U.C.0079――君は生き延びることができるか?
U.C.0096――生き延びることは出来た。君は今、何を為すのか?
君の中の可能性(ニュータイプ)が、目を覚ます
概要
「機動戦士ガンダム」を題材としてKADOKAWA発行のガンダムエース誌上で2007年~2009年に連載した小説作品。
作品のベースは『亡国のイージス』などで知られる小説家の福井晴敏氏が、設定考証として『ふたつのスピカ』、『交響詩篇エウレカセブン』で知られる小倉信也氏とコンビを組んで制作している。
これを原作としたOVAアニメも制作されている。原作、シリーズ構成は福井氏、監督は古橋一浩氏が担当。
設定上は宇宙世紀であるが、いわゆる『ポケットの中の戦争』や『ガンダム0083』等のようにガンダムの生みの親である富野由悠季は関与しない外伝的な作品となっている。
株式会社サンライズの劇場アニメ『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』から3年後の、宇宙世紀0096年を舞台とし、この『逆シャア』までと、時代設定が本作より後年代となる『機動戦士ガンダムF91』の宇宙世紀作品に登場したキャラクターやメカニック、そしてそれらを支える設定が多数登場するため、上記二作品の空白となっていた約30年間を埋める役割を果たしている。
このようなオリジナルストーリーは古参のガンダムファン達からはおおむね歓迎されたものの、他の外伝作品と同じように作者独自の解釈が強く出ており、またニュータイプにまつわる要素のパワーインフレが頂点に達しオカルトありきの演出が過去作に比べ多用されたこと、本編シリーズとの設定の矛盾などから、「作者の独りよがりを無理矢理公式化している」「少なくとも宇宙世紀の世界観には合わないのでは」という批判も少なからずある(これは公式側も把握しているらしく、福井氏自ら脚本を執筆したゾルタンによる解説動画においては「これ別のアニメじゃないの!?」と自虐を多分に含んだメタ発言を喋らせている)。
実際の内容としても良い意味で言えば初代ガンダムに原点回帰したようなリアル路線、悪く言えば逆シャア以降の話としてはあまり新鮮味がないストーリーとなっており、
Z以降の新しい路線のガンダムを支持するファンからはイマイチ、別物という評価がなされている。
これは福井晴敏氏がガンダムよりもイデオンなど初期の富野作品のファンであること、元々続編として作るつもりはなかった事が関係していると思われる。
反面、初代のファンからは雰囲気が近いためか非常に評価が高い。
既述の通り、元々はKADOKAWAがガンダムの版権を用いて発表した作品であったが、原作小説の好評を受け、株式会社サンライズと共同で2010年より全7話のOVAとして映像化したという経緯をもつ。このため、原作者である福井氏はOVAではシリーズ構成、小倉氏はそのまま設定考証として参加、監督は古橋氏が務めている。
この「紙媒体からのアニメ化」はガンダムシリーズとしては異例の試みであり、OVAという視聴者層がコアなファンに限定されやすいメディアながら好評を博し、全国ネットでの地上波放送で日曜朝に進出(後述)、更には主役機ユニコーンガンダムの実物大立像がお台場に建造されるなどガンダムシリーズの「顔」の一角と呼んでも過言ではないレベルにまで成長を遂げている。
本作の大ヒットが後年の『機動戦士ガンダムTHEORIGIN』、『機動戦士ガンダムサンダーボルト』といった他メディア作品映像化の先駆けとなった。
アニメはまずイベントで上映し、それに合わせた先行販売・Web先行配信の後、市場で販売を行うという形式が取られた。
さらに2016年4月には新規映像を加えた再編集版が『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』のタイトルで名古屋テレビホスト・テレビ朝日系列(ただし一部系列局除く)で放送。余談だが、テレビ朝日系列での放送は『機動新世紀ガンダムX』以来。また名古屋テレビホストであれば『機動戦士ガンダムZZ』、宇宙世紀作品のテレビシリーズは『機動戦士Vガンダム』以来となる。
そして、残念ながらテレビ朝日系列で放送された最後のガンダムシリーズとなっただけでなく、当該枠も翌年秋に廃枠となってしまった。
なお、RE:0096はデータ連動による世界観解説の他、投稿イラスト紹介や副音声による作品解説等の企画も行われており、副音声のナビゲーターはよゐこの濱口優氏が担当した。
上述した理由で、アニメ化にあたって(尺の都合もあり)大幅な改訂を受けている部分も少なくなく、テーマ自体も『父から子への継承』へと変更され、各エピソードには主人公バナージと対になる“父性”を受け持つキャラクターが配されている。これら改訂に対する福井氏の意見は、各種インタビューで取り上げられているが、最終的には感謝の言葉で締められている)。
また、原作小説自体もアニメ化に合わせて角川文庫や角川スニーカー文庫の二形態で文庫版が刊行された他、コミカライズ作品に『機動戦士ガンダムUC バンデシネ』がある。
2017年には本作(OVA版)の続編にあたる配信アニメ『機動戦士ガンダムTwilightAXIS』が制作され、更に2018年には福井氏自身が原案小説・脚本を務める『機動戦士ガンダムNT』が公開されることとなった。
ストーリー
U.C.0001―。
宇宙への移民が始まった、新たな時代。
西暦から宇宙世紀(Universal Century:U.C.)に移るセレモニーが行われていた地球連邦政府の首相官邸、宇宙ステーション〈ラプラス〉が爆破テロにより粉々に砕け散る。
貧しさからそのテロ事件に加わった青年サイアムは、〈ラプラス〉の爆発に巻き込まれ、残骸の中である物を発見する。
それは後に『ラプラスの箱』と呼ばれることとなる禁忌の箱だった。
U.C.0096―。
『シャアの反乱』から3年、一年戦争から続く戦乱の世は、表面上には平穏を取り戻しているかのように見えた。
工業スペースコロニー〈インダストリアル7〉に住む少年バナージ・リンクスは、ある日、オードリー・バーンと名乗る謎の少女と出会う。彼女は、ビスト財団とネオ・ジオン残党軍『袖付き』による『ラプラスの箱』の取引を止めようと、単身行動を起こしたのだ。
彼女に対し、協力するバナージ。だが、同じく取引を妨害するため乗り込んだ地球連邦軍と『袖付き』との戦闘により、コロニーは戦場と化してしまう。オードリーを探して戦火を走り抜けるバナージは、『ラプラスの箱』の鍵となる純白のモビルスーツ、ユニコーンガンダムとの運命的な出会いを果たす。
『ラプラスの箱』とは何か―。
『箱』の抱く秘密とは何か―。
今、宇宙世紀 百年の呪いが解かれようとしていた。
(アニメ公式サイトより引用)
主な登場人物
民間人
オードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)(CV : 藤村歩)
アーロン・テルジェフ(CV : 横堀悦夫)
バンクロフト(CV : 楠見尚己)
デニス(CV : 朝倉栄介)
トム(CV : 日野聡)
マルコ(CV : 宮下栄治)
ディクバ(CV : 田村睦心)
エスタ(CV : 広橋涼)
ベルトーチカ・イルマ(CV : 川村万梨阿)
地球連邦軍
レイアム・ボーリンネア(CV : 渡辺美佐)
ミヒロ・オイワッケン(CV : 豊口めぐみ)
シドー・オモキ(CV : 多田野曜平)
カーセル・ミツケール(CV : 丸山壮史)
ヘルム・コンバース(CV : 志村知幸)
ウタルデ・ハッシャー(CV : 杉村憲司)
ボラード(CV : 井上剛)
ジョナ・ギブニー(CV : 斎藤志郎)
ノーム・バシリコック(CV : 宮内敦士)
イアン
ホマレ(CV : 勝沼紀義)
ガロム・ゴルガ(CV : 興津和幸)
ナイジェル・ギャレット(CV : 中村悠一)
ダリル・マッギネス(CV : 勝杏里)
ワッツ・ステップニー(CV : 安元洋貴)
ECOAS/エコーズ
コンロイ・ハーゲンセン(CV : 三宅健太)
地球連邦政府
リカルド・マーセナス(CV : 有本欽隆)
ローナン・マーセナス(CV : 小川真司)
ダグラス・ドワイヨン(CV : 西川幾雄)
ジョン・バウアー
ビスト財団関係者
カーディアス・ビスト(CV : 菅生隆之)
マーサ・ビスト・カーバイン(CV : 塩田朋子)
袖付き(ネオ・ジオン)
スベロア・ジンネマン(CV : 手塚秀彰)
アンジェロ・ザウパー(CV : 柿原徹也)
ヒル・ドーソン(CV : 梅津秀行)
アレク(CV : 乃村健次)
ベッソン(CV : 坂詰貴之)
トムラ(CV : 小松史法)
サボア(CV : 西凛太朗)
セルジ(CV : 早志勇紀)
ジオン残党軍 / その他
映像作品外
マハディ・ガーベイ
登場メカニック
UC計画
地球連邦軍
艦艇
ビスト財団
袖付き(ネオ・ジオン)
艦艇
ジオン及びネオ・ジオン地球残存勢力
ジオン共和国
艦艇
専門用語
- ラプラス事件
宇宙世紀元年(U・C0001)に起きたテロ事件。
詳細はラプラス事件の項目を参照。
- 袖付き
第二次ネオ・ジオン抗争後も地球連邦と交戦を続けるネオ・ジオンの残党。
詳細は袖付きの項目を参照。
- ロンド・ベル
第二次ネオ・ジオン抗争で活躍した地球連邦軍の外郭部隊。
詳細はロンド・ベルの項目を参照。
- ビスト財団
サイアム・ビストによって興された財団法人。
詳細はビスト財団の項目を参照。
- ラプラスの箱
ビスト財団によって秘匿されて来た、開放されれば連邦政府が転覆するとされる謎の存在。
詳細はラプラスの箱の項目を参照。
- UC計画
宇宙世紀0100年の節目に向け、地球連邦軍参謀本部直轄の下、アナハイムの協力を得て極秘裏に進められた軍再編計画。
ユニコーンガンダムやジェスタの開発もこの計画の一環であり、その根底にはジオン側の信奉するニュータイプ思想、ジオニズムの否定が見え隠れしている。
詳細はUC計画の項目を参照。
- ラプラス事変
宇宙世紀0096年4月7日~5月4日の約一ヶ月間、『ラプラスの箱』を巡って巻き起こされた、当該の連続的な小規模軍事衝突に対して、後年につけられた名称。
制作スタッフ
企画・制作 | サンライズ |
---|---|
原作 | 矢立肇・富野由悠季 |
監督 | 古橋一浩 |
脚本 | むとうやすゆき |
オリジナルキャラクターデザイン | 安彦良和 |
アニメーションキャラクターデザイン | 高橋久美子 |
モビルスーツ原案 | 大河原邦男 |
メカニカルデザイン | カトキハジメ・石垣純哉・玄馬宣彦 |
ストーリー | 福井晴敏 |
設定考証 | 小倉信也 |
色彩設計 | すずきたかこ |
ディスプレイデザイン | 佐山善則・上村秀勝 |
美術監督 | 池田繁美 |
特殊効果ディレクター | 谷口久美子 |
撮影監督 | 脇顯太朗 |
編集 | 今井大介 |
音響監督 | 木村絵理子 |
音楽 | 澤野弘之 |
RE:0096放送回
話数 | サブタイトル | 備考 | 相当するEP |
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第1話 | 96年目の出発 | EP1 | |
第2話 | 最初の血 | EP1 | |
第3話 | それはガンダムと呼ばれた | EP1~EP2 | |
第4話 | フル・フロンタル追撃 | EP2 | |
第5話 | 激突・赤い彗星 | EP2 | |
第6話 | その仮面の下に | EP2~EP3 | |
第7話 | パラオ攻略戦 | EP3 | |
第8話 | ラプラス、始まりの地 | EP3 | |
第9話 | リトリビューション | EP3 | |
第10話 | 灼熱の大地から | EP4 | |
第11話 | トリントン攻防 | EP4 | |
第12話 | 個人の戦争 | EP4 | |
第13話 | 戦士、バナージ・リンクス | EP5 | |
第14話 | 死闘、二機のユニコーン | EP5 | |
第15話 | 宇宙で待つもの | EP5~EP6 | |
第16話 | サイド共栄圏 | EP6 | |
第17話 | 奪還!ネェル・アーガマ | EP6 | |
第18話 | 宿命の戦い | EP6~EP7 | |
第19話 | 再び光る宇宙 | EP7 | |
第20話 | ラプラスの箱 | EP7 | |
第21話 | この世の果てへ | EP7 | |
第22(最終)話 | 帰還 | EP7 |
関連イラスト
関連動画
外部リンク
余談
EP2のパラオにてBLACK TRIPLE STAR、EP3ではANGEL HIGHLOWという名前のバーが登場している。
関連項目
バトルスピリッツ 2020年3月14日に機動戦士ガンダムucメインの構築済みデッキ「OPERATION UC」が発売される
宇宙世紀
機動戦士ガンダム逆襲のシャア(UC93年)← 機動戦士ガンダムUC (UC96年)→機動戦士ガンダムTwilightAXIS(UC96年)
シリーズ
機動戦士ガンダム MS IGLOO2重力戦線(2008年)←OVA機動戦士ガンダムユニコーン(2010年)→機動戦士ガンダム00A_wakening_of_the_Trailblazer(2010年)
機動戦士ガンダムサンダーボルトDECEMBER SKY(2016年)←機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096(2016年)→機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ 第二期(2016年)