クチート
くちーと
基礎データ
概要
初出は『ポケモンRSE』(第3世代)。
名前の由来はおそらく「口+チート(Cheat)」から。Cheatには「あざむく」という意味があり、そこから分類名が取られている。
開発途上は「フタクチ」という名称であった事も明らかとなっており、妖怪の「二口女」がモチーフになっているものと思われる。
名前通り、愛嬌たっぷりの小人のような身体にポニーテール状の巨大な金属製の大口を備えており、油断した相手に襲い掛かって捕食するという物騒な生態を持つ。
ただし、後頭部の口はあくまで角が変化した攻撃用の器官で、基本的に食事そのものは一般的な位置に付いている本来の口で行っている。
一応後頭部の方でも捕食を行うことは出来るようで、そちらの口には味覚がない事を利用し、苦手なものの飲食に用いているらしい。
消化器官に繋がっているという事になるが、いったいどんな構造になっているのだろうか・・・
後頭部の口は、ゲーム内においては「おおあご」と呼称されている事が多く、解説の便宜上、以下の文章中では全てこの呼称で統一することとする。
おおあごでの噛みつきが戦闘の要となる関係上、戦闘時は敵に背を向けて立つ事も特徴である。野生のクチートと遭遇する時は、最初からおおあごをこちらに向け、本体が隠れた状態で出現するため、不気味な食虫植物の類だと勘違いしたトレーナーも多いとか。
一方、自分のポケモンとしてくり出した時は、常時こちら側を向くという事でもあるため、ゲット後になにこれかわいいに転じた例も少なくないという。
異様な外見ではあるものの、本体部分の愛らしさから人気は非常に高い。同じく亜人型の外見を持つサーナイトやバシャーモと並んで第3世代を象徴する種族の一つとも評される。
中にはおおあごの方にクリーチャー的な魅力を感じる人もいるようだ。
なお、雰囲気が少女のようなので勘違いされやすいが、下半身はスカートではなく袴状の構造であり、性別比率は1:1なので当たり前にオスもいる。もしかしたら総髪の侍もモチーフの1つなのかもしれない。
初見でタイプが分かりにくいポケモンの一種としても知られ、先述の食虫植物からくさタイプ、妖怪からゴーストタイプ、口を二つもつ前例からノーマルタイプ、技の傾向からあくタイプなどと、勘違いした体験談が数多く挙げられている。
正解はそのいずれとも異なるはがねタイプ。おおあごが金属質である事に由来しているらしい。
とは言え、当初ははがねタイプなのにはがね技を一切覚えなかったため、当てろという方が無茶な要求ではあった。
『ポケモンXY』(第6世代)以降は、本体部分に由来すると思われるフェアリータイプを複合している。
色違いは全体的に赤みがかったようになる。
ゲームでの扱い
同期のヤミラミと対の存在として扱われる事が多い。二種揃って通常の進化をせず、メガシンカ形態のみが存在する。
HP | こうげき | ぼうぎょ | とくこう | とくぼう | すばやさ | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
クチート | 50 | 85 | 85 | 55 | 55 | 50 | 380 |
レジスチル | 80 | 75 | 150 | 75 | 150 | 50 | 580 |
ギギギアル | 60 | 100 | 115 | 70 | 85 | 90 | 520 |
無進化ポケモンにありがちな事として、ステータスはかなり低め。「こうげき」「ぼうぎょ」が平均程度ある以外は軒並み悲惨な水準で、特殊耐久などはがねタイプの優秀な耐性をもってしてもまだ心許ないというレベルである。
それでも外見人気の高さと、はがねタイプとしては異例の器用さから、この手のポケモンの中では群を抜いて戦術の研究がなされてきた。
第4世代まで
このクチート、登場当初こそただの一発屋のようなポケモンであったものの、年を追うごとに使える技が増えてゆき、第4世代に入る頃にはすっかり技のデパートと化していた。
「たくわえる」「のみこむ」「はきだす」や3色キバといった「口」関連の技や、「うそなき」「ちょうはつ」「ふいうち」といった「あざむき」関連の技を幅広く習得し、一致技として「アイアンヘッド」「ラスターカノン」も備えた。
おおあごからは「かえんほうしゃ」「れいとうビーム」「ヘドロばくだん」といったものまで吐き出したほか、本体も決して無力なわけではなく「れいとうパンチ」で殴ったり「くさむすび」を仕掛けたりした。
他に能力変化技として「てっぺき」「つるぎのまい」も有し、それらを「バトンタッチ」で後続のポケモンに引き継いだりもすると、型の豊富さでは並のメジャーポケモンに引けを取らなくなっていたのである。
タイプ内唯一の特性でもある「いかく」を用いれば、物理耐久はメタグロス程度にまで上昇するため、ガブリアスの「げきりん」等に合わせて出せば下剋上を狙うチャンスも十分あった。
第5世代
単はがねタイプのポケモンとして新たにギアル系統が登場したが、「それなりに優秀な能力であるが圧倒的に不器用」という評価から、どちらが強いのかという争いは起こらなかった。
この世代では「ポケモンミュージカル」というおまけ要素が存在したが、その際には他のポケモンとは異なり、画面側を向いた手持ち時のグラフィックで参加する特別措置が取られた。
戦闘面では、隠れ特性として「ちからずく」を手にした。火力不足になりがちなポケモンであったため、アタッカーを務める上で大きな強化になったと言える。
この特性は持ち物「いのちのたま」のデメリットを打ち消せるため、それが半ば標準装備となった。両者を組み合わせた時の火力は不一致技で1.69倍、一致技で2.53倍。ここまで威力が上がれば低い「とくこう」からでもかなりのダメージが期待できるため、特殊型も一気に増加した。
代償として追加効果が発動しなくなるが、物理型の一致攻撃技である「アイアンヘッド」のひるみは鈍足故端から期待できず、その他の技も試行回数を稼げるほどの耐久ではなかったため、さほど大きな問題とはされなかった。
もっとも、この構成では物理耐久さえ十分な値を確保できなくなってしまうため、そもそも何もできずに倒されてしまうというリスクも増加したピーキーな仕様になった事は否めない。
それを補うためには二枚壁や「トリックルーム」等のサポートを余儀なくされ、はがねタイプならではの耐性を活かした交代戦がほぼ望めなくなってしまった。
また、同時に「ちからずく」を手にしたポケモンとしてニド夫妻がおり、単純に「れいとうビーム」でのドラゴン狩りをさせる程度の役割なら素の能力で上回る彼らに分があった事から、結局趣味で育てるポケモンの域を出る事は無かった。
要するに立ち回りで能力をカバーできる限界が見えてきたのである。
打たれ弱さを逆手に取って、新たに習得した「メタルバースト」を用いて手痛い反撃をお見舞いするといった戦法も一部では編み出されたものの、進化による抜本的な強化が強く望まれるようになっていった。
余談だが、黄色い見た目に反して高威力の特殊でんき技を覚える事は無く、最後まで「チャージビーム」が最高火力であり続けた。ギアル系統の数少ないサブウェポンがでんきタイプであった事と何か関係があるのだろうか・・・?
また、「かえんほうしゃ」を当たり前に吐き出し、「きあいパンチ」さえも放てる一方で、何故か「ほのおのパンチ」は使えないままでいたりもする。
第6世代~第7世代
トレーナー達の想いが届いたのか、新要素のフラグシップ的な存在として大抜擢される事となった。新たに実装されたフェアリータイプとメガシンカを同時に獲得したのである。
はがねと組み合わせた時の耐性は、半減が8タイプ・4分の1が1タイプ・無効が2タイプかつ4倍ダメージの弱点が無いという非常に優秀なもので、ゴースト・あく技がはがねタイプに対して等倍になるという仕様変更を差し引いても強力な複合となった。
メガシンカについては専用の項目で詳しく解説するが、体格と共に能力が一回り向上し、タイプ相性と合わせれば多くの相手に対して再び真っ向勝負を挑めるようになった。
特性も物理アタッカーとしては最強クラスの「ちからもち」を手にし、それらに合わせた新技「じゃれつく」によってむしろ他のサポートが入ると全滅も普通にあり得るほどの破壊力を発揮する。強力なポケモンにドラゴンが多いという事もあり、禁止級が出場可能なルールにもちらほら姿が見えるまでの大出世を果たした。
もっとも、これによって物理アタッカー以外の個体は激減し、前世代までに生まれた多様な戦術のほとんどは見られなくなった。特にメガシンカと噛み合わない「ちからずく」の特殊型などは絶滅したも同然になっており、彼らにとっては短い栄光であった。
一方で、クチートのメジャー化による同族対決の頻発を始めとして、新特性「かちき」の出現や、同じくメガシンカを得て急増したサーナイトが「トレース」を所持している事など、必ずしも「いかく」が有効に機能するわけでもないため、それらの対策として「かいりきバサミ」への注目が高まっていたりもする。
一種族の中でこれだけの栄枯盛衰があるのも器用なポケモンならではと言えよう。
第8世代
数多くのポケモンがリストラされるという荒波を乗り越えて登場したものの、メガシンカまでもが廃止されていた。再び第5世代以前に準じた立ち回りへの回帰を余儀なくされたのである。
おまけに「はたきおとす」「メタルバースト」「いかりのまえば」など、多数の技も没収。クチートだけに限った話ではないものの、深刻な機能不全を起こしている。
使用トレーナー
ゲーム版
- ミカン:ジムリーダー(ジョウト)
- マーシュ:ジムリーダー(カロス)
- エスプリ:ポケモントレーナー
- マツリカ:キャプテン(アローラ)
- ポプラ:ジムリーダー(ガラル)
- ビート:ジムリーダー(ガラル)※1
- テーミン:ジムチャレンジャー
- マリィ:剣盾ライバル※2
- アルロ:GOロケット団リーダー
※1:ポプラの後継者。恐らく使用しているクチートもポプラのものと同一と思われる)
※2:『ポケモンマスターズ』シーズン22のバディ
アニメ版
- サヨリ(AG105話)
- マーシュ(XY編)
- メープル(XY33話)※3
- パンプ伯爵(XY82話)↔ムサシ※4
※3:メガシンカ
※4:バケッチャと交換したがすぐに返却した。
漫画版
- ダツラ(ポケスペ)
- コンコンブルの弟子(ポケスペ)
- トマトマ(ポケスペ)
番外作品
ポケモン超不思議のダンジョン
ポケモン調査団のメンバーとして登場。調査団の中で団長であるデンリュウの次に実力が高く、いわば副団長ポジションだが、本職は考古学者。
口調は少々男っぽい感じがするが、一人称は「ワタシ」であり、デンリュウのセリフから性別は♀だとわかる。
考古学者としての知識と調査団としての高い実力を兼ね備えており、主人公たちとの調査や冒険にも協力的でとても頼りになる先輩である。
ちなみにデンリュウは『空の探検隊』においてもそらのいただきの8合目に救助のエキスパートとして登場しているが、口調や性格の違いからこれら2作品のデンリュウとクチートはそれぞれ別人である。
『ポケパークWii』
ケイブゾーンで登場。口調やココドラから「かわいいあのコ」と言われてる事から、おそらく♀と思われる。
ケイブゾーンにはトロッコがあるのだが、初めて訪れた時点ではレールの一部が無くなってしまった事から使えなくなっていた。お腹を空かせているココドラに「てつのかたまり」を与えると、「クチートがレールを噛みちぎってるのを見た」と判明。
その後クチートに話しかけてレールの場所を訪ねると「おいかけっこ」で勝負する事となるが、彼女には後頭部に口がある為に普通に後ろから触ろうとするなら攻撃を受けてひるんでしまうので注意。
「おいかけっこ」に勝利すると場所と動機を自供するのだが、曰く「…だって トロッコが うごかなければ みんな このゾーンからでていかないでしょ?」。
『ポケモンGO』
2017年12月9日、第3世代本格解禁に合わせ実装された。何故かアブソルと同様レイドバトルおよびタマゴ孵化限定のポケモンになっている。その辺を歩いていたら謎のおおあごに出くわしたという体験は、本作では基本的にできない(2019年に行われたイベントで一時的に野生出現していたが、それでも出現率はかなり低かった)。
タマゴは10kmのものからしか狙えないが、一方のレイドはランクが★★と比較的手軽で倒しやすく、ある程度ポケモンが育ったら一人でも十分クリアできる。また捕獲も「きんのズリのみ」を使わずとも十分捕まる。べらぼうな難易度を誇ったアブソルに比べればまだ良心的な設定と言えるだろう。
能力的にはメガシンカが実装されていない以上、微妙と言わざるを得ない。弱点がほのお・じめんのみと少ないのは魅力的ではあるが。ただしアブソル同様色違いになる事があるので、色違い目当てでのチャレンジもよいだろう。
・・・とかなんとか言っていたが、実装から1年後の2018年12月、突如覚醒した。
トレーナーバトル実装で低いCPでも活躍の余地が開け、更に耐性が多いこと、使い勝手の良い技「アイアンヘッド」「じゃれつく」「グロウパンチ」を持つことが功を奏しCP1500以下のスーパーリーグで大活躍を見せた。
さらに、2019年には新たに通常技で「ほのおのキバ」と「こおりのキバ」を習得。ドラゴンキラーとしてより一層優秀な働きを見せることができるようになった他、同じくスーパーリーグで猛威を振るったエアームドにも対抗できるようになった。
そして、2022年9月に遂に待望のフェアリー通常技である「ようせいのかぜ」を習得。ゲージ技の「じゃれつく」と併せてフェアリーポケモンとして申し分のない活躍が見込めるようになった。メガシンカがなくても十分活躍できるとは、何が起こるか分からないものである。
ただ、現在ではマリルリの採用率が上がっており、クチートを使用しているプレイヤーはあまり見られない。マリルリと比べて耐久性が低く長期戦に向かないことが原因と考えられる。
前後するが、2020年2月~7月上旬にかけてはGOロケット団幹部の1人・アルロの先鋒としても登場した。アルロを撃破できればゲットチャレンジでクチートをゲットでき、色違いになる事もあった。
次鋒に下がってゲットチャレンジの対象外となった時期を挟みつつ、2022年11月のGOロケット団イベントから再びアルロの先鋒に戻っている。
『ポケモンカフェミックス』
基本的に、ガチャにあたる「デリバリー」のみで登場するレア枠として扱われている。
標準の制服以外に、チェック柄とフリルが特徴の「ショコラティエ」が編集時点で存在する。これは2023年のバレンタインデーに合わせて実装されたもの。
『ポケモンマスターズ』
- 2022年1月31日にマリィ(シーズン22)のバディとして登場。
- 「こうてつのねがい」で、はがねタイプの攻撃の威力を1.5倍にする「こうてつゾーン」を展開し、はがねタイプの攻撃をサポートしつつ、パッシブスキルの効果で登場時に相手の攻撃や防御をさげたり、「なきごえ」で相手全体の攻撃を1段階さげることもできるバディーズ。
- また、「想いをぶつけるよ!」というわざで、自分の攻撃を2段階、防御と特防をそれぞれ1段階上げることができるので、「アイアンヘッド」で自身でも攻撃しつつ、相手のひるみ状態にすることも。
- バディーズ技「甘い想いを形にするスチールインパクト」を使用することでメガシンカする。
アニメ版
『アニポケ・サトシの旅シリーズ』
- サヨリのクチート
- AG105話に登場。タケシのハスブレロが飛ばされた時に出会ったサヨリのポケモンである♀のクチートでハスブレロに一目ぼれしてアタックするもハスブレロにその気は無かった。
- 怒ると後ろの口で噛み付いてくるなどかわいい顔の割にきつい性格。サヨリとリボンダンスのショーを町の舞台で行っていた途中でロケット団が襲い掛かってくるが、ロケット団は間違えてタケシのハスブレロを連れ去ってしまう。そしてロケット団との戦いで自分を守ってくれるハスブレロにますます惚れ込み、自らも「ソーラービーム」でロケット団を星にしてショーに復帰する。
- しかしサヨリの持っていた「水の石」でハスブレロがルンパッパに進化すると性格がガラリと変わった事で熱が冷めてしまい、通りがかったコダックに恋した。ボケッとした感じのポケモンが好みらしい。
- メープルのクチート
- XY33話にてムスト山に住むコンコンブルの古くからの知人・メープルのポケモンで登場。頭にメガストーンの飾りが付いており、メガクチートになる事ができる。暴走したコルニのメガルカリオを打ち負かしている。
- XY73話
- バトルでは使用してないがマーシュの手持ちが登場している。
- XY82話
その他
漫画版
『ポケットモンスターSPECIAL』
- 6章でダツラがエメラルド戦で使用したポケモンで登場。強烈な「きあいパンチ」、守りを固める「てっぺき」、そして「かえんほうしゃ」を覚えている。甲冑の男・ガイルにより奪われた後に暴走させられてフロンティアに放たれたが、バトルタワーに向かうエメラルドになだめられ、ダツラと共に行動する。
- 12章ではコンコンブルの弟子のポケモンで登場し、こちらはメガシンカする事ができる。
- 13章では流星の民の一人・トマトマの手持ちが登場。
関連イラスト
9月(く)10日(とう)は「クチートの日」!!