概要
主に若年層の女子向けに描かれた漫画の一分野で、日本では一般的だが、海外(台湾や韓国には日本の影響を受けた少女漫画が存在するが)では珍しいジャンルの漫画。アメリカ合衆国の少女向け漫画はあまり発展しないまま衰退し、現在のアメリカの女性漫画ファンのほとんどは日本漫画の読者となっている。
キャラの目を大きくデフォルメし瞳の中にキラキラを入れたり、キャラクターの背後に花などの装飾を書き込むスタイルが有名だが、この描き方を持ち込んだのは少女画出身の高橋真琴であり、1960年代に水野英子が広めたものと言われる。1990年代以降はこのような装飾的な絵柄は主流ではなくなり、シンプルで淡白な絵柄がほとんどになった。少年漫画・青年漫画では少女漫画から影響を受けた萌え系の絵柄が増えていることもあり、キャラクターの描き方は少年漫画も少女漫画も区別がつきにくいものになったが、女性キャラクター(ヒロイン)、心理描写に関しては、少女漫画にしかない描き方というものが存在している。
「少女」漫画とは言うが、年長(成人)読者も少なからずいる。
問題点
よく知らない人からは「恋愛ものばかり」というイメージを持たれがちなジャンルであるが、実際のところはそうでもなく、ラブコメディ、ギャグ、学園もの、スポーツ、ファンタジー、SF、ミステリー・サスペンス、歴史もの、お仕事もの、果てはバトル・アクションまでなんでもあり。ホラーは専門誌もある。下記の「代表的作品」には恋愛をメインテーマにしていない作品も多く含まれている。普段少女漫画を読まない人が、たまたま気に入った少女漫画作品があったとしても、無意識の偏見から「このような(恋愛メインではない)作品は少女漫画では例外なのだろう」と思い込んでしまうようだ。
「恋愛(NL)ものばかり」という表現も語弊があり、正しくは「全年齢用のBL・百合・乙女系(の一種がNL)ばかり」「美少女しかいない萌え系とは違い、ヒーローがいるか、メインの女性陣よりもサブの男性陣のほうが見た目が華やか」「恋愛しない幸せなキャラ、周りを巻き込まない夫婦キャラ、多様な容姿を描いた作品が、児童向けや、それに近い文法を使った作品ばかり」「両親や出産の存在を無視している作品が少ない」が相応しいイメージであり、このイメージなら「少女漫画は恋愛ばかり」のイメージは間違いでもない。
少女漫画以外が少女漫画のパロディを出す場合に恋愛のパロディ、美形のパロディ、清潔のパロディを使うことはほぼなく、恋愛のパロディに使われやすいのは映画、トレンディドラマ、TVゲーム、説話や童話の一説、アダルトコミック等で、「少女漫画に限らずすべての二次元で恋愛ものが流行っている」という時事ネタが描かれることや、作中作の少女漫画のヒーロー単体に恋している女子キャラが描かれることは稀にある。
少女漫画以外が作中で少女漫画を批判する場合は「少女漫画の男はオカマ(本当はオナベに近い)と性欲のない男ばかり」「冷たいぐらいに整った顔」「上品過ぎて不安定な空間」「少女漫画は現実味がない(実際には真逆で、なんの伏線もなく成就してしまう恋愛のみに非現実性が現れている)」という表現を使いがちで、「絵が白い」「ポエム」というイメージもよく抱かれるが、ミステリー・サスペンス・ホラーが主題の少女漫画はむしろベタが多く、ポエムは男性向けラブコメでも同様の表現が見られる。
髪が白いキャラと前髪があるキャラが多いのは、作業の効率化と心理描写をしやすいのが理由でルッキズムが理由ではなく、下ネタが少ないのもマナーや羞恥心の表現でルッキズムが理由ではない。
「男女の恋愛がテーマである点を考慮しても、BL、百合、乙女系の要素に乏しい話」「乙女系(主人公の姿がない、ヒーローの解像度が高い、複数ヒーローの扱いが平等、などが特徴)でもないのに女主人公=読者の構図になっていて、少年漫画のパロディ作品で言えば二次創作よりも三次創作に酷似している話」は恋愛以外もテーマである可能性が高く、作者が下手なのではなく、キャラの設定が悪いのでもなく、モブキャラの自己投影・憑依、不安要素のトリミング・編纂などが理由でこの画面ができているとされる。
商業のメジャー低年齢向け雑誌は最先端の流行が重要で、漫画家が30歳を超えたら絵が古くてついていけなくなるなど、大変デリケートであるとされている。
少女漫画の一つの(主人公に落ち度がない、賠償を伴わない)婚約破棄ものは、女主人公が自らの才能(恋愛以外の能力)や性格の良さでパートナーを得ない形での社会的成功を得て、元婚約者よりも優れた好きな相手と結ばれる話が主流となっている。
現在の少年漫画は女性読者も想定している(少年漫画の記事を参照)のに対し、少女漫画は基本的に男性読者をターゲットにしていない。このため(特に2010年代以降は)アニメ化やドラマ化や舞台化したとしても、社会現象レベルで大ヒットする作品は少ない。少女漫画本来のターゲットであるはずの女子中高生でも、少女漫画を中心に読む人より少年漫画を中心に読む人の方が多いのである。最も売れた少女漫画は『花より男子』(累計発行部数6100万部)と言われているが、少年漫画の人気上位は発行部数が1億を超える物が複数あり、少年漫画ランキングに加わればトップ20にさえ入れない。
少女漫画は「売れる売れないに関わらず感情を描くジャンル」「好きか嫌いかに関わらず少年漫画で描けない現実問題を描くジャンル(物理的に殴ったら人が死にそうな世界観など)」と言われ、数字や様式優先の商業漫画、不況の時代と相性が悪く、単行本のオマケページの作者のメタ発言が長いのも特徴。
少年漫画にも近い問題があるが、少女漫画は特に顕著とされる。
歴史
ジャンルとしての少女漫画は、日中戦争前に少女誌に連載された松本かつぢらの作品がさきがけであるが、少女漫画専門誌が生まれたのは第二次世界大戦後のこと。手塚治虫の『リボンの騎士』で少女漫画にストーリー漫画が導入された。そのころの少女漫画は男性漫画家ばかりであったが(今となっては意外と思われる人物には赤塚不二夫がいる)、既に戦前から長谷川町子や上田トシコがデビューしており、戦後は上田や牧美也子などが活躍、徐々に女性漫画家が進出していく。
1960年代、水野英子は西洋史を題材にスケールの大きな作品を発表し、少女漫画にストーリー漫画を完全に定着させた。続いて1970年代に現れた女性漫画家の一群「24年組」(萩尾望都、大島弓子、山岸凉子ら)は映画や小説、演劇などから様々な演出技法を取り入れ、さらにSF、ファンタジー、同性愛などを持ち込んで少女漫画の表現範囲は飛躍的に広がった。
1980年代には従来の少女漫画家の様式が大幅に簡略化され、目に星を入れない描き方が主流となった。多くの少女漫画出身作家が少年漫画・青年漫画に進出し、それらの分野にも少女漫画の表現が影響を及ぼすようになった。またこの時期にはBL漫画(当時は耽美とかやおいと呼ばれた)がこのジャンルから分化している。
1990年代には、少女漫画を中心に読む少女より少年・青年漫画を読む少女の方が多数派になり、少女誌の衰退が目立つようになったが、メディアミックス展開により、男性や大人にまで読者を広げている少女漫画も多々あった。この時期に少女漫画と関係の深い乙女ゲーム、TL、百合、BLゲーム、ガールズゲームが登場している。
2000年代には、ヤングレディース、乙女系、百合、性描写を含まないBL漫画などがジャンルとして定着した。ケータイ小説とも交互に影響を受け合っていた。少女漫画誌も女性向けのアニメやゲームのコミカライズ、男性向け作品のコミカライズなどを載せることもあり、他ジャンルとのクロスオーバーやメディアミックスが進んだ。
少女漫画雑誌
講談社 | なかよし 別冊フレンド |
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集英社 | りぼん マーガレット ザ・マーガレット 別冊マーガレット |
小学館 | ちゃお 少女コミック(sho-comi) Cheese! |
白泉社 | LaLa LaLa DX 花とゆめ 別冊花とゆめ |
日本雑誌協会が少女向けコミック誌として分類しているのは上記14誌のみである。言い換えれば、上記14誌(およびその増刊号)に掲載された漫画作品を少女漫画と定義づけることができる。
これ以上の年代を対象とする雑誌は女性向けコミック誌となる。女性向けコミック誌でもセックス描写のないヤングレディースなどは全年齢向けであり、幅広い年齢層に受けている。マニア系の雑誌(web雑誌)も細々と生まれている。
代表的作品
※連載が始まった年代順
代表的な漫画家
あ行 | 青池保子 青木琴美 赤塚不二夫 彩花みん 阿南まゆき いがらしゆみこ 池野恋 一条ゆかり 樹なつみ 宇仁田ゆみ 岡田あーみん 岡本慶子 大島弓子 小花美穂 |
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か行 | 上北ふたご 川原泉 川原由美子 小坂理絵 |
さ行 | 酒井まゆ さくらももこ 佐々木倫子 柴田昌弘 新條まゆ すぎ恵美子 |
た行 | 高瀬綾 たかなししずえ 高橋真琴 田村由美 武内直子 竹宮惠子 立川恵 種村有菜 椿いづみ 遠山えま |
な行 | 成田美名子 猫部ねこ |
は行 | 萩尾望都 春田なな 柊あおい 日渡早紀 フクシマハルカ 星野リリィ |
ま行 | まいた菜穂 槙ようこ 魔夜峰央 水沢めぐみ 水野英子 |
や行 | 矢沢あい やぶうち優 山岸凉子 山本鈴美香 吉田秋生 吉住渉 |
ら行 | 羅川真里茂 |
わ行 | わかつきめぐみ 和田慎二 |
英数字 | CLAMP |
…など。(⇒少女漫画家)
少女漫画雑誌をメインに執筆していない漫画家は、「漫画家」を参照。
架空の少女漫画家
登場する作品 | キャラクター名 |
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暴太郎戦隊ドンブラザーズ | 鬼頭はるか |
アンデッドアンラック | 安野雲(■■■) |
おじゃる丸 | うすいさちよ |
月刊少女野崎くん | 野崎梅太郎 |
SKETDANCE | 早乙女浪漫 |
ドラえもん | クリスチーネ剛田(ジャイ子) |
バクマン。 | 蒼樹紅 |
架空の少女漫画雑誌
登場する作品 | 雑誌名 |
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キラッとプリ☆チャン | ちゃんぷ |
獣電戦隊キョウリュウジャー | 少女こずみっく |
~追記・追加お願いします。~