神話のケンタウロスの概要
厳密に言えばその身体は「人間の上半身と馬の下半身」ではなく、「人間の上半身と馬の首から下の全身」を有している。つまり二本腕と二本脚の四肢ではなく、二本腕と四本脚の六肢を有する種族である。なお、本項目ではその「首から下」の事を「下半身」と表記する。
野心深いイクシオンという青年が神妃ヘラに欲情したので、大神ゼウスがヘラを守るべく、ヘラの形に似せた雲を身代わりにした所、イクシオンとその雲の間に生まれたとされている。
テッサリア地方のペーリオン山やアルカディア地方などの広い範囲に生息し、性質は親に似て(※)酒が好きで好色という凶暴な個体がほとんど。
※父祖であるイクシオン自身、欲望のために悪行も辞さない卑劣漢であり、ゼウスに神々の宴に呼ばれた際も、ヘラへの下心を隠そうとせず酒に酔わせて寝取るつもりだった。しかし、すべてがゼウスに筒抜けで、タルタロス送りにされた挙句、永遠に車輪に拘束されて火刑に処されることになった。
なので登場する場合は英雄に退治される側である事が殆どなのだが、同時に英雄の死に関わることもある存在であり、ヘラクレスの妻であるディアネイラを唆してヘラクレスを殺している他、大木でカイネウスを圧殺している。
主な武器は槍、棍棒、弓矢といった騎乗兵にとって相性のいい武器が多い。特に弓矢は上半身が人間であるので振り落とされる心配がなく、射撃に集中できる点がが強みと言える。ここから派生して創作作品では騎士の属性が加わる事も珍しくない。神話では凶暴な彼らが騎士道属性を付け加えられるというのは皮肉なもんである。
ダンテの神曲では血の河地獄で暴君達を罰する牛頭馬頭枠として登場。(ご丁寧にミノタウロスもちゃんといる。)このうちネッソスはケイローンの命を受けてダンテ達の案内を買って出ている。
十二星座の射手座には、人格、能力共に優れたケイローンというケンタウロスが死んだ時、ゼウスが彼を星座にかたどったエピソードがある。
またケンタウルス座はヘラクレスの放った毒矢に誤って触れて死んだ心優しいケンタウロス・ポロスだとする説がある(ちなみにケイローンは先代の大神クロノスと女神ピュリアーの息子なので狭義的な意味でのケンタウロス族ではない)。
原典では男性しかいない種族となっていて、女性のケンタウロスは後世の創作にしか登場しない。
なお、その特異なフォルムから内臓や生殖器はどこなのかと議論の対象になる。少なくとも、創作で女性のケンタウロスが登場する際には乳房は人間と同じ位置にある(生殖器に関しては馬部分にあった方が合理的ではある)。
名称
語源ははっきりしておらず、「雄牛を屠る者」の意という説や「刺し貫く雄牛」の意であるとする説などがあり、牛が関連する事だけはどの説でも一致している(同じギリシア神話に登場する怪物ミノタウロスは「ミノスの牛」を意身する。牡牛座を英語でタウラスと呼ぶのも同じ語源。それらと同様にケンタウロスのタウロスも「牛」のこと)。
英語ではCentaur(セントー、セントール)、フランス語Centaure(サントール)、ドイツ語ではKentaur(ケンタウア)、もしくはZentaur(ツェンタウア)といった具合に言語ごとに様々に表記される。
ちなみに女性形は「ケンタウレ」となる。
類似の存在
名前にケンタウロスとつく種族がいくつか登場する。それらもおおむね「上半身が人間で下半身が他の動物」という生物で、「人+ロバ」のオノケンタウロス(参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Onocentaur)、「人+馬+魚」のイクテュオケンタウロス(参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Ichthyocentaurs)などがよく知られていて、絵画や彫像の題材にされてきた。他に「人+ドラゴン」のドラコケンタウロス、「人+ライオン」のレオントケンタウロス、「人+牛」のブケンタウロスというのもあるそうだが、これらはマイナーなのか資料が少ない。
イクテュオケンタウロスの姿の表現は作品によって様々で、人魚の腰から馬の前足が生えた姿や、ケンタウロスの馬の尻から魚の尾が生えた姿などがある。
上半身が普通の人間ではなく、蟹のハサミのような手と獣のような顔を持ち二本の角を生やした姿もある。
通常のケンタウロスをこれらと区別する場合、馬を意味するヒッポを付けてヒッポケンタウロスと呼ぶ。
なおピクシブで「ドラコケンタウロス」と言うと『ぷよぷよ』シリーズの登場キャラの少女を指すのがほとんどのようだが、これは人間の全身にドラゴンの角・翼・尻尾を生やした姿で、上に挙げたドラコケンタウロスとは異なる。
聖闘士星矢の射手座の黄金聖衣のように馬部分がペガサスになった図像で描かれる事も多々ある。
タウル
近年ではこうした「人の上半身と動物の下半身」というパターンの種族全般に対する呼称として「タウル」(taur)の語が用いられる。恐らくケンタウロスの語を簡略化して生まれた呼び名であろう。ただ上で述べた様にそこだけ取り出すと「牛」の意味になってしまうが、
現代人にはあまり関係無いのである。
余談だが、ロボットアニメや特撮ヒーロー番組などにたまに登場する「人型の上半身とマシンの下半身を持った存在」(具体的にはゲッター3やガンタンク、アナザー1号など)も、デザイン的にはタウルの系譜に連なると言えるかもしれない。
サンタウロス
サンタウロスはお笑いコンビ笑い飯のコントに登場するトナカイのケンタウロス。上記の分類でいうと「エラポスタウロス(鹿タウル)」にあたる。
クリスマスムード全開の姿に反して、下半身がトナカイの為、クリスマスのチキンを食べると消化不良を起こすというミルメコレオ(アントライオン)的な矛盾を抱えている。
関連イラスト
ケンタウロスの例
ケンタウロス型メカ
関連タグ
パピルサグ(サソリの尾を持つケンタウロス) ウルマフルッルー
神話に登場するケンタウロスの例
- ケイローン(キロン):賢者。多くの英雄の師として様々なことを教えた。
- ネッソス:ヘラクレスを毒殺したケンタウロス。
- ポロス(フォルス):野蛮ではないケンタウロス。ヒュドラの毒で死んでしまう。
- ヒュロノメ:女性のケンタウロスで『変身物語』に登場。夫のキュラロスが殺され彼女も自決した。粗野なケンタウロス族には珍しく、お洒落をする程に美意識は高い。
ケンタウロスが登場する作品
- ナルニア国物語
- シャイニングシリーズ:亜種として下半身がロバの者やペガサスの者も登場。
- ハリーポッターシリーズ
- モンスター娘のいる日常:セントレア・シアヌスなど女性のケンタウロスが登場。
- セントールの悩み:女性のケンタウロスが登場。本作では馬耳が付いている。
- モンスター娘のお医者さん
- 妖怪の飼育員さん
- 異種族レビュアーズ:女性が輸送隊兼サキュ嬢。
- 科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌:双子が特殊な結合をして進化した。馬部分は本物より小柄で細身。
- ONEPIECE:トラファルガー・ローにより動物の下半身を植え付けられた犯罪者や海賊がパンクハザードの護衛を行っていた。その他、ケンタウロスになる能力を持つ人物も登場。
- エリア51(久正人):街で爵位を持つケイローンが医者を開業している。
- ドリフターズ:黒王率いるモンスター軍勢の騎馬部隊担当。
- ライドンキング:異世界転移した、あらゆるものに乗りたがるプルジア共和国終身大統領アレクサンドル・プルチノフが乗りたいと望んでいたが…
- MTG
- 遊戯王シリーズ:基本的には半人半馬だが、融合によって牛の要素が含まれることも。
- モンスターファームシリーズ:MF2で初登場。その後暫く登場しなくなるが、DS2で久々の登場を果たした。詳細はこちら→ケンタウロス(モンスターファーム)
- サガ3時空の覇者:モンスターが落とす肉を食べると変身できる獣人にこの系統がおり、ジャケ絵にも描かれている。
- ソード・ワールドシリーズ
- ファンタシースター:セントールとしてⅠとⅣに混沌の軍勢として登場。
- ヘラクレスの栄光:Ⅱではパーティキャラである。
- ドラえもん:空想動物サファリパークで複数体が飼育されている。
- Fateシリーズ:サーヴァントとしてケイローンの他、エネミーとして馬の鉄兜を被ったケンタウロスが登場している。
- 聖闘士星矢:ケンタウルス星座のバベルや射手座のアイオロスが纏う聖衣はケンタウロスを模している。(なお、バベルの聖衣のオブジェ形態の上半身はパーツ数の都合上、バンザイしているかのような造形になっている)
- はたらけ、ケンタウロス!
- ゴールデンアックス:アーケード版続編の『ゴールデンアックス デスアダーの復讐』にて、プレイヤーキャラクターの一人であるドーラがケンタウロス。ベルトスクロールアクションでプレイヤーキャラクターがケンタウロス、しかも女性というのはおそらく唯一。
- 女神転生シリーズ
- デジタル・デビル・ストーリー女神転生Ⅱ:ギリシアの軽装歩兵のような武装をしている。色違いにガンダルヴァがいる。
- 真・女神転生Ⅳ:最下級の妖魔として仲魔になる。ゲストデザイナーの鬼才韮沢靖氏による、上半身が開きになった二足歩行のユニコーンが騙し絵で人面に見えるという新解釈の姿である。
- ペルソナ2罪:ラスト・バタリオン所属の多脚ロボット兵器の名が「メタル・ツェンタオア」である。
- 射手座のケンタウロス:星野之宣の漫画作品。とある惑星に生息するケンタウロスに似た生物は不老不死であるといわれ、富豪の老人はその不死を自らのものにしようとするが…。
- ゼウスの種:ケンタウロスをはじめとしたギリシア神話の登場人物たちが留学生として日本の大学に入学するコメディ漫画。
- からくりサーカス:猛獣使いの自動人形ドクトル・ラーオが使役する「幻獣」の一体としてケンタウロスが登場。正体は機械の身体に動物の脳を仕込んだサイボーグ。
関連キャラクター(ケンタウロス型メカ)
- 妖機械獣ケントールγ7(マジンガーZ)
- 妖機械獣ケンタウドールγ7(テレビマガジン版マジンガーZ):馬の後ろ半分からも上半身が生えている。
- 猛獣将軍ライガーン(グレートマジンガー):デザインベースはライオン。
- ジーグ・パーンサロイド(鋼鉄ジーグ)
- どれい獣デモン(超電磁ロボコン・バトラーV)
- ウルケンタウロス(魔法戦隊マジレンジャー)
- ガオケンタウロス(百獣戦隊ガオレンジャー):下半身がライオン。
- ガオゴーカイオー(海賊戦隊ゴーカイジャー):下半身がライオン。
- ブラックホース(キカイダー02)
- 武者精太頑駄無(SD戦国伝シリーズ)
- 大馬神(ヤットデタマン)
- ケンカウリマスメカ(ヤットデタマン)
- 人馬兵(機甲界ガリアン)
- 電(銃夢)
- スレイプニール(機神幻想ルーンマスカー)
- ストーム(サイバーナイト2)
- アッサーム/セイローム(NG騎士ラムネ&40)
- ツェンドルグ/ツェンドリンブル(ナイツ&マジック)
- ケンタウロスマン(ロックマン6)
- 項羽(Fate)(Fate/GrandOrder):4本の腕を持つ。
- グレートモンド(サガフロンティア):全部で5回もある形態変化をもつ
- エクウス(コンクリート・レボルティオ)
- ガンダムキマリストルーパー(機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ)
関連キャラクター(その他)
- パペッティア人(ノウンスペースシリーズ):ネサスやキロンなどケンタウロスに因んだ名前を名乗る。
- ケンタラウス(ドラゴンクエストシリーズ): タウラスでなくタラウス。
- ケンタロス(ポケットモンスター): こちらは牛である。
- スロウケンタ(半熟英雄):下半身が人の馬。
- ドラコケンタウロス(魔導物語シリーズ)
- ケンタウロス(仮面ライダー(漫画)):萬画版オリジナルの怪人。
- ホースオルフェノク、エレファントオルフェノク他(仮面ライダー555)
- 変身超獣ブロッケン/ジャンボキング/黄金竜ドランゴ/ゾグ(ウルトラ怪獣)
- 光龍騎神サジット・アポロドラゴン(バトルスピリッツブレイヴ):ケンタウロスのようなドラゴン。
- 超神光龍サジットヴルム・ノヴァ(バトルスピリッツサーガブレイヴ): ケンタウロスのようなドラゴン。
- サタンクロス(キン肉マン):厳密にはヒューマノイドタイプの超人二人が本体側の腹部でもう一方の頭部から両肩にかけての部分と合体して、尚且つ分離も自在な四腕ケンタウロス状態。
- チェック・メイト(キン肉マンII世):「ナイト」の能力を発動すると馬頭ケンタウロス状態に変身する。
- 赤兎馬(Fate)(Fate/GrandOrder):見るからにケンタウロスなのだが、顔は馬そのものになっている。
- ケンタルモン(デジモンアドベンチャー)
- サジタリモン(デジモンアドベンチャー02):ケンタウロスのようなドラゴン。
- ヴァジラモン(デジモンテイマーズ)牛がモチーフで、体型はケンタウロスなのだが、顔は牛のまま。
- パジラモン(デジモンテイマーズ)羊がモチーフで、体型はケンタウロスなのだが、顔は羊のまま。
- 妖獣エバイン(TVアニメ版・デビルマン):ケンタウロス型のデーモン族。自身の腕を持たず、代わりに他人の腕を自在に操る。
- 剣頭吏(切法師):「ケントウリ」と読む。騎馬武者を依代にして生まれた半人半馬の鬼。作中では鬼と他の妖怪を区別するために異国の怪物や神獣を捩った名称が付けられる。
似て非なるもの