概要
主にメンバーが1960年代前半に生まれ、1990年前後にブレイクしたお笑い芸人を指す。
明確な定義があるわけではないが、1980年代後半から1990年代前半にかけて増加したテレビやラジオの深夜番組などに多く出演しブレイクした芸人を指すことが多い。
特に代表格と言えるのが、とんねるず・ダウンタウン・ウッチャンナンチャンの3組とされる。他に代表的な芸人については後述する。
この世代の特徴として、徒弟、つまり「師匠となる芸人に弟子入りし、稽古を付けてもらった上でデビューする」という慣習を経ずにデビューした者(オーディションや養成所などからデビューした者)が多いというのがある。
上記3組を例に挙げると、
- とんねるず:視聴者参加型番組などでデビュー前からテレビ出演していた。
- ダウンタウン:NSC(吉本興業のお笑い芸人養成所)の1期生。
- ウッチャンナンチャン:元々映画業界志望で、横浜放送映画専門学院(現:日本映画大学)出身。
となる。
彼ら以外にも様々なきっかけでデビューした芸人が多く、芸人のなり方に関する考え方や立ち位置に大きな変革をもたらした世代と言える。
また、どつきあいやしゃべくりなどを控えたドライな漫才スタイルやショートコント、ニヒルでスタイリッシュな視点でのお笑いを実践し始めた芸人が多く、お笑い芸人に「かっこいい」「都会的」なイメージを持たせ、若者向けの笑いという概念を生み出した世代でもあるといえる。
代表的な芸人
解散・活動休止したグループのうち、芸能活動を継続している著名なメンバーは()で示す。
厳密には「お笑い芸人」ではないが、お笑い芸人との関わりが深い出川哲朗(コント劇団「劇団SHA・LA・LA」の団長で、ウッチャンナンチャンとは専門学校時代の同期)や松尾貴史などの劇団員なども第三世代に括られることがある。
また、春風亭昇太など落語家もここでいう「芸人」の枠に含めるとすれば第三世代相当と言える。
爆笑問題、さまぁ〜ず、金谷ヒデユキ、ダンディ坂野、エド・はるみ、林家たい平、コージー冨田、TIM、ジョーダンズなどは年齢や芸歴で言えば第三世代にあたるが、ブレイクしたのは第四世代またはそれ以降に相当する。例として、エドは芸人転向前に女優として活動しており、「お笑い芸人としての芸歴」は第五世代である。
反対に、山田邦子は芸歴で言えば第三世代に該当するが、デビュー直後(1980年代半ば)から漫才ブーム世代とほぼ同時にブレイクしたため、第二世代と同じ括りにされる傾向にある。
電撃ネットワーク、WAHAHA本舗などは、厳密に言えばお笑い芸人ではなく「パフォーマンス集団」、「お笑いを主体とした劇団」である。そのため、芸人として括るかどうかは意見が分かれる。
他の世代について
他の世代のうち、記事が存在しないものついてはここで解説する。
なお、そもそも年齢・芸歴・ブレイク時期のどれで分けるのかが明確に定まっていないため、人によって多少見解が異なる。
特に遅咲きの芸人は意見が割れることが多い。ブレイクした時期で分類すれば、芸歴から世代がどんどん下っていくことになる(例として千鳥は、芸歴で言えば第五世代相当だがブレイク時期でいうと第六世代、ブレイクの基準が全国区だとすれば第6.5世代の可能性がある)ため、多くは芸歴を基準に「例外的にこの世代に括られることもある」というような形で評価されることが多い。
ここでは基本的に芸歴(および芸人の年齢)で分類するものとする。
黎明期
第一世代より前にもブレイクした芸人は、
喜劇役者の榎本健一、古川ロッパ、柳家金語楼、しゃべくり漫才の元祖とされる横山エンタツ・花菱アチャコ、リーガル千太・万吉、落語協会の5代目古今亭志ん生、8代目桂文楽、6代目三遊亭圓生、日本芸術協会の6代目春風亭柳橋、3代目桂三木助、8代目三笑亭可楽、東宝名人会の3代目三遊亭金馬、上方落語の3代目林家染丸
などがいた。いずれも明治生まれ。
第一世代前(演芸ブーム前期)
Wけんじ、獅子てんや・瀬戸わんや、中田ダイマル・ラケット、コロムビア・トップ・ライト、夢路いとし・喜味こいし、ミヤコ蝶々・南都雄二、内海桂子・好江、海原お浜・小浜、スリーポケッツ(渥美清・関敬六・谷幹一)、脱線トリオ(由利徹・南利明・八波むと志)、漫画トリオ(横山ノック・横山パンチ・横山フック)、てんぷくトリオ(三波伸介・戸塚睦夫・伊東四朗)、クレージーキャッツ、海老一染之助・染太郎、正司敏江・玲児、春日三球・照代、牧伸二、ケーシー高峰、藤山寛美、かしまし娘、フラワーショウ、落語界では5代目柳家小さん、3代目三遊亭歌笑、初代林家三平、10代目金原亭馬生、3代目三遊亭圓歌、4代目三遊亭金馬、5代目春風亭柳朝、4代目桂米丸、5代目春風亭柳昇、10代目桂文治、三笑亭夢楽、4代目柳亭痴楽、6代目笑福亭松鶴、3代目桂米朝、3代目桂春團治、5代目桂文枝
などがいる。
第一世代(演芸ブーム後期)
ザ・ドリフターズやコント55号、青空球児・好児、レツゴー三匹、横山やすし・西川きよし、笑福亭仁鶴、6代目桂文枝、月亭可朝、桂枝雀、笑福亭鶴光、桂ざこば、チャンバラトリオ、Wヤング、玉川カルテット、横山ホットブラザーズ、中田カウス・ボタン、コント・ラッキー7(ポール牧)、海原千里・万里(上沼恵美子)、堺すすむ、ちゃっきり娘など。
主に戦前から戦後すぐの生まれで1960~70年代にブレイクした、最初にお笑いに爆発的な人気を持たせた世代。
代表的な番組は8時だョ!全員集合など。コント55号の萩本欽一は各局で人気冠番組を持ち、それらの番組の視聴率を合計するとものすごい数値になることから「視聴率100%男」と呼ばれた。
笑点がスタートしたのもこの時期で、7代目立川談志、5代目三遊亭圓楽、桂歌丸、林家木久扇、林家こん平といった数多くの人気落語家を産んだ。他に3代目古今亭志ん朝、8代目橘家圓蔵、10代目柳家小三治もこの世代。
第二世代(漫才ブーム)
ビートたけし、タモリ、明石家さんま、笑福亭鶴瓶、所ジョージ、関根勤、片岡鶴太郎、春風亭小朝、コント・レオナルド、星セント・ルイス、オール阪神・巨人、おぼん・こぼん、コント山口君と竹田君、春やすこ・けいこ、ものまね四天王(清水アキラ・ビジーフォー・栗田貫一・コロッケ)、シティボーイズ、6代目三遊亭円楽、立川志の輔など。
主に1950年代生まれで1980年代にブレイクした世代。ビートたけしとタモリは年齢的には第一世代だが、それぞれのデビューが26歳、30歳とかなり遅いのでこちらに入る。
ルールを無視して暴れまわるなど、人として大切な何かが欠落した人が多い。漫才ブームを皮切りに、コント中に設定から抜け出すなど今までのお笑い理論をぶち壊した。
代表的な番組はオレたちひょうきん族、笑っていいとも!など。前述のメンバー以外はひょうきん族の項目を参照。
第四世代
お笑い第四世代を参照。
第五世代
- 吉本
- ワタナベ
- 人力舎
- サンミュージックプロダクション
- ケイダッシュステージ
- その他
主に1970年代後半生まれで2000年代にブレイクした世代など(チョコレートプラネット、シソンヌ、野性爆弾、バイきんぐなどは第6.5世代以降にブレイク)。
このあたりからブレイクする芸人の数が爆発的に増える。特に人力舎の活躍が著しい。
お笑い芸人の持ちネタが注目されるようになった時代で、ゴールデンタイムで数々のネタ番組が放送された。
第六世代
オードリー、ナイツ、キングコング、千鳥、NONSTYLE、平成ノブシコブシ、ピース、モンスターエンジン、とろサーモン、流れ星、どきどきキャンプ、ハマカーン、バイク川崎バイク、平野ノラ、タイムマシーン3号など。
主に2000年前後にデビューした、お笑い界におけるミレニアム世代。
ただ、この世代の早咲き芸人は第五世代と同じ時期にブレイクしているうえに、第五世代と年齢が近すぎて第七世代とは離れすぎており、ナイツは自らを「第五世代のナイツです」と名乗ったことがある。
そもそもこの世代がブレイクした頃は、後述の第6.5世代はまだデビューしていない芸人も多い。逆にとろサーモンや流れ星は1970年代後半生まれながらブレイクは第七世代と遅咲きである。
「はねるのトびら」は「めちゃイケから8年後の若手による番組」という趣旨で企画された番組であり、周期的には「れっきとしたお笑い第五世代による番組」である。
一方「ピカルの定理」は「16年後のめちゃイケ」を目指して制作された後述の「ふくらむスクラム」シリーズが早期に打ち切られたことにより仕切り直しして企画された番組で、このときに新人発掘を諦め、芸歴10年前後(=お笑い第五世代の波に乗り遅れた、はねトびメンバーと同世代の芸人)の微妙な世代をレギュラーに取り込んだために、定義が曖昧になってしまったという背景がある。
第6.5世代
- 吉本
- ワタナベ
- マセキ芸能社
- その他
主に1980年代生まれで2010年前後にブレイクした世代。
先述のとおり第六世代をオードリー・千鳥などに当てはめる意見が多いためか、この世代はアメトーークで6.5世代と分類され、そのまま定着した。
代表的な番組は爆笑レッドカーペット、爆笑レッドシアター、オンバト+など。
大きく分けると「レッドカーペット以前にブレイクした早咲き」「レッドカーペット芸人」「レッドカーペット終了後のお笑い氷河期にブレイク」の3種類に分けることができる。
ニューヨーク、ミルクボーイ、すゑひろがりず、アインシュタイン、見取り図、鬼越トマホーク、おいでやすこがなど、ブレイクした時期が第七世代と同時期の芸人も多いが、これについては第七世代側から「平成以前もしくはゆとり世代以前に生まれた芸人は第七世代に入らない」という定義が提示されていることから、逆引き的に第6.5世代に括られるものと解釈されている(おいでやすこがは結成こそ2019年だが年齢的には第五世代)。
第七世代
お笑い第七世代を参照。