概要
執事(しつじ)とは、上流家庭において、家事及び部下の使用人の指揮管理を担う役割を持つ役職である。
現代では「執事」と言ったら主にイギリスの上級使用人である「バトラー」を指す場合が多い。イギリスでは家事使用人は男性が請け負うことが多い仕事であったが、人件費が高くなった今日では極めて稀な存在である。
執事の階級
執事の職務は多岐に渡り、家のご主人の給仕、着付け、食器や飲み物の管理。火の元管理、戸締り等の家全体の管理、手紙の仕分けなど秘書的役割も担う。
しかし一口に「執事」と言ってもイギリスでは階級があり、階級にとって職務や権限も異なる。
- ハウス・スチュワード
使用人の中でも最も権威がある。日本語訳は「家令」もしくは「執事長」。土地や屋敷の鍵、家計を管理する。下級使用人の監督も担当する。屋敷内に専用の個室も割り当てられる。現代ではハウス・スチュワードはあまり使われない名称で、バトラーに職務と呼び方が統一されている。
- バトラー
上級使用人。主人の私室に立ち入ることが許され、配膳や衣服の用意を担当する。スチュワードがいない場合はその職務をバトラーが引き受ける。主人とともに外出をし、車への同乗が許される。
- フットマン
下級使用人。庭の管理・清掃・料理などを担当する。元々は貴族に仕え、馬車に随行する者を指した。若くて体力のある未婚の男性が中心である。
日本での「執事」
室町時代には既に存在した。公家や大きな武家に仕え、土地の管理や家政・家計を担当するという意味ではイギリスのバトラーとそう大きな違いがあるわけではない。また、幕府の長官を指すこともあった。「家令」「家宰」「管領」「執権」という表記も見られる。
戦国大名の上杉氏は、本来は鎌倉公方を補佐する執事の家柄であり、「関東管領」とも呼ばれた。その上杉氏にも太田氏のような執事がいた。主人が戦場に出ない場合、執事が甲冑を着て家臣団を率いて戦った。しかし執事の力があまりに強くなりすぎると次第に主人と対立し、太田道灌のように暗殺される者もいた。
サブカルチャーにおいて
上述の通り、執事が担うのは上流階級の家事や、その資産の運営の補佐などにある。
しかし、サブカルチャーにおいては、主人や令息令嬢の護衛役も担っている他、執事になる以前にとんでもない経歴を有している者も多くみられる。
親の借金を背負わされ、紆余曲折を経て学生の身で執事になった者や、現在仕えている主人とストリートファイトに明け暮れていた猛者、仕える主人がスーパーヒーローでありそのサポートをする万能執事、果ては人間ですらない執事など。
なお「セバスチャン」という名前が妙に多いのは、『アルプスの少女ハイジ』に登場した同名キャラの影響と言われている。なので日本国内でしか通用しないネタである(一方で英国では「アビゲイル=メイド」と言うネタが存在する)。