての構成員が倒され、消滅する末路を辿る事となった。
また、『フレッシュプリキュア!』以降ほぼ恒例化していた三幹部が全滅したのも今作がプリキュア史上初となる。
上述した危険な性質と、過去シリーズの敵勢力と比べて残虐ぶりが際立つ描写も相まって、プリキュアシリーズでも非常に珍しい本当の意味での「純粋悪」と言っても差し支えないだろう。
ひなたは第39話にて、ビョーゲンズが心を入れ替え、人間と共存するかのような夢を見て、その話を聞いたのどかとちゆも少なからず肯定的な意見を示していたが、これは夢だからこそ見れる妄想に過ぎず、現実はそう甘くはない。
彼らビョーゲンズはあくまでも「命ある生物」ではなく「生物の形をした病気の化身」に他ならないのだ。
構成員が全員消滅した敵勢力はドツクゾーン、エターナル、終わりなき混沌に続く四例目である。
しかし、ドツクゾーンは洋館の少年が最終決戦後に転生体として復活し、エターナルは運び屋として働かされていたシロップや一時加入していた外様のブンビーが生き残り、終わりなき混沌はオルーバに手駒として利用されていた闇の魔法つかい一派とチクルン、そして劇場版に登場したダークマターが生存している為、どの組織も全体で見れば生き残りがいる状態であり、続編や外伝作品における敵、外部からの関係者や非戦闘員も含めた構成員が一人残らず全滅したのはビョーゲンズが史上初である。
- 「プリキュアと敵対した者」に限定した場合、該当する構成員が全滅したのは、作品別で見ればふたりはプリキュア(無印)以来、シーズン別で見れば魔法つかいプリキュア!前半シーズン(第1〜26話)以来となる(この時期の執事ザケンナーやラブーは、プリキュア達とは敵対どころか対面する事すら無かった為)。
さらに、プリキュアと敵が気持ちを通い合わせる展開すら無かったのもシリーズ初(上記のプリキュアと戦った者全員が消滅した、無印時代のドツクゾーンでさえ、キリヤがプリキュア達と解り合えている為)で、ここまで徹頭徹尾「倒すべき絶対悪」であり続けた敵組織は極めて異例と言っていいだろう。
各々の項目にある通り、テラビョーゲン達の最期は単に敗れ去るのでは無く、当人達にとって最も皮肉で残酷な形になっており、悪役の因果応報の結末を明確に描写している。
- キングビョーゲンに吸収され彼の糧となる事を拒み、かつての宿主である花寺のどか/キュアグレースに助けを求めたダルイゼンは、自分はもう二度とビョーゲンズを受け入れ病気になりたくはないというキュアグレースの意思の前に拒絶され、浄化しきれず人間態に戻った所をキングビョーゲンに吸収される展開となった。ダルイゼンはその後、物語に一切絡む事は無かったが、この展開は視聴者の間で大きな賛否を呼び、最終回で人間という種を批判し浄化される事を望んでいるサルローが現れた事により、キュアグレースがダルイゼンを見捨てたことの意味に更なる一考を投げかけている。
- 下克上計画を進めていく内に、上手い事プリキュアとキングビョーゲンを掌の上で踊らせた気になっていたキンググアイワルは、実際は逆に自分自身がキングビョーゲンの掌の上で踊らされており、彼とシンドイーネの策により返り討ちにされ、最後まで真実を知る事も出来ないまま、キングビョーゲンに吸収され、最終的には彼(やダルイゼン)と運命を共にする事となった。
- 主君に忠実にグアイワルとダルイゼンをキングビョーゲンの糧に売り渡したシンドイーネは、自身も彼の糧となる事を望むも、プリキュア達に浄化された事でナノシンドイーネとなり、ネオキングビョーゲンのバリアを突破する為にキュアアースに取り込まれると言う、本人の望みとは真逆の末路を迎えた。
- バテテモーダは強敵枠として登場した後に20話でキュアアースに(彼女の強さを強調するかませ犬の役割として)倒された。オフィシャルコンプリートブックの池田洋子氏のインタビューによると「宿主にされたヌートリアはエネルギーを吸い取られているけれど解放されて生きています。」との事。
- ネブソック、ケダリーに至っては、「本能的に地球を踏み病気にする危険な存在」であるとして「今週の怪人」枠として普通に倒されている。
こうなったのは、ビョーゲンズが病気の具現化といえる存在として描かれたことが大きいものと見られる。
病気とは本来克服すべきものであり、治しきれないが故に仕方なく共存する事はあっても、初めから共存や尊重を目指すべき対象では断じてない、ということなのだ。
ただ、全員消滅したのはあくまですこやか市周辺で活動していた幹部格であって、少なくとも自然発生する野生のビョーゲンズ(ナノビョーゲンやメガビョーゲン)は最終回後も存在している。
なお最終回のエンドカードで、作中で登場したテラビョーゲン達とネオキングビョーゲンに似たナノビョーゲンがファンサービス的に描かれていたが、シリーズ構成の香村純子の見解に従うならば、この首領及び幹部似のナノビョーゲンには「ナノシンドイーネ」と同じく各当人の自我は無いものと思われる。
ビョーゲンズとヒーリングアニマルとの戦いの歴史
結局彼らビョーゲンズはビョーゲンキングダムから来たとしか作中では描かれておらず、彼らがいつから地球の生態系を狙っていたのかは不明だが、作中の描写から推察する限り、ビョーゲンズとヒーリングアニマルの戦いの歴史は、少なくとも人類の文明史のあけぼのの頃まで遡る事になる。
以下は作中描写と公式インタビューから明かされているビョーゲンズとヒーリングアニマルとの戦いの歴史について記述する(プリキュアの歴史も参照)。
太古の戦い
かつて太古のプリキュアである「フウ」という少女が変身したプリキュアが、最初に生まれたヒーリングアニマルである幼きテアティーヌと共にキングビョーゲンと戦っていた時期は、当時の風景として水田や竪穴式住居が描かれていた事から弥生時代ごろのイメージと思われる。
太古の戦いでプリキュアとテアティーヌは勝利し、キングビョーゲンは力を失い意識だけの存在になった。戦いの舞台になった場所は後のすこやか市となった。
キングビョーゲンについて
2021年アニメージュ3月号のインタビューによると、キングビョーゲンは「テアティーヌと直接戦った相手」として「四つ足の獣っぽい姿」としてデザインされ、キャラクターデザインの山岡直子氏が「当初はもう少し犬っぽい雰囲気がありましたが、より『犬ではない雰囲気に』ということで、マズル(犬の口から鼻先までの部分)を変えて、一見何の動物か分からない感じの、ちょっとドラゴンっぽい方向にしてみました。」との事。
シリーズディレクターの池田洋子氏が、「今は存在しない、太古の動物みたいなね。」と答えている。
結局、キングビョーゲンの発生経緯については明かされず、かつてヒーリングアニマルの始祖であるテアティーヌと戦ったキングビョーゲンが他のテラビョーゲン達と同様地球の生命を宿主に生まれたのか、それとも異世界に住む生命を宿主にして成長し、そこを支配してビョーゲンキングダムを作ったのかは、作中でもインタビューでも明かされておらず不明である。
ビョーゲンズとの戦いが終わり...
最終決戦(第44話)でのプリキュア側の勝利により、キングビョーゲン一派は残党一人残さず殲滅された。
だが、それでもビョーゲンズそのものが滅びたわけではなく、地球上にはまだまだナノビョーゲンが無数に漂っており、最終回(第45話)ではそれらから「野生のメガビョーゲン」が自然発生する場面が描かれた。
ヒーリングアニマル達の地球を守るための戦いはまだまだ続くのである。
ラビリンたちはのどかたちをもう戦いに巻き込みたくないとは思っているが、ビョーゲンズへの対処がヒーリングアニマルたちだけでは手に負えなくなったら、またプリキュアの力を借りなくてはならない時がくる可能性もある。
だが、ヒーリングアニマル達がプリキュアの力を借りようと考えてるなら、まだ救いはある。
何故なら、最終回ではもっと恐ろしい可能性が示唆されているからだ。
それは、ヒーリングアニマルが人間を地球の敵とみなして浄化するという未来である。
最終回のエピソードではサルローという人間という種に批判的なヒーリングアニマルが登場しており、彼の口から、ヒーリングアニマルは地球の味方であり、決して人間の味方ではないと言う冷徹な現実が語られている。
「人間など、もはやビョーゲンズと変わらん。自然を破壊し、動物の命を奪う。ある程度は生きるために必要なことだ。それが人間ってものの進化でもあるのだろう。だが、限度ってものがある。ビョーゲンズだって、進化の果てがキングビョーゲンだ。俺に言わせれば、ヒーリングアニマルは人間だって浄化していくべきなんだ。この星のためにな……」
自分達の便利で快適な暮らしを追求する過程で自然を壊し、歴史上多くの生物を絶滅させてきた人類は、地球視点でみれば本質的にはビョーゲンズと大差無い。
もちろんプリキュアのパートナーとして共に戦い続けたラビリンたちは人間という種族に信頼をおいているが、テアティーヌは最終回で「いざとなれば、私にも人間を浄化する覚悟はあります」と言い切った。
そして地球の精霊であるアスミは未来も人間の味方であるとは限らない。
そうならないように、最終回でのどか、ちゆ、ひなたはこれからも自分なりの「お手当て」を頑張ることを誓い合う。
ヒーリングガーデンに野生のナノビョーゲンを持ち込んだ責任を取るため戦ったキュアグレース達を見て人間への見方を改めるサルローにアスミは語りかけた。
「サルローさん、わたくし達も一緒に考えてみませんか」と。
あくまで可能性の1つだとしても、最終回で『ヒーリングアニマルが人類を滅ぼすかも知れない』とする、プリキュア達人間が今まで浄化していったビョーゲンズ達と立場が入れ替わるかのようなパラダイムシフトは、視聴者に強い衝撃を与える事態になった。
必要以上に環境破壊をする人間の行いが、いつか「人類の罪」として自分達に返ってくる可能性もあるのだ。
しかしその一方で、何人かの視聴者も指摘している通り、サルローの主張もまた、一概に正しいとは言えない側面がある。
詳しくは本人の記事で。
公式インタビューより
アニメージュ8月号での43回アニメグランプリ作品部門1位の特別インタビュー内では、池田洋子氏は「ビョーゲンズが消滅したからといって、すべて終わってせいせいしたなんて、のどかは思っていません。キングビョーゲンを滅ぼしたこともダルイゼンを見捨てたことも、自分の責任と受け止めていると思います。ダルイゼンを助けたい気持ちはあった。だから苦しんだんです。最終的に彼を突き放したという事実は、のどかがこの先も抱えていくものだと思います」と答えている。
余談
モチーフ
組織名の由来は、病気を引き起こす微生物などを指すと言われる「病原体」からきていると思われる。
但し構成員の名前はウィルスや症状とかからではなく「ダルい」、「しんどい」、「具合が悪い」、「バテてしまった」、「気怠い」といった症状としては曖昧な状態を語録合わせしたものがほとんどで、唯一の例外は「寝不足」のみ。
視聴者の反応
キングビョーゲンに追われてかつての宿主であるキュアグレースに「お前の体の中にかくまってくれ」と助けを求めたダルイゼンを、グレースが「自分自身がすこやかに生きるため」と見捨てて突き放した第42話の展開は賛否を含め、大きな話題を生んだ。
称賛側からは今まで病気(ダルイゼン)から酷い扱いをされてきたのどかが、そのダルイゼンをきっぱりと拒絶し浄化する意思を示した描写に評価する意見がある一方、批判側からは身勝手ながらも助けを求めた相手(ダルイゼン)を見捨てたのどかに対して拒否反応を示す意見も出た。
奇しくも、現実世界ではコロナ禍による放送中断もあり、『ヒーリングっど♥プリキュア』は「地球を蝕む病魔」と戦いながらの製作となった。
関連タグ
プリキュア関連
- ダークフォール:14年前の作品に登場する、地球の精霊から怪物を生み出す敵対勢力繋がり。
- ジコチュー:7年前の作品に登場する、幹部の外見が比較的人間に近く、身体に悪魔のようなパーツが生えている敵対勢力繋がり。「支配者の名前に『キング』が付いている」「怪物の名前に勢力名が含まれている」「三幹部が3人共、最後の最後まで改心しなかった」等と言った点も共通している。彼らはその名の通りある意味ビョーゲンズ以上の自己中心主義者の集まりであり、組織としては全く成り立っていないが、同時に不死・不滅の存在でもある。また、こちらの黒幕も、下克上を目論んだ三幹部の3人目を取り込む事で、完全復活を果たしている。
- ディスダーク:5年前の作品に登場する、絶対悪として描写されている敵対勢力繋がり。こちらの三幹部は当初ビョーゲンズのように全員消滅する展開が想定されていたが、スタッフの方針転換により結局3人とも生き残った。
- クライアス社、ブンドル団:2年違いの作品の敵対勢力だが、何れもビョーゲンズとは真逆に、全ての構成員が改心及び生存の結末を迎えている。
- 破壊の魔女:次回作に登場する、あとまわしの魔女の本来の姿であり、産まれながらに地球を蝕み病気にする性質を持つビョーゲンズ(病気の化身)と同様、産まれながらにこの世を滅ぼすよう生を受けた、人間や人魚達とは相容れず理解もできない破壊の化身(自然災害の化身)であり、産まれながらの絶対悪である……筈だった。
ニチアサ関連
- ベーダー一族、宇宙忍群ジャカンジャ、蛮機族ガイアーク、地球犠獄集団・幽魔獣:過去のスーパー戦隊シリーズに登場する、汚染したり腐らせたりと、細かい方法は違えど地球を蝕む事を目的とした敵対勢力繋がり。更に幽魔獣以外は、物語開始前に異なる場所を侵略している点、ガイアークは三幹部が担当する属性が似通っている点も共通している。
- デスガリアン、異世界犯罪者集団ギャングラー:本作のシリーズ構成が、過去にメインを担当したスーパー戦隊シリーズの敵対勢力。どちらもビョーゲンズと同様、徹底的に邪悪な存在として描写され、前者は人間を怪物に変えて手駒にする点や、地球の生き物を「下等生物」と見下している点、「ヒーローと怪人の交流エピソード」が描かれずに全滅の末路を辿った点も共通している。
- 次元戦団バイラム:『鳥人戦隊ジェットマン』の敵対勢力で、ビョーゲンズと同様に幹部達の仲が悪くギスギスしている。反対に次回作の敵対勢力は幹部達の仲が良くアットホームな環境である点も共通する。
- オルグ:『百獣戦隊ガオレンジャー』の敵対勢力で、主人公達の支え役から「地球を蝕む病原体」と称されている。対峙する戦士が動物モチーフである点も共通。
- 地底冥府インフェルシア:『魔法戦隊マジレンジャー』に登場する、当時は極力避けられていた一般人を殺害する描写があったりと、他の敵対勢力の中でも残虐ぶりが目立つ敵組織繋がり。菌をモチーフにした怪物が登場する点や、幹部達の関係が最悪で喧嘩が絶えない点も共通。更に、終盤にて登場した神々は(一部を除いて)ビョーゲンズと同じく人間とは決して解り合う事が出来ない宿命の上にある。ただし、こちらは最終的に生き残った構成員達が組織ごとヒーロー側と和解している。
- クエスター:『轟轟戦隊ボウケンジャー』に登場する、他の敵組織と比べて、人類に対する危険性や脅威度がずば抜けて高く、和解や共存が不可能な敵組織繋がりで、こちらも最終的にその組織の中で唯一一切の残党を残すことなく全滅した(ただし、クエスターの2人はビョーゲンズとは違って仲間意識が強く、お互いに信頼し合っている)。
- バグスター:『仮面ライダーエグゼイド』の敵対勢力で、病原体モチーフ繋がり。ただしこちらはだいぶ人間寄りの人格を持っており、更には人格・記憶を保ったままバグスターに転身した人間も複数存在している為、即ち人間とは十分に共存可能な存在として描写されており、ビョーゲンズとは真逆の結末を辿っている。ちなみに主人公ととある幹部の境遇及び関係は、のどかとダルイゼンと全く同じ。
その他
- ギャオス、ワクチンマン:前者はガメラシリーズ、後者は『ワンパンマン』に登場する、徹底的に人間とは共存不可能な存在として描写されている怪物繋がり。特に後者はウイルスモチーフである点も共通している。ただし、何れも作中にて、人類の環境破壊から地球を守るために現れた生命体である事が示唆されており、ある意味ビョーゲンズとは真逆の存在だと言えなくもない。
- ヘドラ:『ゴジラ対ヘドラ』に登場する公害怪獣で、地球を汚染しようとする危険生物として描かれている点が共通する。
- ザンスカール帝国、ロケット団:前者は『機動戦士Vガンダム』、後者はアニポケのサトシの旅シリーズに登場する、主人公と同じ普通の人間が世界征服のために結成しただけの存在である敵対勢力。両方は重要なメンバーが無能な上で主人公とは一切和解しない点が共通する他、前者は地球征服を目論む絶対悪と見なされる点、後者はメンバー同士の仲が非常に悪い点が共通する。
プリキュア歴代敵組織
ノットレイダー ← ビョーゲンズ → あとまわしの魔女たち
ニチアサ同期の敵対勢力
滅亡迅雷.net、ヨドンヘイム:令和最初の敵対勢力。後者は上述のベーダー一族等と同じく、汚れた環境を好むという共通点を持っている。但し両者のレギュラーの構成員は、後者は数名、前者に至っては全員が最終的にヒーロー側と和解している。種族は違えど同じだからこそ理解しあえた点はビョーゲンズとの対比と言える。