「そうだ、僕は平凡だ……でも……でも……結婚して3ヶ月、僕にはみほちゃんが居る!」
「みほちゃんは僕が守る。絶対に……!たとえ相手が誰でも……何をしても……!」
プロフィール
※1:誕生年は本編開始時を2022年とした時と年齢からの逆算。この年月日は演者と同じ
※2:本編開始時(2022年3月時点)は33歳で、その後11月に誕生日を迎えているため。
概要
平凡な会社員で美容師の妻《みほ》と幸せな新婚生活を送っており、互いに「みほちゃん」「つよし君」と呼び合っている。
キジブラザーに変身する男性で、一見冴えない容姿の持ち主。目立ち易いパーツは眼鏡位の人。
曰く「自分の夢を持てない」「他のメンバーと違って失う物が無い」等とする彼は、自分の代わりに妻の夢に賭けている(他に生き甲斐はないのk……それ以上いけない)。
これは恐らく「雉野つよし“個人”には失う物が無い=自分自身への興味が薄いor嫌悪している」のだと考えられる。
実際にドン2話を見る限り、自他共に「雉野つよしは平凡だ」とする認識に、憂いと諦観を抱いている節がある。
ただし、ドン5話にて「記憶力には自信がある」と断言しており、実際にも翼の手配書の似顔絵と本人の顔をすぐに照らし合わす、同5話ではるかの顔を見て「何所かで見た気が……」と思うや、彼女の盗作疑惑を扱った記事を思い出したり、ドン19話では話題に上がった「田所新造」なる名前に聞き覚えがあり、その微かな記憶を頼りに会社の名刺ホルダーを調べた末に彼の名刺を見つけ出す等、その点に関しては事実なようだ。
サングラスを発見したのがサイクリングショップ、会社には自転車通勤をしている事情等から、自転車が趣味と思われる。
人物像
一見する限りではうだつの上がらない冴えない成人男性。
自己主張にやや乏しい上に、何処か間の抜けた雰囲気を醸すのもあって、頼り無さげな印象が強く、会社でも上司から「嫌になる位平凡」とパワハラ紛いな扱き下ろしと、それに同調する周囲の嘲笑を受けても、最低限の反論さえも出来ない等、気迫に欠ける良くも悪くも穏やかな人物。
そんな性格のせいか、ドンブラザーズにおいても、仲間であるタロウから(決して嘲笑や侮蔑の念はなく、例えで用いただけであるが)「虫けら」呼ばわりされたり、真一、はるか(さらには後に共闘する様になったソノザ)から、メンバー最年長であるにもかかわらず、名字を呼び捨てで呼ばれたり、「雉野はともかく」とあからさまにぞんざいな扱いをされる等、若干軽視されている。
ドン35話ではそうした不満が限界を迎え、敬語口調が取れてタロウたちをまくし立てていた(タロウに対しては度が過ぎた俺様キャラを批判したり、はるかに対しては呼び捨てを注意したり、猿原は無銭飲食を非難されていたりと言っていること自体は正論である。もっとも、この時はアイスコーヒーを掻き混ぜて騒音を起こし、タロウに注意された事が発端なので人のことを言えるタチではないが)。
加えて社畜気質でもあるらしく、ドンモモタロウがアルター化して本体がピクリともしなくなった際には「仕事のし過ぎでしょうか……?」と心配し、いの一番に発言している他、戦いに駆り出される現状を見越して半休を取ったエピソードもある。
極めて普通の感性を持つ為に戦いにも乗り気でないが、一連の言動の裏側では責任感が強く、いざ戦いが始まると(時に狼狽えこそするが)戦いを放棄せず、寧ろ必要なら最優先し応戦する、仲間のピンチには「ケンケンケーン!」の掛け声を上げながら駆けつける等、積極的な姿勢を見せる。
更に、一般市民が命の危機に陥った際には、我が身を挺して即座に助ける等、年長者としての真っ当な正義感や道徳を持ち合わせている。
また、ドン4話で桃井タロウと深く接したのを契機に「自分を変えたい!」と望み懸命に努力する、ドン11話では「自分に頼って来てくれた」として、体調不良に陥った翼のために粉骨砕身の限りに尽くす等、覚悟を決めた時の行動力は目を見張る程である。
上記の頼り無さげな雰囲気も見方を換えれば、窮屈さを感じさせない親しみ易さでもあるため、相手の目線で考えられる人物でもある。
要はドンブラザーズの「優しさ」担当であり、他のメンバー(翼以外)とその素性を認知されて以降は、何かと我が強く諍いが起こりやすい他のメンバー達の間に入って仲裁したり、キレたはるかの制止役を担う等している。
ドンブラーズのメンバー以外にも、ドン4話では無気力な店員にやる気を引き出すのを考えて行動で示し、逆に増長したドン6話の時も暴走した車を止めたり、タロウを勧誘・自分の部下にしようとしたのも、才覚溢れるタロウを部下として扱う「優越感」に浸るではなく、彼の優れた能力を活かさせる「配慮」として誘う等、常に建設的に誰かの為を考えられる能力=タロウとは異なるベクトルの利他思考を持っている。
ただし、反論もままならない弱気な性分故に、やはり鬱屈した思いも抱えており、ドン6話でキビ・ポイントを使った際は、その反動の様に増長してしまった。
加えて極めて普通の感性な分、時として過激な思想を抱えてしまう危うさもある上、なまじヒーローに選ばれ常人を超える力を得て「勧善懲悪」や「正義執行」を一種の免罪符にできるようにもなってしまったため、その思いを実現しようとしてしまう場面もある等、平凡であるが故の危険性も持っている。
なおドンブラザーズを続ける理由については、冴えない自分の誇りと称して誰かのために戦うことが自分を救うことになる、自分のために戦いたいとコメントしている。
人間関係
彼の妻。ドンブラザーズ結成時で結婚3ヶ月なのもあり、熱愛そのものの関係を築いている。
概要にある通り、つよしは愛妻のみほを「自分と違って優秀で素晴らしい人」と見ており、彼女の才覚や功績を素直に喜んでいる。自分にもしもの事があったらと生命保険に加入しており、それを美容院開店の費用にするよう遺書を書いたことも。
それでいてみほも、平凡なつよしを1人の男性として愛し、彼の頼みも嫌がる素振りも見せずに聞いてくれるだけで無く、普段から「カッコ良い」と肯定している。愛の重さ故か、時には「ちょっと情けないつよしくんの方が好き」「何度だって私が励ましてあげる」と自身に依存させるような言動も見られる。
馴れ初めは美容師として働いている彼女の元に毎日通い詰め、毎度愛の告白を繰り返してついに彼女を口説き落としてゴールイン。つよし側からの一目惚れだったそうである。この際、姿こそ見えないが同じ店舗にいた客や店員から拍手を送られている。
一見すると「仲睦まじい夫婦」その物だが、その実つよしはみほの存在がプレッシャーにもなっており、彼女の晴れ舞台等には「自分がいるのはみほちゃんにとって良くない」と卑下し避けようとする。
そして、つよしは「みほちゃんに見合う男になりたい」と奮起するも、ドン6話の様な暴走を招いてしまう事態も……
ただし、逆説的には彼女への愛や「辛い思いをさせたくない」思い自体は紛れも無く本物の為、どんな時でも彼女の意志を決して蔑ろにせず、ドン6話でも彼女が切っ掛けで大きく道を踏み外す前にやり直せており、自己嫌悪と何かと鬱屈した感情のあるつよしにとって、最後の心の拠り所やある種のストッパーとして機能している模様。
しかし、彼女への愛そのものは真っ直ぐな物だが、その比重は過度に大きいのに加えて、上記の自己嫌悪もあいまって彼女に依存している節が見受けられる為、もしそんなみほに危害が及ぼうものなら、心のストッパーが外れた行動を即座に取る危うさが表に出てくる事態になる。その様子は、普段の穏やかな人柄だけを見ていてはとても想像が出来ない位に強烈且つ凶悪な印象を与えるだろう。
つよしの前では隠しているが、実は彼女は獣人であり人間ではない。獣人は人間をコピーするということは、みほという人物は存在していないということになる。
アノーニたちから獣人らを討伐依頼された際、彼女の名前がリストに掲載されていたのだが、つよしは調査ミスだと信じようとはしていなかった。後にタロウ経由で獣人に関する詳細を知らされ、ようやく現状を把握。事実を受け止めきれず放心したり感情を爆発させ当たり散らしたりと、あまりのショックに精神に異常をきたしていた。
かつてお世話になったタロウに礼を言いにきた際、立て篭もり事件を起こした逃亡犯。しかし事件の中で実は根は善人だと知り、翼は冤罪だという話も信じるようになる。
その後も街中で偶然再会することが幾度もあり、愛妻家であるつよしと想い人との再会を願う翼とで彼女の自慢やそれぞれの思い出話トークで盛り上がるほどに良い友人関係を築いていく。
しかし、翼の探す想い人の夏美とみほが外見だけでなく特技等々も酷似していることに翼が疑問を持ち始めたことで、二人の関係にも影が差し……?
なお、つよしは知らないが翼はドンブラザーズの一人イヌブラザーである。つよしどころか他のメンバーまで知らないが。
元の職場がクロクマの事件で一時的に営業できなくなり、短期バイトでフェズントコンサルタントにやって来た青年。他者に厳しいながらもその完璧超人っぷりは自分に自信の持てないつよしには眩しく見えるらしく絶好調で(一時的に)イキリ散らしていた時にはタロウを勧誘しようとしていた。断られるもこの時に起こった事件でタロウがドンブラザーズのリーダー、ドンモモタロウだと知り、それ以後はチームの常識人(?)として彼らに振り回されながら時折舞い込む事件に巻き込まれていく。
翼の起こした立て篭もり事件にで共に巻き込まれた(というより、首を突っ込んできた)自称風流人な無職。
その後は、翼が謎の病気でつよしを頼ってきた際、タロウの指示で真一とはるかが看病の助っ人に参上した。この真一の指示でつよしは「翼の代わりに病院に行き、翼の症状を自分の病気だと誤魔化して薬を処方してもらう」「お粥作りの途中=ガスコンロに火を点けたままヒトツ鬼と戦うタロウのもとに行ってしまい、代わりに急いで火を消そうとしたが失敗し火傷になりかけた上に、強制的にアバターチェンジから戦線復帰するも邪険に扱われた挙げ句「キジ手裏剣」として投擲される」「頭に大量の塩が入った洗面器を乗せて回復祈願に祈らされる」と散々な目に遭う(代理診察の件では自分の体調不良も相談してしまい、一騒動が……)。なお、この看病の途中で大量の塩が入った洗面器を乗せたままキジブラザーとして呼び出されたことからお互いドンブラザーズのメンバーだと発覚するという前代未聞の正体バレとなった。
女子高生漫画家から一転して盗作作家となったことで知られる女子高生。共に翼の立て篭もり事件に巻き込まれた仲。
後に翼の看病の最中、大量の塩が入った洗面器を乗せたまんまキジブラザーとして呼び出されたことからお互いドンブラザーズのメンバーだと知り合い、以降は彼女のバイト先喫茶どんぶらを溜まり場としてヒトツ鬼や脳人関連の事件を向き合う仲間となる。
なお、彼女はつよしが変身するシーンをドン1話の時点で見ているはずだったのだが顔が印象に残らなすぎて看病の一件までつよし=キジブラザーだと気づくことはなかった。
タロウが敗北し消滅状態の時にやってきた新ヒーロー。
ジロウが来たのとほぼ同時期につよしがヒトツ鬼化してしまい、お供を処刑と物騒極まりないことを言い出して他の面々に制止されていた。
その後闇堕ち・暴走などを経ておっかなびっくりしながらも皆と共に戦うように。
なおジロウが一時的にドラゴンファイヤーズのリーダーとなっていた時は、他メンバー同様に鼻が天狗状態になっていた。
実は劇中で最初にキビ・ポイントを使ったのはつよしである。
みほが美容師として賞を受賞した際、自信を持てない彼は式に姿を見せず夜の喫茶どんぶらで悩んでいた。その時にマスターに勧められ、詳細を知らずにキビ・ポイントを使用する。その結果、仕事は絶好調、昇進話も舞い込み、みほにも少し引かれるほどに調子に乗ってしまう。しかし彼女がポイントの反動で倒れてしまい、自分の行動を反省。使ったポイントが少量だったことで大事にはならず、つよしも元に戻った。
ドンブラザーズの正体発覚後(翼除く)は喫茶どんぶらを集合場所にして皆集まるようになるが、その前からも幾度かこの店に足を運んでいたようである。
フェズントコンサルタントでの直属の上司。フルネームは不明。
若干パワハラ気味でキツく当たるため、気弱なつよしは頭が上がらない。
なお、ドン25話ではフレンチレストランの業績アップを失敗して逆に売上低下させたつよしにクビを言い渡すも、今度は自身が解雇される恐怖と優秀な部下を求める感情が暴走してヒトツ鬼化してしまった。その後ドンブラザーズの面々が店を盛り上げ、レストランの業績を回復させたことでクビは取り消しとなる。その際はつよしと「お前は本当にいい部下だな」「部長〜!」と握手をしたり肩を組んだり抱き合ってぐるぐる回ったりと仲のいい姿を見せた。はるかに言わせると「似たもの同士」なのかもしれない。
妻への「愛」故の……
おそらくドンブラザーズ視聴者に「ドンブラザーズのメンバーで一番危うい人物は誰か?」と質問したら真っ先に上がる人物は雉野つよしだろう。他の面々が奇人変人だが根は善人だったのに対し、つよしは平時は平凡で優しい人物だが妻が関わる案件には容赦無い策を躊躇なく使う。根の部分に危険なモノを孕むという、他メンバーとは真逆の一面が多くの視聴者を戦慄させている。
〜以後、ネタバレ注意〜
人物像の項でも述べた「優しさ」とそれに伴う機転だが、同時にその能力はドン8話にて妻に危害を加えた相手には、怒れるままに変身するも「自分の手で倒したい」との独り善がりに陥らず、一心に “妻を守る”一点に終始した結果、ソノイを利用し「消去」という確実な再犯防止の最善手を選択しており、怒りで暴走しながらも、実は「脳人の習性」をも利用して、冷静且つ柔軟に目的達成に専念すると、普段の優柔さが霞む程に、機械染みた冷徹かつ合理的な裏の面も持ち合わせている(この事実から普段のつよしの凡人ぶりは、一般的な“常識”や“社会通念”等が枷になっている結果と思われる)。
これ等の面は決して肯定してはならないが、端的にはつよしもまた真一が口にした「1人の凡人」にして、タロウの様な「超人」では無い事実も示している。また、ドン24話では(他人の母親に息子の演技をする異様な状況ではあったが)「ママは子供の頃から僕の言う事に何でも反対して」と口走っており、一種の毒親持ちの可能性がある。
幼少期から自己否定と抑圧を繰り返して育てられていた結果が、今の自己肯定感が低く弱気な性格なのではないかとも思われる。尚、ドン30話におけるアノーニの調査では「家族はいない」(詳細は不明)と結論づけられており、当の両親との「決別」もできないまま天涯孤独の身に陥った、となれば前述の秘めた狂気についても説得力があるだろう。
彼の行った主な暴挙(ネタバレ注意)
- みほを誘拐した画家を見殺しにする
ここでいう画家とはドン8話にて魔進鬼に変貌した流離の画家・榊のことである。
彼はつよしの愛妻・みほをデッサンモデルとして誘拐。みほはどうにか逃げ出してきたのだが、榊はつよしの前でヒトツ鬼化、そのままドンブラザーズと交戦する。だが戦いの最中、つよしはドンモモタロウの必殺技を妨害し、ソノイの手で榊は消滅させられてしまう。
彼は脳人に倒されると消滅してしまうことを承知の上で、それを利用し妻に危害を加える危険因子を排除させたのである。
当然ながらスーパー戦隊メンバーが(怪人化していたとはいえ)一般人を故意に殺すような真似は前代未聞である。
しかも、その方が確実に始末できるからとはいえ自分の手を汚さず行っているのがなお後味を悪くしている。
- ヒトツ鬼になる
ドン14話・15話にて、みほが怪我させられた怒りでなんとヒトツ鬼化してしまう。ドン8話での一件同様、スーパー戦隊メンバーが自身のエゴで怪人化するのも初である。(※)
しかしその時は、不意打ちでタロウを倒してしまったことを悔いるソノイの案で、あえてヒトツ鬼化したつよしを倒し、脳人が葬った人々を隔離する異空間につよしを送る際にジロウが突入。二人がタロウを救出して脱出できたことを考えると怪我の功名であったのかもしれない……
とはいえ、自身のやらかしたことの重大さを反省し皆に謝罪している。
※理由があって登場時点で怪人になっていた者はいる。彼らが犬ならぬ狼なのは何かの皮肉だろうか?
- またヒトツ鬼になる
ドン33話にてまたもやヒトツ鬼化してしまう。ただしフォローするとすれば、今回は脳人らが『自分達はヒトツ鬼にならないので脳人らの方が上位である』との証拠を見せるため、人為的にヒトツ鬼に変化させられたこと。前回とは違い、今回は他者の思惑でヒトツ鬼にさせられており、つよしと共にはるか・真一もヒトツ鬼になっている。しかしこの二人はすぐに元の姿に戻ったものの、つよしはそのまま暴れ逃走。パワーアップしたドンモモタロウに退治されてようやく元に戻った件についてはフォローしきれない……。
とはいえ、その後再度ヒトツ鬼化して自己嫌悪に陥る彼に対し、タロウはソノイによって額に書かれた「脳人」の落書きが他の二人とは違い既に消えていることを評価している。
- ヒーローショーでもヒトツ鬼になる
シアターGロッソのヒーローショー「キジのおんがえし」にてまたまたヒトツ鬼化してしまう。これまでとは違い、自身に対する劣等感・焦燥感・罪悪感にちなんだ欲望だったとはいえ、他のメンバーに迷惑をかけてしまう。
なお、このヒーローショーの脚本を担当したのは、脚本家としても活動している鈴木氏だったりする。
- みほを略奪した翼を逮捕に追いやる
ドン34話にて、みほが翼と共に逃亡。それを見たつよしは放心状態になってしまう。
しかし、翌日彼は恐ろしさを感じるほどに清々しく朝を迎えていた。
特捜鬼の一件が解決、喫茶店で翼と話し合うのだが突如警察官らに取り囲まれ翼は逮捕されてしまう。事前につよしが通報していたのである。
世間的には翼は逃走犯で、しかも彼はつよしの妻を連れ去っている。そのためこの行為は一般市民の善意の協力であり、妻を誘拐犯から救うための必然の行動である。しかしそれは同時に翼という友への裏切り行為ともとれてしまう(それなら先に裏切ったのは翼の方ではあるが)。
捕まった翼に対し怒りや恨み節ではなく邪魔者が排除できた喜びの笑みを向けていたあたり、つよしの人としての歪みが垣間見える。
なお、またもやつよしは自分の手を汚さない策を行っている。
もっとも、指名手配犯で妻の誘拐犯を警察に通報・逮捕させる行為に対して「手を汚さない」と言うのもおかしな話だが。
ちなみに、「翼と話し合う」と上記したものの、翼は事態についての詳細を一切説明していない。自分の目の前で妻をさらった上に「みほはいない」等と訳のわからない事を申されて冷静でいろと言うのは無理な話であろう。
無論、警察への通報は事前にしていたのではあろうが。
その後、夏美としての記憶を取り戻したらしいみほに出会うと、一緒に帰ろうと強要したために通りかかった警官に捕まり、翼と同じ留置所送りにされてしまう。
相部屋になった留置場で、翼から先述の行動について「恨んではいない」と言われた事で一旦は冷静になる。つよしの方も翼に対する後ろめたさや罪悪感を抱いていた様で、翼に報奨金を半分あげようかと提案するが、犬塚がそれを辞退した事で再び彼への懐疑心が再燃。
「みほちゃんの代わりにお金で我慢しろっていう!」とまたも暴走して翼に食って掛かり、警官に取り押さえられた。その際、みほはいないと再度翼に告げられ「みほちゃんはいます!いますよね!?」と何故か警官を巻き込み同意を求めていた。
愛する人を失い、壊れた雉
こうしてみほを奪われた喪失感に苛まれたつよしは、警察から釈放された後もしばらくの間、会社の上司である山田を始め、ドンブラザーズの仲間たちにも八つ当たりを繰り返すなど、荒んだ日々を過ごしていた。
しかしドン37話冒頭にて、突如「みほちゃんが帰ってきた」と報告し、再び元の穏やかな性格に戻っていた。
だが、同話のエンディングにて、帰宅したつよしがいつものように朗らかに声をかけながら近づいていったそこにはみほの姿はなく、あったのは一体の小さな人形だけだった……
その人形をあたかもみほであると信じて疑わぬ様子で話しかけるつよしの心は、完全に壊れてしまっていたのだった……
ドン38話にてみほが戻ってきた事で一先ずつよしの心は平静を取り戻したようだが、「みほが何故急に戻ってきたのか?」という謎、そして彼女の正体も含めて根本的な問題は何も解決しておらず、その辺りの事情を全て知っている視聴者からは、遅かれ早かれ確実に知る事となろう更に残酷な真実をつよしが知った時、今度こそ彼の心は修繕不可能なレベルで壊れてしまうのではないか?と危惧されていた。
さらにドン40話において、ソノニが獣人の撃退について事実(コピー元が森に囚われている限り獣人は不可殺であり、ムラサメであれば獣人を倒せるが、コピー元が森に囚われている状態で獣人を殺せば、その獣人にコピーされた人間は死ぬ)とは逆の話(獣人を倒せばコピーされた人間は帰ってくる)を翼に吹き込んだ。そのため翼が夏美の帰還を目論み、みほを狙ってくることも想定され、事態は解決どころか更に拗れ、新たな被害を生む可能性が加速度的に高まっていた。
- 更なるヒトツ鬼化、そして……
ドン44話にて、イヌブラザーが夏美を取り戻すためにみほに斬りかかり重傷を負わせた。それによってか、みほはつよしの前から姿を消してしまう。
また、この事件によりイヌブラザーの正体が翼であることが発覚。当然ながらつよしは翼に反発するものの、翼の方もつよしがキジブラザーであると知る。事情を隠す必要がないと判断したのか、みほの正体が鶴獣人であることをようやくはっきりと伝え、ウソをつけないタロウも肯定する。
それでもなお、みほへの愛から暴走するつよしは、みほを探す為に町中を探し回り、探し人のポスターをあちこちに貼っていった。遂にはそのショックの余りに三度目(ヒーローショーも含めれば四度目)のヒトツ鬼化を果たす。
折悪く、獣人の正体を探る為にタロウと翼はジロウと共に遠出しており不在。オニシスターとサルブラザーだけが百獣鬼と化したつよしと戦う事になる。
そこにソノイが現れ、三つ巴の状態に。つよしは自ら巨大化し、「僕がいなければドンオニタイジンにはなれない!」と巨大ロボを召喚できない状態で暴れ回るという暴挙に出る。
オニシスターとサルブラザーを絶体絶命のピンチに追いやったつよしだったが、そこに何故か現れたドンキングオージャーにより倒され、巨大化を解除されてしまう。
そして、そんな中現れたソノシ・ソノゴ・ソノロクに倒され、異空間に転送されてしまった。
みほと夏美、つよしと翼を巡る問題がなかなか解決に至る道を見出せない中、ドン46話にて、タロウが獣人の森に囚われていた人々を解放、これにより獣人は不可殺の存在ではなくなり、みほも猫の獣人達との戦闘中にそれに気づく。しかし、それは鶴の獣人であるみほも同様であり、最期は猫の獣人達に蹂躙され、死亡。その遺体は誰にも看取られることなく、用水路の水面に映った満月(=獣人の森への入り口)に消えた。
その後つよし自身は異空間から帰還。華果村から戻ってきたタロウから獣人に関する詳細を聞かされるも、やはり「嘘だ!」となかなか認めようとはしなかった。真一に「嘘じゃない!タロウは嘘をつけない。わかってるだろ」と諭され、「僕は獣人と結婚してたって言うのか!?」とここに来てようやく(どうにか壊れることなく)事実を受け入れるが、あまりに重すぎる現実に衝撃を受け、失神する。
意識を取り戻した後は誰彼構わず「恋愛問題持ち込むな!」と怒鳴りつけるという奇行に走り、荒み切った精神状態を立て直す間もなく出現した電撃鬼と世界鬼にタロウ共々吸い込まれてしまったが、ソノイ達の活躍により、無事帰還できた。
運命に翻弄され続けた男の迎えた結末とは……
先の一件のおかげで頭が冷えたつよしは、心に深い喪失感を抱きつつも区切りをつけるべく、結婚指輪を外し、会社に退職願を提出。みほと暮らしていたマンションも引き払い、引っ越そうとしていた。退職願を出した際、部長から邪険に「ああ、辞めろ辞めろ」と言われるも、直後に「お前がいないと寂しいよ」と慰留される。これはみほ以外にも彼を認めて必要としてくれる人がいる、ということの証明であり、普通なら中盤あたりで持ってきて彼の自己肯定感と成長を促すきっかけになり得た描写なのだが、最終回の一話前に持ってくるあたりが実にドンブラらしい。
そんなつよしを案じた翼は、彼なりにつよしの心の区切りをつけさせようとしたのか夏美と引き合わせる。しかし夏美もまた獣人に捕らわれていた頃に見ていた夢=”みほ”としての記憶を薄っすらと覚えており、さらに翼が警察に追われていること、そうなるに至った事情をきちんと夏美に説明していないこと、夏美自身が本当は安定した生活を望んでいることなどから、その心は少しずつ翼から離れ、つよしに近づきつつあった……
迎えた最終回。タロウから「ドンブラザーズになって後悔していないか」と聞かれ、まっすぐに「ドンブラザーズは僕の誇りです!」と答えるつよし。続けて「誰かを助ける為に戦うことで、自分を救える気がする。いいですよね、自分の為に戦っても」と笑顔を向ける。その笑顔は、かつて翼を逮捕させた時のような厭らしさは微塵もない、過去を吹っ切り、自分の足で自分の人生を歩き出すことを決めた「大人」の晴れやかな笑顔であった。
彼がようやく自分を確立した際にカーテンを開けるシーンは、ドン8話のラストシーンでカーテンが自分に影を作っていた演出と対照的である。
そしてソノヤ・ソノナとの戦いを終え、みほとの思い出の詰まったかつての居場所から引っ越そうとしたまさにその時、かつて愛した人に瓜二つの女性から「一緒に夢の続きを見ませんか」と声をかけられるのだった……
こうして、数奇な運命に翻弄され続けた男の物語は巷で危惧されていたような救いのない結末ではなく、「新しい相手と巡り会い、その相手とともに紡いでいく明るい未来の可能性」を感じさせるという、ハッピーエンドで幕を閉じた。
本編後の動向
夏美と明確に付き合っている様子が描かれた。定期的に翼と会っていることに、彼女は快く思っていない模様である。
チキューに飛ばされた後、ゴッカンにてラクレス・スズメ夫婦と対面。この際、百獣鬼ングの時に守護神であるキングオージャーに倒されたことがトラウマになっていることが判明。
余談
- 苗字の由来はキジ。勤める会社名も「キジ科の鳥」「キジの肉」を意味する英単語「pheasant」から来ている。
- これまで、45作の歴史で人であれ、人外キャラであれ、女性がずっと演じ続けてきたピンクで初めての男性キャラであり、情報量の多い今作の内の大きなトピックになり「男性ピンク」がトレンド入りを果たした。
- 当の鈴木氏からはピンクの戦士を演じるのについて、「あまりプレッシャーみたいなものがありません」との、意外な言葉が飛び出した。また、「他の現場で、例えば“医者役です”などと言われた場合と同じような感覚で、今回“ピンクのヒーローです”と言われたような心境なので、プレッシャーがないというか、いつもと同じようなプレッシャーを感じています」と冷静に理由を説明しつつ、「初めて男性がピンクをやる反響を得るのは、この先この世界で僕しか味わえないのだと思うとうれしい」と初の男性ピンクになれたのが大いに嬉しい様子。
- だが、いざ蓋を開けてみると前述の初の男性ピンク要素が霞むほどの濃い性格に目が向く。終盤になり、1時間前のシリーズの次作で同じような属性を持ったキャラクターが発表された時に「そういえばこっちも男性初だった」と思い出した視聴者もいた様子。
- 本編での行いから、それまで女性のみという法則を破った男性キャラは警戒されるようになってしまった。これもドンブラ中毒によるものなのか……?
- 演じる鈴木氏は1988年生まれの33歳であり、メンバー内最年長及び唯一の昭和生まれである。
- 30代に設定された初期メンバーは有働ノブハル以来。
- 久々のメガネをかけたメンバーであり、人外であれば前作のブルーンもいたが、人間に限るとトカッチ以来である。
- また、戦隊と直接関係無い一般の会社に勤めるサラリーマンだったり、レギュラーメンバーで最初から妻帯者なのも極めて珍しい。
- 犬塚翼とは、名前と苗字を入れ替えるとモチーフの動物の特徴と矛盾しなくなる。
- 各エピソードを知った上で振り返ると、この名前の組み合わせこそ、翼とは因縁という名の縁があることを示唆しているようにも見える。
- ただし、脚本家の井上敏樹は登場人物の命名に深い由来やあれこれ伏線を込めるといったことを好まないとも過去に発言しているため、偶然の一致の可能性も否定できない。
- 雑誌「暴太郎戦隊ドンブラザーズとあそぼう!」では、つよしは「ふだんはおだやかで、おくさんをあいしているやさしいだんなさんだよ。」と紹介されているが、つよしの内面を知っている視聴者からすると、洒落にならない文章となっている。
- ドン19話で所持していた名刺の中に陣マサトと浅見竜也の名前があった。職業もマサトがエンジニア、竜也が空手指南で原典と同一。
- 何度もヒトツ鬼化を繰り返しているが、その度に新キャラや新戦力に倒されるというオチを迎えてしまう。
- メタ的には、新戦力を劇的にデビューさせたいのに既存戦力に出張ってもらっては困る、ということなのだろうが……
- 尚、つよし役の鈴木氏もその扱いを認識しており、「新キャラ出る度に僕で試し切りするスタイルなんなん?……身に余る光栄です」とぼやきつつも喜んでいたり、「台本貰った段階で推測できるようになった」と見抜いたりしている。
- シネマトゥデイのインタビューでも新キャラが出るたびにやられる役かな?という心境を語っている。おかげで最終回後にもかかわらず「試し斬りの雉野」「ヒトツ鬼界隈(後述)」という新たなパワーワードを生んだ。
- プロデューサーと脚本家が同じ作品『仮面ライダー555』の登場人物である草加雅人/仮面ライダーカイザとは愛する者に狂気的な偏愛を抱えたヒーロー、愛する者に危害を加える者には容赦しない、目的を遂行すると邪悪な笑みを浮かべる等の共通点があり、放送当時はつよしの末路を心配する声も多数あった。なんなら中の人が反応したばかりか公式サイトでも「令和の草加〇人」と書かれた事もあり、更にはTwitterで笑顔のコラボも披露した。ただし、つよしは最終的には自分を見つめ直し生き残る事ができた。また、ドンブラザーズ終盤には俳優が同じ人物が登場した。
- 週刊少年マガジン連載作品『戦隊大失格』のアニメ化が決定しトレンド入りした際、タイトルのせいで「またつよしがやらかしたのではないか」と勘違いする声が相次いだ。つよし役の鈴木氏も自身のTwitterにて触れている。
- 次回作のキングオージャーには久々に初期メンバーにピンクが不在であったことから、一部で「つよしがやらかしたせい」とネタにされた。
- キチキギスとは「キジモチーフ」「男でピンク」という共通点を持つことから早々比較ネタが上がった。鈴木氏もその存在を認識しているらしく自身のTwitter上で反応していた。
関連タグ
ヒーロー番組見すぎのヒーローマニアですか?:ドン14話での迷言
大野稔:何度もヒトツ鬼化した人物。二人の面識は無いはずなのだが、ドン49話において対面した際に初対面であるはずのつよしが「あなたは……!」と驚いている。これについては演じた鈴木氏曰く「ヒトツ鬼界隈の中での有名人だから知ってる、と思って芝居してます」との事。