データ
路線名 | 大糸線 |
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路線区間 | 松本〜糸魚川 |
ラインカラー | 紫:松本〜南小谷 |
路線距離 | 105.4km |
軌間 | 1,067mm |
駅数 | 41駅 |
最高速度 | 95km/h |
電化区間 | 松本〜南小谷(直流1,500V) |
非電化区間 | 南小谷〜糸魚川 |
単線区間 | 全線 |
閉塞方式 | 自動閉塞式(特殊) |
保安装置 |
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運転指令所 |
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第一種鉄道事業者 |
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概要
松本駅(長野県松本市)と糸魚川駅(新潟県糸魚川市)を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)及び西日本旅客鉄道(JR西日本)の路線。
南小谷駅(長野県北安曇郡小谷村)を境界としている。同駅構内及び以南の区間はJR東日本の管轄で直流電化されている。同駅構内以北はJR西日本の管轄で非電化ある。
JR西日本にとって唯一の長野県を通る路線であり、北陸本線の第三セクター転換後唯一の新潟県を通る在来線でもある。
路線名の由来は信濃大町及び糸魚川。松本駅〜信濃大町駅間は「信濃鉄道」(「しなの鉄道」とは別会社)によって建設され、残りの区間を国鉄が建設した。
国鉄時代は両区間を直通する列車が設定されており、キハ58系を使用して新宿駅~糸魚川駅間を結んだ急行「白馬(初代)」や「アルプス」、金沢駅~松本駅間を結んだ急行「白馬(二代目)」といった優等列車や、JR化後も冬季に「シュプール」等の臨時列車が東日本・西日本各地から多数設定されていた。しかし1995年(平成7年)7月11日に発生した豪雨(7.11水害)により西日本管内で長期間の運休が発生。以降復旧後も両区間を直通する定期列車は設定されておらず、臨時列車も2002年(平成14年)を最後に設定されていない。
また1999年(平成11年)3月31日までは松本駅〜信濃大町駅間は日本貨物鉄道(JR貨物)が第二種鉄道事業者で、同社による貨物列車が運行されていた。
現在交通系ICカード乗車券は全線で利用出来ないが、2025年(令和7年)春に大都市近郊区間の「東京近郊区間」が拡大予定であり、松本駅〜穂高駅間が東京近郊区間及び「Suica」首都圏エリアに組み込まれる予定である。
観光路線
乗鞍岳や穂高岳など北アルプス(飛騨山脈)登山や黒部ダム観光、白馬八方屋根や栂池高原などのスキー場、仁科三湖(青木湖・中綱湖・木崎湖)、翡翠で有名な姫川など観光地が多い路線である。特に信濃大町駅は黒部ダム・立山方面へのアクセスルート(立山黒部アルペンルート)の長野側起点として知られている。
また、『おねがい☆ティーチャー』、『おねがい☆ツインズ』の聖地である木崎湖も沿線にあり、おねツイでは小野寺樺恋がE127系に乗って木崎湖に向かうシーンが登場する。
廃止議論
1990年代以降高速バスやマイカー、北陸新幹線の長野駅から大町・白馬方面を結ぶバスなどにより利用者の減少が著しい。中央東線からの需要は現在でもそれなりにあるものの、後述の特急「あずさ」の大糸線直通の定期列車は1往復にまで減少している。信濃大町駅以北で赤字になっているが、中でもJR西日本管内は最盛期だった1990年代初期と比べても乗降客が90%以上も減少。JR西日本と沿線自治体による存廃議論が行われている。
沿革
1915年(大正4年)1月6日に信濃鉄道の路線として松本市駅(現・北松本駅)〜豊科駅間が開業したのが始まり。1916年(大正5年)7月5日には現在の2代目信濃大町駅まで開業し、信濃鉄道区間は1926年(大正15年)1月8日に直流電化されている。
1929年(昭和4年)9月25日には官制鉄道の大糸南線として信濃大町駅〜簗場駅間が、1934年(昭和9年)11月14日には大糸北線として糸魚川駅〜根知駅間が開業。
1957年(昭和32年)8月15日には最後の開通区間である中土駅〜小滝駅間が開通し全線開通、同時に大糸北線を大糸南線に編入し大糸線に改称した。
1967年(昭和42年)12月20日には信濃森上駅〜南小谷駅間が直流電化され、現在電化されている区間の工事が完了した。
1987年(昭和62年)4月1日には国鉄分割民営化に伴い松本駅〜南小谷駅間をJR東日本が、南小谷駅〜糸魚川駅間をJR西日本が第一種鉄道事業者として、松本駅〜信濃大町駅間の貨物輸送をJR貨物が第二種鉄道事業者としてそれぞれ継承した。なお貨物営業は1999年3月31日をもって廃止されている。
1993年(平成5年)3月18日からはJR西日本管内で、ワンマン運転を開始。
1995年7月11日、前述の「7.11水害」により多大な被害を受け、復旧まで一部区間が長期間運休した。全線で運転を再開するまで2年以上を要し、1997年(平成9年)11月27日に全線復旧した。
1999年3月29日からはJR東日本管内でワンマン運転を開始。なお2009年(平成21年)3月14日からは、信濃大町駅〜南小谷駅間において特急を除く全定期列車がワンマン化された。
2016年(平成28年)12月12日にはJR東日本管内で駅ナンバリングを導入した。
運行形態
JR東日本管内(松本駅〜南小谷駅)
特急
定期列車では「あずさ」が1往復設定されている。現在は新宿駅〜南小谷駅間の運行だが、2020年(令和2年)3月14日ダイヤ改正まで下りは千葉駅始発で運行区間は「あずさ」最長だった。過去には「スーパーあずさ」や臨時「あずさ」が乗り入れていた事もあるが、減便により現在の運行形態となった。
この他に繁忙期には東海旅客鉄道(JR東海)中央本線(中央西線)名古屋駅から白馬駅まで「しなの」が運行される。
快速・普通
定期列車のうち普通が下り3本・上り1本がJR東日本管内を全線走破するが、基本的には信濃大町駅で運行系統が分かれている。この他に松本駅〜穂高駅・有明駅間の区間列車や、篠ノ井線・中央東線へ直通する列車も存在する。
信濃大町駅以南は毎時1本程度設定されているが、以北は閑散区間の為3時間以上列車間隔が空く事もある。
定期快速列車は上りのみの設定で、早朝に信濃大町発上諏訪行、夜間に南小谷発信濃大町行最終列車が設定されている。
土休日や繁忙期には臨時快速「リゾートビューふるさと」が長野駅〜南小谷駅間で1往復設定されている。
JR西日本管内(南小谷駅〜糸魚川駅)
定期列車は普通のみで、全線通しが7往復、平岩駅〜糸魚川駅間の区間列車が朝夕に1往復ずつ設定されている。
南小谷駅では松本駅方面の列車と接続する。
シュプール号
国鉄民営化直前から2000年代初頭まで、前述の通りスキーシーズンには「シュプール号」として東日本・西日本各地から多数運行され、中には南小谷を跨いで運転された列車も存在した。
種別は基本的には「急行」(寝台車で構成された列車は「寝台急行」)だが、一部は「特急」として運行された。
急行白馬山麓スキー号
逗子 → 南小谷/信濃森上 → 逗子
「シュプール」の名を冠する前に運行された列車。根岸線経由で運行された為使用車両の165系単独では運行できず、クモヤ143を連結して運行された。
急行シュプール白馬山麓
逗子 - 南小谷
白馬山麓スキー号の後継列車。使用車両を183系に、経路を横須賀線経由に変更して運行された。
急行シュプール白馬・アルペン白馬
元は千葉〜信濃森上間の列車だったが、「白馬山麓」と統合し最盛期は横浜発着と合わせて3往復運行された。
「アルペン白馬」は運行最終年の名称。
急行シュプールゆう白馬
485系のジョイフルトレイン「リゾートエクスプレスゆう」で運行された列車。
初年度のみ平塚発・横浜着で翌年から品川発着に変更された。
急行シュプールつがいけ・シュプール栂池・八方
運行開始当初は「つがいけ」として名古屋〜信濃森上間の運行。「栂池・八方」に改称後は大垣発着に変更、「7.11水害」による大糸北線不通区間発生後は救済措置として神戸発着に変更された。廃止時は名古屋発南小谷行の片道運行だった。
急行・寝台急行シュプール白馬・栂池
大糸線系統シュプール号最大の運行系統を誇った列車。気動車及び客車で運行された。
1988年(昭和63年)1〜3月運行分は「シュプール'88白馬・栂池」、同年12月〜1989年(平成元年)3月運行分は「シュプール'89白馬・栂池」という名称だった。
余談だが、「シュプール白馬・栂池8号」(白馬発神戸行)は1995年(平成7年)1月17日に兵庫県西宮市を走行中阪神淡路大震災が発生し被災。牽引機のEF81形及び14系客車「シュプール&リゾート」編成が脱線した。
急行シュプール白馬アルプス
姫路 - 南小谷
7.11水害による大糸北線不通区間発生時に「白馬・栂池」が本来のルートで運行出来なくなった為、救済措置として大糸南線経由で運行された電車急行。後述の特急とは別列車。
特急シュプール白馬アルプス
白馬 → 大阪・西明石
シュプール最晩年に設定された列車。急行ではなく特急で、白馬発の片道運行だった。大阪行は運行最終年のみの設定。
同列車の廃止により、南小谷を跨いで運行される列車が消滅した。
駅一覧
駅ナンバリングはJR東日本管内のみ設定されているが、番号は糸魚川からの通しで付けられている。
●:停車 ◾︎:「しなの」のみ停車
▲:「リゾートビューふるさと」は冬季通過、定期快速は停車
○:定期快速のみ停車 レ:通過
駅番号 | 駅名 | 特急 | 快速 | 乗換路線 | 備考 |
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↑篠ノ井線経由中央東線富士見まで直通運転 | |||||
42 | 松本 | ● | ● | ||
41 | 北松本 | レ | ○ | ||
40 | 島内 | レ | ○ | ||
39 | 島高松 | レ | ○ | ||
38 | 梓橋 | レ | ○ | ||
37 | 一日市場 | レ | ○ | ||
36 | 中萱 | レ | ○ | ||
35 | 南豊科 | レ | ○ | ||
34 | 豊科 | ● | ● | ||
33 | 柏矢町 | レ | ○ | ||
32 | 穂高 | ● | ● | 当駅発着あり | |
31 | 有明 | レ | ○ |
| |
30 | 安曇追分 | レ | ○ | ||
29 | 細野 | レ | レ | ||
28 | 北細野 | レ | レ | ||
27 | 信濃松川 | レ | ▲ | ||
26 | 安曇沓掛 | レ | レ | ||
25 | 信濃常盤 | レ | ○ | ||
24 | 南大町 | レ | レ | ||
23 | 信濃大町 | ● | ● | 運行系統上の境界 | |
22 | 北大町 | レ | レ | ||
21 | 信濃木崎 | レ | ○ | ||
20 | 稲尾 | レ | レ | ||
19 | 海ノ口 | レ | レ | ||
18 | 簗場 | レ | ○ | ||
16 | 南神城 | レ | レ | ||
15 | 神城 | ◾︎ | レ | ||
14 | 飯森 | レ | レ | ||
13 | 白馬 | ● | ● | 「しなの」終点 | |
12 | 信濃森上 | レ | ○ | 元急行終着駅 | |
11 | 白馬大池 | レ | レ | ||
10 | 千国 | レ | レ | ||
09 | 南小谷 | ● | ● | 運行系統上の境界 | |
↑JR東日本/↓JR西日本 | ↑直流電化/↓非電化 | ||||
中土 | |||||
北小谷 | |||||
↑長野県/↓新潟県 | |||||
平岩 | 当駅発着あり | ||||
小滝 | |||||
根知 | |||||
頸城大野 | |||||
姫川 | |||||
糸魚川 | 在来線駅はトキ鉄管理 |
廃止駅
()は駅ナンバリング
- 北松本臨時貨物積卸場
松本〜北松本間。
- 青島停留場
北松本〜島内間。
- 仏崎駅
信濃常盤〜南大町間。初代信濃大町駅。
- (臨)ヤナバスキー場前駅(17)
簗場〜南神城間。臨時駅。
使用車両
現在の使用車両
JR東日本所属
松本車両センター所属の特急形電車。特急「あずさ」で使用。
長野総合車両センター所属のハイブリッド気動車。臨時快速「リゾートビューふるさと」で使用。
- 211系3000・1000番台
長野総合車両センター所属の近郊形電車。
定期運用区間は松本〜信濃大町間。通常は3000番台が運用されるが、代走時等に1000番台が使用される事もある。
- E127系100番台(メイン画像)
松本車両センター所属のワンマン運転対応の電車。
電化区間で使用。
JR東海所属
神領車両センター所属の特急形電車。
臨時特急「しなの」で使用。
JR西日本所属
- キハ120形300番台
金沢総合車両所富山支所所属の気動車。非電化区間で使用。
岡山気動車区(現・後藤総合車両所岡山気動車支所)から転属した為、岡山時代と同じ塗装で運用されている。
えちごトキめき鉄道所属
トキ鉄の観光列車。ツアー列車として大糸北線に乗り入れ、南小谷で臨時快速「リゾートビューふるさと」に接続する。
過去の使用車両
かつては旧型国電等が使用され、京浜東北線や阪和線の様にスカイブルーの塗装が施されていた。
ここでは国鉄民営化後の車両のみ記載。
JR東日本所属
- 165系(画像)・169系
長野総合車両所(現・長野総合車両センター)所属の急行形電車。
国鉄時代は急行列車として入線していたが、民営化後は普通列車や臨時急行「白馬山麓スキー号」として使用された。
- 183系・189系(画像)
長野総合車両センター・旧・習志野電車区所属の特急形電車。
長野車は特急「あずさ」、急行「アルプス」、臨時快速「ムーンライト信州」(189系のみ)で使用された。
習志野車は長野車と共に臨時急行「シュプール白馬山麓」「シュプール白馬・アルペン白馬」で使用された。
- 185系200番台
田町電車区(現・東京総合車両センター田町センター)所属の特急形電車。
臨時急行「シュプール白馬」で使用された。
- 485系リゾートエクスプレスゆう
勝田電車区(現・勝田車両センター)所属のお座敷列車。
臨時急行「シュプールゆう白馬」で使用された。
- E257系0番台
松本車両センター所属の特急形電車。
特急「あずさ」で使用された。
松本車両センター所属の特急形電車。
特急「スーパーあずさ」で使用された。
長野総合車両センター所属の近郊形電車。
電化区間で使用された。
JR東海所属
神領車両区所属の特急形電車。
臨時特急「しなの」、臨時急行「シュプールつがいけ・シュプール栂池・八方」で使用された。
JR西日本所属
- 381系
旧・日根野電車区・出雲鉄道部(現・後藤総合車両所出雲支所)所属の特急形電車。
日根野車は特急「くろしお」用、出雲車は特急「やくも」用車両(画像)で、臨時急行「くろよん」(日根野車)「シュプール白馬アルプス」で使用された。
京都総合運転所(現・吹田総合車両所京都支所)所属。
特急「はまかぜ」用車両で、臨時特急「シュプール白馬アルプス」、臨時急行「シュプール白馬・栂池」で使用された。
「エーデル」(画像)「シュプール&リゾート」「ゆぅトピア」「ゴールデンエクスプレスアストル」等のジョイフルトレインが「「シュプール白馬・栂池」で運用された。
金沢総合車両所所属のディーゼル機関車で、大糸線内における臨時急行「シュプール白馬・栂池」牽引機。
- 14系(画像)・20系
臨時急行「シュプール白馬・栂池」で使用された客車。編成は運行年によって異なった。14系は座席車・寝台車の他に「シュプール&リゾート」編成や「サロンカーなにわ」や「ゆうゆうサロン岡山」等のジョイフルトレインも使用された。
旧・富山運転所及び富山地域鉄道部(現・金沢総合車両所富山支所)所属の気動車。
非電化区間及び一部のJR東日本直通列車で使用された。
JR貨物所属
EF64形
貨物列車を牽引していた電気機関車。