MCU
まーべるしねまてぃっくゆにばーす
曖昧さ回避
- "Marvel Cinematic Universe"の略称。本稿で詳述
- "Micro Controller Unit"の略称。機器制御に用いられるコンピューター。⇒マイコンを参照。
- ヒップホップグループ「KICK THE CAN CREW」のメンバー。⇒Wikipedia
- 由来は「ビースティ・ボーイズ」の"MCA"と本名の「小泉雄志(ゆうし)」から。
概要
MARVEL社のアメリカン・コミックスを基にしたスーパーヒーローの実写映画・テレビドラマ・アニメ化作品群。
第1作である映画『アイアンマン』(2008年公開)を皮切りに次々とヒットを飛ばしており、現在もマーベル・スタジオのもとで継続している一大プロジェクトである。
当初は配給会社がパラマウント・ピクチャーズ・コーポレーションとユニバーサル・スタジオに分かれていたが、2009年に本社であるMARVEL社がディズニーの買収を受けたことによって、2012年の『アベンジャーズ』以降は、スパイダーマン単独作品を除くすべての作品において、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給している。
全ての作品の製作はマーベル・スタジオの社長であるケヴィン・ファイギがプロデューサーとして取り仕切っている。
また、スパイダーマンやX-MENの原作コミックの生みの親であるスタン・リー(2018年11月死去)が『アベンジャーズ/エンドゲーム』まで毎回必ずカメオ出演をしていた。
特徴
名前の通り、別個の映画・テレビドラマシリーズが1つの世界観を共有し、各々のキャラクターが相互に登場する、いわゆるクロスオーバーの発展形ともいえる「ユニバース」が最大の特徴である。
そのため、MCU全体を指す場合には「シリーズ」はあまり使わない。
そして、マーベル・スタジオが映画1つひとつを超えたユニバースとしての連続性を重視し、『アベンジャーズ』において見事にそれを結実させてみせた手法は、それまで無かった画期的な取り組みだった。
こうしたユニバースの手法も、MCUが成功していなければおそらくここまで一般的なものとはならなかったし、逆に現在のユニバースの流行も、全てこのMCUから始まったと言える。
また『アベンジャーズ』・『エイジ・オブ・ウルトロン』のジョス・ウェドン、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のルッソ兄弟、『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ、といったように、元々ホラーやコメディの分野で活躍していた人物たちが大胆に起用された結果、監督として一躍著名になる事も起きている。
それ以外にも、『エターナルズ』では「特殊効果を使ったシーン以外は、基本的に自然光でのフィルム撮影」という芸術映画かクリストファー・ノーランの作品のような方法で作られており、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ブラック・パンサー』やタイカ・ワイティティが監督した『マイティ・ソー』シリーズでは派手な色がふんだんに使われたシーンが多いなど、画作りや撮影方法なども監督ごとの特色が出ている。
作品一覧
インフィニティ・サーガ(フェイズ1~3)
インフィニティ・ストーンを巡る物語から、こう称されている(詳しくは後述)。
No. | タイトル | 公開日(全米) | 公開日(日本) | 監督 |
---|---|---|---|---|
フェイズ1 | ||||
1 | アイアンマン | 2008年5月2日 | 9月27日 | ジョン・ファヴロー |
2 | インクレディブル・ハルク | 2008年6月13日 | 8月1日 | ルイ・レテリエ |
3 | アイアンマン2 | 2010年5月7日 | 6月11日 | ジョン・ファヴロー |
4 | マイティ・ソー | 2011年5月6日 | 7月2日 | ケネス・ブラナー |
5 | キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー | 2011年7月22日 | 10月14日 | ジョー・ジョンストン |
6 | アベンジャーズ | 2012年5月4日 | 8月14日 | ジョス・ウェドン |
フェイズ2 | ||||
7 | アイアンマン3 | 2013年5月3日 | 4月26日 | シェーン・ブラック |
8 | マイティ・ソー/ダーク・ワールド | 2013年11月8日 | 2014年2月1日 | アラン・テイラー |
9 | キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー | 2014年4月4日 | 4月19日 | ルッソ兄弟 |
10 | ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー | 2014年8月1日 | 9月13日 | ジェームズ・ガン |
11 | アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン | 2015年5月1日 | 7月4日 | ジョス・ウェドン |
12 | アントマン | 2015年7月17日 | 9月19日 | ペイトン・リード |
フェイズ3 | ||||
13 | シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ | 2016年5月6日 | 4月29日 | ルッソ兄弟 |
14 | ドクター・ストレンジ | 2016年11月4日 | 2017年1月27日 | スコット・デリクソン |
15 | ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス | 2017年5月5日 | 5月12日 | ジェームズ・ガン |
16 | スパイダーマン:ホームカミング | 2017年7月7日 | 8月11日 | ジョン・ワッツ |
17 | マイティ・ソー バトルロイヤル | 2017年11月3日 | (同日) | タイカ・ワイティティ |
18 | ブラックパンサー | 2018年2月16日 | 3月1日 | ライアン・クーグラー |
19 | アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー | 2018年4月27日 | (同日) | ルッソ兄弟 |
20 | アントマン&ワスプ | 2018年7月6日 | 8月31日 | ペイトン・リード |
21 | キャプテン・マーベル | 2019年3月8日 | 3月15日 | ライアン・フレック、アンナ・ボーデン |
22 | アベンジャーズ/エンドゲーム | 2019年4月26日 | (同日) | ルッソ兄弟 |
23 | スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム | 2019年7月5日 | 6月28日 | ジョン・ワッツ |
マルチバース・サーガ(フェイズ4~6)
ドラマ作品は★印、アニメ作品は☆印。いずれもディズニープラス配信で、日付は第1話のもの。監督は全話共通でない場合は割愛。
また日本での公開・配信日が本国アメリカと異なる場合は※印(タイトルが原題のものは未定)。
No. | タイトル | 全米公開日 | 監督 |
---|---|---|---|
フェイズ4 | |||
★1 | ワンダヴィジョン | 2021年1月15日 | マット・シャックマン |
★2 | ファルコン&ウィンター・ソルジャー | 2021年3月19日 | カリ・スゴグランド |
★3 | ロキ | 2021年6月9日 | ケイト・ヘロン |
24 | ブラック・ウィドウ | 2021年7月9日※1 | ケイト・ショートランド |
☆1 | ホワット・イフ...? | 2021年8月11日 | ブライアン・アンドリュース |
25 | シャン・チー/テン・リングスの伝説 | 2021年9月3日 | デスティン・ダニエル・クレットン |
26 | エターナルズ | 2021年11月5日 | クロエ・ジャオ |
★4 | ホークアイ | 2021年11月24日 | - |
27 | スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム | 2021年12月17日※2 | ジョン・ワッツ |
★5 | ムーンナイト | 2022年3月30日 | - |
28 | ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス | 2022年5月6日※3 | サム・ライミ |
★6 | ミズ・マーベル | 2022年6月8日 | - |
29 | ソー:ラブ&サンダー | 2022年7月8日 | タイカ・ワイティティ |
☆2 | アイ・アム・グルート | 2022年8月10日 | ジェームズ・ガン |
★7 | シー・ハルク:ザ・アトーニー | 2022年8月18日 | - |
★8 | ウェアウルフ・バイ・ナイト | 2022年10月7日 | マイケル・ジアッチーノ |
30 | ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー | 2022年11月11日 | ライアン・クーグラー |
★9 | ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル | 2022年11月25日 | ジェームズ・ガン |
フェイズ5 | |||
31 | アントマン&ワスプ:クアントマニア | 2023年2月17日 | ペイトン・リード |
32 | ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 | 2023年5月5日※4 | ジェームズ・ガン |
★10 | シークレット・インベージョン | 2023年6月21日 | アリ・セリム |
☆3 | アイ・アム・グルート シーズン2 | 2023年9月6日 | - |
★11 | ロキ シーズン2 | 2023年10月6日 | ケイト・ヘロン |
33 | マーベルズ | 2023年11月10日 | ニア・ダコスタ |
☆4 | ホワット・イフ...? シーズン2 | 2023年12月22日 | - |
★12 | エコー | 2024年1月10日 | - |
☆5 | X-MEN’97 | 2024年3月20日 | - |
34 | デッドプール&ウルヴァリン | 2024年7月26日※5 | ショーン・レヴィ |
★13 | アガサ・オール・アロング | 2024年9月18日 | - |
(以下予定) | |||
☆6 | Marvel Zombies | 2024年 | |
☆7 | Your Friendly Neighborhood Spider-Man | 2024年 | |
35 | キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド | 2025年2月14日 | ジュリアス・オナー |
★14 | Daredevil: Born Again | 2025年3月 | |
Thunderbolts* | 2025年5月2日 | ジェイク・シュライアー | |
The Fantastic Four: First Steps | 2025年7月25日 | マット・シャックマン | |
Blade | 2025年11月7日 | ヤン・ドマンジュ | |
★ | IRONHEART | 2025年 | |
フェイズ6 | |||
Avengers: Doomsday | 2026年5月 | ルッソ兄弟 | |
Avengers: Secret Wars | 2027年5月 | ルッソ兄弟 |
※1 - 日本では7月8日に先行公開
※2 - 日本では翌2022年1月7日に公開
※3 - 日本では5月4日に先行公開
※4 - 日本では5月3日に先行公開
※5 - 日本では当初同日だったが、7月24日の先行公開に変更された。
フェイズ7~
ミュータントが中心に描かれることから、ファン界隈では早くも「ミュータント・サーガ」と呼ばれているが、公式ではない。
時期未発表
映画 | ドラマ | アニメ |
---|---|---|
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マーベル・ワンショット
映画のBlu-rayに収録されている特典の短編映像。
- 相談役(The Consultant)
- 収録:『マイティ・ソー』
『インクレディブル・ハルク』での戦いはアボミネーションが収めたと誤解し、彼をアベンジャーズに加えたがっている上層部をフィル・コールソンたちが止める。
- ハンマー墜落現場へ向かう途中での出来事(A Funny Thing Happened on the Way to Thor's Hammer)
- 収録:『ザ・ファースト・アベンジャー』
『マイティ・ソー』直前、コールソンの動向を描いたもの。
- アイテム47(Item 47)
- 収録:『アベンジャーズ』
ニューヨーク決戦の現場で拾ったチタウリの銃弾を悪用したカップルをS.H.I.E.L.D.に引き入れる。
- エージェント・カーター(Agent Carter)
- 収録:『アイアンマン3』
『ザ・ファースト・アベンジャー』の1年後、ペギー・カーターが主人公。
- 王は俺だ(All Hail The King)
- 収録:『ダーク・ワールド』
『アイアンマン3』後のトレヴァー・スラッタリーが主人公。
成績
興行収入という面でもMCUは成功を収めた。
世界歴代興行収入順位 | 題名 | 興行収入 | 最高順位 |
---|---|---|---|
2 | アベンジャーズ/エンドゲーム | $2,799,439,100 | 1 |
6 | アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー | $2,048,359,754 | 4 |
7 | スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム | $1,916,050,911 | 6 |
11 | アベンジャーズ | $1,518,812,988 | 3 |
16 | アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン | $1,402,809,540 | 5 |
18 | ブラックパンサー | $1,347,597,973 | 9 |
(2023年9月現在の世界歴代興行収入20位まで掲載)
上記のとおり、「アベンジャーズ」シリーズ4作品はすべてTOP20にランクインしており、中でも『エンドゲーム』は一時的にとはいえ歴代1位になった(その後、『アバター』が再上映したため、2位に転落した)。
また『ブラックパンサー』は黒人主演・黒人監督作品としては異例の大ヒットとなった上、2019年の第91回アカデミー賞において、スーパーヒーロー映画として初めてとなる作品賞を含む7部門にノミネート、作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞の3部門を受賞。
その続編『ワカンダ・フォーエバー』も、2023年の第95回において歌曲賞・視覚効果賞・助演女優賞にノミネート、衣装デザイン賞を受賞した。
なお、意外なことにVFXを駆使した映画でありながら、視覚効果賞の受賞作は現時点では存在していない(ノミネートされた作品はいくつか存在するが)。
世に映画シリーズは数あれど、これほどの数の作品で成績を残しているシリーズは他にないと言える。
しかし、『エンドゲーム』以降(フェイズ5突入後)は、作品によっては興行収入が伸び悩むことも出てきており、その盤石とも思われた人気にも徐々に陰りが見え始めているという指摘がある。アメリカ本国は勿論、アメコミ人気が比較的高いと言われていた韓国やブラジルといった国々でもそうした傾向が顕著。日本でも元々アメコミ作品の人気があまりなかったというハンデを差し引いても、ここ数年は興行成績が10億円を切ることも決して珍しくなくなっており、最早「MCU作品は必ずヒットする」とは言えなくなっていることは間違いない。
理由としては、シリーズが長期化したことに伴い、
- ①脚本の劣化(単純に以前と比べて見ごたえのある作品が減ってしまった)。
- ②初心者が途中から参入して観ることが難しくなった(本気で一から追おうとなると、それこそ『インクレディブル・ハルク』や『アイアンマン』等から遡って観ていかなければならず、非常に面倒。最早一部のコアなファンしか観ていないという指摘もある)
- ③キャラクターの関係・設定・時系列が複雑化し、コアなファンでも全貌を把握することが極めて困難となりつつあり、これによりついていけなくなって途中で視聴を放棄してしまう者が出てきている(最近では別のユニバースとも繋がるようになったため、最悪そちらの事情も把握しておかないと、今後改めて物語を見返した時に支障が出かねない)
- ④ディズニープラス配信のドラマシリーズの量産(これまでは年に数本の映画さえ観ておけば物語の全体を掴めたが、最近はドラマの方も追っていかないとストーリーの全貌が掴みづらくなった)。
- ⑤観客のスーパーヒーロー映画疲れ(MCU以外にも数々のスーパーヒーロー映画のシリーズが製作されるようになり、映画ファンの間ではヒーロー映画はもう飽食気味になっているという指摘がある)
- ⑥制作現場の疲弊(詳細は後述)。
といった問題が噴出しているためではないかと言われている。
今のところ制作体制や作風等に、特に大きな変更や修正はなされていないが、この状況が続けば、今後もMCUの興行成績は右肩下がりの状態が続くことになることは間違いないだろう。
2024年には、ディズニーのボブ・アイガーCEOが、興行成績の低迷や制作現場の疲弊などを理由に、MCU作品の公開のペースを1年につき映画2本(最大でも3本)、ドラマシリーズも2本にまで絞ることを発表した。
キャラクターの権利関係について
プロジェクトが展開した当初は、過去にMARVEL社が深刻な経営危機に陥っていた際にいくつかのキャラクターの実写映画権を他社に売却したため、以下のように権利が分散していた。
- ユニバーサル・ピクチャーズ:ハルク、ネイモア・ザ・サブマリナー
- 20世紀フォックス:X-MEN、デッドプール、ファンタスティック・フォー
- ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント:スパイダーマン、ヴェノム他、スパイディ関連キャラ
そのため、マーベル・スタジオ以外の会社が権利を持っているキャラをMCUに登場させられないという問題が生じていたが、徐々に状況が変わってきている。
ユニバーサル関連
2003年に映画『ハルク』を制作するもシリーズ展開等はなく、2006年にマーベル・スタジオへ「映画出演権」を再譲渡した。ただし「配給権」は未だにユニバーサルにあるため、単独映画『インクレディブル・ハルク』はユニバーサルが配給会社として設定された。この関係で同作はディズニープラスで配信がされていなかったが、2022年6月に遂にラインナップに追加された。なお、何故か日本語字幕と吹き替えについては数日の実装空白期間が設けられていた。
ネイモアに関してはユニバーサルでは映像作品は制作されず、そのままマーベル・スタジオが借りる形で『ワカンダ・フォーエバー』に登場。
ただし完全に移ったわけではないので「サブマリナー」の通称は使えず、設定も「タロカン」というオリジナルの国家の支配者とされた。
ハルク、ネイモアとともに単独映画が製作できない現状は未だ続いている模様。
20世紀FOX関連
2017年12月にマーベル・スタジオの親会社であるウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが、20世紀フォックスのテレビ・映画部門(=20世紀フォックスとFOXネットワーク・グループ)の買収を発表した。
MCUの方でそもそも『エンドゲーム』までの戦略に変更予定がなく(というより、変更する隙間がない)ファイギ自身が合流の目処が立っていないと明言している上に、企業買収に関わっている弁護士たちが両社のプロデューサー達に交渉を行うことにGOサインを出していない状態だと明かされた為、それ以降の共演がどのように実現されるかについて期待が集まった。
その後、アメリカのテレビ会社であるコムキャスト(日本ではあまり知られていないが、USJの運営会社であるユー・エス・ジェイを2015年に買収したり、『怪盗グルー』シリーズや『ミニオンズ』を製作しているイルミネーション・エンターテインメントの株を保有しているなど、結構な影響力を持っている)がディズニーが提示した以上の金額を21世紀フォックスに提示し、買収劇に再参入した。これに対し、ディズニーは裁判でコムキャストと争う準備も進めており競争が激化する可能性もあったが、2018年7月にコムキャスト側が事業買収を断念したため、ディズニーによる買収がほぼ確定。
2019年3月に事業買収が完了した。
そして2022年5月公開の『マルチバース・オブ・マッドネス』に、これまでの舞台とは別宇宙という設定ではあるが、X-MENのプロフェッサーXとファンタスティック・フォーのミスター・ファンタスティックがサプライズ登場。特に前者は『X-MEN』シリーズと同じパトリック・スチュワートが演じていたこともあり、海外では本人から事前に仄めかされていたものの大きな反響を呼んだ。
ソニー関連
MCUより前に、サム・ライミ監督による三部作や、そのリブートである『アメイジング・スパイダーマン』シリーズが展開されたが、双方とも諸事情により打ち切りとなってしまった(詳しくは各記事を参照)。
その後、ソニーとマーベル・スタジオ/ディズニーとの業務提携が成立したことにより、2016年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』よりスパイダーマンがMCUに参戦。『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』にも登場した他、主役映画としていわゆる「ホーム三部作」が製作されている。
…しかし、キャラクターの映画化の権利はソニーが依然保持しているままであり、それどころか2018年公開の『ヴェノム』を皮切りに、MCUやX−MENユニバースに続く第3の実写作品群「スパイダーマン・ユニバース(SSU)」を始動させた。
現在第4作『マダム・ウェブ』まで公開され、今後も『クレイヴン・ザ・ハンター』などの映画作品の公開が発表されている。
また、ディズニープラスでは一部アニメ作品を除き一切配信されていなかったスパイダーマン関連タイトルだが、2022年6月にはサム・ライミ三部作、マーク・ウェブ版2作、『ホーム・カミング』と『ファー・フロム・ホーム』、果てには『ヴェノム』や『スパイダーマン:スパイダーバース』といったソニー・ピクチャーズタイトルが配信ラインナップに追加された。
ただし『ノー・ウェイ・ホーム』については完全版の公開後しばらくしてAmazonプライムビデオで配信が始まったりと、ソニーが独自ストリーミングサービスを運営していないことも大きな理由と考えられているが、依然として独自路線を進んでいる。
沿革
2008年 『アイアンマン』公開まで
90年代、マーベルコミックは業績不振を理由に破産手続きをし、一部のキャラクターの映画化権を売りに出した。主な購入者としては、20世紀FOX(X-MEN)、ソニー(スパイダーマン)、ニュー・ライン・シネマ(ブレイド)がいる。
1993年、実業家アヴィ・アラッドによりマーベル・スタジオが設立され、実写化権を持つ各社との共同制作で、1998年には『ブレイド』、2000年には『X-MEN』、2002年には『スパイダーマン』が公開され、大なり小なり評価を得た。
しかしこれらの映画によるマーベルの収益は小さなものであり、また内容に関して関与することもできなかった。
そこでマーベルは、自社が権利を保有し続けているキャラクターの映画を自社製作することにし、パラマウント・ピクチャーズ配給で『アイアンマン』を製作することを2007年のサンディエゴ・コミコンにて発表、2008年に公開した。
スパイダーマンやX-MENに比べてB級キャラクターであるアイアンマンの成功を誰も信じていなかったが、興行収入8億8500万ドルを超える大ヒットとなった。
2008~2012年 フェイズ1
その後、ヒーロー単独映画が4作公開された。2010年、マーベルは『インクレディブル・ハルク』でハルクを演じたエドワード・ノートンが再演せず、マーク・ラファロにリキャストすることを発表した。更にマーベルの親会社のディズニーが『アベンジャーズ』と『アイアンマン3』の世界配給権をパラマウントから買い取った。
集大成となる『アベンジャーズ』が2012年に公開された。同作ではスーパーヴィランのサノスが登場し、更なる展開を想起させた。公開直後、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズは続編企画を発表した。
2012年10月、デアデビルの映画化権を有していた20世紀FOXは、期限までに同キャラクターの映画(2003年版『デアデビル』の続編もしくはリブート)を製作するめどを立てられなかった。そのため映画化権がマーベル・スタジオに戻った。
2013~2015年 フェイズ2
アイアンマンシリーズの最終作となる『アイアンマン3』からフェイズ2が始まった。フェイズ1のヒーローの単独作の続編や、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーやアントマンなどマイナーキャラの新作も公開された。
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』では、後にユニバース製作の重要人物となるアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟がメガホンを取った。
また、キーアイテムであるインフィニティ・ストーン(コミックでのインフィニティ・ジェムに当たる)も複数登場し、異なる舞台で展開する独自の物語が、ストーンをフックに関係を持っていた。
2013年、フェイズ1のサブキャラクターとして登場したフィル・コールソンを主人公とするドラマシリーズ『エージェント・オブ・シールド』がABCスタジオおよびマーベル・テレビジョン製作で放送となった。
2014年、キャプテン・アメリカ第3作が『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』であること、アイアンマン、ブラックパンサーが登場することが発表された。同年11月、マーベルはソニーとの間で、スパイダーマンをMCUに登場させるライセンス契約を結び、『シビル・ウォー』に登場させることが決定した。
2015年4月、後に「ザ・ディフェンダーズ・サーガ」と呼ばれるシリーズの第1作『デアデビル』シーズン1が、マーベル・テレビジョンとABCスタジオの共同制作、Netflix配信で公開された。
2015年5月、集大成となる『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が公開された。
2015年7月公開の『アントマン』は、当初フェイズ3第1作の予定だったが、フェイズ2に改められた。
2016~2019年 フェイズ3
2016年公開の『シビル・ウォー』から始まったフェイズ3は、アイアンマンとキャプテン・アメリカの決別という衝撃から、サノスとインフィニティ・ストーンの因縁への決着までが描かれた。
『シビル・ウォー』にて初登場したトム・ホランド演じるスパイダーマンとチャドウィック・ボーズマン演じるブランクパンサーの単独作を含む11作が公開され、「マーベル映画は年3本公開される」というのがこの当時のファンの認識となった。
2017年、マーベルは、スパイダーマンが来たるフェイズ4以降のMCUをけん引するヒーローだと明かした。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』公開後の2018年、ディズニーは同作を監督したジェームズ・ガンを、SNSでの過去の不適切発言を理由に解雇した。
同年、いわゆる"ビック3"の俳優がそれぞれ、フェイズ3の完結をもってMCUを卒業することを明言・示唆した(外部リンク1・2・3)
同年11月、マーベルコミックの代表的なアーティストであるスタン・リーが95歳で死去。『エンドゲーム』が彼の最後のカメオ出演となった。
12月、『アベンジャーズ』第4作の予告が公開され、副題が『エンドゲーム』であることが明かされた。
『エンドゲーム』公開直前の2019年3月、ケヴィン・ファイギはフェイズ1~3を「インフィニティ・サーガ」と呼称することを明かした。同月、ジェームズ・ガンはディズニーと再契約し、『ガーディアンズ3』の監督に復帰することとなった。
2019年3月、20世紀フォックス(21世紀フォックス)を買収した。これにより、『X-メン』、『ファンタスティック・フォー』などのフォックスが映像化の権利を所有するマーベルキャラクターもMCUの参加が可能となった。
4月、インフィニティ・サーガの集大成『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開。一時、歴代世界興収1位になるという快挙を成し遂げるとともに、トニー・スタークとスティーブ・ロジャースという、最初期からMCUを支えた人気キャラクターが「卒業」した。
6月、Netflixにて『ジェシカ・ジョーンズ』シーズン3が配信開始。マーベルのドラマ制作体制の再編により、Netflixでのマーベルドラマの展開は、これが最後となった。
また、マーベルとNetflixの契約により、ザ・ディフェンダーズ・サーガのキャラクターは、それぞれの最後の登場より2年間は、マーベル作品に登場させられない状況となった。
7月、「サンディエゴ・コミコン」で2020~2021年の公開作品予定が発表。
このうちフェイズ4に入るのは10作品で、ドラマ・アニメなども含まれていた。
そして(複数のヒーローがアッセンブルする)アベンジャーズの映画が存在しないフェイズでもあり、これに対してファイギは「『エンドゲーム』は多くのキャラクターにとっての“エンディング”でした。だから、フェイズ4は始まりであることが大切なんです。」とコメントしている。
また、20世紀FOXの買収によって製作可能となったMCU版『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』の企画が進行中であることも明かされた。
8月、マーベルとソニーがスパイダーマン第3作の条件(収入の取り分)を巡って対立、あわやスパイダーマンがMCUから離脱かと思われたが、トム・ホランドの尽力によって和解。
9月、第3作が共同制作されることが発表された。
2020~2022年 フェイズ4
当初2020年5月公開の『ブラック・ウィドウ』から始まる予定であったフェイズ4だが、COVID-19の流行により劇場公開が実質不可能となり、2020年はMCU映画が公開されなかった。
同年8月、『ブラックパンサー』で主演を務めたチャドウィック・ボーズマンが大腸癌とそれに伴う合併症で43歳の若さで死去した。
実は、ボーズマンは2016年頃に癌が発見され(恐らく『シビル・ウォー』の撮影が終わって少し経ってからであったと思われ、その時点で既にステージ3まで進行している状態だったという)、それ以降は闘病生活の合間を縫って撮影に臨んでいた。当然、『ブラックパンサー』~『エンドゲーム』のMCU各作品も例外ではなく、病気と闘いながらあの激しいアクションを伴う撮影を行っていたとみられる。
ネット上では、ボーズマンのファンはもちろん世界中のアメコミファンからも「今まで本当にお疲れさまでした」「病気と闘いながら素晴らしい演技を見せてくれて本当にありがとう」という彼の死を悼むメッセージが多く寄せられた。
2021年1月、『ブラック・ウィドウ』の公開時期が決まらないまま、映画館の営業状態に左右されないディズニーの動画配信サービス「Disney+」において、ドラマ『ワンダヴィジョン』が公開された。同作では20世紀FOX制作の『X-MEN』シリーズにクイックシルバー役で出演したエヴァン・ピーターズが出演した。
7月、『ブラック・ウィドウ』が公開。
11月、マーベルはボーズマンの死去を受け、ティ・チャラはもうMCUに再登場しない(他の俳優でリキャストしない)ことを発表した。
12月、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公開。サム・ライミ版、アメスパのスパイダーマンやヴィランがマルチバースの垣根を超えて共演するという史上初の試みが高く評価された。また、Netflixとの契約による制限期間が終了したチャーリー・コックス演じるマット・マードック/デアデビルが同作にカメオ出演した。
さらに同日配信されたドラマ『ホークアイ』にて、デアデビルのライバルであるキングピンも登場した。
2022年1月、『ムーンナイト』にてアントン・モーガンを演じたギャスパー・ウリエルがスキー事故により37歳という若さでこの世を去ってしまった(アントン自体の出番はこの作品で終了している)。ドラマは彼の死後に公開され、実質的にこの作品が遺作となっている。
2月末、Netflixでのマーベルドラマの配信が終了。
3月半ばから、各国のディズニープラスでの再配信が順次開始した。
3月、最初期の『インクレディブル・ハルク』からサンダーボルト・ロスを演じてきたウィリアム・ハートが前立腺癌による合併症で71歳で急逝。『ブラック・ウィドウ』がMCUにおける最終出演となった。コミック同様にレッドハルクとなることを希望していたハートだったが、叶わぬままとなってしまった。
5月に公開された『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』では、20世紀FOX買収による登場させることが可能となったX-MENのキャラクターであるプロフェッサーXやファンタスティック・フォーのミスター・ファンタスティック、1シーズンで終了となったドラマ『インヒューマンズ』のブラックボルトがカメオ出演した。
7月、マーベルはフェイズ4~6を「マルチバース・サーガ」と呼称すること、アベンジャーズシリーズ第5作『The Kang Dynasty』、第6作『Secret Wars』を2025年に公開することを発表した。
また、実写製作権を取り戻したデアデビルの新作ドラマ『Born Again』の制作決定も発表された。
2023年~ フェイズ5
2023年2月、ファイギは「ディズニープラス作品の公開ペースを変え、それぞれが輝けるようにします」と明かした。
そして、フェイズ5からは劇場公開・配信ともに作品発表ペースを落とす模様だと報道された。
フェイズ4はドラマ配信も含めると月毎に最低1つ、というハイペースで発表されていた。
後にこの意図は、これから活躍するキャラを一気に導入した「"種まき"としてのフェイズ4」だったと公式から言及されるのだが、あまりの多さに疲れを覚えたファンも少なからずいたらしく、さらにVFX関係の作業が前々から"ブラック"な労働環境であることを告発された
その皮切りに、『マーベルズ』は同年7月公開だったのが11月に、『シークレット・インベージョン』も春から6月の配信に延期されている。
3月半ば、件のVFX部門やポストプロダクション部門・アニメ部門を統括していたヴィクトリア・アロンソが、「競合他社に関わらない」という契約に反してAmazon製作の映画『アルゼンチン1985 〜歴史を変えた裁判〜』のプロデューサーを務めたことが理由でマーベル・スタジオを解雇された。
彼女は『アイアンマン』から製作に関わっていたケヴィン・ファイギの右腕であり、報道によると当初はその貢献度から注意程度で済まされていたが、第95回アカデミー賞の授賞式にも前述の『ワカンダ・フォーエバー』ではなく同作の関係者として出席するなど、度々の違反にディズニー首脳陣の堪忍袋の緒が切れたとのこと。彼女自身は「承認を得ていた」と主張しており、当初は訴訟にまで発展する様相を呈していたが、しばらくして和解に至った。
3月29日、MARVEL社全体のリーダーであるアイザック・パルムッター会長もディズニーから解雇された。
彼は前々からファイギと対立しており、『ブラックパンサー』や『キャプテン・マーベル』の企画に反対する、『アントマン』を手がける予定だったエドガー・ライトの降板のきっかけを作る、など評判が悪く、こちらについては不安視はあまりされていない。
同じく3月、征服者カーンを演じるジョナサン・メジャースが暴行容疑で逮捕された。
5月、『マイティ・ソー』シリーズでヴォルスタッグを演じたレイ・スティーヴンソンが58歳という若さで死去(ヴォルスタッグ自体は『バトルロイヤル』で出番が終了している)。レイはMCU以前に製作された『パニッシャー:ウォー・ゾーン』でタイトルロールを演じていたため、その点でもマーベルファンからその死を惜しまれた。
6月中旬、ネイモア役のテノッチ・ウエルタが性的暴行で告発された。
7月、全米映画俳優・脚本家組合のダブルストライキによりハリウッド全体の製作関係が中断。当然MCUも例外ではなく、2022年夏に発表されたスケジュールからほとんど延期される結果となっている。
秋にはストライキは収束、各作品の作業も再開した。
ストライキ中の10月、マーベル・スタジオは『デアデビル:ボーン・アゲイン』の製作チームを一斉解雇した。
元々『ボーン・アゲイン』はNetflix版からリブートし、法廷ドラマとなることが決まっており、4話までデアデビルがヒーロースーツを着ないというような内容であったが、一部キャラクターが登場しなかったり、リキャストされたりといった報道に、Netflix版からのファンが反発していた。
マーベル・スタジオは、実際に撮影されたものを確認し、方針を転換。登場しないとされていたキャラクターの復活や、リキャストするとしたキャラクターを旧キャストにするなど、旧来のファンも納得する内容とすることとなった。
また、
同月、『ボーン・アゲイン』のショーランナーにMCU版『パニッシャー』のダリオ・スカルダパンが、監督には「ロキ」シーズン2や「ムーンナイト」(2022)のジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッドが就任した。元々ディズニープラスのMCUドラマはショーランナー(ドラマの企画から完成までを統括するポジション)を立てず、ヘッドライナー(脚本家チームの代表)を起用する方式であったが、ドラマシリーズの不振を受けて方針転換した形だ。
12月中旬、メジャースが有罪判決となったことを受け、ディズニーは彼を解雇した。
ファンからは『ロキ』『クアントマニア』における変異体の演じ分けが好評だったが、これを受けてスタジオはカーン役をリキャストするかサーガヴィラン自体を変更するかの判断を迫られており、「アベンジャーズ」シリーズ5作目も副題の『The Kang Dynasty』が一旦消されることとなった。
2023年末に公開された『マーベルズ』は、最終的に全世界興行収入約2億500万ドル(約296億5000万円)と、MCU史上最低の興行成績となった。
2024年7月、20世紀FOX買収によって実写化権を取り戻したX-MENキャラクターによる初のMCU映画『デッドプール&ウルヴァリン』が公開。
同作は、先述の同時ストライキの影響により、2024年に公開された唯一のMCU映画となった。
『D&W』公開の週末、メジャース解雇により不安視されていたアベンジャーズ第5作の副題『The Kang Dynasty』が『Doomsday』に変更されたこと、『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』のルッソ兄弟が同作および第6作『Secret Wars』の監督に復帰し、さらにトニー・スターク / アイアンマン役だったロバート・ダウニー・Jr.がDr.ドゥーム役として出演することも発表された。
時系列について
映画が公開された時期と劇中での時期がほぼ一致する為、回想シーン、例えば特に古い時代である『マイティ・ソー』と『ダーク・ワールド』の冒頭部分や、そもそも第二次世界大戦時の物語である『ザ・ファースト・アベンジャー』を除けば、非常にスッキリとした流れ。
ちなみに『インクレディブル・ハルク』『アイアンマン2』『マイティ・ソー』における事件は、ほぼ同時並行に近いレベルで立て続けに起きていた、という裏設定があり、S.H.I.E.L.D.職員の右往左往を描いたコミックが出版されている。
この辺りは途中で冷戦期から再スタートした『X−MEN』シリーズとは対照的である。
……と思われてきたのだが……
2017年5月、『リミックス』は前作の直後であることが明らかになると、この2本が両方とも2014年内の物語ということになったため、ファンの間では『ザ・ファースト・アベンジャー』以来となる「劇中の時系列と公開順のギャップ」がちらほらと話題になった。
が、この時点ではまだ大きな問題ではなかった。
同年7月に公開された『ホームカミング』の冒頭、全てのMCUファンは(おそらく)驚愕した。
今作が『アベンジャーズ』(2012年公開)の8年後だと、映画館のスクリーンに大きく映し出されたからである。
劇中で『シビル・ウォー』の2ヶ月後だということも明らかになっていることもあって大きな話題となり、いわゆる「8年後問題」としてファンの間では盛んに議論がなされた。果ては「マーベル・スタジオのミスじゃないのか?」と訝しむ声まであったが、ファイギは
「新聞があったり、あるいは年号を言葉で示したりと特別なことをしていない限り、それぞれの映画に年代を定めたことはありません。“この映画は2017年11月公開だから、2017年11月が舞台に違いない”という仮定があるかと思いますが、それは違うんです」
と述べており、密かに存在するMCU全体のタイムラインもいずれ公開する予定だと明かされた。
その後も、
- 続けて11月に公開された『バトルロイヤル』は『エイジ・オブ・ウルトロン』の2年後だということが明らかになっており、一方で『シビル・ウォー』と同時期だということも示唆されている。
- 18年2月に公開された『ブラックパンサー』は『シビル・ウォー』の直後の物語と考えられる(あくまで劇中のニュースなどによる考察)。
- 『インフィニティ・ウォー』は『シビル・ウォー』の(およそ)2年後だと明かされていた一方で、『バトルロイヤル』のポストクレジットや予告編の内容から、『バトルロイヤル』の直後だということも示唆されていた。
……といった具合にどんどん複雑になっており、今や本当のMCUの時系列を把握しているのは(おそらく)関係者だけだとも思えるような状態であった。
果たして混沌としている時系列問題に答えが出るのかと、全てのMCUファン(というより、筆者)が気を揉む中、ひとつの集大成となる『インフィニティ・ウォー』が遂に公開されたのだが……
以下『インフィニティ・ウォー』以降の作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方は注意!!
その中盤、トニーの口からNYの戦い(=『アベンジャーズ』)から6年が経ったことが言及された……
………
マーベル・スタジオさん、やっぱり、ミスだったのでは……
※実際に『インフィニティ・ウォー』の監督であるルッソ兄弟はこんな発言もしている。
なおその後も、
- 『アントマン&ワスプ』は『シビル・ウォー』と『インフィニティ・ウォー』の間の物語になるとされている。
- 『キャプテン・マーベル』に至っては1990年代が舞台になると明らかになっており、『リミックス』以来となる公開時期よりも過去の時代の物語。
と、複雑さは増していった。
ただし「インフィニティ・サーガ」の完結編である『エンドゲーム』は『インフィニティ・ウォー』『アントマン&ワスプ』『キャプテン・マーベル』後であり、その後日談である『ファー・フロム・ホーム』は8か月後である事が本編で判明しているため、時系列もここで一旦区切りがついたと言える。
ちなみに『エンドゲーム』で『アベンジャーズ』が2012年、『ダーク・ワールド』が2013年、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が2014年の出来事と明言されたが、それぞれの公開年と一致するため、やはりフェイズ3から複雑化していったと思われる。
フェイズ4の作品については、『シビル・ウォー』と『インフィニティ・ウォー』の間の『ブラック・ウィドウ』を除けば、ドラマを含め概ね『エンドゲーム』後の物語である。
※それぞれ記事の最後に公開/配信・シリーズ・本編基準の時系列の前後をまとめているので、そちらも参照してほしい。
幸い『X−MEN』シリーズで起きたような、過去と未来を同時に描いて、さらにタイムラインのリセットを行うといった事態にはなっていないが、(まさに)時間の問題なのかもしれない……
そして、前述した公式タイムラインを主に扱ったオフィシャルの書籍が本国では2023年9月に発売。
上記した"8年後問題"はTVA職員がビデオテープを置き間違えたとされ、一応解決した。
アースの1つとして
以下、公開・配信済みの作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方は注意!!
番号は【アース199999】。
これは2012年出版の公式解説本『Official Handbook of the Marvel Universe A-Z Volume 5』が初出だが、作中ではコミックの基本世界と同じ【616】が用いられている。
- 『ダーク・ワールド』:エリック・セルヴィグの講義
- 『ファー・フロム・ホーム』:ミステリオが【833】出身と偽った時の説明
- 『ロキ』:TVAが記録したロキの映像のビデオテープに記載
- 『マルチバース・オブ・マッドネス』:【838】側からの呼称
しかし2023年6月公開のアニメ映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でスパイダーマン2099が、作品内では初めて【199999】と呼称した。
これについては、我々のいる現実世界や2099たちスパイダー・ソサエティとTVAや【838】の認識が異なる、と考えれば辻褄は合うのだが、ファン界隈では同じ【616】だとややこしいため専ら【199999】が用いられている。
基本世界以外の世界
特にフェイズ4以降は「マルチバース・サーガ」と称されており、様々な世界が登場している。
※言及だけの場合も多いため、回想含め実際に舞台となった世界は★印。
※"TRN"は"Temporary Reality Number" の略で、公式からは発表されていないためファン界隈で便宜上つけられた数字。
- ミラー・ディメンション★、ダーク・ディメンション★
- ドクター・ストレンジ関係
アースの中にある別世界「ポケットディメンション」の1つ。
- 量子世界(クァンタム・レルム)★
- アントマン関係
初代ワスプことジャネット・ヴァン・ダインが『アントマン&ワスプ』で救出されるまで滞在していたポケットディメンションの1つ。『クアントマニア』でその詳細が描かれた。
コミックでは同様の世界が複数あり、まとめて「マイクロバース」と呼ばれているがあくまで【616】の中であり、こちらはそれぞれのアースと繋がっているのが大きな相違点。
- 【16828】★
- 『チーム・ソー』
マーベル・ワンショットの1作で、『バトルロイヤル』のスピンオフ的な短編。実写では初めて、作品それ自体が明確に別アース扱いとなっている。
- TVA本部のある空間★
- 『ロキ』『デッドプール&ウルヴァリン』
時間軸とは切り離された次元だが、一応【TRN870】が付いている。
コミックでの名前は「ヌル・タイムゾーン(Null-Time Zone)」。
- 虚無(the Void)★
- 『ロキ』『デッドプール&ウルヴァリン』
TVAによって剪定(リセット)されたものが送られる空間。"時間の終わり"に位置する「全ての出来事が一点で衝突し合い、分岐が成長しない」場所。
こちらも一応【TRN872】が付いている。
- ウォッチャーが観測した"もしも"の世界★
作品記事参照。基本的に1話1アースが舞台となる。
- 【TRN808】★
- 『ホークアイ』
バートン一家がニューヨークで観た『ロジャース:ザ・ミュージカル』。
実際にカリフォルニアのディズニーランドで公演された。
- 【96283】ライミバース、【120703】ウェブバース
- 『ノー・ウェイ・ホーム』
「初の別アース」という名の過去シリーズ。名称は脚本上の表記で、それぞれの監督であるサム・ライミ、マーク・ウェブが由来。
諸事情で打ち切りになった作品を別世界扱いにしてリブート先で活用する、という革新的な手法だが、ある意味ではマーベルらしいと言える。
- 【838】★、【TRN954】インカージョンで崩壊した世界★
- 『マルチバース・オブ・マッドネス』
「既存のキャラクターが移動した」かつ「オリジナル」としては初。
同作では他にも、一瞬だが「恐竜の世界」「ドローンの世界」「身体がペンキ状の世界」「白黒の世界」などが登場した。
- 【TRN952】女性だけの惑星★
- 『マルチバース・オブ・マッドネス』
アメリカ・チャベスの出身世界。コミックでの名前は「ユートピア・パラレル」。
- ヌール・ディメンジョン
- 『ミズ・マーベル』
カムランの母:ナジマやその仲間「クランディスティン」の出身世界。詳細は現状不明。
- 【TRN1225】★
- 『マーベルズ』
終盤、モニカ・ランボーが飛ばされた別アース。
- 【92131】★
- 『X-MEN ’97』
1990年代のアニメの続編であるため、アース番号も同じ。
- 【10005】★、【17315】、【701306】、【121698】
- 『デッドプール&ウルヴァリン』
順に『X-MEN』シリーズの基本世界、『LOGAN/ローガン』の世界、および『デアデビル』『エレクトラ』、2000年代『ファンタスティック・フォー』二部作の世界。
これらを製作した20世紀フォックスの買収に伴い世界ごと剪定されたらしく、虚無空間にはお馴染みのロゴがあった。
- 【26320】
- 『デッドプール&ウルヴァリン』
『ブレイド』三部作の世界。製作はフォックスではなくニュー・ライン・シネマだが、同社は現在DCコミックと同じワーナー・ブラザーズ傘下だったりする。
- 【TRN1393】~【TRN1400】★
- 『デッドプール&ウルヴァリン』
序盤、ウェイド・ウィルソン / デッドプールがウルヴァリンを探して訪れた世界。
このうち【TRN1400】の彼が本作で主に活躍した。
- 【TRN1401】
- 『デッドプール&ウルヴァリン』
本作のガンビットの出身世界だが、特殊な事情により存在するかは怪しい(詳しくは個別記事参照)。
- ???★
- 『The Fantastic Four: First Steps』
事前情報で別アースが舞台であることが示唆されている。
なおソーの出身であるアスガルドなどは惑星として、シャン・チーの母の故郷ター・ローは山奥の秘境としてそれぞれ描かれているが、コミックではポケットディメンション。
余談
pixivではこの方達の影響なのか、腐向けの作品が多い傾向にある。(まあ、アメコミ全体に言えることなのかもしれないが……)
※今となっては信じられないことだが、X−MENやスパイダーマンに比べれば決して有名では無く、当時「なんでアイアンマンから始めたんだ?」「アイアンマンなんてマーベルの中ではB級、C級のキャラクターじゃないか」といった意見が存在していた(参考リンク)。
演者関係
- 俳優陣
トニー・スターク役のロバート・ダウニー・Jr.、および吹き替えを演じた藤原啓治のみ、パラマウント、ユニバーサル、ディズニー、ソニーの4つの配給作品全てに出演している。
何名かは過去に『SWAT』シリーズ等で共演している。
「モンスターバースシリーズ」にアーロン・テイラー=ジョンソン(クイックシルバー)、エリザベス・オルセン(スカーレット・ウィッチ)、トム・ヒドルストン(ロキ)、サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー)、ブリー・ラーソン(キャロル・ダンバース)の5名がメインキャストとして出演したことから、中の人繋がりでネタにされることがある。
また吹替版でウォンを担当している田中美央は、『ゴジラ-1.0』に堀田辰雄役で出演しており、『ゴジラxコング:新たなる帝国』にも吹替で参加したことで、MCUとモンスターバースの両方に出演した役者に名を連ねることになった(他にも吹替版でも何名かいるがここでは割愛)。
最近では『クリード』シリーズとも共通出演者が多く、ロッキー役のシルヴェスター・スタローン(スタカー・オゴルド)や主演のマイケル・B・ジョーダン(キルモンガー)、ヒロインのテッサ・トンプソン(ヴァルキリー)を始め、第2作からはフロリアン・ムンテアヌ(レーザー・フィスト)、第3作ではジョナサン・メジャース(征服者カーン)が出演。
制作陣も、『ブラックパンサー』シリーズのライアン・クーグラーが原案を担当している。
それぞれ事情は異なるが交代もあり、メインキャストは以下の7名。
死去したウィリアム・ハート氏を除き、前任の俳優は実質1作限りの出演になっている。
ブルース・バナー | エドワード・ノートン
| → | マーク・ラファロ
|
---|---|---|---|
ジェームズ・ローズ | テレンス・ハワード
| → | ドン・チードル
|
ファンドラル | ジョシュア・ダラス
| → | ザッカリー・リーヴァイ
|
レッドスカル | ヒューゴ・ウィーヴィング
| → | ロス・マーカンド
|
サノス | ダミアン・ポワチエ
| → | ジョシュ・ブローリン
|
キャシー・ラング | エマ・ファーマン
| → | キャスリン・ニュートン
|
サディアス・ロス | ウィリアム・ハート
| → | ハリソン・フォード
|
- 日本語吹き替え声優
やはりというべきか、こちらも実力派から若手まで豪華声優陣が参加している。
またナターシャ、ホークアイ、フューリーは初めてのアッセンブルである『アベンジャーズ』からいわゆる専業外の芸能人声優に交代となっており、その後も何キャラか起用されているが、フェイズ4から始まった配信作品では当該キャラは専業声優が演じている。
(グルート、ロケット、マンティス、実写のフューリーは配信も続投)
なお色々あったこの人はどちらも変更になっているが、この人とは違って法に触れてはいないためか、出演した全5作は新録されずそのまま配信されている。
ただしそのうちの3作を含めた、主にフェイズ3以降の映画のほとんどが地上波放送されておらず、様々な憶測を呼んでいる。
コミックとの相互影響
MCU世界はコミックの世界とは別の宇宙という設定だが、コミックでも比較的近年に起きた出来事がMCU作品にも取り入れられたり、MCUの設定がコミックに逆輸入される事もある。
以下にその例を示す。
- チタウリは元々、コミックの別アースでのスクラルに相当する種族だったが、名前だけ借りた変身能力などの特殊能力が無い種族がいわば悪役側の雑魚戦闘員として『アベンジャーズ』に登場。更に、MCU準拠のチタウリがコミックの正史世界である【アース616】にも逆輸入される。
- MCUにワンダ・ピエトロの姉弟が登場。⇒コミックでも「実は2人はミュータントではなく改造人間だった」新設定になる。
- MCUドラマに2大超人種族の片方であるインヒューマンズが登場。⇒コミックでもインヒューマンズが優遇され、逆にもう片方のミュータントは絶滅の危機に陥る。
- 『ラブ&サンダー』のヴィランであるゴア・ザ・ゴッド・ブッチャーは、コミックでは2010年代(早い話がMCUの人気が出て以降)に登場した比較的新しいキャラクター。
- 2019年のコミックのエピソード『War of the Realms』で消滅した別次元から正史世界に漂着したムジョルニア(ただし、外見はストームブレイカーに近い)が「一度砕けたものが一時的に再生された」状態で、ソーとなったジェーン・フォスターの手に握られる。
- 同じく『War of the Realms』で、一度太陽に落ちて消滅したムジョルニアが再生された際に、柄の部分がMCU版のストームブレイカーのような「加工されていない木」のような外見となる。(ただし、こちらの柄はユグドラシルの一部)
- 『ラブ&サンダー』公開の少し前である2020年代初頭にも、ムジョルニアが一度破壊され、継ぎ接ぎされたような外見になって再生されるという出来事がコミックでも起きる。
- 映画『エターナルズ』公開後に、コミックでもエターナルズ達が倒すべき敵である「ディヴィアンツ」を単なる種族名ではなく「セレスティアルズの予定・想定から逸脱(deviation)した者達」と考え、ミュータントもディヴィアンツの一種と見做す展開が起きる。
- 更にその結果「地球において新たなるセレスティアルズが誕生する」というMCU版を思わせる展開になった。
- 2010年代にコミックに登場した比較的新しいキャラであるアイアンハートがMCUにも登場する。
- ワカンダの王位とブラックパンサーの称号の継承が描かれると予想されていた『ワカンダ・フォーエバー』公開直前にコミック版の正史世界においても、ワカンダの民主化により、ティ・チャラがワカンダの王位とブラックパンサーの称号を失う。
- コミック版の正史世界において、アフリカ系アメリカ人の間でアメリカを「偽りの自由と平等の国」と見做し民主化されたワカンダに移住しようとする「ワカンダ・フォーエバー運動」が起きる。
- コミックでも「インフィニティ・ジェム」の呼び名が、設定変更によりMCUと同じ「インフィニティ・ストーン」に変更。
- コミックの正史世界のニック・フューリーは白人だったが、アフリカ系の女性との間に隠し子が居た事が判明。その隠し子は後にニック・フューリーJr.を名乗る。
- 『ブラックパンサー』公開以降、コミック版のキルモンガーの外見がMCU版に似たものになる。
- コミック版のソーの髭の有無や髪の長さが、そのコミックが描かれたのと同じ時期のMCU版準拠になる。
- コミック版のシャン・チーも『テン・リングスの伝説』におけるテン・リングスに似たアイテムを武器とするようになる。
- コミック版でもスカーレットウィッチのティアラにMCU版を思わせるモールドが入るようになる。
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動画を見れば分かるが、ここに写っているキャスト・スタッフの量・質は、ともに並々ならないレベルである。2008年に公開されたたった一本の映画から始まったプロジェクトがここまで発展した事を考えると、感慨深いものがある。
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スタン・リーの言葉とともに贈る特別映像(2021年)
『ファー・フロム・ホーム』以来、コロナ禍によって延期してきたフェイズ4映画作品が劇場公開されることを記念した映像。
『ブラック・ウィドウ』『シャン・チー』『エターナルズ』『ノー・ウェイ・ホーム』『マルチバース・オブ・マッドネス』『ラブ&サンダー』『ワカンダ・フォーエバー』『マーベルズ』『クアントマニア』『ガーディアンズ3』のタイトルのあと、「4」(フェイズ4と『FF』を意味すると思われる)が現れる。
公式名シーン集(2024年)
コミック創刊85周年を記念して、これまでのMCUにおける印象的なシーンを85個集めた動画。
全52分と、ドラマ1話より長い。