ドイツの妖怪
どいつのようかい
概要
ドイツおよびドイツ語圏で伝承されている妖怪で、日本においては黒い森に潜むという人狼や魔女、夢魔などのイメージが強い。
ドイツはローマ帝国とライン川やドナウ川を境界として対立していた地域「ゲルマニア」に紀元前から住んでいた諸民族・ゲルマン人が中心となり成立した国家で、北ゲルマン人と同じく北欧神話として知られる信仰を持っていたが、キリスト教化によって神格や精霊たちは、悪魔や魔物などの存在として語られるようになっていった。
また上記の魔物が棲むという黒い森「シュバルツバルト」や、魔女や悪魔が宴のために「ブロッケン山」に集まるワルプルギスの夜などが良く知られ、東部地域においては隣接している、古くはネウロイと呼ばれた人々が住む東欧の伝承の影響も大きいと考えられている。
近代になりゲーテが戯曲「ファウスト」を、グリム兄弟が各地の民話を収集した「グリム童話」を発表。魔性を題材としたホフマンの「砂男」や、H・H・エーヴェルスによる「吸血鬼」「アルラウネ」などの幻想的な小説なども著され以後の創作に大きな影響を与えている。
20世紀のナチスドイツ政権においては民族主義が強くなり、北欧神話をモチーフにしたワーグナーのオペラが広く上演され、国家主導でオカルト研究機関アーネンエルベを設立し、軍事教育の中においてもルーン文字が導入されるなどオカルト色が強く見られたのだという。
世界有数の工業国家であり、高度な医学や科学技術を持つ半面、そういった神秘主義的な文化を持つ国というイメージが持たれており、第二次世界大戦後には各種創作においてナチスドイツをモデルとしたオカルト的なキャラクターが量産されることになった。
ただしナチス礼賛にあたる行為は、創作であろうともドイツ本国では法で禁止されており犠牲となった人々も多いことから、その点は自重が必要である。
なおドイツ自体が内陸国家だったのでドイツ語は周辺国家で用いられるのに止まっているが、その語感の強さは中二病心をくすぐるのは事実で、やはり各種妖怪キャラクター名に採用されている。
一覧
この項ではドイツ語文化圏のオーストリア、スイスの妖怪についても記述する。
ポーランド、チェコ共和国、ハンガリーについては「外国の妖怪」「ロシアの妖怪」、ゲルマン神話の神格については「北欧神話」を参照。
ドイツ
- アウフホッカー(Aufhocker):「飛び掛かる者」という意味で、動物に化けたり姿を消して人を襲う悪魔。
- アグネス・エルツ(Agnes Eltz):エルツ城に現れる女騎士の幽霊。
- 嵐の精/ストーメン(Stormen):嵐を起こす精霊で、町の店の看板を入れ替えるなどの悪戯をする。
- アルラウネ(Alraune):刑死者の体液が垂れた地面で育つ
- イル・リヒト:様々な理由で天国や地獄に行けない魂が変じるという鬼火。
- ヴァッサーガイスト(Wassergeist):水の精霊の総称。
- ヴァッサーニクセ(Wassernixe):グリム童話『水の精』に登場する水の精。
- ニッケルカーター(Nickelkater):水の精霊の一種。
- ニクス/ニクシー:水の妖精。
- バッハバルバラ(Bachbarbara):水の女精霊。
- ホウラート(Hourad):水の精霊の一種。
- ヴィルデ・フラウ:長い髪をした美しい女性の精霊。
- ヴェックマン(Weckmann):人型のパン菓子。
- ヴェルトフント(Welthund):“世界の犬”という意味。単眼の巨大な犬であり不作や疫病をもたらす。
- エルヴェトリッチ/エルヴェトリッチュ(Elwetritsch, Elwedritsch, Ilwedritsch):プファルツ地方に棲むとされる怪鳥。鹿の枝角、女性の乳房、非常に長い嘴などを有する鶏のような怪鳥で羽根の代わりに鱗が生えている。
- エルトビベルリ(Erdbiberli):地下や樹下に住んでおり宝を守っている小さな大地の精霊。
- キンダーフレッサー/キンダーシュレッカー/シュヴァルツェマン:ブギーマンのこと。
- クネヒト・ループレヒト(Knecht Ruprecht):聖ニコラウスの従者の一人で、悪い子に罰を与える。
- クラバウターマン(Klabautermann):バルト海・北海に伝わる、船乗りたちを助けるという船に宿る精霊。
- クランプス(Krampus):クリスマスの怪物。
- クリストキント(Christkind):クリスマスの天使。
- グルーシュヴァンツ/グリューシュヴァンツ(Gluhschwanz, Glühschwanz, Gluswans, Glûswanz oder Gluuschwanz):光る尾を持つドラゴンのような幻獣で、魔女の家に煙突から入り込みミルクか金貨をもらいにくるが、断ると煙突に火を着けてしまう。
- シュトルヒ(Storch):ドイツ語でコウノトリのこと。ドイツを含めたヨーロッパの国々にはコウノトリが赤児を運んでくるという伝承がある。
- シュトレッケバイン:死神を意味する表現の一つで意味は「伸ばした脚」。
- シュラート(Schrat):樹木の精霊。
- ツヴェルク(Zwerge):北欧神話のドヴェルグを起源とした小人でドワーフと同一視される。
- トイフェル(Teufel):ドイツ語で悪魔のこと。グリム童話では『悪魔と悪魔のおばあさん』『悪魔の煤けた相棒』『神様の動物と悪魔の動物』『金の毛が3本生えた鬼』などに登場する。
- ザントトイフェル(Sandteufel):砂の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- シュタオプトイフェル(Staubteufel):埃の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- ゼートイフェル(Seeteufel):海の悪魔という意味でありアンコウのこと。
- トイフェルスツンゲ(Teufelszunge):悪魔の舌という意味でありサトイモ科の植物コンニャクのこと。
- トイフェルスフィッシュ(Teufelsfisch):悪魔の魚という意味。オニオコゼ族(Choridactylini)に属する魚類の総称。
- ドルントイフェル(Dornteufel):棘の悪魔という意味でありモロクトカゲのこと。
- ネーベルトイフェル(Nebelteufel):霧の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- フォイアートイフェル(Feuerteufel):火の悪魔という意味であり火災旋風のこと。
- ホイトイフェル(Heuteufel):干し草の悪魔という意味であり塵旋風のこと。
- ナハトクラップ(Nachtkrapp):夜のワタリガラス。南ドイツやオーストリアに伝わる子脅しの怪物。
- ノッケン:北欧神話起源の水の精霊で「川の子馬」といわれる。
- プッツモメル:フードを被った悪戯妖精の女の子。
- バウムエーゼル(Baumesel):木の驢馬。森に棲む妖怪。
- バーカウフ(Bahkauv):アーヘンの鱗のある子牛の姿をした魔物。類似したものがオランダやベルギーなど広域に伝わる。
- ハーメルンの笛吹き男/パイドパイパー(Pied piper)
- ハンス・トラップ(Hans Trapp):騎士出身の聖ニコラウスの従者で、悪い子に罰を与える。
- ビーアエーゼル(Bier-Esel):ビール驢馬。
- ビーアモルヒ(Biermolch):ビールのイモリ。ドイツ南西部のシュヴァーベンに伝わる妖怪。
- ピコリュス/ピクラス/パトロ/ピコッロス/ピコッルス/ポックルス(Patollo, Pikollos, Pikollus, Picollus):『地獄の辞典』で紹介される古代プロシア人が崇めたという魔神。ピ「フ」リュスと誤植されることも。
- ビルヴィス(Bilwis)
- ヴァイツェンオーパー/麦じいさん(Weizen Opa)
- ヴァイツェンオーマー/麦ばあさん(Weizen Oma)
- フォイアープッツ/ブリュンリン/グリューエンダー/ツスラー/フォイアーマン(Feuerputz, Feurputz, Brünnling, Glühender, Züsler, Feuermann):高温で光り輝く骸骨、火柱の中の黒い人間、燃えている騎手、燃えている犂使い、火の玉、流星などの姿をした幽霊。
- フリューゲルシュティーア(Flügelstier):有翼の牡牛。福音記者ルカの象徴。
- プルヒ(Pulch):ドイツ西部の都市トリーアに位置するカンマーフォーストの森に住む精霊。木を盗んだり傷つけたりした人間を懲らしめる。
- ブロッケンの妖怪(a specter of Brocken)
- ペーターメンフェン:ジュベリーン城に住む髭を生やした騎士のような格好の小人。
- ベルツニッケル(Belsnickel):毛皮で身を包み長い舌を持った、子供にお菓子か罰を与える訪問者。
- ボックマン(Bockmann):牡山羊の男という意味でありサテュロスのような姿の妖怪。森の中に住んでおり森に入っていきた子供たちを怖がらせる。
- モース・ロウテ/モース・フロイライン/苔人/苔女(Moosleute, MoosFräulein):森に棲む苔を身に纏った不思議な人々。毛むくじゃらで服は着ていないという。
- ヴァルドロウテ(Waldleute):「森の人」と呼ばれる森などの自然の妖精。
- ヴァルドシュラート/シュラート(Waldschrat, Schrat):森のゴブリンといった意味の妖精。
- ヴァルドウィボ/ヴァルドフロイライン:苔女の別名で野生の妻、野生の乙女という意味。
- ブッシュグロスムッター:「小さな木の祖母」という意味の名の苔人の女王。
- ブッシュヴァイヒェン/ホルツヴァイヒェン:「小さな木の女」と呼ばれる背中に木で出来たかごを背負った皺だらけの老婆姿の妖精。
- ホルツヴァイバー:「小さな木の貴婦人」という意味で困っている人には焼いたケーキを与え、森の中を霧で覆う力を持つ。
- ホルツロウテ(Holzleute):木の民と呼ばれる服を着た森の妖精。
- リュッテルヴァイバー/リュッテルヴァイヒェン:ワイルドハントに獲物として追われるという「震える女」と呼ばれる苔女。
- リーゼンラート(Riesenrad):観覧車のこと。ベルリンのとある遊園地の観覧車は幽霊観覧車であり、遊園地は閉園してもう動かないはずなのに幽霊観覧車は今も動き続けている。
- リューベツァール/リベザル(Rübezahl)
- リンドブルム(Lindwurm):雷鳴や流星の化身ともいわれるワイバーン。
- レーヴェンメンチ(Löwenmensch):ホーレンシュタイン山のシュターデル洞窟で発見されたライオン人間の象牙彫刻。鬣が無いのでレーヴェンフラオ(ライオン女)と呼ばれていたが、当時のヨーロッパに棲んでいたホラアナライオンは目立った鬣を持っていないので必ずしも女性とは限らない。なので現在はレーヴェンメンチ(ライオン人)と呼ばれている。
- ローレライ(Loreley):ライン川の難所である同名の岩山に棲む精霊。
オーストリア
- アルバー(Alber)
- ヴィレンドルフのヴィーナス/ヴェーヌス・フォン・ヴィレンドルフ(Venus von Willendorf)
- ヴィルデ・メナー(Wilde Manner):チロルの山の中に住む巨人で、嵐で森の木が倒れるのは彼が暴れたためである。
- エッツィ/アイスマン:イタリアとの国境にあるエッツ峡谷で発見された5300年前の狩人の氷漬けミイラ。発見関係者が次々と不幸になり、呪いであると噂された。
- カスマンドル/ケースマンテル(Kasmandl):白髪でしわくちゃな小人で、高山にある酪農家の作業小屋に冬の間住み着くが、4月24日の聖ジョージの日に大きな音で追い出される。
- 殺人ベンツ/死神ベンツ:サラエボ事件で犠牲になった皇太子夫婦が乗っていた真っ赤なベンツで、その後の持ち主は次々と死ぬなど不幸に見舞われた。
- ハーバーガイス:バイエルン州に伝わる山羊の頭、鳥の身体、三本脚の穀物の霊。
- プッツ(Putz):森に住む土の精で人に金貨などの宝物を与えるが、持ち帰ると木の実に変わってしまう。
スイス
魔女
- ヘクセ(Hexe):春の謝肉祭「ファストナハト」に登場する魔女。魔女全般も意味する。
- ヴァルプルギスナハト/ヘクセンナハト(Walpurgisnacht,Hexennacht):魔女たちがブロッケン山で祭りを行うという夜。
- アリオルムナス:『地獄の辞典』で紹介される、ゴート族の王フェリメルに追放された伝わる魔女。
- イルゼ:ハルツのイルゼシュタインに住んでいたという美しい王女で、嫉妬した魔女によって岩山に閉じ込められてしまったが、秘密の扉を通り一年に数日だけ水浴びのために外へと現われる。
- ヴァーテリンデ:ターレのボーデ渓谷に住んでいた魔女で、薬草を摘みにきた乙女に襲いかかったが、十字を切り神の名を叫ばれた瞬間に強風に吹き飛ばされ岩にぶつかり死んだという。
- ヴェーヌス:騎士タンホイザーを誘惑して山へ連れ去ってしまった美しい魔女。
- フラオ・ホレ/フラウ・ホレ/ホレおばさん/ホレのおばさん(Frau Holle)
- ヘルゼーエン(Hellsehen):千里眼のこと。転じて予言者や魔術師のことを指す。
- ブラマ/ザバ/トレンドゥーラ:巨人族の長クルコの三人の娘で、トレンドゥーラのみキリスト教に改宗せず暴虐であったために天罰の落雷で穴だけ残し消え失せた。
人狼
夢魔
不死者
錬金術師
- アルヒィミスト(Alchemist)
- サンジェルマン伯爵:終の地がヘッセンであると伝わるヨーロッパ中を騒がせた怪人。
- パラケルスス:賢者の石を造りだしたとされる伝説の錬金術師。
- ファウスト
- メフィストフェレス(Mephistopheles):ファウストに召喚されたと伝承される悪魔。ゲーテの戯曲『ファウスト』で有名になった。
- ヘニッヒ・ブラント
- ベルトルト・シュヴァルツ
- ヨハン・クンケル
- ヨハン・ベッヒャー
- ヨハン・フリードリッヒ・ベトガー
グリム童話
- アインオイクライン/アイノイクライン(Einäuglein):『一つ目、二つ目、三つ目』に登場する眼球が一つの女性。
- ドライオイクライン(Dreiäuglein):『一つ目、二つ目、三つ目』に登場する眼球が三つの女性。
- エーアトメンネケン(Erdmänneken):『土の中の小人』に登場する小人。パーダーボルン地方の話。
- グローセ・ベーゼ・ヴォルフ(Große Böse Wolf):『赤ずきんちゃん』に登場する狼。
- ゴルトエーゼル/ゴルデーゼル(Goldesel):『おぜんやご飯のしたくと金貨を生む騾馬と棍棒袋から出ろ』に登場するロバ。荷車を引いたり袋を運んだりはしないが金貨を生み出す力を持っている。
- ゴルデネ・フォーゲル/黄金の鳥(Goldene Vogel):『黄金の鳥』に登場する鳥。
- シュヴィムハビヒト(Schwimmhabicht):泳ぐ鷹。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は鷹が当然のようにライン川を泳いで渡るのを見たという。
- シュヴィンミュールシュタイン(Schwimmmühlstein):泳ぐ石臼。『ディトマルツェンのほらばなし』によれば、この話の語り手は金床と石臼が美しくゆっくり静かにライン川を泳いで渡るのを見たという。
- シュテルンターラー/星の銀貨(Sterntaler):『星の銀貨』に登場するアイテム。天上の星々が白銀色の銀貨になって降ってきたもの。
- ショレ(Scholle):『かれい』に登場するカレイ。魚たちの法と正義を執行する王を決める競争に参加したが、カレイは泳ぐのが遅かった。ニシンが一番速かったたと聞いたカレイは「裸のニシン(De nackte Hiering?)」と叫んだため、その罰として口を斜めに付けられてしまった。他の魚たちはニシンをHeringと呼んだのに対し、カレイはニシンを東フリジア語でHieringと呼んでいた。
- カルプフェ(Karpfe):『かれい』に登場するコイ。これといった見せ場の無い脇役。
- グリュントリン(Gründling):『かれい』に登場するヨーロッパカマツカ。競争では魚たちの中で三番目に速く、その泳力はパーチとコイを凌駕するがニシンやカワカマスには及ばなかった。これといった見せ場の無い脇役。
- バルシュ(Barsch):『かれい』に登場するパーチもしくはスズキ。競争では魚たちの中で四番目に速く、その泳力はコイを凌駕するがニシンやカワカマスやヨーロッパカマツカには及ばなかった。これといった見せ場の無い脇役。
- ヘヒト(Hecht):『かれい』に登場するカワカマス。競争開始の合図を担当し、一番乗りで矢のように泳いだが、後発のニシンの泳力がそれ以上だったため一番にはなれなかった。
- ヘーリン(Hering):『かれい』に登場するニシン。魚たちの法と正義を執行する王を決める競争で一番だったため、おそらく王になったと思われる。魚たちの間では水中を最速で泳いで弱い魚を助けることのできる魚が王に相応しいとされていた。
- ジルバーナーゼンユンゲーゼル(Silbernasen Jungesel):銀の鼻をした仔驢馬。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は銀の鼻をした仔驢馬が二本足の兎を追いかけるのを見たという。
- ツヴァイゲブラーテネヒューナー(Zwei Gebratene Hühner):ドイツ語で“二羽のローストチキン”という意味。『ディトマルツェンのほらばなし』によれば、この話の語り手は二羽のローストチキンが逆さま(胸は天国に向けて背中は地獄に向けた状態)になって素早く飛んでいるのを見たという。
- テプフヒェン/小さい鍋さん(Töpfchen):『おいしいおかゆ』に登場する小さな鍋。この鍋に「テプフヒェン、コッホ(小さい鍋さん、煮て)」と言うと甘い黍粥を炊いてくれ、そして「テプフヒェン、シュテー(小さい鍋さん、止まって)」と言うと炊くのが止まった。
- ファラダ(Pferde):『がちょう番の女』に登場する人語を話せる馬。斬首され頭だけになってもがちょう番のリーゼルに助言を与える。
- プフルーク(Pflug):ドイツ語で犂(英語ではプラウ)のことであり牛や馬などの動物に引かせる農具。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は犂が動物の力を借りずに独りでに大地を耕しているのを見たという。敢えてこの犂を通常の犂と呼び分けるなら、レーベンデプフルーク(Lebende Pflug)だろうか。
- フラオ・フュクシン(Frau Füchsin):『奥様きつねの結婚』に登場する牝狐。グリム兄弟の兄ヤーコプ・グリムはこの話を幼少期に聞いており、最も好きな話の一つとしていた。
- ノインシュヴェンツィーガーフクス(Neunschwänziger Fuchs):フラオ・フュクシンの夫だった尻尾が九本ある古狐。
- フリーゲ(Fliege):ドイツ語で蝿のこと。『ディトマルツェンのほらばなし』によれば、とある国では蝿が山羊と同じくらい大きいという。ドイツ語で巨大蝿はリーゼンフリーゲ(Riesenfliege)という。だが、山羊ぐらいの大きさの蝿が一般的に見られるような地域ではわざわざ巨大とは言わずに単にフリーゲと呼ぶのだろう。
- フロッシュケーニッヒ(Froschkönig):『かえるの王さま』に登場する蛙。
- ボーネ(Bohne):『わらと炭とそら豆』に登場するそら豆。
- ミュッケ(Mücke):ドイツ語で蚊のこと。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は二匹の蚊が橋を建設しているのを見たという。
- リンデ(Linde):ドイツ語で菩提樹のこと。『のらくら国のお話』によれば、この話の語り手は大きな菩提樹にホットケーキが生えているのを見たという。敢えてこの菩提樹を通常の菩提樹と呼び分けるなら、ハイセフラーデンリンデ(Heiße Fladen Linde)だろうか。
- ルンペルシュティルツヒェン(Rumpelstilzchen):グリム童話に登場する小人。
文学作品
- ヴィルジナル/氷の女王:『英雄の書』に登場する妖精。
- ヴィルヘルム(Wilhelm):物語詩『レノーレ(Lenore)』に登場する男性。死後に生ける屍となって恋人レノーレの元へやってきた。
- オリンピア(Olimpia):E.T.A.ホフマンの小説『砂男』に登場する自動人形の女性。
- ガビルーン/ガンピルーン(Gabilûn, Gampilûn):叙事詩『王女クードルーン』に記述がある怪物。龍のようであり、猛禽類と関係があるらしいが、叙事詩の作中でもその姿を現していないため詳細は不明。
- カリガリ博士(Das Cabinet des Doktor Caligar)
- ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン/鉄腕ゲッツ
- コリントの花嫁
- ザミエル:カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲のオペラ『魔弾の射手』に登場する魔弾を造りだした悪魔。
- フライクーゲル:狙ったところに必ず当たるという魔法の弾丸。
- ちびっこ吸血鬼(Der Kleine Vampir)
- もじゃもじゃペーター(Der Struwwelpeter):不品行の結果、不幸な目に遭う者、遭わせる者たち。
- ニコラス/トール・アグリッパ(Tall Agrippa):人種差別する者に罰を与える者。
- シュナイダー/グレイト・トール・テイラー(Schneider,Great tall tailor):親指を吸う癖が直らない者の指を切る仕立屋。
- バルトアンデルス
- ハルピーン(Harpîn):ハルトマン・フォン・アウエ『イーヴェイン』に登場する巨人。獅子の騎士イーヴェインを馬上に倒れ伏させる怪力の持ち主。
- フッケバイン(Huckebein):児童文学『ハンス・フッケバイン』に登場する悪戯カラスで、名前の意味は「醜い脚」。戦闘機Ta183の愛称や『スパロボ』に登場するロボットの名として凶鳥と訳され知られる。
- フランケンシュタインの怪物:医学生ヴィクトル・フランケンシュタインが、知的好奇心により死体を継ぎ合わせて創造した怪物。
- ブルトガング:『ディートリッヒ伝説』に登場する英雄ハイメが持っていた剣。
- ラウリン(Laurin):小人の王。叙事詩の英雄ディートリヒ・フォン・ベルンを魔法の指輪と腰帯で圧倒した。
その他
- アインホルンリーゼ/一角巨人(Einhornriese):昭和期の怪奇系児童書、佐藤有文の『世界妖怪図鑑』で紹介された妖怪。頭の上に一本角を生やした身長6mの人喰い鬼。
- アハツィヒ・アイン(Achtzig Ein):ドイツ語でアハツィヒは80、アインは1という意味。パブリックドメインの創作企画ゆらぎの神話に登場するやおいの女神。
- ヴァンピーアスケレット/吸血ガイコツ(Vampirskelett):昭和期の怪奇系児童書で紹介された妖怪。佐藤有文『ドラゴンブックス 恐怖と怪奇の世界 吸血鬼百科』によれば、ドイツの吸血ガイコツは骸骨の姿をした吸血鬼だという。鏡に映せば骸骨の姿である事が分かるが、肉眼ではどんな女性でも好きになってしまうほどの美青年に見えるといい、女性と接吻しながら血を吸い取り魂まで奪ってしまう。
- カスパー・ハウザー(Kaspar Hauser):16歳まで幽閉されていたといわれる孤児で、1828年5月26日に発見されたがその正体は不明のまま暗殺された。
- キラーコンドーム
- クーヘンの妖精
- シュレディンガー・カッツ/シュレーディンガーの猫(Schrödingers Katze):量子力学的記述において、生きている状態と死んでいる状態が重なり合って存在している猫。
- グラト:昭和期の怪奇系児童書で紹介されたドイツの悪魔。蜘蛛の脚だけの姿をしており、毒液を出してあらゆる病気を撒き散らす。
- ゲルマニア
- チルバン:昭和期の怪奇系児童書で紹介されるスイスの緑色の魔物で、牧師に化けて人々の油断を誘う吸血鬼であるが食べ物を食べない、足跡を残さない、十字架を持たないので見分けがつく。
- デュッセルドルフの吸血鬼
- ドドンゴ(Dodongo):姿が見えない悪魔ベヘモトの乗騎魔獣。
- ドルド:昭和期の怪奇系児童書で紹介された妖怪。佐藤有文『ドラゴンブックス 恐怖と怪奇の世界 吸血鬼百科』によれば、ドイツの吸血鬼ドルドは午後11時から午前3時頃に就寝中の人間の胸にのしかかり血を吸うといい、それに気づいて声をあげようとしても全身が痺れて動けないという。一週間ほど血を吸われ続けると完全に手遅れとなり死ぬしかなくなってしまう。
- パウル君
- バプステーゼル/教皇驢馬:宗教改革時にマルティン・ルターらのカトリック批判のパンフレットに描かれた、堕落した教皇と教会組織を揶揄した魔物。
- ミュンヒカルブ/メンヒスカルブ/修道士仔牛:上記のものと同じく修道士を揶揄した魔物。
- クラウチャン(Krautchan)
- プッチちゃん(Putsch-Chan)
- ポーランドボール
- AfDちゃん(AfD-chan)
- ブラックサンタ
- 吉原千恵子/ヨシワラチエコ(Yoshiwara Chieko):チェーンメールの中で語られる怪談に登場する四歳の少女の幽霊。ナチスの残党が運営する研究所ヒューマンファームで生み出された人造人間だといい、様々な優秀な人物の遺伝子を有する。だが、その出自が祟ったのか誘拐犯に連れ去られた末に殺害され、たった四歳でこの世を去った。その亡骸は誘拐犯の手によって山の中に埋められたが、後にそこに建設された電波塔の電波を通じて念を送ることで事件の真相を発信し、それを広めることで誘拐犯とその子孫を探し出してからの復讐を目論んでいる。
- ラウヒェン(Rauchen)
- レヴェラー/ボーデンドリュッカー(Leveler, Bodendrucker)
- 腕章の少年/アルムビンデユンゲ(Armbindejunge):洒落怖で語られた怪談に登場するナチスの腕章をつけた少年。大阪府の吹田市で夕方から夜にかけてこの腕章の少年が街を徘徊すると噂された。その少年はナチスの腕章を着け、左手に警棒を持ち、片足が義足で、3~5匹の犬を連れている。目撃談によれば、異様に白い肌、痩せこけた頬、異様な光を帯びた鋭い眼光、枝のように細い腕という容姿だったという。
UMA
- アーヘノザオルス/アーケノサウルス(Aachenosaurus):アーヘンのトカゲという意味の幻の恐竜。正体は樹木の化石であった。
- ヴィルダーマン/ウォーモセルバティコ:欧州でワイルドマンとして知られる野人。
- ヴォルパーティンガー(Wolpertinger)
- ラッセルボック(Rasselbock)
- グーグル・アース・エイリアン・ジャーマン・バグ:衛星写真に写った全長40mほどの巨大昆虫。
- タッツェルブルム(Tatzelwurm)
ドイツ軍系
参考
外国の妖怪のドイツ語での訳名
ギリシャ神話やヨーロッパ全域の伝承含む。
- アイザーネユンフラオ(Eiserne Jungfrau):鉄の処女のこと。
- アインホルン(Einhorn):ユニコーンのこと。
- アオフライスムントフラオ(Aufreißmund-Frau):口裂け女のこと。
- インゼクテンメンチ(Insektenmensch):虫人のこと。
- ウンゲテューム(Ungetüm):怪物のこと。
- エクセンメンチ(Echsenmensch):リザードマンのこと。
- ガイスト(Geist):幽霊、お化けのこと。
- ポルターガイスト(Poltergeist):騒霊のこと。
- グライフ(Greif):グリフォンのこと。グリム童話『怪鳥グライフ』にも登場する。
- ゲシュペンスト(Gespenst):幽霊・妖怪や化物などの総称。ゲーム『ヒーロー戦記』や『スパロボ』では黒いロボットの名として採用されている。
- コボルト(Kobold):コボルドのこと。
- ザントヴルム(Sandwurm):サンドワームのこと。
- シャッテンフラオ(Schattenfrau):影女のこと。
- シュネーフラオ(Schneefrau):雪女のこと。
- シュネーメンチ/シュネーメンシュ(Schneemensch):雪男のこと。
- シュライム(Schleim):スライムのこと。一般的には粘液という意味であり、例えばナーゼンシュライム(鼻の粘液)という単語が格好良いドイツ語として紹介されることもある。
- シュラインメートヒェン/シュライムメートヒェン(Schleim Mädchen):スライム娘のこと。
- シュランゲ(Schlange):蛇もしくは狡猾で陰険な女性のこと。
- シルムガイスト(Schirmgeist, Schirm-Geist):唐傘お化けのこと。
- ゼーユングファー/ゼーユングフラウ(Seejungfer,Seejungfrau):人魚のこと。
- ゼンゼンマン(Sensenmann):死神のこと。ゼンゼ=大鎌、マン=人。
- ツェンタオア/ツェンタオアー/ケンタオアー(Zentaur,Kentaur):ケンタウロスのこと。
- ドッペルゲンガー(Doppelgänger):自己幻視のこと。
- ドラッヘ(Drache):ドラゴンのこと。
- トラッヒェ(Trache):1100~1350年頃にかけて使用された中高ドイツ語でドラゴンのこと。
- トラッホ(Trahho):8〜11世紀半ばに使用された古高ドイツ語でドラゴンのこと。
- ナハトシュペルリン(Nachtsperling):夜雀のこと。
- ハイムヒェン(Heimchen):ワーム、イモムシのこと。
- フィーアズユンボーレン(Vier Symbolen):四つの象徴という意味で四神のこと。
- フィッシュメンチ(Fischmensch):半魚人のこと。
- フェー/ニュンフェ(Fee,Nymphe):妖精のこと。
- フォーゲルメンチ(Vogelmensch):鳥人のこと。
- フリューゲルプフェーアト(Flügelpferd):ペガサスのこと。
- ブロンツェーナーブレ(Bronzener Bulle):真鍮の牡牛、ファラリスの雄牛のこと。
- モンスターシュネッケ(Monsterschnecke):化けかたつむりのこと。
- リーゼ/ギガント(Riese,Gigant):巨人のこと。
- リーゼンタオゼントフュースラー(Riesentausendfüßler):大百足のこと。
- レーゲンフラオ(Regenfrau):雨女のこと。