パトリック・ザラ「思い知るがいい、ナチュラル共!この一撃が、我らコーディネイターの創世の光とならん事を!!」
概要
ザフトが開発した最終兵器である、核エネルギーを使用したガンマ線レーザー砲。
名前
正式名称は「Gamma Emission by Nuclear Explosion Stimulate Inducing System」であり、「ジェネシス(GENESIS)」はその頭文字を取ったコードネームである。バクロニムとしての側面もあり、プラント最高評議会議長パトリック・ザラはこの兵器から放たれるガンマ線レーザーの光を「コーディネイターの創世の光」と称している。
開発経緯
元々はプラントにて、ジョージ・グレンによるエヴィデンス01の発見以降進められてきた恒星間探査計画の一環として建造が開始された。シーゲル・クラインが宇宙開発に熱心だったことも相まって、彼の最高評議会議長在任時にザフトにおけるソーラーセイル研究の過程にて作り出されたものであり、外宇宙探索のための宇宙船加速装置(レーザー推進)として開発が進められていた。基礎建造物の着工は戦前(C.E.70年4月1日以前)になされていたが戦争の激化に伴い、地球連合軍およびナチュラルへの憎悪に燃えるパトリックとその派閥により(もう一つの大派閥には内密で)原爆の起爆設備とガンマ線の収束機器の追加といった相応の改修が行われ、戦略兵器として転用される運びとなった。兵器への改修についても、前述の理由から開戦後の急速な竣工を可能としており、コロニーサイズの設備ながらC.E.71年9月26日には満を持して実戦投入された。また、前述の通り内密な改修だったことに加え、ニュートロンジャマーキャンセラーを使用した兵器ということもあり、建造中は最高機密として扱われており、前線部隊には発射直前まで秘匿されていた。
そのサイズからプラントのあるラグランジュ点L5の宙域にて建造され、プラント最終防衛ラインであるザフトの宇宙要塞「ヤキン・ドゥーエ」の近隣に配備されている。
構造・原理
コロニーサイズの本体ユニットと円錐状のミラーブロック(一次反射ミラー)により構成されている。
発射の際は本体内チェンバー(中枢部にある反応炉)においてニュートロンジャマーキャンセラーによって使用可能になった原子爆弾(ニュークリアカートリッジ)を爆発させることによりガンマ線の線源とし、それをコヒーレント波に変換してレーザー光を得る。それを一次反射ミラーに照射して焦点を調整、本体に設置された二次反射ミラー(一次、二次ともにミラーに発生させた力場が物質では不可能なガンマ線の反射を実現している)に反射してエネルギーを集中させ、目標に向けて照射する。照射終了後は一次反射ミラーがガンマ線レーザーにさらされて赤熱・破損するため、次の照射には一次反射ミラーを交換する必要があり、交換には数時間要する。そのため、発射可能な回数は一次反射ミラーの数までとなり、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦にて運用された際には計4基の一次反射ミラーが用意されていた。なお、暴発を防ぐための安全措置の一環か、発射シークエンスでは本体内チェンバーのニュートロンジャマーキャンセラーの起動が原子爆弾の起爆直前に設定されており、核動力機のようにNJCが常時起動し続けていない。
ガンマ線は非常に透過性の高い放射線かつ非常に高エネルギーの電磁波なため、直撃した物体の分子構造さえ容易に破壊する。MSや戦艦、軍事施設はこのレーザーの照射を数秒間浴びるだけで完全に破壊され、その内部にいた人間もサイクロプスのように体内の水分が沸騰して身体が膨張・破裂して死体も残さずに即死する。さらに、光速にて照射されるため事前に射線上から退避しない限りは回避も防御も困難となる(被弾しても範囲外へ即離脱すれば破壊を免れることはできる)。また、ガンマ線は不可視な光線であるためレーザーそのものを目視することはできず、レーザーのエネルギーによって超高温に加熱された星間ガスやスペースデブリが発光することにより赤白い「光の渦」としてレーザーが可視化される。
60%の出力でも宇宙艦の艦隊を消滅させるほどの破壊力を持つが、100%の出力にて地表へ照射した場合は目標地点が1平方メートルあたり毎分数万kWの不可視レーザーにさらされ瞬時に焼失、さらに加熱膨張した大気が超音速の衝撃波を発生させ、その加熱大気の傘に照射された二次反射レーザーがさらなる被害を発生させる。その破壊力について、パトリックの側近をしていたFAITHのレイ・ユウキは「撃てば、地球上の生物の半数が死滅します」、モルゲンレーテ社の主任設計技師であるエリカ・シモンズは「地球に向けられれば強烈なエネルギー輻射は地表全土を焼き払い、あらゆる生物を一掃してしまうでしょう」と述べている。
また、射程距離も非常に長く、L5宙域から月(プトレマイオス・クレーター)はおろか地球(40万km先)まで砲撃できる。
副次効果として、レーザーの通過した空間とその周囲の電子機器や通信に異常を発生させる。
本体ユニットとミラーブロックの外装にはミラージュコロイドやフェイズシフト装甲といった、C.E.71年1月25日に鹵獲した初期GAT-Xシリーズから入手した技術も導入されている。普段はミラージュコロイドにより隠匿されており、そのサイズにもかかわらず探知は困難を極める。起動時にはミラージュコロイドを解除してフェイズシフト装甲を展開することにより外装の強度を向上させる。大規模施設故の莫大な電力供給量により、その強度は戦艦のビーム砲はおろかクサナギの陽電子砲ですら破壊不可能なほどに高い。しかし、メンテナンス用ハッチ部の外装は他部分と比べると薄く、ジャスティスの一斉射撃により破壊されている。
また、内装についても要である本体内チェンバーは大量かつ高威力な原子爆弾を起爆する場所であるため非常に強固なようであり、その破壊に際してアスラン・ザラはMSのビーム兵装等ではなくジャスティスの自爆(核爆発)を選択している。
本兵器の制御室は本体内部ではなくヤキン・ドゥーエ内に存在し、完全な遠隔操作にて運用される。一方、ニュートロンジャマーにより遠隔操作の範囲は近距離に限られるため、本兵器はヤキン・ドゥーエの近隣から離れることができない。
後継
大量破壊兵器として転用されたが、戦後も元のソーラーセイル加速装置やその応用技術の研究は継続され、デュートリオンビーム送電システムの礎となっている。なお、デュートリオンビーム送電システムも兵器用の技術である。
総評
コズミック・イラの科学力を最も邪悪に結集した集大成とも呼べる存在であり、その殺傷力はガンダムシリーズ全体を見ても月光蝶やソレスタルビーイング号に次ぐレベルと言える。
劇中での活躍
C.E.71年7月1日(PHASE-42)
実物は登場しないが、パトリック・ザラが本兵器の設計データを閲覧している。
C.E.71年9月26日(PHASE-47~48)
C.E.71年9月23日のボアズ攻防戦にて、地球連合軍がザフトの軍事拠点「ボアズ」への侵攻した際にMk5核弾頭ミサイルを使用したことを受け、パトリックの意向によりに使用が決定し、同年9月26日に始まった第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦にてプラントへの核攻撃未遂の報復として発射された。
1射目によりヤキン・ドゥーエに押し寄せた地球連合艦隊の40%を旗艦ワシントンごと焼き払って全軍の撤退を余儀なくさせる。この時、その破壊力を目の当たりにした者たちはザフト関係者も含めてほぼ全員が驚愕していた。なお、Mk5核弾頭ミサイルを撃墜するためにミーティアを装備して最前線にて行動していたジャスティスとフリーダムはイザーク・ジュールからの発射リークを聞いて一早く射線上から離脱したため難を逃れた。
C.E.71年9月26日(PHASE-49~FINAL-PHASE)
2射目により補給を兼ねた第2陣の攻撃隊半数を月面のプトレマイオス基地諸共消滅させた。作中描写では、プトレマイオス基地内部にいた女性オペレーターが風船のごとく膨張し破裂、爆死していった。
核抑止が崩壊した現状においてはその破壊力の矛先が地球に向く可能性は極めて高いと判断した三隻同盟により破壊が試みられるが、その強固なフェイズシフト装甲をもってこれを退ける。
ナチュラルへの憎悪と怒りに駆られたパトリックが静止するレイ・ユウキを銃撃し、3射目の照準を地球の大西洋連邦の首都であるワシントンD.C.に定める。また、この時、射線上にはザフトの艦隊が存在しており地球上にもコーディネイターの住民がいるにもかかわらず、「討たねばならんのだ!討たれる前に!敵は滅ぼさねばならん。何故それが解らん!!」「勝つために戦っているのだ!皆!覚悟はあろう!」と発射を強行しようとする。瀕死のユウキは最後の力を振り絞ってそんなパトリックを銃撃して発射を阻止しようとするも、既にヤキンの自爆シークエンスは起動され、その自爆に本兵器の発射を連動させていたため阻止することはできなかった。しかし、射線上にキラ・ヤマトのフリーダムに討たれたラウ・ル・クルーゼのプロヴィデンスがおり、レーザーの直撃によりプロヴィデンスの核エンジンが誘爆(核爆発)して一次反射ミラーが破壊されたため焦点を調整できなくなり破壊力と射程距離が低下する。さらに、間髪入れずにアスラン・ザラが本兵器の中枢部にてジャスティスを自爆(核爆発)させたことにより即座に照射が終了したため、レーザーが地球へ届くことはなかった。
余談
『スーパーロボット大戦W』では、2発目のチャージが完成してしまったことでどこか別の方向に向けてぶっ放さないと地球に当たってしまうという原作以上に危機的な状況に陥り、その際にホシノ・ルリからの献策で月のラダム母艦を狙撃することとなり、アスランが射線を変更しラダム母艦を吹き飛ばして地球の危機は去った。この際にジェネシスの真ん前にいたキラとクルーゼに加え、ラダム母艦で戦っていたテッカマンブレードも爆発に巻き込まれたが、すんでの所で脱出に成功している。クルーゼに至っては版権作品最後の敵として登場するほどである。
系列兵器
ジェネシスα
「ASTRAY」「DESTINY ASTRAY」に登場した本兵器の小型プロトタイプ。
リジェネレイトに搭載されたレーザー加速システム「ライトクラフト・プロパルジョン」の外部加速装置として運用されており、「外宇宙探索船用の加速装置」という本来の運用方法に近い形で使われている。
内部に工廠を持ち、リジェネレイトとテスタメントが製造された。
本兵器と同様に施設全体をフェイズシフト装甲によって覆い尽くし防御を固めていたが、後に全て剥がされて自動車の素材にされた。
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦後、ジェネシスα防衛隊長アッシュ・グレイが駆るリジェネレイトがロウ・ギュールに敗北したためジャンク屋組合に接収され、宇宙における本部となった。ザフトがこれを破壊すべく攻撃をかけるが、傭兵部隊サーペントテールらによって撃退されている。その後、ロウはこの外部加速装置としての機能を用いて火星へと旅立った。
ブレイク・ザ・ワールドの際にザフト脱走兵とアメノミハシラの軍勢がジェネシスαを巡って戦闘が発生しており、次にジャンク屋組合が落下中のユニウスセブンの破壊に用いようとするが、テスタメントの介入により失敗する。テスタメントの再戦時ではテスタメントのパイロットによって暴走させられてしまい、秘匿されていた連合基地が壊滅してしまった。さらには連合基地壊滅の報復に来た連合の襲撃に遭い、予め細かいパーツに分解していたジェネシスαを完全にパージさせられた。残骸は新本部となるジャンクαに生まれ変わり、ジェネシスαにいたジャンク屋組合の構成員も、飛散したパーツに紛れて脱出しアメノミハシラへ避難した。
ネオ・ジェネシス
宇宙要塞メサイアの切り札として要塞に内蔵されている。制御室もメサイア内に存在するため従来のような遠隔操作ではなくなった。
かなり(作中描写上は7分の1以下まで)小型化されたため、破壊力や射程距離も相応に低下しており、特に射程距離については月面にある大型クレーターの直径程度しかない。一方、ガンマ線を反射する力場やフェイズシフト装甲が改良されたことにより一次反射ミラーの耐久性が向上したのか、数時間も要する一次反射ミラーの交換が不要となり、総合的な取り回し性は改善されている。一次反射ミラーの交換は不要になったものの、その交換時間の長さから無視されていたチャージ(その原理的にエネルギー的なものではなく、一次反射ミラーや本体内チェンバーの冷却か原子爆弾の再装填)に要する時間は省略できておらず、相変わらず連射はできない。
劇中での活躍
PHASE-48
メサイアの登場と共に1射目を放ち、オーブ艦隊と連合艦隊の約半数を焼き払う。
PHASE-50
ザフト側の最高司令官ギルバート・デュランダルがオーブへレクイエムを撃って早急な戦闘終結を優先し、2射目にて敵味方問わずレクイエムの砲門前を一掃したため自軍の艦隊も巻き添えになっている(アーサーの台詞では、マルベースとブルトンが巻き込まれて轟沈している)。この強行発射はザフトの前線部隊にも大きな精神的衝撃を与え、ミネルバの艦長タリア・グラディスはギルバートに対して不満を吐露している。なお、イザーク・ジュールからエターナルに対して発射のリークがあり、エターナルが射線上の友軍に退避指示を出したためオーブ艦隊と連合艦隊は回避に成功している。
結果的にレクイエムもインフィニットジャスティスとアカツキにより発射寸前で破壊され、その直後にミーティアを接続したストライクフリーダムとエターナルによりメサイア諸共破壊された。
余談
ガンマ線バーストとの関係性
やっていること自体はガンマ線バーストに限りなく近い。
ガンマ線バーストとは、ガンマ線が短時間に大量に放出される天文現象である。その際に放出されたガンマ線はレーザービームのようにある程度狭い範囲から一直線に放たれる。
地球に直撃した場合、ジェネシスのようにエネルギー輻射(ガンマ線を地球の大気が吸収した際に変換される熱エネルギー)で地球全土を焼き払うほどのエネルギーが無かったとしても、大気中の酸素と窒素分子で大量の窒素酸化物を合成させオゾン層の25〜35%(場所によっては75%)を破壊する。さらには光化学スモッグと酸性雨まで引き起こすとされている。また、副次的影響としてオゾン層が破壊されたことにより紫外線レベルが上昇し、大抵の生物はDNA損傷が通常の16倍になるという被害を受ける。そのため、ガンマ線バーストは長期的影響の方が危険とされている。
つまり、ジェネシスが地球に対して発射されていた場合、オゾン層は壊滅、大気の組成も大きく変化(酸素と窒素の割合が大きく減少)し、空は光化学スモッグに覆われ、地表には大量の紫外線と酸性雨が降り注ぎ続け、生物も熱エネルギーで焼き尽くされるか遺伝子異常で正常に子孫を作れなくなるという、文字通りの「死の星」が誕生していた。
そのため、地球の生命と環境に与える不可逆的被害はコロニー落としの比ではない。パトリックの命令にその場の全員が困惑し、ユウキが命懸けで静止したのは至極当然と言える。
臨界量について
現実では破壊力を得るために臨界量以上の核分裂物質を集積すると臨界状態になってしまうため、臨界事故を避けるためには原子爆弾の核出力をTNT換算で1Mt程度に留める必要がある(その制限を重水素により無視したものが水素爆弾)。
一方C.E.では、ニュートロンジャマーが存在するため容易に臨界状態を抑制することができることを利用して、臨界量を無視した核分裂物質の大量集積を実現していると考えられる。また、起爆についても火薬による爆縮等は必要なく、ニュートロンジャマーキャンセラーによりニュートロンジャマーの抑制を相殺するだけでよい。
関連タグ
みんなのトラウマ…土曜日18時に人間が破裂して死ぬシーンが流れているため、一部の人からはサイクロプスと同じトラウマ要素の一つとして挙げられている(ただし、「DESTINY」ではそれらの描写が無い)。
ソーラ・レイ コロニーレーザー…宇宙世紀における似たような破壊兵器。原理が近いのは「DESTINY」の「レクイエム」であり、光線を曲げることで事実上どこにでも当てられるという恐るべき仕様になっている。