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ウクライナ侵攻の編集履歴

2024-08-24 07:38:25 バージョン

ウクライナ侵攻

うくらいなしんこう

2022年2月よりロシアがウクライナに対して実行している軍事侵攻。

注意

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概要

ウクライナ侵攻(ウクライナしんこう、ロシア語:Вторжение России на Украину、ウクライナ語:Російське вторгнення в Україну、英語:Russian invasion of Ukraine)とは、2022年2月24日にロシアウクライナに対して実行している軍事侵攻。国際的な正式名称は定まっておらず、「ロシア・ウクライナ戦争」、「ウクライナ戦争」など様々な呼ばれ方をされている。イラストを描く際はタグ付けに注意して欲しい。


ロシア側はこれを戦争と呼称せず、「ウクライナ政府によって8年間虐げられてきた人々を保護するための『特別軍事作戦』」と主張しているが、日本国アメリカ合衆国ドイツ連邦共和国などの西側諸国の政府は侵略戦争としている。ベラルーシ北朝鮮がロシアに協力する一方、アメリカヨーロッパの大半の国などがウクライナを支持し、世界規模の対立となっている。双方の情報戦も含めて、他の国を巻き込んだ綱渡りの状態が続いている。


現地の混乱・情報合戦によって正確な被害は掴みきれていないものの、商業施設・学校・集合住宅などの民間施設が多数破壊されており、民間人の犠牲者は万単位を超えると見られている。ウクライナからの公式発表・ロシアから流出した資料などにより、ロシア連邦軍の戦死者は累計20万人を超えている事はほぼ確実視されている。その他にも防衛戦によって戦死したウクライナ軍兵士・戦地と化した市街地で虐殺された一般市民も少なくなく、収束の見えない中で犠牲者は益々増加する事が予想されている。


ウクライナではインフラの破壊による防寒の不十分さ・ロシアでは経済制裁と装備の横流しによる兵士の装備の貧弱化も重なり、双方の兵士・市民に厳しい状況をもたらしている。後述の制裁・避難民の往来による社会・経済に対する世界的な影響と、当事国の2か国共にオミクロン株の感染拡大の時期と重なっていた事もあり、COVID-19の対策も少なからぬ悪影響が出ると見込まれているが検査や調査もできない状況である事から実態は不明である。COVID-19のような呼吸器感染症だけでなく、ロシア軍陣地では補給の途絶による衛生用品の不足もありコレラ赤痢といった様々な感染症の蔓延や塹壕でのネズミの大発生とそれに伴うハンタウイルス感染症も確認されており、ダム破壊や放置された大量の遺体による衛生状況の悪化が懸念されている。冬季の凍傷、戦場の残酷さによる精神的外傷、働き手である中年〜若年層の男性が多数失われたことが今後年単位で双方の社会で尾をひく危険性も指摘されており、戦争が終了しても余波は長く続くものと思われる。

一方で、ロシアの国内徴兵はPMCによる募集(服役中の囚人も対象)、中央から見下されがちな地方の少数民族等を中心に行われているためモスクワなどの大都市圏の裕福な層の戦死者は割合が低く、都市部の国民には十分な危機感が無い者も多く在日ロシア人のツイッタラーやブロガーからは実家周辺の見識の低さに嘆きの声も散見されている。


重要視される理由

ロシア連邦は1712万5191平方キロメートルという世界最大の国土を有し、総人口は日本と同規模である1億4178万2123人である。対するウクライナは60万3628平方キロメートルの国土を有し、総人口は4138万9838人であり、軍事力においても兵器は旧式ながらヨーロッパ有数の兵数を抱える。単純な人口と面積で言うと、ヨーロッパでも最大規模の国同士が交戦しているのである。


後述の項目にもある通り、ウクライナはソ連時代にロシアと並ぶ重要な地域として、旧ソ連の勢力の中では第2位の地域として扱われていた。その為掛け値無しに第三次世界大戦の勃発に繋がりかねないとして、その情勢の行方が全世界から警戒されているのである。

文化的には久々の「白人国対白人国」かつ「キリスト教国対キリスト教国」と言う点も、特に白人文化圏に対する衝撃を大きくしているようである。


歴史的経緯

両国が戦争に至った直接の原因は2010年代以降であるが、その両者の歴史的な因縁の背景は1000年以上も遡る。


初期

882年3月に東ヨーロッパのルーシ地域にてキエフ大公国が建国され、この国は現在のウクライナ・ロシア・ベラルーシにとって同じ文化的祖先の母体となり、これらの国が兄弟的関係の由来となった。日本人に分かりやすく説明するとすれば、キエフが京都モスクワが東京といった関係だろうか。1240年12月にモンゴル帝国の侵略でキエフ大公国は滅亡し、ウクライナ地域はポーランドオスマン帝国など他国の支配を経てロシア帝国の一部となる。穀倉地帯であり、黒海に面するウクライナは不凍港獲得を目指すロシアにとって重要地域となった。


ソ連時代

1922年12月にロシア革命によってソビエト連邦が成立し、この機にウクライナは独立を図るもソ連に編入された。ソ連はウクライナを君主制時代と同じ理由で重視したが、1932年11月にソ連のヨシフ・スターリン党書記長は共産主義社会実現の名の下に、農業集団化政策でウクライナの農産物を搾取。その結果として人工的大飢饉(ホロドモール)が発生し、400万人の犠牲者を生んだ。


第二次世界大戦ではナチス・ドイツを率いたアドルフ・ヒトラーが、国家存続の重要地・生存圏の1つとして穀倉地帯のウクライナを狙って侵攻、独ソ戦の最前線にもなった。この時ウクライナ人は親ドイツ派と親ロシア派双方に分かれながら、パルチザンあるいは正規軍として長く過酷な戦争を戦った。


戦後もソ連の抑圧的支配が続く中で、1986年4月にチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故が発生。原発事故として史上最悪の被害を出し、放出された大量の放射性物質による汚染被害が多くの地域に広がった。そうした中で共産主義の行き詰まりからソ連が崩壊し、1991年8月にウクライナはようやく国家としての独立を果たした。


独立後

ソ連支配の名残で東部・クリミア半島などにロシア系住民が多い地域が残留し、それが後々の火種となる。ウクライナの政治はこれまでの文化的結びつきを重視する親ロシア派・ロシア圏を出てEU加盟を目指す親ヨーロッパ派。この双方の思惑で揺れ続いていた。その様な中でロシアから低価格で購入した天然ガスの滞納と値上がりが問題となって両国関係が悪化した。2014年2月に親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領がEUとの経済協力交渉打ち切りを発表。これに端を発した大規模な抗議運動(両派の衝突や鎮圧により多数の死傷者を出した)を経て失脚した。


この機に乗じてロシアは親ロシア派が多いクリミア半島へ軍を展開、その後も居座り続けたうえで住民投票によりクリミア共和国独立が宣言され、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は主権承認の上でクリミアを併合した。さらに東部地域で親ロシア的過激派組織が2つの州で「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」の独立を宣言し、政府軍と紛争状態になった。


2014年9月にミンスク合意が調印され、2015年2月にドイツ・フランスの仲介で2番目の合意がなされた。最大の争点であるドンバス地方の2州の自治権拡大を問う住民投票の実施を、ウクライナは合意された親ロシア派勢力の武装解除と外国勢力(事実上ロシア連邦軍)が撤退していない事などを理由に渋り、ロシアも住民投票の不実施と「住民の安全が確保されていない」ことを理由に介入を継続した。以降も双方の間で低頻度の武力衝突は継続され、この合意は事実上死文化した。


2019年5月に大統領に就任したヴォロディミル・ゼレンスキーは、クリミア奪還・祖国再統合を掲げてEU・NATOの加盟を目指した。これまでNATO加盟国とロシアとの間には緩衝国となる非加盟国があったが、NATOの東方拡大でついにロシアの隣国のウクライナにまで迫った。ウクライナは独立よりかねてから西側諸国への接近を図っていたが、クリミア危機までは国内の親ロシア派の難色とロシアの反対もあり、長らく加入問題は事実上棚上げとなっていた。


しかしロシアが軍を展開して親ロシア派の根拠地の殆どを支配下に置いた事で、皮肉にもクリミア危機以降は親ロシア派以外のウクライナの世論が一気に親欧米派へと傾き、2019年1月に憲法に将来的なEUとNATOの加盟を目指すことが明示されるまでになった。


2021年12月3日にロシア連邦軍はベラルーシとの軍事演習と称し、ロシア本国から複数の大規模な戦力の部隊をウクライナとの国境付近の各所へ移動させて展開・配備した。そのまま越境侵攻するのではと世界中が恐れ、ウクライナのみならずアメリカやEUも巻き込んだ緊張緩和を目指した撤退交渉が続いた。そのような中でロシアのプーチン大統領はドネツクとルガンスクの両州を独立主権国として承認、「両国家をウクライナから守る為」と称してロシア連邦軍の派遣を行う事を決断する。


ウクライナの動向

両国のプロパガンダ合戦や混戦により正確な状況が掴みづらい状態が続いているが、2月24日の侵攻から10日間で150万人が隣国へ逃れた。国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)は約400万人が国を離れる恐れがあるとしている。


官民一体となっての抵抗

一方で内外のウクライナ人は強い抵抗の意思を表明した。ウクライナ政権側はSNSやテレビなどで火炎瓶の作り方や使い方をガイドするなどしている(これは日本国内で紹介すると法令に抵触しかねないのでリンクは貼らないこと)。2月24日にはゼレンスキー大統領が総動員令に署名。

90日以内の動員を予定し18歳〜60歳の男性の出国を全面的に禁止したため、出国できなかった男性が戻っていく姿や家族の離散が確認されているが「ロシアと戦う」として志願兵になる人もいる。


「パパは一緒に行かないの?」ウクライナ離れる妻子、国境で涙する夫

外国に在住していたウクライナ人の男性も義勇兵を目指して帰国する者が出ている。

3月5日、ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は6万6224人が祖国防衛のために帰国したとTwitterに投稿。またウクライナメディアなどによると、ゼレンスキー大統領は戦闘経験のある服役者らを釈放するとも表明。


祖国防衛のため、6万人超が帰国

国にとどまる義務のない女性や子供は隣国のポーランドを経由して外国に避難しているが、諸般の事情で国を出ることが困難である女性たちも国内にまだ多数おり、国会議員など有力者や軍人の女性は自らも銃を取ると表明して残っている。ドローンによる戦闘に主軸が移ったことや男性兵士の戦死に伴い、女性兵士も前線に出る者が少なくない。


ロシア軍に比べて貧弱な(と思われていた)装備と少ない兵力から、開戦当初までは短期間で壊滅されると思われていたウクライナ軍であるが、国家存亡の危機に立たされたことによる国民の士気や8年にわたって紛争を戦い続けたことによる軍の練度の高さ、西側諸国からの援助もあり押されながらも持ちこたえ、当初絶望視されたキーウの防衛にも成功した。これにより、停戦交渉の席のロシア代表団の言動にも若干の変化が見られつつある。


兵器・装備に関してはロシア軍・ウクライナ軍ともにソ連時代に開発されたものを主力として運用しているが、クリミア紛争後の8年の間に、ウクライナ軍の装備は西側の協力もあってアップデートが施されたものが多数で、一方のロシア連邦軍はその稼働率が約25%程度まで落ちている。また、現在侵攻が確認されているロシア軍の兵数が最大評価で20数万人であるのに対し、ウクライナ軍は正規軍20万、国家親衛隊6万、武器不足でいまだに大半が動員できていない予備役90万に加え、10数万もの志願兵が戦っていると見られ、ロシア軍とはほとんど戦力差がなく、純粋な兵数ではロシアを大きく凌駕している


ロシア側の動向

ロシアは民間人への攻撃はしないとしているが、ウクライナの発表では、学校や市庁舎、警察署などが破壊されているとしている。

対して、駐日ロシア大使ガルージンはウクライナ軍の誤射が原因と発言している。

この侵攻においてクラスター爆弾サーモバリック弾など禁止条約があったり殺傷力の高い兵器の使用が確認されている。(なおロシアは条約未締結)参照 参照2


世界各国の風当たりの強さにロシア人とベラルーシ人達は困惑しており、在外ロシア人とベラルーシ人の中にも抗議デモに参加する者が出ている。ロシア国内でも戦争反対デモが頻発するも、当局に次々と検挙されており、SNSに制限を加えるなど圧力を強化している。


経済制裁・当局の締め付けを恐れてアルメニアなどの外国に脱出するロシア人と、ほとんど外国でしか生活した事の無いロシア人の帰化表明が続出している。


ロシア軍の戦線の動き

全体的なロシア軍の動きとして、2022年2月24日の侵攻開始から兎に角大量の人員と物資を戦線に投入するという、ある種のロシアの伝統戦略を取っている。これにより、数に劣るウクライナ軍を開戦当初から圧倒しているものの、漫然と兵力を投入する(いわゆる戦力の逐次投入)という下策に徹してしまい、激しい消耗を続けている。


開戦当初の動き

圧倒的な戦力を持って攻め込んだロシアであるが、一方で補給が伸びきったり泥に戦車が嵌まって立ち往生するなど不手際が多い点も露呈し、ウクライナ側の激しい抵抗もあり戦闘が長引いている。

ロシア側は2,3日以内に首都制圧する予定であったらしく、ロシアのメディア「ノーボスチ」が誤って2月26時点でロシアが勝利している前提」の記事をアップしてしまうという珍事件も起こっている。(参照

現場の兵士は、何カ月にもわたって家族から離れて野営しているという状況もあり士気の低下も指摘されており、ウクライナ側からの揺さぶりや餌のぶら下げもあり高額な武器を持って投降する事態も相次いでいる。参照

士官クラスの戦死も多発しており、一ヶ月で将官が6名も戦死するという異常事態となっている参照だけでなく、とある戦車部隊では杜撰な作戦で同僚が戦死したことに腹を立てた兵士が、部隊指揮官の大佐の足を戦車で轢き潰す事件を起こすなど内紛も発生している。

ロシア海軍の旗艦であるモスクワが沈没したことに関しては、ロシア側は一貫して火災事故による沈没であることを主張している一方で、テレビの報道番組では、むしろウクライナ側の攻撃による沈没であるとして報復を訴えかける声が多数上がっており、逆説的にロシア政府からの情報をロシア国民でさえ信用していない現状の一端が垣間見える様子が拡散された。

4年12日には新たにこれまで不在であった総司令官を任命し、ウクライナ北部から撤退して東部へ戦線を集中する。

4月27日にはウクライナの隣国であるモルドバの沿ドニエストル地域で爆破事件が相次ぎ、モルドバへの侵攻の予兆を見せた。


開戦から夏頃の動き

開戦当初こそ、ベラルーシとの共同作戦により、ウクライナを北、南、東から侵攻してきたロシア軍だったが、ウクライナの首都キーウの陥落失敗から北部の戦線は縮小し、主に戦線は東部に集中することになる。

その一方で、開戦当初はウクライナ全土の制圧を目的としていたプーチンのロシア軍部の最終目標は変更を重ねており、ウクライナ全土の制圧→ウクライナ東部の制圧→ドンバス・ドネツク二州の解放、という様に戦略目標が縮小して行くにつれ、ロシア側の勝利条件が不明瞭になっている傾向にある。

また、戦力を逐次投入して行くことで、数で劣るウクライナに対して優位を保つ一方、無茶な命令や無謀な攻撃を繰り返すことで兵力を激しく消耗しており、兵力確保の為に様々な労力を払うハメになっている。


特に、侵略に抵抗する為に総動員をかけたウクライナに対して、ロシアはあくまでも特別軍事作戦という体裁を崩しておらず、国内の不満を極力抑える為に地方の若者や、貧困層からの徴兵を行なって急場を凌いでいる。

しかし、それですらも凌ぎ切れないということで、徴兵年齢を60代にまで拡大しており、若者だけでなく老人すらも戦場に駆り出されることになった。また、チェチェンなどの非キリスト教系の民族が住む地域から若者を拉致して強制的に兵士にするなどの動向も報告されている。

この他にも、戦時国際法に違反する占領地域からの徴兵も行っており、ウクライナと戦う為に、ウクライナ人を兵士に使うという暴挙に出ている。

兵器的にはソ連時代に備蓄していた武器・弾薬を使用することで、西側諸国から支援を受けるウクライナに対抗しているものの、経済制裁の影響からジリ貧の様相を呈してきている。


また、政治的には占領したドネツク州、ルハンスク州の両州の住民を強制的に国内に移住させるなどのウクライナ人の拉致も行っており、ウクライナ国民、特に東部州の国民から非常に憎まれることになった。

この他にも、捕虜としたウクライナ兵士の男性を去勢するなどの捕虜虐待の情報も報告されている。

尚、ウクライナ東部は地理的にロシアに近く、ロシア語話者やロシアへの親近感を持つ人が多い地域とされるが、今回の戦争によりそれらの住民が反ロシア派に転向することになった。


開戦から秋頃の動き

9月12日にこの戦争の大きな転機となる出来事が起きた。それが、ウクライナ軍によるハルキウ州への大反攻である。

詳細は省くが、ドネツク、ルハンシクと並んでロシアが占領支配していた東部の大きな州が奪還されたことで、冬を前にして戦況は大きくウクライナ有利へと傾き、これを受けて各地のロシア軍に大きな動揺を生んだ。

これにより、ロシアの占領地域ではその代表者がロシアへの逃亡を図ったり、各地の軍が情報に踊らされて敗走するなど大きな被害を受けることになる。


余りにも劇的なウクライナ軍の勝利は、現地のロシア軍や占領政府のみならず、ロシア国内に大きな波紋を呼んでおり、プーチンに対する不満や戦後の行方に対する大きな不安を呼ぶことになった。


国内で相次ぐ大火災

一方で、4月に入った頃からロシア国内の各所で火災事件が相次いでいる。特に軍事施設での火災が相次いでおり、これが反体制派によるサボタージュによるものか、単なる人材不足による事故なのか原因は不明。

森林火災に関してはその後も頻発するようになっており、五月下旬に入る前に日本列島に匹敵する面積が焼失することになった。森林火災はこの時期のロシアでは珍しくない事象だったが、ウクライナ侵攻により火災を鎮火する人手そのものが激減し、従来以上の被害を生んでしまっている。

また、地方自治体レベルの政治に関して言えば、五月中旬頃から各州の知事が辞任を表明したり、次期知事選挙への出馬を否定するなどの、地方自治体の大きな弱体化が始まっている。

5月に入ってからは、プーチン支持層にも大きな変化があったようでプーチンに対する批判の声が相次ぐようになった。特に、ウクライナ侵攻に対してあくまでも「特別軍事作戦」として扱っていることで、戦力を無用に浪費したことで、戦争反対派からはもちろんのこと、戦争支持派からも弱腰の姿勢を叩かれることになり、プーチンの支持基盤が揺らいでいる可能性を指摘されている。

また、プーチンの健康不安説も度々囁かれるようになった。


プーチンは3日に議会を通過していた「偽情報」の拡散を禁ずる改正刑法に4日、署名。

BBCやCNNなどの西側主要メディアは撤退した。

ロシア、軍の「偽情報」報道に刑罰 BBCなど西側主要メディアはロシアでの活動を中止

この締め付けの強化に伴い、ロシア国内の政権に批判的な独立系メディアも次々に活動停止を余儀なくされた。


ロシア国内の経済状況

各国の制裁に対する対抗措置として、プーチンは5日、「非友好国リスト」の債権者にルーブルでの対外債務返済を一時的に認める大統領令に署名。円やドルで借りた債務を、ロシア中央銀行が定めたレートのルーブルで返すことが可能になる。

「非友好国リスト」48の国と地域をロシアが公表。日本も指定される【一覧】

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストである木内 登英氏は「外貨建て債券の返済を自国通貨に変更するのは、債務条件の変更に他ならない。ロシア側が外貨建てでの返済をしない意思なのであれば、それはデフォルトと言えるだろう。」と述べている。

ルーブルでの外貨建て債券返済という奇策でもロシアのデフォルトは免れない

その他にも、撤退した外資企業の資産接収や、店舗の無断営業、コンテンツの海賊版合法化など強硬な対抗策を表明している。

4月30日には金本位制を復帰させることを検討することまで明かしており、一世紀ぶりとなる金融対策に一時ネットが騒然となった。


露外相セルゲイ・ラブロフは3月10日にトルコのアンタルヤで行われたウクライナのドミトロ・クレバ外相との会談後の会見で「他国を攻撃するつもりはない。ウクライナも攻撃していない」「ロシア経済は自分たちで面倒を見る」と発言。

5月1日には、ラブロフはメディアインタビューにて「ヒトラーにはユダヤ人の血が流れている」と発言し、ユダヤ人によって建国されたイスラエルからは大きく批判された。3日にはロシア外務省はイスラエル側の反発に対して「イスラエルはウクライナのネオナチ政権を支持している理由を説明している」と、発言した。

流石にこの一連の発言はプーチンも焦ったのか、イスラエル側に謝罪の電話をかけて幕引きとなった。

5月24日には、20年以上ロシアの外交官を務めていたボンダレフが「ウクライナ侵攻はロシア国民に対しても戦争犯罪である」と訴え、外交官を辞任するなど、政権の中枢部にいる人間からもウクライナ侵攻に対する批判の声が上がるようになった。


3月12日には、ロシア国内に駐機していた旅客機500機分のリース機に対して、引き渡しを拒否し、同月14日にはリースされた飛行機をロシア籍のものとして国有化する法律を成立する。これにより、ロシアに旅客機を貸し出していた日本及び欧米各国のリース会社が保有する100億米ドル分の飛行機がロシアによって接収されることになった。


世界規模の飢餓の危惧

AFPからの2022年4月12日付の報道によると、欧州連合(EU)の外相に当たるジョセップ・ボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表は11日、世界的な食料危機を深刻化させている原因について、対ロシア制裁ではなくロシアによるウクライナ侵攻だとの見方を示した。

ボレル氏はEU外相理事会後の記者会見で、「ロシアが食料不足を引き起こしている。ウクライナの都市を攻撃し、世界に飢餓を引き起こしている」と指摘。「(ロシア軍が)ウクライナの畑に爆弾をまき、ロシアの軍艦が小麦を満載した船数十隻を足止めしている」と続けた。

さらに、ウクライナでの実際の戦闘だけでなく「ナラティブ(物語)をめぐる戦い(認知戦)」も展開されていると警告。ロシアはウクライナの港を封鎖して小麦の輸出を妨害し、ウクライナの小麦備蓄を破壊して世界に食料危機と物価上昇をもたらしたにもかかわらず、責任を西側諸国による対ロ制裁に転嫁しようとしていると指摘した。ボレル氏は「食料危機を招いたのはロシアだ」として「制裁への責任転嫁はやめよ」と非難した。

国連食糧農業機関(FAO)は2022年3月時点での世界食料価格指数が過去最高を記録したと発表した。


その他

ロシア正教会のキリル総主教はこの侵略戦争を正当化する姿勢を打ち出しており、これにより各地のキリスト教会からも激しい非難を受け、キリスト教社会そのものにも大きな亀裂を与える事態になっている。

プーチン自身は宗教的にはロシア正教会からのバックアップを受ける一方、戦争で死んでも天国に行ける。と言った発言を行っていた。

一方で、ロシア軍は6月4日には東方正教会の重要な宗教施設であるオールセインツ修道院を砲撃により焼き払う。


ロシアは自国に親しい周辺国に支援を求めているが、既にベラルーシがロシアとセットで制裁されていることから、せいぜい義勇兵を送るにとどまっている。兵器に関しては中国と北朝鮮にも支援を求めている。


補給に関しては進退窮まったのか、略奪した物資の輸出を試みている動きがあり、5月12日には70万トン以上の小麦を掠奪し、エジプトやレバノンへ輸出を行うものの、各国から寄港を拒否される事態が起こっている。


世界各国の動向

国連

2022年2月25日に国際連合安全保障理事会は非難決議を採決したが、ロシアが拒否権を行使して否決された。同年3月2日に法的拘束力の無い国際連合総会決議によって、193カ国中賛成141・ 棄権35・反対5の圧倒的多数でロシアの非難決議が採択された。


同年4月7日に国際連合人権理事会へのロシアの理事権停止決議が総会で採択され、ロシアは人権理事会を脱退した。


ヨーロッパ諸国の動向

ヨーロッパ諸国は武器・資材・食糧・医療用品などをまだ占拠されていないウクライナ国内の空港や鉄道などを通じて支援している。


隣国であるポーランドを中心とした避難民の受け入れを表明・実施している。その一方でNATO加盟こそウクライナ側が断念したものの、ウクライナのEU加盟に関しては3月8日の段階で加盟を申請し、EU側もウクライナの加盟を急速に進める方針を明らかにした。この戦争からの流れを受けて、旧ソ連圏諸国であるモルドバとジョージアもEU加盟の方針を明らかにした。


この他にも従来においてこれまで中立姿勢を維持し、NATO加盟を避けていた北ヨーロッパのフィンランドスウェーデンもNATO加盟へ動く方針である事を明らかにしており、皮肉にもロシアが最も恐れていたNATOとEUの東方拡大を推し進める結果になっている。


ヨーロッパ諸国の介入は日を追うごとに強まっており、4月中旬以降は高度な防空システムや榴弾砲など、防衛戦に特化した兵器から支配地域奪回に際して重要な兵器の供与も始まった。

これまでエネルギー関連でロシアとの関係を強めていた政治家は、今回の戦争の件で批判を浴びるなど厳しい立場に立たされている。


避難民の受け入れは隣国のポーランドをはじめとした多くの欧州諸国で行っており、フランスでも7万人以上を受け入れている。


イギリスは当時首相であったボリス・ジョンソン氏がいち早くキーウへの直接訪問を敢行し、他国もそれに続いてウクライナ訪問を行っている。さらに2023年3月末には新国王チャールズ3世がロシア非難声明を発表という異例の行動(彼の母である先代王エリザベス2世はこのような発言を控えていた)に出た。


日本の動向

異例の事態として難民の受け入れを発表し、当初は日本に家族や仕事関係者などの縁がある者を中心に受け入れ、後に日本に縁者のいない避難民の受け入れも行い9月23日までに1800人あまりが入国した参照PDF。避難の長期化様相を鑑みて子供たちが日本の学校で学べる体制も整いつつある。各自治体でも空き家を住居として貸したり諸団体の支援で働き口を見つけている避難民も増えている。


民間からも支援の動きが広まっており、ユニクロの経営企業ファーストリテイリングはウクライナへの衣料支援を決定し、楽天の三木谷氏は10億円のウクライナ支援を発表した。

知念実希人は自身に中傷クソリプを送ってきた者達を訴えて得た賠償金を何度か赤十字を通じてウクライナに寄付している。


経済・貿易面では多岐にわたる先端素材・精密工業製品の輸出規制を実施、ロシアは反発したが、逆に5月に規制を強化した。

ロシアの工業製品はその素材において多かれ少なかれ日本に頼っている場合が多く、さらに台湾(中華民国)も他の西側先進国に倣ったため半導体製品も止まり、ロシアの工業生産、特に自動車と兵器については、高水準のものを追加生産することが極めて困難になった。


松野官房長官は入国手続き・ビザ申請用書類などの簡素化・身元保証無しで入国を容認する考えを示した。


また岸田首相はそれまで北方領土に対する認識を「主権を有する領土」という表現から、ロシアによって不法な占拠をされている日本固有の領土とかなり強めの言葉で認識を表明した。

さらにロシアが独立国家として承認を与えたウクライナ東部のルハンシク州とドネツク州に対しても、「(自称)ルガンスク人民共和国」「(自称)ドネツク人民共和国」と、日本が独立主権国家として承認していない非合法勢力であることを強調した公文書が使われている。

さらに2023年3月21日、岸田首相はウクライナを電撃訪問してゼレンスキー大統領と会談、広島産の工芸品「必勝しゃもじ」を贈りウクライナ支援の立場をより強調した。ゼレンスキー大統領は2023年5月のG7広島に来日、改めて各国への支援を求めると共に将来の復興への意欲を示した。


軍事分野では陸上自衛隊防弾チョッキヘルメット、小型ドローンをウクライナ軍に供与することを閣議決定。

装備品の供与は武器輸出三原則の緩和以来何度か行われていたことであるが、交戦中の国への供与は初となり、これに際して指針の再改定が行われることとなった。2023年3月末には更なるロシアへの輸出禁止品目の追加が多数行われ、部品が軍用品に転用可能な可能性のある航空用部品、玩具やゲーム機も禁輸となった(参照)。

4月19日には自衛隊の装備品であるドローンをウクライナに供与することを閣議決定した。

2023年6月からは手足を失ったウクライナ兵の治療及びリハビリを日本で受け付けることとなり、ウクライナ医療職の研修も日本の病院で行われている。また、遺体の身元確認の技術を学ぶためウクライナ国家警察の鑑識担当者が日本の警察に研修に来ている。


武器や戦闘員の提供は国としては行っておらず、国民に対しては外務省の安全情報で「レベル4:退避してください。渡航は止めてください」が継続されている。しかし国の意に反し個人的に潜入してウクライナ側の義勇兵となっている日本人が何人かいる模様で、死亡者も出ている。義勇兵の日本人には元自衛官や元暴力団員がいるといい、中には全く戦闘と無縁の経歴の者もいる模様。

逆にロシア側に義勇兵として参加している日本人が一人確認されている。


民間の動向としてはこれまでロシア語表記だったウクライナの地名がウクライナ語表記に変更される(キエフキーウチェルノブイリチョルノービリ)など文化面でも大きくウクライナに寄り添う変化が起きた。


日本の政界や言論界、市民運動では左右とも概ねロシアへの強い批判が主流であるが和田春樹上野千鶴子伊勢崎賢治等一部の学者は「ウクライナの降伏による停戦」を望む趣旨の発言や意見発表を度々行っており物議を醸している。


アメリカの動向

ロシアが2014年に併合を主張しているクリミア半島については「アメリカの認識は、ウクライナの主権の範疇である」とし、クリミアに対するウクライナ軍の攻勢をロシアの主権侵害と認めない態度を明確にしている。

ジョー・バイデン大統領は、記者の質問に対して「プーチンは戦争犯罪人だ」と回答し、更には「人殺しの独裁者、生粋の悪党」と悪し様に罵倒した。その後もアメリカ政府は、1兆円を超える兵器各種や人道援助を可能とする予算案を通し、強力にウクライナの戦争継続を後押ししている。


さらに第二次世界大戦で連合国を支えたレンドリース法(武器貸与法)を復活させることを決定した。これは大統領権限でありとあらゆる武器をウクライナに供与できる法律である。

この法律は第二次世界大戦でソ連・イギリス・中華民国に莫大な援助を行う根拠法として制定されたものであり、レンドリース法の復活によって大統領令一つで大量の物資をウクライナに供給することが容易に可能になる。

この法律に基づき、HIMARSを始めとした多数の兵器がウクライナに供与されている。

一方で米国の兵器が直接ロシア連邦を攻撃する可能性については慎重であり、長射程の弾道ミサイルや巡航ミサイルの供与は現状行われていない。


4月13日にはバイデン大統領により、戦場となったウクライナの領土でロシアが行った残虐行為の数々をジェノサイド(大量虐殺)と認定した。


非公開の軍事的協力も盛んにおこなわれていると見られており、開戦以降米軍を始めとするNATO各軍の偵察機、警戒機が頻繁にウクライナ国境付近を飛行しており、これらが入手した情報がウクライナに提供されていることは半ば公然の秘密である。


2022年12月21日にはゼレンスキー大統領が訪米してアメリカ連邦議会で演説を行い、戦争から1年近く経った2023年2月20日には逆にバイデン大統領がウクライナのキーウを訪問した。


2024年1月21日、NYタイムズが有名なネオコン系シンクタンク「ヘリテージ財団」の会長ケビン・D・ロバーツにインタビューを行った。(参照)そのインタビューでロバーツ会長は

「民主党政権でも共和党政権でも、アメリカはこの紛争を引き起こす役割を担っていました。現在、プーチンとロシアは非難に値する。私はそのことを明確にしてきた。とはいえ、ウクライナのNATO加盟について私たちが妨害工作を行ったことが、今回の事態を招いた多くの要因のひとつです」

と回答。ウクライナ侵攻発生に米国と財団が積極的に関与していたことを示唆した。


中国の動向

中華人民共和国は開戦前からウクライナで戦争が発生すれば、ロシアと親密で同じアメリカに対抗する中国がロシアを支援したり、機に乗じて中国人民解放軍台湾に軍事侵攻するのではという懸念があった。特に3月初めに大規模な軍事改革を実施したこともあり、その懸念は大きくなった。しかし国際連合での対ロシア非難決議を棄権して中立的立場を取り、台湾周辺でも中国人民解放軍の目立った軍事行動は現時点では行われていない。


当初、国内向けにこそロシアの正当性を喧伝していた中国だったが、もともと中宇関係は中露関係よりも親密であった

ロシアが独立を主張するドンバスの親露派政権(ルガンスク人民共和国・ドネツク人民共和国)に対し、中華人民共和国は独立を承認していない

中国は開戦初期から「中国はすべての国の主権と領土の一体性が尊重と保護に値し、(国連憲章の)目的と方針が誠実に守られるべきだと考える中国の姿勢は一貫しかつ明確でありウクライナ問題にも等しく当てはまる」(CNN)と、暗にロシアを批判する立場をとっていた。


さらにはロシア連邦軍の苦戦・対ロシア制裁包囲網でロシアの国際的に苦しい状況から、下手に関わって同様に巻き込まれるのを恐れ一歩引いた慎重姿勢を取るようになった。3月14日にロシアは中国にこの侵攻に関する軍事的・経済的支援を要請する動きがあった。またロシア寄りの中立を維持している反面、日を追うごとに特に外交関係者の中からロシアへの支援を断ち切るべきではないかとの意見も散見されるようになった。


国内世論に関して言うと、当初はロシアの侵略行為を正当化する意見が大きく目立ち、ウクライナ批判を繰り返す声が大きかったが、ロシア軍の窮地と蛮行が繰り返されたことで徐々に中国国内の世論も大きくウクライナ支持に傾いている。

特に10月10日以降開始されたウクライナ中部・西部都市に対するミサイル攻撃が決定的となり、中国のローカルSNS“微博”では「愚かな行為だ」「精密兵器は民間施設攻撃に使うために存在しているのか!?」といった発言が支持された。


現在は、中国は非軍事部門に限っては水面下でウクライナを支援していると取れる画像を、日本人義勇兵がTwitterに掲載している。


台湾の動向

ウクライナ侵攻によって間接的に大きく影響を受けているのが台湾である。

ウクライナ侵攻の発生により、これまでは静観されていた台湾有事についての議論が大きく波紋を起こしており、中台関係がより険悪化するようになった。

その一方で、アメリカも台湾有事についてこれまで以上に注力するようになり、8月にはペロシ下院議長が台湾を訪問し、それに対して中国側も台湾を完全包囲しての軍事演習で恫喝するなど、緊張関係が高まっている。


直接的には、開戦当初から台湾(中華民国)は日欧米と足並みを揃えてロシアに対し厳しい輸出制限をかけた。台湾も日本同様、(少なくとも欧州に比べると)ロシアへの経済依存度が低い。この為、エネルギーを人質にとって欧州を脅しているロシアだが、本来、先端素材や半導体の調達元である日米台に対しては効果が薄く、ロシアの先進兵器の製造を事実上停止させている。


インドの動向

インドは侵攻開始当初、欧米・日台とは足並みを揃えず、中国などと揃って国連の非難決議は棄権している。また、欧州が買い控えるだろうロシア産石油や天然ガスの買付を行うなど、欧米日台の動きに反する行動をとったため、いわゆる「インド・太平洋安全保障体制」に逆行する行為だ、と、特に日本国内で批判される向きがあった。


しかし、これはインドの置かれている立場差し迫った危機を無視した見方である。インドが旧ソ連時代から現在のロシアに近いのは、むしろ中国との対立が根深く、特にカシミール地方の国境線を巡っては、散発的に武力衝突が起きている。

フルシチョフによるスターリン批判以降、中ソ間、中露間は必ずしも(少なくとも現在の日米間ほどには)友好一辺倒ではなく(中ソ対立)、「敵の敵は味方」という理論でインドはソ連に接近した。


また、この間、インドは中国に対抗するため核武装を決め、核不拡散条約(NPT)から脱退し、核兵器開発を始めた。この際、西側諸国はインドに経済制裁を課したため、インドは特に兵器を西側諸国から買えなくなってしまい、長らくソ連から買っており、現在もインドの主力兵器は旧東側型が多い。


この為、インドはあくまで対中牽制の一環としてロシアに融和的であった。しかし、ロシア製兵器が西側型兵器どころかウクライナ国産兵器にも不利な戦いを強いられている現状を目の当たりにし、さらに日米台の対露輸出規制によりこれらの納品の目処が立たなくなったため、契約済みだったロシア製兵器の購入の大部分を、5月までにキャンセルした。


そして9月16日には、モディ首相は公式声明として、「今は戦争の時ではない」とプーチン政権の軍事作戦を批判し、早期停戦を呼びかけた(ロイター)。


経過と推移(2022)

緒戦

2022年2月21日にプーチン大統領は軍事行動の開始(事実上の開戦)を決断し、ウクライナ東部ドンパスへの進軍を指示した。ウクライナは非常事態を宣言したが、これに合わせた形でロシア側からのハッキングやサイバー攻撃も確認されている。ウクライナ時間2月24日朝5時にプーチンはウクライナでの軍事作戦を発表し、東部方面・クリミア方面・ベラルーシ方面の3方向からの同時侵攻が開始された。ゼレンスキー大統領はロシア連邦との外交関係断絶・総動員令と戒厳令の布告を発表、ついに戦争の火蓋が切られた。


ロシア連邦軍は各都市にミサイル・砲撃・空爆を仕掛け、電力供給を握るためウクライナ国内各地の原発の制圧を目指した。25日には首都のキーウにロシア連邦軍が迫り3方向から包囲される形となり、首都陥落は時間の問題とされた。しかしウクライナ軍は侵攻に対して粘り強く抵抗を続け、各戦線は膠着状態に移った。ゼレンスキーはキーウに残って指揮を執り、SNSで軍や国民を鼓舞して徹底抗戦を呼び続けた。(これは侵攻序盤にロシア側のネット遮断が失敗した事や衛星回線を所有する米国の通信企業の支援を取り付けた事が大きい)


28日からロシア・ウクライナ両国代表による停戦交渉が繰り返し行われたが、3月に入っても未だ進展に至っておらず、住民避難のための人道回廊も機能できずにいる。ロシアは全国から軍を次々と招集して侵攻しているが、予想以上のウクライナ軍の抵抗と補給路が伸びたことで兵站が十分に機能せず、戦争ではなく訓練と聞いて来た兵士・士気も低い部隊が多い為に膠着状態が続いている。


4月に入るとロシア連邦軍は抵抗の激しいキーウ周辺地域から「第1フェーズの完了」として撤退し、東部のドンバス地方の確保へと方針を転換、戦線の再整理を実施する。この際、キーウ近郊の街であるブチャをはじめとしたロシア連邦軍が占領していた地域では、撤退後に多数の民間人の惨殺死体が発見され、ロシア連邦軍兵士による民間人への虐殺が発生していた疑惑が濃厚となる。


情報戦に敗北したロシア軍

2014年のクリミア危機以降、ウクライナ軍はC4Iシステムを構築し、なおかつNATOのそれと連携している。この為、NATOの情報収集(空中警戒管制機、偵察衛星などによるもの)によって得られたデータがまるごとウクライナ軍に流れていると言われている。同系列の自走対空ミサイルがロシア軍のものは破壊されたり乗員が乗り捨ててしまったりウクライナの一般市民に強奪されれたりしているのに対し、ウクライナ軍は上空にロシア機が確実に飛来してくるまでレーダーを切っている為、逆探知できずロシア空軍は多大な損害を出し制空権奪取に失敗した。

またロシア軍は緒戦の損害を埋めるために極東地域からも戦力を抽出しているが、ウラジオストックから海路を経由するものは海上自衛隊に監視され、その規模や艦の音紋などを収集されてしまっている。日本はNATO加盟国ではないが、アメリカ軍とは情報共有しているためそれらもウクライナにダダ漏れとなっている。


ロシア軍の通信網は、なぜかウクライナ領内の電波塔を破壊した結果崩壊する事になった。このことから、技術的にはともかく通信網の構造的にはワルシャワ条約機構時代のままなのではないかと推察される。

この為ロシア軍は応急策として民生用携帯電話を使用している。これに使われているCDMAアルゴリズムは軍用にも通用するほどの強度ではあるものの、肝心のキーをアメリカが持っている為これまたNATOに筒抜けとなる。更には中国製の(デジタル変調ですらない)民生用FMトランシーバーも使用しているため、ウクライナ側に通信情報を傍受され放題となった。


また戦闘機はウクライナ軍のMiG-29の旧式化が指摘されていたが、侵攻側のロシア空軍機が対地攻撃用の装備をしている(しかも誘導弾の手持ちがないため精密爆撃をかけざるを得ない)ため、邀撃任務の身軽なMiG-29相手に、より新世代のSu-35などが損害を重ねる結果になった(もともと第4世代後半機以降の戦闘機は東西問わずマルチロール機が多く、第4世代前半に生まれたMiG-29やF-15初期型に対しては格闘戦能力で劣るとされている)。


また新たに戦況を左右しうる新世代兵器として、ウクライナ軍はドローンを運用している。トルコ製の無人航空機バイラクタルTB-2を始めとして、軍用・民生用問わず大量のドローンを投入しロシア軍を撹乱・破壊している。ロシア軍もドローンを投入しているが、稼働数が少なくウクライナ軍ほど戦果を上げていない。


象徴的なのはR-360ネプチューン対艦ミサイルによるロシア海軍黒海艦隊旗艦・スラヴァ級ミサイル巡洋艦『モスクワ』撃沈であろう。このミサイルはソ連時代のKh-35対艦巡航ミサイルがベースとされているが、ウクライナ軍のドローンによる攪乱作戦もあったとは言え、強力な防空能力を持っているとされた同艦の撃沈は、キーウの戦いで活躍したSTUGNA-P対戦車ミサイルとともにウクライナの軍事技術の高さを示した。なおロシア側は一貫して「火災事故による沈没」と主張している。


さらに、ロシアは厳格な情報統制で開戦当初の反戦機運を封じ込めようとしたが、SNS Telegramの封じ込めができず、ロシア国民はこれを介して、戦況がどうなのか、戦場の実態はどうなのか、西側がウクライナとロシアをどう捉えているのか、といった情報を少なからず手にすることができた。

“Telegram”はロシア発のSNSで、ウクライナを含む旧東側諸国では“Twitter”よりメジャーなSNSアプリだが、運営会社がプーチン政権による封殺に抵抗しており、特に暗号化に関する技術は企業の権利であることを盾にロシア政府に開示していない。この為Telegram・Twitter双方を利用するユーザーによって、東西の情報が行き交う状況となった。


TelegramなどWebを使った通信により、ロシア国内に反戦・反プーチン勢力が醸造され、彼らはロシア国民共和国軍と名乗り、政権に近い人物やロシア極右勢力に対するテロルや破壊工作が行われるようになった。

また離反したロシア人で結成されたウクライナ軍部隊自由ロシア軍団も創設され、国民共和国軍等と協調して活動している。


ロシアの物量攻勢に押されるウクライナ軍

5月の中旬以降はロシア軍の動きに変化があり、戦争初期からのロシア軍の動きが改善され、主にウクライナ東部で有利な戦局に移りつつある。

この急激なロシア軍の動きの改善にはプーチンが軍事行動に口出ししなくなった可能性が指摘されており、ロシアの政府首脳部で何らかの大きな動きがあった可能性がある。


北東部のハルキウでは5月16日には、ウクライナ軍がロシア軍を一旦国境付近まで押し返したが、その後、ハルキウ州の南方に位置する交通の要衝イジュームを奪還しきれず、物量で勝るロシア軍の再度の攻勢に対し、徐々に戦線を後退させざるを得なくなった。

5月18日にはマリウポリが制圧され、マリウポリの防衛に当たっていたアゾフスタリ大隊が降伏し、ザポリージャ州がほぼロシア軍に掌握されてしまう。


6月25日にはドンバス地方の重要都市セベロドネツクと、ドネツ川対岸のリシチャンスクがロシア軍によって陥落した。元々セベロドネツクは周囲よりも標高が低く、攻めるに容易く守るに難い地形で、セベロドネツクでのウクライナ軍の行動は限定的なものと思われていた。

しかし、高台に位置する対岸のリシチャンスクまで簡単に陥落させられてしまった。

この時点では、やはり寡兵のウクライナ軍不利は覆し難いのではないか、という見方が西側諸国でもなされるようになっていった。

しかし一方で、ロシア軍はこのセベロドネツク・リシチャンスクの攻略のためだけに、1日約6万発の重砲弾を消耗してしまっていた。


この時期、ロシア軍は一度は小康状態となっていた、首都キーウや西部に対する巡航ミサイルによる攻撃を強め始めた。


南部戦線の重視

ウクライナ軍はドンバス地方での戦いで不利となると、東部戦線では守勢に回る一方、南部のヘルソン州の奪回に重点を置き始める。

ゼレンスキー大統領も、ヘルソン州の奪還、そしてクリミア半島の奪還とクリミア大橋の破壊を明言した。

とは言え、この時点では南部戦線でもウクライナ軍は攻勢の準備は整っておらず、点在する集落を巡って一進一退の攻防が続く膠着状態に持ち込むのがやっとだった。


しかし、この頃になると西側からの供与兵器がウクライナ軍の前線に出現するようになった。一方、ロシア軍は緒戦で大量の弾薬、特にミサイルなど精密誘導兵器の消耗による在庫不足を生じさせ始めていた。特に精密誘導兵器はソ連崩壊以降、ロシアは西側、特に日本・台湾・アメリカの素材や部品に頼っており、これら3ヶ国がロシアに対し厳しい輸出規制を敷いたため、追加生産もおぼつかなくなっていた。


南部防衛用に、旧式のT-62戦車や2S7自走砲が持ち出されるようになった。しかし、T-62の性能ではウクライナ軍が装備しているあらゆる戦車に対抗できない。また、これらの旧式兵器の保管状態は「保管という名の放置」状態であり、中には砲身の構造が数ミリ単位で歪んでしまっており、発射すら危険な状態の物もあった。


さらに、この期に及んでもロシアが軍民共に情報リテラシーが低いままで、ロシア国内向けの報道で2S7の部隊の展開場所が放送されていたのをウクライナ側が受信し、場所を特定されてトーチカU戦術弾道弾を撃ち込まれるなど、失態と言うか醜態が繰り返された。


第2のゲームチェンジャーとなった「HIMARS」

6月下旬、アメリカが供与したHIMARSがウクライナ軍の前線に到着した。当初、ウクライナが希望していた長射程ロケット弾ATACMSの供与がなかったこともあり、その効果は疑問視されていた。


しかし、到着するなりウクライナ軍はHIMARSをロシア軍の弾薬集積所や野戦司令部に撃ち込み、ロシア軍の兵站を的確に破壊し始めた。というのも、もともとウクライナ国内だったため、ロシア軍がそれらを設ける場所はだいたいウクライナ軍に把握されており、そこに西側の偵察衛星の情報も合わさって、特定された場所に片っ端から撃ち込んでいったのである。

また、前節のロシア軍の情報リテラシーの低さから、ロシア国内向けのマスメディアやTelegramにロシア軍の光景が公開されると、やはりウクライナ軍によって特定され、HIMARSを撃ち込まれる事になった。


ロシア軍はHIMARSを恐れるあまり、度々「HIMARSを破壊した」と主張するのだが、アメリカとウクライナの間で「HIMARSをロシア本土攻撃に使わない」という取り決めがあり、この為米国防総省はウクライナに供与したHIMARSの全数を追跡可能にしている。しかしそのために、ロシアが主張しているようなHIMARSの破壊が発生していないことをアメリカに露呈することになってしまった。


ロシア軍スネーク島撤退

黒海に浮かぶスネーク島はウクライナに属しているとされているが、開戦直後、ロシア軍はこの小島を占領していた。この島は0.17平方kmにすぎない小島だが、黒海の海路の安定には重要な存在だった。

開戦時、スネーク島攻略に向かった1隻があの巡洋艦『モスクワ』であり、ロシア軍の降伏勧告に対して、ウクライナ軍守備隊は「消え失せろ」と言い降伏を拒否した。結果的にウクライナ軍守備隊は事実上全滅したが、このことはウクライナの国防の対する士気の高さの象徴として記憶され、ウクライナ政府はこのシーンを想像した絵柄の記念切手を発売した。


そのスネーク島だが、西側はウクライナ本土から40kmも離れていない。これは、牽引榴弾砲でも届いてしまう距離だ。

当初、ウクライナ軍は陸続きのヘルソン方面や東部戦線に重きをおいており、ウクライナ海軍がほとんどの艦船をオデッサ港内で自沈させ、洋上での作戦能力を失ったこともあって、事実上ほっぽって置かれた。


しかし、西側からの兵器が到着し始めると、ウクライナ軍は本土側からスネーク島への攻撃を開始した。それに対してロシア軍は、この攻撃火点を制圧する為の反撃が難しかった。と言うのも、ウクライナ側の火点と思われる一帯は、ルーマニア国境に面している場所だからである。間違って1発、ルーマニア領に着弾すれば、NATOに直接介入の口実を与えてしまうのだ。


この為ロシア軍は被害を出し続け、戦力を補充しようとするものの、輸送船や揚陸艦が接近すると、ウクライナ軍はネプチューンやトーチカU、さらに西側から供与された地上発射型ハープーン対艦ミサイルで攻撃を仕掛け、これらの船舶に被害を生じさせた。

補給能力を喪失しかけていたロシア軍は、スネーク島の上陸部隊が完全に死兵と化す前に、6月30日、スネーク島から撤退した。


ヘルソン北部ロシア軍の孤立化

7月に入り、HIMARS、そして同じ弾体を使うM270 MLRSの数が揃うと、ウクライナ軍は南部ヘルソン州を南北に分断するドニエプル川にかかる3ヶ所の橋に撃ち込み始めた。ヘルソン州の州都はこの川の北側にあり、ロシア軍は占領維持のために多くの兵員を配置していた。この為、この川にかかる橋は重要な補給路だった。


その中でもヘルソン州都に近く、橋の規模も大きいアントノフスキー大橋は繰り返し攻撃された。当初は応急修理で凌ごうとしたロシア軍だったが、ウクライナ軍はロシア軍が通行を再開させようとする度に繰り返し攻撃を行い、ついに橋は使い物にならなくなった。同時に、残り2ヶ所の橋もマトモに使えなくしていった。


ロシア軍は民間の渡し船を徴用したり、を使ったりしてアントノフスキー大橋の代替ルートとしようとした。動的なこれらにはピンポイントでの攻撃がしにくく、またアントノフスキー大橋を使ってそれらに攻撃を加えられない死角を作ろうとした。


だが、補給が滞ったためにロシア軍はじわりと戦線を下げざるを得なかった。その為、HIMARSやM270のようなロケット弾だけではなく、ウクライナ軍が運用している旧ワルシャワ条約機構標準の152mm榴弾砲やNATO標準の155mm榴弾砲でも、ロケットアシスト弾(RAP)なら届いてしまう場所までウクライナ軍が迫り、艀や渡し船も繰り返し破壊され続けた。


クリミアへのウクライナ勢力による攻撃

南部戦線でのウクライナ軍の活動が活発になるのに並行して、ロシアが併合を主張していたクリミア半島内の、ロシア軍の拠点で、頻繁に大爆発が発生するようになった。弾薬集積地や司令部施設が爆破される事件が相次いだ。

これらの多くはウクライナ軍の攻撃範囲外とされており、多くはパルチザンによる攻撃とされていた。クリミア半島はロシアが乱暴に併合したため、もともと親ウクライナ派の反乱分子が多く、ウクライナ軍特殊部隊が彼らを組織して、ゲリラ攻撃に出たのである。

また、黒海艦隊の拠点であるセヴァストポリにはUAVによる攻撃が加えられた。


ところが、その初っ端に吹き飛ばされたサキ海軍航空隊基地は、西側の偵察衛星による画像では誘導路にクレーターが3つも穿たれるという、ちょっと地上から爆発物を使った攻撃とは思えないもの(もっとはっきり言ってしまうと弾道ミサイルっぽいもの)だった。

この時点で、西側からはATACMSなどウクライナ勢力圏からクリミア半島を攻撃できる兵器は供与されていなかった。ウクライナはこの破壊を当初、特殊部隊によるものとしていた。


一方、クリミアにウクライナの攻撃が及ぶと、時期的にバカンスに来ていたロシア人に動揺が走り、クリミア半島から脱出しようと、クリミア大橋に自家用車が殺到し、長い渋滞の車列が発生した。


また、クリミアを経由しない補給路も、ロシアの制圧下にあるザポリージャ州において、やはり物資集積所や鉄道網などがパルチザンによって爆破される事態が続いた。


極秘に供与されていたAGM-88

ほぼ同時期、特に南部でウクライナ空軍が航空優勢を取り戻し、空戦能力のないSu-25攻撃機などの作戦飛行が確認されていた。

ウクライナ空軍が何らかの方法でロシアの防空システムの能力を削いでいると考えられていたが、8月7日、ロシア軍は破壊されたレーダーサイトから、アメリカ製の対レーダーミサイルAGM-88の形式番号が入った破片を発見した。


AGM-88は、それまで二つの理由でウクライナ軍には入っていないだろうと思われていた。その理由の一つは、ロシア領内のレーダーシステムを攻撃し得る為、アメリカが供与に消極的だったこと。もう一つは、AGM-88は空対地ミサイルであり、航空機から発射することになるが、ウクライナ空軍の装備は旧ワルシャワ条約機構型のMiG-29やSu-25、Mi-24などの機体で、西側型のミサイルを運用する能力がないことだった。


当初は、地上発射型として運用されていたのではないか、と思われていたが、実際にはMiG-29で運用されていた事が判明した。というのも、ポーランドチェコスロバキアなど、かつてWTO加盟国だったが、現在はNATO加盟国である国々において、MiG-29など東側型軍用機が運用されており、アメリカなどはこれらで西側型ミサイルを運用できるようにするアップデートパッケージを持っており、ウクライナ空軍のMiG-29にこれらが適用されたと思われる。


これまでは極秘供与であったが、ロシア軍がその存在を確認したことを発表すると、以降は公然とAGM-88を供与するようになった。


AGM-88やパルチザン攻撃によりロシア軍の防空網は弱体化し、レーダー網に隙ができ、ウクライナ空軍の活動が活発になった。

一方、ロシア軍は地対空ミサイルの運用効率が下がったところへ、対地攻撃に使う巡航ミサイルや戦術弾道ミサイルが払底しつつあったため、S-300S-400といった地対空ミサイルを対地攻撃に転用し始めた


8月30日、ミハイル・ゴルバチョフソ連大統領が死去。ゴルバチョフは2014年のクリミア併合の際はプーチン政権を支持したが、当時のウクライナは政府に腐敗と怠惰が蔓延っており、国内は反政府運動が活発で騒乱状態だったという背景がある。しかし今回の侵攻ではゼレンスキー政権の断固とした意思を見ると、即時停戦を呼びかけた。ゴルバチョフは母方のルーツを辿るとウクライナ出身者がいる。死の間際まで「ロシアを立て直すには民主化しかない」と語り続けた。

ゴルバチョフの死去により、「もはやロシアにはプーチンを止められる者はいなくなった」という雑感も飛び交った。


ウクライナ軍秋季大反攻

ゼレンスキー政権率いるウクライナ国防軍は、それまで南部ヘルソンから、クリミアへの反攻を宣言し、実際にウクライナ軍の活動は南部戦線で活発だった。


ところが9月上旬、ウクライナ軍は突如として北東部で大反攻を実施した。これはロシアはもちろん、西側のアナリストすら予測していなかった

北東部ハルキウ州では高速な進攻が実施された。ロシア軍は、ウクライナ軍がこれまで南部戦線での活動が活発だったため、東部戦線から戦力を抽出していた。この為、特に北東部のロシア軍は二線級の部隊か、回復の必要な部隊が配置されていた。ウクライナ軍は急激な進撃でこれらの戦力を打ち破り、無力化した。

ロシア軍は戦力の再編であると主張したが、実態は小銃から自走砲に到るまで遺棄しての完全な潰走だった。

中には徴発した地元民間人の乗用車で逃走を図ったが、それまでロシア軍であることを示す「Z」マークを書いていたのを、それを慌てて雑に消して偽装したつもりが、あっさり義勇兵部隊に見つかって停車させられたりした(日本人義勇兵のTwitterより)。また軍服を脱ぎ捨てて逃げる兵士も続出した。これらは、ロシア兵士の教育水準がとても低いことを表している。将兵が民間人に扮して逃げる行為はジュネーブ条約による保護の対象外になる。その場で射殺されても文句は言えないのだ。

ウクライナ軍はハルキウ州のほぼ全域を奪還し、ロシア軍の補給の要衝となっていたイジュームも奪還した。それ以前から消耗していたとは言え、ロシア軍の精鋭・第1親衛戦車軍もこのウクライナ軍大反攻により壊滅した。


一方のウクライナ軍は、人的被害はともかくとして、兵器に関してはまたぞろロシア軍が破壊もしないで逃走していったため何故か進軍した先で装備・弾薬が増えるという、開戦直後の光景が再現された。


「南部は陽動だったのでは?」ともされたが、相変わらず南部でもウクライナ軍の攻撃は烈しかった。そこへ東部で大損害を出したため、ロシア軍は南部への補給が止まる恐れがあった。特にヘルソン北部でドニエプル川を超える交通路を遮断されたロシア軍部隊はほぼ完全に孤立し、一部の部隊はウクライナ軍に対して降伏交渉を始めた。


さらに、ドンバス地方やザポリージャ州方面にもウクライナ軍部隊が展開しつつあり、ロシア軍は多くの戦線で圧迫を受けている。

ザポリージャ州を奪還された場合、南部戦線やクリミア半島のロシア軍は、ケルチ海峡にかかるクリミア大橋経由の補給に頼らざるを得なくなる。

このタイミングで、ウクライナ軍はそれまでスッとぼけていたサキ海軍航空基地への攻撃についてミサイルによるものと発表。つまりウクライナ勢力圏から200km以上を射程に収めているということである。

これはAGM-88同様ATACMSが極秘裏に供与されていた説、開戦時にはウクライナ軍が評価試験中だった多連装ロケットシステムVilkha-M2や戦術弾道弾Grim-2が実戦投入された説、などいろいろ飛び交ったが、いずれにしろ、南部戦線では深くクリミアまで攻撃でき、東部戦線でも奥深くロシア軍の後方を攻撃する能力を得たのは確実だった。


一方、ロシア軍は弾薬が払底しつつあるとの推測がある。軍用ドローンをイランから、弾薬はよりによって北朝鮮から調達しようとしていた。しかし、イランのドローンは早速届いたものの、中東のイランと、これから厳しい冬季を迎える東欧とでは環境が違いすぎ、そこへ持ってきて突貫でロシアの兵装を搭載できるようにしてものだから当然のように不具合続出

精密誘導兵器に関しては日米台からエゲツないレベルの制裁(輸出規制)がかけられているため、追加生産は絶望的となってしまっている。


ウクライナのこの時期の大反攻は、秋季の泥濘と厳しい冬を見据えたものと思われる。これはロシアにとっても何度も西方の侵略者を阻んでくれたものだが、近代戦である第二次世界大戦では、アメリカの燃料・アメリカ製の車両・アメリカの潤滑油の供与があってドイツ軍を押し返したものである。だが、今回はアメリカの燃料・日本の潤滑油・日本製のディーゼルエンジン・台湾製の半導体チップをロシアは止められ、ウクライナには供給されている。

春季の泥濘では、コンバットタイヤのバーストが相次いだと言う。コンバットタイヤの主なメーカーは日本のブリヂストン・アメリカのグッドイヤー・フランスのミシュラン・台湾のナンカンで、いずれも対露制裁しているため質の悪い中国製しか手に入らなくなっている。

一方、日本はこのタイミングでウクライナに対し小型汎用貨物車(ハイエースまたはキャラバンと思われる)の供与を発表している。言わずもがなだが日本の自動車は北海道の極寒でも動くように作られている。


ウクライナ軍秋季大反攻の影響

ロシア側の動員令

畢竟した戦局に対応する為、9月22日遂にロシア側でも動員令が発効された。

この動員により、プーチンは30万人の部隊をウクライナに送ることと、これが動員令の第一波であり、最終的に100万人の部隊を戦場に送ることを決定した。

また、併せてロシアは最大で2500万人の部隊をウクライナに送りことも決定しており、事実上の総動員令となっている。

一方で、この動員令は事実上のロシアによる総動員でありながらも、ロシア政府の公式の発表ではあくまでも部分動員であり、戦争ではなく特別軍事作戦であるという見解も崩していない。


これら一連の発表はロシア国内に大きな混乱を巻き起こしており、開戦初期以来の大規模な反戦活動が各地で勃発し、ロシア国外に逃亡する国民が増加している。

ロシア国外への脱出を目的に航空券を求める者が殺到し、飛行機の航空券が完売した。また、この影響で航空券の価値が暴騰し、一時間ごとに航空券の値段が上がる事態も起きた。

今回の動員令により、今まではロシア政府の主張に従っていたが、反プーチンに転向したり、徴兵逃れのために様々な方法を模索する人間も多く出ている。

特に徴兵逃れに関しては、腕を折る方法を検索する若者や整形外科のサービスが出てくる様になった。

その一方で、政府への応援デモに五万人が参加するなど、今回の動員令を肯定する層もかなりの数が存在することが確認されている。


徴兵の動向に関しては、モスクワやサンクトペテルブルクと言った大都市からの徴兵は極力避け、従来の様に貧困層や少数民族、地方の住民から徴兵しているのが確認されている。

高齢者も多く徴兵されており、このため日本在住のロシア人のブロガーやyoutuberの中には「政権が不要とみなした国民を始末しようとしているのではないか」という疑心暗鬼に基づいた発言を行う者も散見されるようになった。

また、徴兵の制限に関しては年齢や職業に応じて制限を設けているものの、実際にはあってない様なものであり、本来ならば免除されているはずの学生や、地方の副知事、更には希少な技術を持つ技術職や、物流などにたずさわる労働者などが続々と軍隊に召喚されている。


これだけの動員に必要な装備も不足する可能性が高く、「装備を自前で持参しろ」という指示が発覚したり、10万着以上の装備が行方不明になっていたり、装備不足から仕方なく購入したと思しきサバゲー用装備のロシア兵の遺体も見つかる有様だった。

ロシア軍の汚職による装備の横流しについては戦争の初期段階から日本のミリオタの間で多数指摘されており、ロシア軍用のゴルカやスコープなどの正規品がAmazonなどのネット販売に多数流出しているのが観測されている。


実際の軍隊の挙動に関しては、まだ徴兵から訓練の段階にしかない為確実なことは言えないが、概ねネットでは使いものにならないのではないか?という意見が大半を占め、特に補給と輸送に関して様々な絶望的要素から、非常に悲観的な意見が多い。

一方で、30万人から100万人の動員というのは、軍隊の精度や兵士の質はともかく、数だけで言えば確かに大きな脅威であり、本格的に投入されるであろう冬季以降の戦況を非常に厳しくするであろうことが予想され、ウクライナ側の大きな障害になると思われる。

最もウクライナ軍にとって負担になるのが、この大兵員数がまとまって降伏して捕虜になった場合だ。西側の支援があるためいきなり破綻することはないだろうが、ウクライナは捕虜の監理・保護の為に膨大なリソースを割く必要が出てくる(ただしゼレンスキー大統領は、ロシア国民に対してTwitterやTelegramで「あなたの本当に大切なものを護るために、ウクライナ軍に投降して欲しい。ウクライナはあなた方に文明的な待遇を保証する」と呼びかけている)。


プーチン政権による「戦争」宣言

10月23日、遂にプーチン政権はこれまで「特別軍事作戦」としてきたこれまでの武力行為を、「戦争」であるという認識を示した。

部分動員と戒厳令を発令してから、およそ1ヶ月にも渡る事実上の「戦時体制」に入った事から、ここに来て漸く、ロシア政府首脳部も、現状を「戦争」であることを認めた形になる。

しかし、「戦争」という言葉を使ったのは、あくまでもプーチンの側近であり、ロシア政府から正式な戦争宣言は出されていない。

また、この戦争に対して、ロシア側はウクライナへの侵略を先に行った状況にもかかわらず、この戦争の責任はNATOにあり、ロシアは戦争における「被害国」であるという認識を示した。


旧ソ連構成諸国間の紛争の再燃

ウクライナでの軍事衝突が続き、ロシアがそちらへとリソースを多く割くようになると、これまでロシアの意のように押さえつけられてきた旧ソ連構成国の、ヨーロッパ東南部から中央アジアの諸国の一部で、国境線を巡る紛争が再燃し始めた。

そして、ウクライナ秋季大反攻によってロシア軍の能力低下が決定的になると、この動きはさらに加速した。


9月12日、アルメニアアゼルバイジャンの国境付近で両軍の衝突が起こった。両国はナゴルノ・カラバフ地域の帰属を巡って、度々対立してきた。ナゴルノ・カラバフはイスラーム圏のアゼルバイジャン内に存在するキリスト教住民の比較的多い地域で、キリスト教圏のアルメニアが帰属を主張しているものだが、現状アルメニア本土とは国境を接している部分ではない。これまでは、同じくキリスト教(ロシア正教)信者が主導権を持つロシアが、アルメニア側に有利な状況を作り出してきた。だが、ロシアがウクライナ侵攻の泥沼に嵌ると、アゼルバイジャンは自国主権の範囲であることを強く主張し始めた。そして、ウクライナ秋季大反攻でロシア軍が大損害を被った結果、緊張がピークに達しているものである。ただ、両軍の衝突について、どちらも相手が先に攻撃したと主張している。一旦収まったかに見えたが、9月23日に再び軍事衝突が起こった。


ジョージア(グルジア)は、南オセチア州とアブハジア州が、ジョージアの主流民族と民族の構成が異なり、ジョージアからの独立を主張していた。ジョージア政府がこれを退けようとすると、両地域はロシアに接近し、介入を希望した。ロシア軍がジョージアに対して攻撃を仕掛け、南オセチア紛争に発展した。この時は、ロシア軍の圧倒的戦力の前に、ジョージアは敗れ、ロシアの言うままに国土を切り取られてしまった。

ウクライナ侵攻が始まると、南オセチアとアブハジアでは、今回もロシア有利の結果が出ると考え、両地域の正式なロシア編入を求める国民投票を実施しようとしていた。だが、5月に入ってもウクライナ軍の粘り強い抵抗と、西側の軍事支援表明、日本と台湾の強烈な経済制裁を目のあたりにすることになり、同地域の政府はこれを中止してしまった。

一方、ウクライナ政府はジョージアに対して、「ジョージアも国土を取り戻すために軍事力を行使し第二戦線を構築してはどうか」と打診した。つまり、ジョージアが軍事作戦を実施すれば、ロシア軍は少なからずそちらにリソースを割かなければならなくなり、ウクライナは有利になる一方、ジョージアもロシア軍が弱体化している今、ロシアによって切り取られた国土を奪還するチャンスであるというものだ。

これについて、ジョージア政府は「国民投票で決定したい」旨の返答をしている。


キルギスのバトケン州は、元々キルギス人、タジク人、ウズベク人が混在している地域で、キルギス、タジキスタンウズベキスタンの間で歴史的な対立関係のある地域だった。

しかし、この3国がソ連の版図に組み込まれると、ソ連の中央政府によって、現在の国境線を確定させられた。ソ連崩壊後も、ロシア軍が駐屯し、その力で両国の紛争が再燃しないようにしていた。だが、キルギスは独立後も政府がロシアと親密な関係を保っているが、それに対し国民の不満が高まって度々内紛状態になり、不安定だった。

ウクライナ秋季大反攻によりロシア軍の大損害が見えた結果、9月14日タジキスタンは国境警備隊をキルギスとの緩衝地域に進駐させた。その結果、キルギス側の国境警備隊と衝突が起こった。ロシアは両国に停戦を呼びかけるが、政府間の合意も守られず、限定的ながら「戦闘」の様相を呈してきている。


アメリカの軍事作戦化

一方、プーチンの動員令を伝える会見を受けて、アメリカは萎縮するどころかウクライナに対する支援をより強化する動きを見せた。


これまで、アメリカ側のウクライナ支援は、あくまで「ウクライナ軍の作戦に必要な装備品を供与する」ものであった。しかし、ロシアの動員令発令直後、アメリカ国防総省はウクライナの支援を「アメリカの軍事作戦」に格上げしようとする動きが見られている。

アメリカはこの時点で、ウクライナ支援のための装備品についてメーカーに年単位の発注をかけている。


ロシアは冬を前に、西側諸国に供給されるエネルギーを人質にして、西側諸国の国民生活を困窮させ、ウクライナへの支援を先細りさせようとする戦略を取り続けている。

だが、この手法が通用するのはヨーロッパ各国だけであり、アメリカと日本・台湾に効果が薄い(ヨーロッパでも北海油田のあるイギリスに対する効果は限定的)。

それどころか、外資の撤退により急激に経済が萎縮しているロシアは、さらに日本からの出資が減ることを恐れて「サハリン2」洋上ガス田プラントの三井物産三菱商事の権利を8月末に追認したばかりである。

現に、保管の難しい天然ガスは西ヨーロッパへの輸出が滞ったため、不良在庫化した分を焼却処分せざるを得ない事態に陥っている(天然ガスの主成分であるメタンは化学反応の速度が速く、長期間同一の貯蔵施設に貯蔵しておくと設備の劣化が著しくなる。設備を更新して耐えようにも、日本が部品や素材を止めている)。


アメリカの長期かつ強力な支援体制の構築は、短期的にロシアが勝利する見込みがほぼなくなったことを意味する。


プーチン大統領は動員令の会見に際して、再度西側に核兵器をちらつかせ、「西側諸国が紛争を巡って『核の脅し』を続けるなら、ロシアは兵力の全てを用いて対応する。これはただの脅しではない」と発言してしまった。これは悪手である。これにより、ロシアは逆に自身が先に核を使うことを放棄したに等しいのである。

これまで、ウクライナ国内でロシアが戦術級の核兵器を行使したとしても、西側は核戦争にエスカレートすることを恐れて、ロシアへの制裁は非難声明と経済制裁程度にとどまるだろうと思われていた。しかし、明らかに西側諸国に核のカードを切ってしまったため、特に対露強硬派の核保有国であるアメリカとイギリスを強く刺激した。つまり、「使えば、使う」をロシア自身に背負わせてしまったのである。


ノルドストリーム損傷

9月29日、ロシアから西欧圏への天然ガス輸出を行うバルト海海底パイプライン「ノルドストリーム」が損傷、同時にロシア側で急減圧が観測された。2系統あるノルドストリームのうち、ノルドストリーム1の損傷はロシア国内だったとされ、ロシア側は10月3日までに圧力は安定したとしている。一方、ノルドストリーム2はデンマーク沖でその損傷から漏出したと思しき天然ガスの気泡が確認された。

ロシアはこの損傷を「アングロサクソン(つまり米英を初めとする西欧諸国)の仕業」と主張している。一方、欧米側は「ロシアの破壊工作らしい」と断定を避けている。というのも、デンマークの領海内のため、天然ガスパイプラインを攻撃されたとなると「NATO加盟国への攻撃」となってしまい、全面介入を訴える加盟国が出てきかねないためだ。

NATOには加盟国間で温度差があり、バルト三国ポーランドなど旧ソ連加盟国や元WTO加盟国、またかつてドイツ第三帝国と激戦を繰り広げることになったオランダイギリスは対露強硬派で、その一方ドイツ連邦共和国など、かつて枢軸国だった国を中心に慎重派がいる。この調整が非常に難しいことになっている(旧枢軸国でも日本が強硬なのは現状で自国の主権を侵害されているため、基本的に国民がロシアに批判的だからである)。


これは戦況、国際情勢に影響した。ロシアは天然ガスの輸出を制限することで西欧諸国の反露姿勢を崩そうとしていたが、ノルドストリームが使えないのならば端っから無いのと同じだからだ。つまり、西欧権のエネルギー制作の脱ロシア化を加速させてしまうことに繋がるのである。


2023年6月5日、米国のワシントンポスト紙はアメリカ政府がウクライナによるノルドストリームの破壊工作を、事前に欧州諸国に通告していたことを報じた。これは同年4月7日にマインクラフトのDiscordサーバーにて発生した、アメリカの軍事機密のリーク情報が裏付けている。


4州併合宣言

ロシア軍圧倒的不利の状況になると、ロシア軍と新ロシア派によって設置された自治政府は、ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソンの4州においてウクライナからの分離・ロシア併合の是非を問う当住民投票を強行した。選挙結果はいずれも98%前後の極端な賛成多数となり、9月30日にプーチン大統領は4州併合宣言を行った。この際、プーチン大統領は「住民の意思に基づくものであり、民族の自決を定めた国連憲章に定められた正当なものである」と主張した。

だが、実態はロシア軍の兵士が住民宅に訪問し銃を見せつけながら投票を強要するというシロモノで、その様子はこれまたTelegramやTwitterによって西側諸国に映像付きで流出。また、ザポリージャ州では約169万人の人口に対し有効票は2万票、しかも重複票があり実際に投票したのは更にその半分の1万人程度とされている。


バイデン大統領は「みせかけ」、9月6日に就任したばかりのトラス英国首相は、日本の岸田首相と揃って「国際法違反」と斬って捨て、西側各国は断固として認めないという姿勢を打ち出した。

日本においては、中露に柔和的とされたTBSテレビ朝日ですらこの行為に強く批判的な報道がなされた。


ゼレンスキー大統領はこれに反発すると同時に、「プーチン氏が大統領である限りウクライナはロシアとの如何なる交渉もしない」という声明を出した。


「リマン玉砕

ウクライナ軍ハルキウ・ドネツク州境越境

だが、プーチン大統領の4州併合宣言の裏で、すでにウクライナ軍はハルキウ・ドネツク州境に流れるオスキル川を突破し、ドネツク州北部に進入していた。

ロシア軍はオスキル川を突破されて以降、ドネツク州内には防衛線と呼ぶべきものが存在しないも同然で、ウクライナ軍がロシア軍を蹂躙しつつあった。同州北部の主要都市であるリマンはロシア軍制圧下にあったが、ウクライナ軍が着実に迫っていた。


死守命令

リマンの東側にはドネツ川の支流が流れており、ウクライナ軍はそれに向かって南北から回り込むかたちでリマンの包囲網を狭め、ロシア軍の行動を制限していった。このまま川の交通を遮断されるとリマンのロシア軍は孤立してしまうことになり、ロシア軍の現地部隊からは撤退の進言が出始めた。


ところが、プーチン大統領はリマンの絶対死守を指示。一方、ウクライナ軍はロケット発射式の対戦車地雷をロシア軍の背後に散布、事実上装甲兵力のリマンへの増援は不可能になった。

本来、政権中枢に忠実なはずの督戦隊が真っ先に、重装備を捨てて川を超えて逃走。その際、川にかかる橋を爆破し、リマンにとどまっているロシア軍部隊の退路を断っていった。

ロシア軍部隊はどうすることもできず、約5000名の兵員がリマン市内に取り残された。


10月1日、リマンはウクライナ軍に制圧され、約5000名のロシア軍部隊はすべて戦死・行方不明・捕虜のいずれかの結果となった。ウクライナ軍の発表では、動員令後に徴兵された新兵がすでに配置されていたともされる。

このロシア軍への死守命令は純軍事的な戦術・戦略によるものではなく、「ドネツク州はロシアとなった」という事実を否定させないための、政治的な決定によるものであると推測された。

ドネツク北部の要衝、リマンは、プーチンの併合宣言から48時間と保たずにウクライナ軍に奪還された。


ヘルソン北東部電撃戦

東部ではその後、数日の間ウクライナ軍の勢いはやや鈍った。とは言え、ウクライナ軍はリマンから北北東へ向かってドネツク・ルハンシク州境を突破し、国道P07号とP66号が交差するスバトボに向けて、着実に進軍していた。このP07号はロシア方面に伸びる主要幹線道路で、P66号はドンバス地方東部を南北に結ぶ主要幹線道路となっている。その南側には因縁のセベロドネツク・リシチャンシクがあり、ここを制圧されるとロシア軍はルハンシク州内の兵站に支障を来すとされる。


一方、それまでヘルソン州都へ向けて僅かずつ進軍していた、と見られた南部戦線でも、ヘルソン州北東部のドニエプル川西岸にそってウクライナ機甲部隊がロシア軍防衛線を突破、僅か1日で25km前進した。電撃戦において限定的な機甲部隊の突出は精鋭化した部隊を喪失する危険性もあったが、ウクライナ軍は北東側からの突破に加えてその北側からも進撃を始め、ロシア軍が包囲されようとしていた。

すでにドニエプル川対岸からの補給が著しく限定されていたロシア軍は撤退することしかできなかった。ロシア軍はここでも「戦略的撤退」を主張したが、もはや恒例行事となったTelegramやTwitterでロシア軍が戦車など装甲車両を破壊もせずに遺棄していったことの公開がなされ、「潰走」であると推測された。


撤退したロシア軍部隊はヘルソン州都に向かっているが、すでにHIMARSの射程圏内であり、その防衛ラインは榴弾砲が届く位置であった。また南部ではウクライナ空軍の活動も活発で、ドニエプル川北側のロシア軍は頭数がどれだけあっても「戦力」として数えがたい状況にある。


にもかかわらず、プーチン大統領はまたしてもヘルソン州都からの撤退を認めず、死守命令を出した。

ウクライナ軍秋季大反攻の前にロシア軍が惨敗を喫した事実に、ラムザン・カディロフチェチェン共和国首長やドミートリー・メドベージェフ前大統領といった侵攻に対する強硬派からも、セルゲイ・ショイグ国防相やアレクサンドル・ドボルニコフ作戦総指揮官の能力欠如が指摘され、さらには核兵器の使用を求める主張が出始めていた。プーチン大統領はこれら強硬派と反戦・反プーチン勢力との間で板挟みとなり、非常に危うい立場に立たされることになった。その結果、この「絶対死守」命令をプーチン大統領自ら出さざるを得なくなっているのである。


ウクライナ議会は「プーチン政権が続く限りロシアとの停戦に向けた交渉は『不可能』」とする法案を議決、10月5日(JST基準)ゼレンスキー大統領が署名し正式に法令となった。


クリミア大橋の爆発

8日午前、ウクライナ南部クリミア半島とロシア本土間のケルチ海峡に架かるクリミア大橋で爆発が起きた。並行してかかる鉄道橋と道路橋のうち、道路橋のアゾフ海側の車線で発生したが、丁度その横を通過中の貨物列車に連結された燃油タンク車が損傷し炎上、激しく燃え上がった。往復4車線の道路橋も、アゾフ海側2車線の桁が2ヶ所崩落した。橋の片側は無事であるものの、被害状況の調査の為に通行止めとなった。死者は3名とロシア側が発表した。


クリミア大橋はクリミア半島とロシア本土を繋げる唯一の交通手段、そしてウクライナ侵攻の生命線である為、苦戦するロシア側に更なる追い打ちをかけると見られている(ザポリージャ州内の東西を結ぶ主要な道路・鉄道はすでに数ヶ所がHIMARSなどウクライナ軍の攻撃圏内に入ってしまっている)。9日に鉄道と車両の通行は再開したものの、爆発と炎上によるダメージで道路橋と鉄道橋の耐久性が落ちているのではないかという声も少なからず上がっている。実際、道路橋の方はほとんど乗用車しか通れない制限がかけられている。


複数のウクライナのメディアは背後にウクライナ保安局が関与していると報じ、ポドリャク大統領府長官顧問はクリミア大橋の火災が報じられた後「これが始まりだ。違法なものはすべて破壊されなければならない」とSNSに投稿された。尚、現時点ではこの爆発にウクライナ側が関与していたかは政府の発表は出ていない。とは言え、キーウの市民は「待ち望んでいた」とクリミア大橋の爆発について歓喜に包まれていた。


ウクライナ中部・西部都市へのミサイル攻撃

10月10日、ウクライナの首都キーウのほか、リヴィヴ、テルノピル、ドニプロなど都市で複数の爆発が起き、キーウでは複数の死者が出た。プーチンはロシアの発射したミサイルによる攻撃であると発表し、クリミア大橋の爆発に対する報復であることを示唆する発言を行っている。


ところが、西側(主に米・英)の諜報機関はこれらのミサイルの準備はクリミア大橋の爆破以前に始まっていることを掴んでいた。つまり、ウクライナ方面以外に配備されていたスタンドオフミサイルを、この地域へと移動させていたため、それが西側の情報網に引っかかったわけである。

これらの攻撃はすでにロシア軍の弾薬が本格的に払底し始めている証左ではないかとも推測された。

(これまではあくまで「ウクライナ方面に集めていた弾薬が払底しつつある」と考えられていた)


これに対し11日、今回の攻撃に対してG7の緊急リモート会談が行われ、ゼレンスキー大統領も参加した。この会談では、西側は、ロシアによる4州の併合を認めないこと、実施された住民投票は正当なものではなく国際法違反であること、引き続き強力にウクライナを支援すること、これらが宣言された。


実際のところはというと、84発の発射が確認されたミサイルのうち、約半数の41発をウクライナ軍によって撃墜されており、リヴィヴの変電所の破壊こそ大きかったものの、ウクライナ軍のバックボーンを止める事はできず、戦略的な効果は薄いと考えられており、貴重なスタンドオフミサイルを“浪費”したとも捉えられている。


12日も同様の都市攻撃が行われたが、10日の攻撃よりも規模はかなり小さいものとなった。


この期に及んで情報リテラシーが確保できていないロシア軍

10月15日、ロシア軍の新兵訓練の現場で銃乱射事件が発生し、11人が死亡した。(ANN)

銃乱射を行った2人は、宗教を理由とした口論から、エスカレートしてこの自体に至った、と、何故かウクライナ大統領府顧問から発表。未だにロシア軍の情報がウクライナ側に筒抜けである可能性が高い。

なおこの2人は手がつけられないため射殺されたとのことだが、動員兵ではなく志願兵だったとのこと。


その後、ネット上では、射殺された志願兵はイスラム教徒であり、上官からの「これは聖戦(ジハード)である」と言う発言に対し、聖戦とはイスラム教が異教徒と戦う戦争であり、今回の戦争は聖戦ではないと返事したところ、「それではお前らの神(アラー)は臆病者だ」と返した事で殺傷事件に陥ったと言われている。


ヘルソン州都奪還

秋季の泥濘期が始まり、機動性を以ってロシア軍を制圧してきたウクライナ軍の動きは鈍り、東部戦線は膠着状態になった。どちらも塹壕を幾重にも建設し、防御的な行動に移行していた。


一方、南部戦線では、ヘルソン州内・ザポリージャ州西部でドニエプル川にかかる橋梁をウクライナ軍にすべて破壊され、補給路がほぼ絶たれたロシア軍を徐々にウクライナ軍が押し込みつつあった。

11月初旬、ウクライナ軍はヘルソン州都まで目前の位置に辿り着きつつあった。


しかし、ここからは下手にウクライナ軍が進攻すると、ロシア軍がノーバカホフカ水力発電所のダムを破壊したり、ヘルソン州都に対して焦土作戦を行う可能性があり、ウクライナ軍の反攻も慎重にならざるを得なかった。


10月に新たに作戦総指揮官として任命されたセルゲイ・スロヴィキン上級大将は、11月に入ると、「困難な状況にある」と発言した。

その後、ヘルソン周辺のドニエプル川北側にいるロシア軍が、対岸に撤退し始めていることが解った。スロヴィキン上級大将がロシア軍の熟練部隊に撤収を命じていた。


ロシア軍が撤退の状況になると、ウクライナ軍はドニエプル川にロシア軍が設置した仮設の浮橋や艀などをHIMARSや榴弾砲で攻撃し始めた。ウクライナ軍としては、下手に撤退されて他の戦線に戦力が再構築されないよう、できる限りロシア軍を殲滅することが目的だった。


11月11日、ロシア軍はヘルソン州都からの撤退完了を発表。ウクライナ軍はヘルソン州都に向けて進軍を開始した。その日のうちにまずウクライナ軍の特殊作戦部隊が市街に突入、それから数時間も経たないうちに主力も市街入りした。


ロシア占領下にあった市民は、ウクライナ国旗を持ち出し、ウクライナ軍の到着を歓迎した。


一方、ロシア軍は撤退完了を発表していたにもかかわらず、ヘルソン州都周辺にはまだ、ロシア兵が取り残されていた。取り残されていたのは、動員例でかき集められた動員兵、ワグネルの囚人部隊、カディロフツィなどが主だった。

ロシア軍は正規軍部隊が撤退した後、ウクライナ軍の追撃を防ぐため、浮橋や、ノーバカホフカのダムの一部を爆破していた。取り残された部隊は撤退のしようがなかった。

ウクライナ軍は残存していたロシア兵に対し、航空攻撃を含む苛烈な攻撃を実施した。ごく少数はウクライナ軍に投降したが、中にはすでに最高気温が10℃を割り込む環境下で、ドニエプル川に飛び込み渡河を試みた。

ウクライナ軍はヘルソン州都周辺のロシア軍の掃討を完了させ、11月14日にはゼレンスキー大統領自ら現地入りし、市民に労いの声をかけた。


一方、ドニエプル川の水中から、ロシアで契約されたSIMのスマートフォンの位置情報が無数に見つかった。


エスカレートするロシアのウクライナ全土攻撃

ロシア軍の不利が続くにつれ、ロシアは10月10日以来のウクライナ全土へのミサイル攻撃を強めていった。毎日70~120発程度の巡航ミサイル・戦術弾道弾・それにイランから提供されたシャヘド136自爆ドローンを発射し、主に電力インフラを集中的に攻撃した。


ウクライナ側はこの内の50~90%を撃墜しているが、事実上の飽和攻撃状態であるため、電力等ライフラインの損傷が致命的で、全土で計画停電など電力の使用制限がかかった。


しかし、ロシアのこの振る舞いは、さらにロシア自身を国際社会の中で孤立させていった。中華人民共和国は、中国共産党の支持層である富裕層を中心に、ロシアの民間施設破壊に対し強く批判的な意見が噴出、もともと積極的にロシア支援を行わない方針の政府にさらに圧力がかかっている。

ロシアに融和的な国は少なくないが、かろうじて工業力があるといえるのがイランと北朝鮮ぐらいで、後は西側先進国や中国の支援がなければ近代国家としての体裁を整えられないような国しかない。


また、これらの攻撃はウクライナ軍自体に大した打撃になっていない。ウクライナは軍需工場などをリヴィヴなど西部にすでに疎開させており、この領域は皮肉にも旧COMECON時代の規格でポーランドルーマニアから電力を融通できるため、キーウなどと異なり完全にインフラを止めることはできない。

後方の民間人への攻撃は、返ってウクライナ軍兵士に報復の意思を高めるだけで、ウクライナ軍の戦力を削ることに直結していないどころか、ますます士気を上げてしまう結果になっている。


11月12日にはウクライナ国境近くのポーランド領内の村落にミサイルが落下、2人が死亡した。このミサイルは、まだ100%公式な調査結果が出ているわけではない(2022/12/11:JST基準)が、ウクライナ軍のS-300ミサイルである可能性が高い。しかし、S-300は地対空ミサイルであり、ウクライナ軍の発射の意図はロシアから飛んでくるミサイルの迎撃であるため、西側各国からの批判はあまり見られない。


ウクライナ軍のロシア本土攻撃

12月に入ると、逆にウクライナ軍からロシア本土への攻撃が始まった。標的は主にほぼ全体を奪還したハルキウ州に隣接するベルゴロド州など宇露国境付近の軍事施設や石油備蓄基地となっていた。

また、イランからの輸送ルートのひとつである黒海のロシア海軍基地が、ウクライナ軍の水上ドローン・飛行ドローンによる攻撃を繰り返し受け、ロシア黒海艦隊の能力は著しく低下させられた。


しかし、12月5日にはリャザン州のディアギレボ空軍基地とサラトフ州のエンゲルス空軍基地で爆発があり、ウクライナ軍によるドローン攻撃であるとされた。この両州はウクライナ本土から500km以上離れている場所で、特にディアギレボ空軍基地はモスクワから200kmとウクライナ国境よりモスクワからのほうが近い。


ウクライナ政府としては公式の声明を出していないが、ウクライナ政府関係者のTelegramやTwitterの個人アカウントで、ウクライナがこの攻撃に関与していることを暗に認める投稿がなされた。また、ウクライナの国営防衛企業ウクロボロンプロムは、航続距離1000kmの自爆型ドローンの開発の最終段階にあることを公的に発表した。


一方で、そもそもドローンや巡航ミサイルの飛行速度はそれほど高くなく、通常であれば数発であれば簡単に迎撃できるはずなのだが、今回ロシア領空を約600km飛行して着弾したということは、ロシアの防空網が事実上機能していないのではないかという憶測も呼んでいる。


西側は今までロシア本土を攻撃できる兵器を供与していない(と、言ってもベルゴロド州あたりは普通に榴弾砲で攻撃できてしまうのだが)し、アメリカは今回の攻撃に際して「NATOはウクライナにロシア本土攻撃を可能にする兵器はこれからも供与しない」とする一方で、「ウクライナが独自にそのような兵器を開発試用したとしてもそれを制限することはない」とも発表した。


両空軍基地への被害は限定的だったが、ロシア空軍は再攻撃を恐れて、ウクライナ攻撃任務についていた戦略爆撃機(ツポレフTu-160『ブラックジャック』や同社Tu-95『ベア』など)を両基地から退避させた。

そして何よりも重要なことは、ウクライナがモスクワを攻撃する能力を持ったということである。


経過と推移(2023)

主力戦車供与

1月14日にイギリスが現役の主力戦車チャレンジャー2の供与を決定し、西側戦車供与の流れが産まれ各国が追随する。

実質的な欧州標準戦車であるレオパルト2は、最終的に一個旅団が充足できる程度の数が集まった。

しかしながらウクライナには西側戦車の部品を生産する設備が無く、修理する能力もないため、各国が維持管理のサポートを続けられるかは疑問視されていた。


戦闘機供与

3月からはポーランドがMiG-29を提供し、戦闘機供与の流れを作る。

8月20日にはオランダとデンマークがF-16の供与を決定したが、主力戦車とは桁違いに高い戦闘機の維持管理能力の確保や、原則として英語が使われる西側戦闘機の訓練をウクライナ人に施す困難さもあり、実戦化は2024年の夏になる見込みである。


プリゴジンの乱

5月ごろからワグネル創設者であるプリゴジンが、過酷な状況に投じられ続けるワグネルの窮状をメディアに向けて吐露し国防省を非難し始める。

6月23日にはワグネルが踵を返してロシアロストフ州に侵攻を開始、州都ロストフ・ナ・ドヌを掌握してモスクワに向かうかと思われたが、25日にはベラルーシ大統領の仲介によりワグネルは撤退する。この際、ロシア軍機数機がワグネルに撃墜されている。

プリゴジンはベラルーシに亡命する運びとなったが、8月に搭乗する飛行機が墜落して死亡。当然後ろ暗い噂があるわけだが、真相は定かではない。


ウクライナ軍反転攻勢

ウクライナ軍が戦線の全域で大規模な攻勢に出る。開始日は諸説あるものの、シンクタンクの分析によれば6月初旬には攻勢が始まった。

しかしながらロシア軍は三重の防衛戦を張り巡らしてこれに対処しており、進撃は当初の期待通りとは行かなかった。

また供与されたばかりのレオパルト2、それも本家本元のドイツが提供した最新鋭のレオパルト2A6が撃破されている映像が大々的に公開されてしまう。戦術的には特筆するほどの損失ではないが、これまでM777やHIMARSなど、西側兵器については景気のいいニュースばかり流されてきた中で、支援の目玉である主力戦車の苦境は少なからず衝撃を与えた。


クラスター弾供与決定

7月7日、バイデン大統領はクラスター弾の供与を決定する。

これまでロシア軍のクラスター兵器使用を非人道的行為として非難してきた向きもあり複数の国家、組織がこれに反発することとなる。


レズニコウ国防大臣更迭

9月3日、度重なる国防省の汚職事件の責任を取る形で、オレクシー・レズニコウ国防大臣を更迭する意向をゼレンスキー大統領が公にした。

これを受けて大臣は辞表を提出、5日に辞表は承認される。

長く政界に勤めて築いた人脈により西側の支援を引き出し続けた重要人物であり、影響が懸念される。


攻勢失敗の見方が広まる

11月に入りヴァレリー・ザルジニー総司令官が戦闘の膠着を告白し、6月から続いたウクライナ軍の大攻勢は停止した。

単純な占領面積としては一定の成果を見せたものの、クリミア半島の分断など戦略的な影響を生み出すような戦果は得られず、各国のシンクタンクも戦術的な勝利に過ぎないと否定的な評価を下している。


経過と推移(2024)


早期警戒管制機撃墜

1月14日、ロシア空軍のA-50早期警戒管制機が撃墜された(当時は誤射説もあった)。同時期に空中指揮機も損傷を受けている。

この機体は配備数も少なく非常に高価であり、なによりとても重要(あっさり撃墜されていい存在ではない)であったため、各国に衝撃を与えた。

その後同型機が任務を引き継ぐも、当時運用された空域から後退した位置に居たため、ウクライナによる撃墜は有力視されている。なお下記の通り、この同型機も後に撃墜された。

後に1機目の機体は、供与されていたパトリオットによる攻撃で撃墜されたと、米軍が証言した。



タランタル級コルベット撃沈

2月1日にはロシア海軍のタランタル級コルベットイワノヴェツが、海軍基地があるドヌズラフ湾の入口でウクライナの自爆ボート(6隻)によって撃沈された。これまで損傷させる程度の戦果だった自爆ボートによる、初の撃沈例となった。

これにより自爆ボートの有用性を強調する傾向が見られるが、港湾の出入り口付近での待ち伏せ攻撃であり、かつ比較的小型の艦相手に6隻突入させてようやくであるため、戦訓として引用するには非常に限定的な状況であることに注意が必要。


総司令官の交代

2月8日にヴァレリー・ザルジニー総司令官の更迭が発表され、陸軍司令官であったオレクサンドル・シルスキーが後任となった。

大統領とザルジニー元司令のにこやかな2ショットで円満交代であることをアピールしているが、攻勢を命じるゼレンスキーと防御に徹したいザルジニーとの間の不和や、ザルジニーの国民支持率が大統領を上回っている点なども更迭に影響を与えていると見られている。

ただしザルジニーは後に駐英大使に任命され、自身が政界で対抗馬として担ぎ上げられ、国内が分裂する事を危惧していた事もあり、ゼレンスキーとの利害関係の一致で穏便に済んだとみられている。

後任のシルスキーはソ連時代からキャリアを積んできた大ベテランであり、最初期のキエフ防衛戦や22年9月の秋季攻勢で辣腕を振るった名将であるものの、バフムトの攻防戦で犠牲を厭わない強引な戦術を多用したことから「肉屋」「将軍200(※)」などと呼ばれて現場から恨まれている人物でもあり、この交代劇が軍の士気や作戦方針に与える影響が懸念される。

※…ソ連系の軍では死体を輸送する際に「貨物200」と呼んだことから発展して、200が死を意味する隠語として使われている。


ロプーチャ級揚陸艦撃沈

2月14日には揚陸艦、ツェーザリ・クニコフが自爆ボートによって撃沈された。上記のタランタル級に続き2隻目。

ロシアが運用する揚陸艦としては旧式、小型のものだが、水上ドローンの戦果としては最大となる。

突入場所が片舷に集中した事と、何かを積み込んでいたため喫水が深くなり、余計に沈没しやすい状態であった事が撃沈に繋がったとみられる。弾薬を積んでいたという話もあるが不明(この場合弾薬に誘爆した可能性がある)。

今回の攻撃も沿岸部で行われた。名前の由来となったクニコフ少佐の命日の出来事であり、演出のために周到に計画を調整したものと思われる。


相次ぐ不審死

2月16日、反政府活動家のアレクセイ・ナワリヌイが、収監されていた刑務所で死亡した。死因は突然死症候群と発表された。

同20日には、ウクライナにへリコプターごと亡命したパイロットが、スペインで暗殺された。

更に21日には、ロシアの軍事ブロガー(侵攻支持派ではあるが、ロシア軍の損害状況も暴露していた)が自殺した。

各国には、これらが全てがロシア政府等による暗殺ではないかと疑われており、ナワリヌイの死亡時には非難が相次いだ。


ウクライナ軍アウディーイウカ撤退

2月17日、ウクライナ軍は激戦地の一つであるアウディーイウカから撤退した。西側の支援停滞やロシア軍の人海戦術等が要因とされている。

しかしロシア軍も完勝とは程遠い損害を出しており、兵士数万に加え機甲戦力を多数損失したとされる。更に撤退前後には数機の戦闘機が撃墜される等、航空戦力にも被害が出ている。

更に23日には、上記と同型の早期警戒管制機が撃墜された。今回は以前よりも前線から後退した位置に居たが、ウクライナ側はミサイルでの撃墜を主張しており、旧式だか射程の長いS-200が使用された可能性があると言われている。一方ロシアでは、ロシア側の防空ミサイルによる誤射ではないかと噂されている。


イスラム系武装勢力によるテロ

ウクライナ侵攻が続く中、3月22日にモスクワ郊外のコンサートホールにて、イスラム系武装勢力「IS」によるテロが発生した。銃乱射とその後の火災により、140人以上の死者と200人以上の負傷者を出す大惨事となった。

その後ISが犯行声明を出したのだが、ロシア側はウクライナや西側の仕業だと主張した。アメリカからテロに関する情報提供を受けていたにもかかわらず、テロの阻止どころかその後の対応も西側への責任転嫁という体たらくであった。

ウクライナ侵攻では、軍や警察組織の対テロ部隊、治安維持部隊をもウクライナへ投入しており、そんな少数精鋭or治安維持部隊が正規軍と正面衝突して勝てるはずもなく、あえなく壊滅している。

ウクライナ侵攻にあらゆるリソースを割いた結果、国内のテロに対処出来なかったと予想されている。


犯行声明を無視される形となったISは、更なるテロを宣言…そしてその宣言通り、今度は6月23日にロシア南部の宗教施設や警察署が襲撃を受け、警察官を含む20人近くが死亡した。


Tu-22M3撃墜

4月19日に、ロシアの爆撃機であるTu-22M3(攻撃を終えて帰投中だった)が撃墜された。それまでも駐機中の機体を損傷または破壊した例はあったが、撃墜は初であった。

ウクライナ側は対空ミサイルで撃墜したと発表し、ロシア側は故障による墜落と発表した。なおこの機体もA-50同様、長距離(300km以上)からのミサイル攻撃を受けており、同じ方法で撃墜されたと予想されている。


米国の予算案可決

下院が20日、上院が23日にウクライナ支援を含む予算案を可決した。これにより停滞していたウクライナに対する軍事支援が再開される見通しとなった。

米国の支援が停滞していた間、ウクライナはロシアの人海戦術や砲撃等で前線が疲弊していた。しかし逆を言えば、その間ロシアも大きな戦果を上げる事が出来ず、歩兵だけでなくバイクや全地形対応車等の偵察用車両、簡素な装甲を追加したトラック、戦車等をひたすら突撃させており、大きな損害を出している。


ロシア5月攻勢

ロシアはハルキウ方面に対し、約3~5万の兵力による攻勢を行った。これにより5~10キロ前進したものの、それ以降の陣地を突破出来ず、攻勢は約10日程で停滞した。

ウクライナ側は米国の支援再開があったものの、最前線への武器弾薬の供給が遅れていたため、一部地域で撤退を余儀なくされた。

ロシア軍はアウディーイウカの時程ではないものの、ATACMSやドローンによる反撃を受け、S-400等の防空システムや駐機中の航空機、近接航空支援でのSu-25(複数)、軍事基地、石油関連施設、軍港の小型艦艇に多数の被害が出ている。特に小型艦艇は、クリミア半島に残っていたミサイル搭載艦艇が、ほぼ壊滅したと推測される。

なお日本からウクライナへ供与されていた1/2tトラックが、実際に前線で使用されている事が確認されている。


供与兵器による、ロシア領内攻撃許可

5月末から6月初頭の間に、欧米各国がウクライナへ供与した兵器による、ロシア領内攻撃を相次いで許可した(一部の国は用途を限定)。ロシア領内から行われる民間人への無差別攻撃防止や、ロシア領内に集結した部隊を叩くための措置と思われる。更にスウェーデンからは、空中管制機が2機供与されると発表された。

実際に許可直後から、国境付近のロシア領内に展開していたS-400(或いは対地攻撃を行っていたS-300)が複数撃破されている。

なおクリミア半島では、5月30日にATACMS(弾道ミサイル)により鉄道フェリー2隻が破壊され、その翌日にはネプチューン(対地改良型)巡航ミサイルにより、フェリーターミナルや石油タンクが破壊されており、S-400が弾道ミサイルや巡航ミサイルを撃墜出来ず、本体や防衛対象に被害が出ている等、その性能が疑問視されている。その後も6月だけで複数の防空システムが破壊され、S-300による無差別攻撃の頻度も減少した。

6月7日には自爆ボートにより、ロシアのタグボートが破壊されている。


Su-57損傷

ウクライナは6月8日の攻撃で、ロシアのSu-57に損傷を与えたと発表した。同機が損害を受けるのは史上初。

場所は最前線から約590㎞離れた航空基地で、衛星画像では機体近くの2ヶ所に、爆発と火災の跡が確認出来る。かなりの至近弾であるため、爆発時の破片による損傷を受けたのは確実視されている。


NIP-16深宇宙通信施設破壊

ウクライナは6月23日に、ATACMSでクリミアにある深宇宙通信施設を破壊した。同施設はソ連時代に建設され、ウクライナ独立後は同国で運用されていたが、ロシアのクリミア併合以降接はロシアが運用していた。因みに軍事衛星の運用にも関わっているため、立派な軍事目標である。


オフマディト小児病院空襲事件

7月8日、キーウにロシア側からの大規模な巡航ミサイルによる空襲が行われ、小児科専門病院「オフマディト小児病院」にKH-101が直撃し40人近くが死亡し170人を超える負傷者が出た。小児ガンなどの重篤な病気の子供たちを治療する民間病院への攻撃で、しかもダブルタップだったためロシア側へは国際的な非難が殺到。

ロシア側は軍事施設を目標にしたと言い訳をし、親露の陰謀論者もアメリカ製のミサイルと主張(ロシアがミサイル攻撃の事実自体は認めているにもかかわらず)したが、数々の映像やミサイルの現物から「子供の多い医療施設を狙った攻撃」という言い逃れのできない失点を抱えることとなった。



6~7月の関連事件、戦闘

6月辺りからロシア政府と直接、または間接的に関係があると見られているハッカー集団により、欧米や日本の企業(KADOKAWA等)が大規模なサイバー攻撃を受けており、各地で深刻な問題となっている。


欧米の軍需企業に対しては、工場や倉庫に対する放火等の破壊工作が相次いでいる。更にはロシア政府による関係者暗殺計画も複数存在するとされ、この中で最も計画が進んでいたとされる、ラインメタルCEOの暗殺計画については、アメリカとドイツ当局により阻止されたと発表されている。

日本においては、大阪市にある貿易会社「アストレード」の社長(ロシア国籍)が逮捕された(制裁後では初の事例)。軍事転用が可能なため、ロシアへの輸出が制限されていた船舶用エンジンや水上バイク等を、韓国向けと偽ってロシアに不正輸出していた。


7月に入ってロシア軍の死傷者は連日千人を超えていると報じられており、人員不足を補うために国内の囚人のみならずパキスタンインドアフリカネパールの出稼ぎ労働者や旅行客を騙してロシア軍に編入した上前線に出していることが発覚、インド政府から早急に除隊するよう要請がされている。参照

6月の戦死者には、ロシア側の義勇兵として参加していた、元自衛官も含まれている。遺体の送還を予定しているなど、ロシアにしては対応がまとも。


またウクライナ側は5月以降、複数のSu-25を撃墜したと発表しており、度々その様子を撮影した動画が公開されている。あまりにも一月辺りの撃墜報告が多いため、何機かは水増しされた戦果ではないかと疑われている(一部を除き、不鮮明な証拠映像が多いため)。プロパガンダを加味しても、少なくとも月に2機以上のペースで撃墜されている。

それ以外でもロシア領内の飛行場に対し、ドローンやミサイルでの攻撃が複数回行われ、軍用ヘリが多数破壊されている。


7月23日には、ケルチ海峡で運航されていた鉄道フェリーが破壊された。5月に破壊された2隻と合わせ、運用されていたフェリーは全て破壊されたことになる。後に1隻は修理されて運用を再開したが、8月22日に再攻撃を受け大炎上、積み荷の燃料貨車28両と船体が完全に焼けてしまった(一応沈没はしていないが、修理は困難とされている)。

7月25日には、プーチン大統領が搭乗した2ヶ月後の4月11日にTu-160Mが墜落していた事が判明した。



今年の春以降、ロシア内部で政府や軍高官の逮捕が相次いでおり、事実上の粛清が始まったとみられている。



ウクライナにF-16到着

7月31日、ウクライナに最初のF-16戦闘機(複数機)が引き渡された。供与決定から約1年半経過したものの、ようやく実現した。

F-16にはロシア空軍による滑空爆弾攻撃の阻止や、西側兵器の性能を最大限活かした攻撃が期待されている(これまでは東側航空機に、西側の兵装を無理矢理改造して搭載していた)。

ウクライナでは8月4日、「ウクライナ空軍の日」に公式発表された。


ウクライナの越境攻撃

8月6日、ウクライナ軍は国境を越え、ロシアのクルスク州へ進軍した。しかし戦略、戦術目標共に一切が不明な攻撃であったため、現時点では専門家も困惑する事態となっている。アメリカ当局も同様の反応を示したが、後にこの越境攻撃を追認した。

ロシア側の守りは薄く、ウクライナ軍は快進撃を続けており、多数の捕虜を確保し、ガス施設を占拠、それ以外でも航空基地や移動中の部隊に多数の損害を与えている。

約1週間が経過し、ウクライナ軍の進撃は鈍化したものの継続されており、ロシア軍の大隊司令部が制圧されている。制圧面積では、ロシアが約7ヶ月掛けて制圧したウクライナ領土面積に匹敵するともいわれている。

もちろん無傷というわけではなく、反撃でHIMARSが撃破されるなどの損害も出ている。


ロシア軍も反撃に出ているものの、移動中の部隊が損害を受け、航空支援を行っていた戦闘機が撃墜されるなどの被害が出ている。またウクライナの進軍を警戒して防衛線を構築しており、戦力を後方や一部戦線から引き抜かざるを得ない状況になっている。


一方で、以前損傷して修理中だったキロ級潜水艦、ロストフ・ナ・ドヌーが再攻撃で撃沈された可能性が高いと指摘されている(なおロシア軍は、それを隠すためのハリボテまで用意している)。更にTu-22M3が事故で墜落している。










侵攻による影響

  • 小麦製品の高騰

小麦の出荷量が世界全体の25パーセントを占めているウクライナとロシアの戦争が影響し、パンパスタなどの小麦製品の価格が世界的に高騰している。

  • GDPの下落

2022年4月21日付けのウクライナの報道機関であるUKRINFORMの報道によると、世界銀行は同年4月10日に同年のウクライナの実質GDPは、ロシアが開始した戦争によって45.1パーセント下落すると予想し、ロシアも11.2パーセント下落するとの予想を発表した。BBCは世界銀行のロシアが開始した対ウクライナ戦争を受けたヨーロッパ・中央アジア経済展望の報告について報じた。


報告ではロシアとの戦争によりウクライナの約半数の企業が閉鎖に追いやられた他、輸出が大幅に縮小したと記載されている。黒海が封鎖されていることにより、ウクライナの穀物の約90パーセントが輸出できなくなっており、また国の輸出全体も約半数が止められているという。世界銀行は、ウクライナは世界でひまわり油の最大の輸出国であることを喚起し、戦争が同製品の値段に影響を与えていると指摘した。ビエルデ副総裁(欧州・中央アジア担当)は、戦争による人道危機の影響の大きさを指摘し、「ロシアの侵攻はウクライナ経済に大ダメージを与えており、インフラへも信じがたい損害をもたらしている」と発言した。


その上で、世界銀行はウクライナの経済の45パーセントの落ち込みを予想しているが、これにはインフラの実質的破壊の影響は含まれておらず、「それが将来の経済成長をさらに妨害していく」と指摘している。世界銀行は、「ウクライナは現在速やかかつ甚大な経済サポートを必要としている」と強調した。


同時に世界銀行は、「ロシアもまた米欧日の制裁により、深刻な景気後退に陥る。」との見込みを示し、ロシアの実質GDPは11.2パーセント減となると発表した。


アメリカがロシアの石油と天然ガスの輸入を禁止したのに対して、石油輸入の4分の1、天然ガス輸入の40パーセントをロシアに依存しているヨーロッパ連合(EU)は、同様の禁輸措置を取っていないことが喚起されている。これにより、ロシアは毎日EUから最大8億ユーロを受け取っており、これはロシアの収入の40パーセントを占めるものだと指摘されている。


半導体や各種素材などがストップし、兵器どころか民生品の生産もままならなくなっており、企業のレイ・オフによって約20万人の失業者が生じていると言う。


  • EU・NATOの拡大

ウクライナ侵攻開始当初は、プーチンは「EUとNATOの東方拡大を防ぐこと」を開戦理由の一つに挙げていたが、ウクライナ侵攻がきっかけとなってむしろ欧州全域はEUとNATOへの加盟の必要性を強く意識するようになり、ウクライナ自体がEUとNATOの両組織への加盟を大きく前進することになった。

また、従来よりロシアとの関係を重視し、いわゆる西側諸国とは距離を取り、中立を維持していた国々の多くがEU・NATOへと加盟を進める事態に発展した。

特に衝撃的だったのは、北欧の中でもフィンランドやスウェーデンと言った国々までもがNATOに加盟したことである。

フィンランドはロシアの隣国としては、ロシア第二の都市であるサンクトペテルブルクにほど近く、ロシアの重要軍事施設のムルマンスクと国境を接している。

この二カ国がNATO入りしたことで、ロシアは軍事的懸念を増やす結果となった。


  • 迂回貿易ノウハウの確立

禁輸措置開始以降、ロシアは中国、インドのような中立国や、旧ソ連の友好国を経由して欧州との貿易関係を復旧している。規制の目玉であった半導体の輸入も続いており、ロシア製の誘導兵器やドローンからは相変わらず西側の部品が発見され続けている。


  • 反米陣営の団結・発展

ロシアに砲弾やドローンを供給しているイラン、北朝鮮に対し、その見返りとしてロシアは軍用機や軍事技術の大盤振る舞いを行っている。イランは大口の購入契約を取り付けたほか、北朝鮮もロシア機を新たに導入する意向を示しており、更にロシアの協力を受けて製造されていると思しきAWACSの姿が偵察衛星に捉えられている。弾道ミサイルに関しても技術供与を受けている疑惑がある。

軍事力が大幅に増強される見込みであり、日本を含む周辺国の脅威が増している。


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