「さぁ、ケミストリーだ……!」
「この学び舎を訪れるのも久しぶりだ……大分小綺麗になった様だが、あの時から変わっていない…夢を抱いた若者達の血と汗と涙が滲むのが…見える……!!」
演:鎌苅健太
変身する仮面ライダー
概要
『仮面ライダーガッチャード』の登場人物。冥黒の三姉妹に指示を出している立場にあり、彼女達を従える存在として君臨している。
なお、錬金アカデミーに対して「訪れるのは久しぶり」と溢していることから、以前は錬金アカデミーの関係者(生徒か教員?)として在籍していた可能性も示唆されている(ミナト先生に対しても彼が教師となる前から顔見知りではある模様)。
人物像
容姿
髭を生やした品のある顔立ちの男性で、赤い宝石を埋めた金のアルケミストリングと右目にモノクルを装着しており、冥黒の三姉妹と何処か似通った金の装飾がある黒いスーツを着こなしている。
本人の趣味なのか、何処に行くにも金色のルービックキューブを手放さずに持ち歩いている(オープニングでも第17話以降ではグリオンのキューブの中で動かされる冥黒の三姉妹という演出がある)。
このルービックキューブもただの玩具ではない(恐らく錬金具の一種)らしく、マルガムの目を眩ます程の光を放出することが可能である。
第25話では材料が明らかとなったが、とある人物のトラウマを抉るものだった。
性格
落ち着いた物腰をしているが、その眼は狂気に満ちており、己の欲望に極めて忠実。
劇中での言動から自分以外の存在を単なる実験動物としか認識していないような描写があり、仮面ライダーの戦力を確かめるためだけに「実験」と称して市街の人達を襲い、その際の恐怖や怒りなどの感情を単なる化学反応のように見るなどマッドサイエンティストの気質を併せ持っている。
錬金術の負の側面とも呼べる「暗黒の力」が起こす現象「ケミストリー」に心を踊らせ、それを見るためなら例え本筋の計画とは無関係でも実験を行い、相手の心をへし折るために極めて悪辣な手段を嬉々として用いるなど、まさしく人間の悪意を凝縮したような存在。
姉妹のリーダー格である長女のアトロポスからは「様」付けで呼ばれているが、当のグリオンは彼女たちを「お人形ちゃん」と呼ぶなど役に立つ玩具としか認識していないため、次女のクロトーや三女のラケシスからは「せっかちな奴」・「怒らせたら怖い」と忠誠心ではなく、畏怖の眼で見られているばかりか、ラケシスに至っては切り捨てられる前に見限ろうと企むなど人望は無い模様。
能力
アルケミストリングの階級が示す通り、高位の錬金術師として非常に高い技術の持ち主で通常のマルガムでも仮面ライダーを簡単にあしらえるほど。
またアトロポス以上の洗脳能力を持ち、本来なら指輪の影響で記憶操作の影響を受けない錬金術師の記憶さえも改竄できてしまう。実は10年前に錬金連合の上層部もこの能力で洗脳し、九堂風雅を「ドライバーとケミーを持ち逃げした裏切り者」に仕立て上げた。この事から見て上層部が仮面ライダードレッドの事件でまともに取り合ってくれなかったのも彼の差し金なのは確かである。第17話以降からミナトが豹変したのも彼に操られた・・・と思いきや第20話以降からミナトは洗脳されているのかどうか疑わしい描写があり、第24話では本人の気まぐれであえて洗脳させずに何らかの弱みを握られて従わされている可能性があることを匂わせる描写がなされた。
禁断の錬金術とされていた空間操作に至っては肉体を崩壊させずに難なくこなすなど、規格外の実力を秘めている。
一方で、最初からこれ程規格外の力を手に入れていた訳ではないらしく、枝見鏡花曰く「スパナの両親はグリオンなんかより余っ程強いはずだった」とも語っている。彼が人智を超えた錬金術師の力を手に入れたのにも何やら理由があるのだろうか……。
自身の錬金術を発動する際は「金色(こんじき)に染まれ」という一節を唱える。
活躍
第16話「クライシスXmas!オロチ事変」
第5話にて名前のみ明らかになった後、しばらくは事態を静観していたが、遂に前線へ赴くことに。ラケシスの意識を強引に奪い、身体の主導権を握るとジャマタノオロチが封印されているライドケミーカードでオロチマルガムへと変貌させる。
街の人々を巻き込みながら、マルガムの持つ巨大化と石化能力でガッチャードを変身解除まで追い込むが、もう一人のガッチャードが乱入したことで等身大のサイズにまで戻されてしまい、既に興味も失せたのか意識を奪われて暴走するオロチマルガムを放置していた。
マルガムが撃破された後はアジトに戻って来た三姉妹の前に改めて姿を見せ、これから起こるであろう戦いに笑みを浮かべていた。
第17話「ムーンブレイク・メッセンジャー」
自身が造った強い悪意を秘めた人形とケミーのネミネムーンを結合させて誕生したムーンマルガムを街に放つと、自身は錬金アカデミーに侵入(※)。
過去を懐かしむような様子を見せながらミナトと意味深なやり取りをしていた。
(※)東映の公式サイトによると、異空間操作ななどで不法侵入したのではなく錬金連合から正式に認可されて訪れたとのこと。
第18話「駆け抜けろ!進化のファイヤーロード!」
錬金アカデミーを乗っ取り、強大な悪意を持つマルガムを作るべくミナトには障害となるガッチャードたちの排除を、冥黒の三姉妹にはケミーの捕獲を指示する。
更に、同話で宝太郎が10年前の時代にタイムスリップした際にグリオンが冥黒の三姉妹と共にウロボロス界に侵入してケミー奪取を企み、更には風雅を裏切り者に仕立てた事も発覚した。
この時には透明な多角形の結晶体型の錬金具を所持しており、服装も高位の錬金術師が羽織るであろう制服に身を包んでいた。
しかし、サボニードルの攻撃が顔面に命中しているにもかかわらず平然としているなど、現代と同じ不気味さも漂わせている。
ガッチャードデイブレイクによれば5年後にはグリオンが世界をほぼ征服しており、更に先の時代では人間もケミーも滅亡寸前に追い込まれているとのこと。
第19話「りんねの夜明け!変身・マジェード!
自発的に動き始めたとある悪意人形に感心を示すと、実体化した彼のために大量の肉を錬成して振る舞っていた。
次々とケミーを捕獲するクロトーに労いの言葉を掛けながらも、飢えを満たすべく暴走を始めた悪意人形にファンタスティックケミーのヨアケルベロスを結合させてケルベロスマルガムに変異させると、行動を制御させる黄金のパンパイプをアトロポスに託して「散歩」させるよう指示。
結果としてマルガムは撃破されたが、帰還したアトロポスの負傷した箇所を触診し、本心かどうか分からない安堵した表情を向けていた。
第20話「微笑む天使、笑えぬ真実」
「私を思い出したか、少年?お前の中に秘められた暗黒の力を今、解き放ってやろう……!」
枝見鏡花の口から10年前に錬金アカデミーを襲撃し禁じられた錬金術を使用して「暗黒の扉」を開こうとしていたこと、その過程で黒鋼レンチ・黒鋼スズら多くの錬金術師を抹殺した事が判明。
エンジェルマルガムを生み出し、10年前にやり損ねた「スパナの自分に対する憎悪を溢れさせ嘗て自分が垣間見た【黒い炎】の覚醒を促し、それを手中に収めること」を計画。見事にスパナは両親を再び失った憎悪に呑まれウィールマルガムへと変貌。
黒く燃える美しい炎と、嘆き悲しむ惨めな様を見て高らかに笑うのだった……。
「実験終了……!10年前に垣間見た、あの黒く美しい炎。その強大な力は、私のものだ……!」
第21話「マッドウォリアー!黒炎のヴァルバラド!」
エンジェルマルガムからスパナの両親を蘇らせることができなくなった旨を告げられたが、「利用できないならば別の人間を利用するまで…。」と意に介さない様子だった。その後、ミナトから「スパナの師匠、枝見鏡花の生命を狙えばいい」と提案された際には、「おおっ…!それはいい案だ。頼んだぞ…!」と賛同し激励した。
第22話「愛は刃!ケミー・ストーリーは突然に」
前回の作戦が失敗した事に腹を立てる中、アトロポスの意見によりライダー殲滅を目論むクロトーに力を与えた。
第23話「いつも心にズッキュンを」
作戦が失敗し、満身創痍で戻ってきたクロトーに対して 「君ともあろうものが、ズッキュン、させられたのかい…?」と問いただした。
そして、宝太郎達から全てを奪うべく、アトロポスに対してミナトにドレッドライバーとレプリユニコンのライドケミーカードを渡すよう促した。
第24話「急転直下!禁断の鋼鉄ライダー!」
ワープテラをプテラノドンマルガムへと変貌させ、プテラノドンマルガムの力で宝太郎達が持っていたライドケミーカードのほとんどを強奪することに成功した。
その際、ミナトとの会話で冥黒の三姉妹は自身の手で作り出した人工生命体であることが、改めて明言された。
第25話「若きセンセイの過ち」
古代の錬金術で姿を変えたガッチャードに訝しげな視線を向けながらも、ミナトに仮面ライダー達の始末をするよう指示する。
結果として敗北した彼を容赦なく切り捨てると、暗黒の扉を開く準備に取り掛かった。
第26話「悪意をハバム、漆黒の風」
暗黒の扉を開くための最大の切り札であるガイアードを手中に収めるべく、金色のキューブ内に幽閉していたドラゴナロスを呼び出した上でカードに封印。悪意人形と結合させてドラゴンマルガムを生み出した。
しかし、ドラゴンマルガムは風雅が変身した仮面ライダーウインドに撃破され、ガイアードと共にドラゴナロスは彼の手元に渡ってしまう…が、そのことは想定内だったようで変身解除後の風雅を突如強襲、ガイアードとドラゴナロスだけでなく、クロアナとギガバハムも強奪した。そして、10年前に成し遂げられなかった「最高のケミストリー」のためにウロボロス界へ赴く…。
「さぁ、実験を始めよう……。黄金のケミストリーを…!」
余談
演者の鎌苅氏は本作が仮面ライダーシリーズ及び特撮作品初出演になる。ちなみに、妻の芳賀優里亜女史は『仮面ライダー555』にてヒロイン・園田真理等、多くの仮面ライダーシリーズに出演している。
彼のアルケミストリングは金色な他、上記の通り10年前には錬金術師の羽織る制服も着ていたため、彼も風雅に並ぶ高位の錬金術師であることがうかがえる。
視聴者からは宝太郎の「ガッチャ!」のように「ケミストリー」を連呼しているため、「ケミストリーおじさん」とも呼ばれてしまっている。
また、ラケシスやクロトーに比べて、明らかにアトロポスを贔屓しているような描写も少なくないため、一部ではロリコン呼ばわりされてしまっている。(一応、長女はアトロポスなのだが…)
本作の脚本担当である長谷川圭一氏のお気に入りキャラであり、度々自身のXのポストでグリオンの名前を出している。(大抵、自身が鑑賞した作品関係のポストでそれが見受けられる。)
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ネタバレ注意!
「よく見ろ、これがお前の選択だ。お前が私に施した錬金術が、若者の未来を奪う……」
「お前の記憶は消さん。その絶望を、大切に育てておきなさい……」
実はスパナの両親だけでなく、ミナトの後輩である錫屋大輝や他の未来ある若き錬金術師達の命を奪っていたことが判明。
元々彼はミナトの新人時代の錬金アカデミーの講師であったが、10年前にアカデミー及び連合を裏切り、一度は九堂風雅に退けられてからはアカデミーに襲撃を掛けたのだ。
錫屋の言葉を信じたミナトによって一度は拘束されるも、すぐさま本性を表した彼は報復とばかりに洗脳や錬金術を使って弄ぶように錬金術師達の命を奪った。
そして自分の行いを棚に上げてミナトに「お前が殺した」と言い放ち、そのトラウマを植え付けるべく敢えて記憶を消去せずに放置して立ち去った。
この時、金色のキューブはミナトが近くにあった錬金具を拘束具として使ったものを再錬成して生み出したことが明らかになった。
黄金の理想郷を求めた錬金術師の最期?(第27話「ガッチャ!クロスホッパー!」)
「【そは地より天に昇り、再び地へと下る。この世の創造もまた、かくありき】」
ウロボロス界にある物質とケミーのエネルギーを利用して暗黒の扉を開く準備をし、最後の仕上げであるガッチャードライバーを奪い取るべく自らの後を追ってきた宝太郎達と対峙。レプリスチームライナーとレプリダイオーニを使用して仮面ライダードレッド弐式に変身する。
仮面ライダーマジェードと仮面ライダーヴァルバラドの相手をレプリケミーから造り出したマルガムに任せ、自身はアイアンガッチャードを圧倒的なパワーで追い詰めるが、予想よりも粘る彼らに痺れを切らすと、今度は先ほどの手順にレプリユニコンを追加した仮面ライダードレッド参式へと再錬成し、三人の仮面ライダーを叩きのめして変身解除させる。
「我に力を……!愚かな人間どもを……この世の生きとし生ける者全てを黄金に変える力を!」
スパナ「全てを黄金に変えるだと……!?」
「……何を驚く?無価値なものを金に作り替えることこそ『錬金術』そのものじゃないか。私は永遠に止まった時間の中で、黄金に光り輝く美しき世界を眺め、暮らすのだ……」
悠々と変身を解除して宝太郎からドライバーを奪うと、嬉々とした表情で己の野望を口にする。
それは、時の停止した世界で全てを黄金へと作り替えること。錬金術師にとっての悲願である永遠の輝きで満たされた理想郷こそ彼が求めて止まないケミストリーだったのだ。
彼の思想は「錬金術原理主義者」とも呼ぶべきものであり、古の時代に生きた錬金術師からは受け入れられた行動だったかもしれない。
宝太郎「ちっぽけだな。そんなものがグリオン、お前のガッチャかよ!」
しかし、己の基準で全てを無価値な物と断じて身勝手な理由で金を求める姿勢は今と未来を生きる宝太郎からすればちっぽけな悪意に過ぎなかったのだ。
「この最高の瞬間に水を差すな。消えろ、虫ケラ」
そんな反論する宝太郎に気を損ね、剣を錬成して殺そうとするが、迷いを振り切ったミナトが乱入して来たことで失敗。
「何をしに来た? また間違った選択をするのか? お前のせいで若者達の命が消えるぞ!?」
ミナト「グリオン!もう、お前の言葉は……俺には響かない!」
更にスパナとりんねが加勢したことで妨害しようとするアトロポスやクロトー諸共動きを抑え込まれ、その隙をついて宝太郎は今にも意識が消え入りそうなケミー達の元へ。
宝太郎「みんな!俺の声が聞こえる?答えてよ!!」
「無駄だ! 闇の力に飲み込まれたそいつ等に、お前の声が届くものか!」
彼等の行動を無駄なことと嘲笑するも、決して諦めず宝太郎は叱咤激励する。
宝太郎「はぁ……はぁ……しっかりしろぉぉぉっ!!俺は知ってる!お前達には無限の可能性があることを!」
万物の真価を知ろうともせず、固定化された歪な黄金より価値があるものを、様々な困難を乗り越えてきた宝太郎達は知っている。
ケミーには人を幸せにする力があることを信じる彼の叫びに応えたホッパー1に、レベルナンバー10のケミー達が力を貸したことでクロスホッパーが誕生。呪縛を抜け出された上に「鍵」だったガッチャードライバーを奪還されてしまう。
「ただの人工生命体如きがこんなことを……ありえない……!」
ミナト「グリオン!お前には理解できない!これが、一ノ瀬の信じるガッチャ……人とケミーの可能性だ!」
「黙れぇ!そんな無価値なものなど、ひねり潰してくれる……!変身……!!」
自分の理解出来ない数々の現象に動揺を隠せず、感情を剥き出しにした叫びをあげながらドレッド参式に再変身。
再びアイアンガッチャードを正面から叩き潰そうとするが、間合いに捉える前に呪縛されたライドケミーカードを一枚残らず解放・奪還されたことで「暗黒の扉」は爆発を起こして閉鎖。
「何てことを……!許さぁぁぁん!!」と憎悪を露にして襲い掛かるが、さっきの優勢はどこへやら、打って変わってアイアンガッチャードのパワーに押されて苦戦。
「どんな姿になろうが...叩き潰すのみ!!」
止めにクロスホッパーの力を借りて誕生し、様々なケミーの力を組み合わせて戦う仮面ライダープラチナガッチャードには全く手も足も出ず、一方的に叩きのめされた末にプラチナシュートの直撃を喰らって敗北、ドレッドへの変身も解除される。
それでも暗黒の扉にある向こう側……黄金の理想郷「エルドラド」に手を伸ばすとするも、錬金術が失敗した対価を払えとばかりに、扉から伸びた巨大な異形の手に捕まれると、暗黒の扉へと吸い込まれた。
「私の……ケミ、ストリーが……エル、ドラド……!ウグゥゥ……ウウッ!ウゥウゥゥアァァァァァーーーッ!!」
見放された錬金術の原理に固執した錬金術師は、これまでの報いを受けるかの如く、誰にも理解されないまま扉の向こうへと消え去った。
創造主を失った冥黒の三姉妹は三者三様の反応を示していたが、アトロポスだけは表情を変えることなく落ちた金色のキューブを拾う。
「まだ終わってないよ」という彼女の言葉を証明するかのように、単なる錬金具であるはずのそれは心臓を彷彿とさせる不気味な鼓動を響かせていた。
真の余談
グリオンのコンセプトは放送開始時から指摘されていた「錬金術らしくない」という言葉へのアンサーらしく、『本来の目的である黄金錬成を野望とした古い錬金術師』とのこと。
公式サイトにて鎌苅氏のクランクアップが報告されていないため、3クール目以降も何かしらの形で再登場すると思われる。