概要
素性の知れない人間・常人離れした行動力を持つ人間を指して呼ぶことがあり、プライバシーを明らかにせず広範な知識と活動を行った先人で「怪人」扱いされるものも多い。
スポーツ選手で「怪人」というニックネームが付く場合もある(ランディ・バースの「怪人バース」、把瑠都凱斗の「エストニアの怪人」など)が、これも常人離れした身体能力を持つ選手が対象となることが多い。少数ながら「アラビアの怪人」ザ・シークのように「怪しい人」という面に着目される例もある。
狭義での意味
狭義では冒険活劇、特にテレビの特撮番組に登場する「特殊能力を持った悪人・悪役」を指し、アメリカンコミックでは「スーパーヴィラン(Supervillain)」と呼ぶが、こちらは「怪人」よりもっと大きい概念と考えられる。
例えば、英語圏ではスーパーヴィランにダース・ベイダーやメガトロンを含むが、日本語圏では彼らを怪人と呼ぶことは無い。
怪獣・怪物との区別
怪獣・怪物(クリーチャー)と明確に区別する規定はないが、等身大であることと「獣」と「人」で表示されているように人間としての属性を保っているもの(例えば人間が姿を変えた・直立歩行する・言語を解する・明確な悪意を持つなど)を怪人と称することが多く、特撮分野においては「○○獣」という呼称の怪人分類名も多い。一方、『ウルトラシリーズ』に登場する宇宙人のように怪獣とまとめられているものも。
楽屋落ちとして語られる「全身タイツを着こんでいる」というのも人間としての属性の一つと見られるだろう。
ただし、ミラーモンスターやメカジャイガンなどの巨大ロボや怪獣タイプの外見をしたものであっても便宜上怪人に含める場合が多い。(スーパー戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズ、メタルヒーローシリーズなどに多く見られるケースである。)
歴史
怪人の系統的な発達は主に第二次世界大戦前~後の探偵小説ブームと、テレビ番組のヒーロー物ブーム以後のものである。
戦前の昭和5年(1930年)に紙芝居で発表された「黄金バット」に登場した「ナゾー」は四つ目と鉤爪の宇宙人であった。昭和11年(1936年)に江戸川乱歩が少年向けに発表した探偵小説「怪人二十面相」では、タイトルで悪役が怪人を名乗っている。彼は変装が得意で、他人に成りすますという技術を駆使して美術品を奪ったり愉快犯的犯罪を行う。片岡千恵蔵(のちに小林旭)主演の「七つの顔の男」シリーズでは「せむし男」が、見た目の不気味さから「(謎の)怪人」と言われる。
日本最初のテレビ映画、「月光仮面」には悪役として「ドクロ仮面」や「サタンの爪」が登場している。
彼らは犯罪組織の首領で普通の人間であるが、奇怪な仮面をつけていることで怪人としてのキャラクターを確立している。
昭和46年(1971年)には『仮面ライダー』が製作される。それまでのテレビ作品での怪人はいずれも怪奇な覆面をした(特殊な技術・武器を持ってはいるが)普通の人間であったのに対し、「仮面ライダー」では改造人間という要素が導入された。この作品から何か(具象、抽象に限らない)をモチーフとした人外の敵キャラが等身大ヒーローになくてはならない存在となり、仮面ライダーを製作した東映は業界でもトップ数の怪人を世に送り出してきた。1991年の時点で総数は2200体を超えているとの事。
尚、東映以外にもビー・プロや円谷プロ、東宝も等身大ヒーローを製作していた時期があり、東映ほどではないものの、数多くの怪人を排出している。
以後、特殊能力の根拠として改造人間や強化服・宇宙人・魔法などさまざまな手法が語られていく。
しかし、円谷プロや東宝の怪獣とは異なり、あくまで脇役としての側面が強い為、商品展開は彼らよりは著しく少ない。
無論、特撮作品に留まらず、スーパーヒーローが主人公である日本の漫画やアニメなどの中には『特撮作品の怪人』に相当するモンスターないしはヴィランが登場する作品もあり、怪人は形を変え、メディアを越えて空想の世界を生き続けているのだ。(該当作品:『ラストマン』や『ド級編隊エグゼロス』、『デビルマン』、『アクション仮面』、『ワンパンマン』、『強殖装甲ガイバー』、『覚悟のススメ』などなど)
なお、玩具展開ではソフビが絶えず販売されているウルトラ怪獣と比べてかなり控えめである。そもそも知名度にばらつきがあり、お祭り作品でもない限り再登場の機会に恵まれなかったり、そもそも売れないなどの事情があるからだろう。商品化されるにしても序盤の怪人か(ミラーモンスター)、一部の幹部怪人(ゾディアーツ)といったパターンも珍しくなく、怪人を使ってブンドドしたりオモ写を撮る行為というのは非常に難易度が高い。
しかしながら、デザイン画集が販売されるぐらいには人気があるのも確固たる事実であるのだが。
代表的な怪人の例
この項では怪人にはどういうタイプが存在しているか挙げていく。基本的には1作品に1種族である事が多いが、1組織に多数のタイプが所属していたり、物語の進行度次第で別の種族に変わると行ったパターン、1作品に多数の組織が同居するパターンも少なくない。
改造人間/サイボーグ
『仮面ライダー』から『仮面ライダーBLACK』・『真・仮面ライダー序章』までの仮面ライダーシリーズの敵怪人のデザインや能力は組織や作品ごとでコンセプトが異なっており、それらについては各作品を参照。また『スカイライダー』や『仮面ライダースーパー1』の敵組織の上層部は地球外生命体であり、『BLACK』の続編『BLACKRX』の敵は異次元の敵であるなど世界観が同じでもサイボーグではない敵もいる。
・黒十字軍の仮面怪人(『秘密戦隊ゴレンジャー』)
原作ではしっかり強化マスクを被っていた描写がある事がネーミングの由来。
・アクマ族(『アクマイザー3』)
名前のモチーフは「悪魔」であり、人間からも「悪魔」と思われていたが、実は過去にサイボーグ化して地底に移り住んだ人間たち。
人造人間/ロボット
・バドー犯罪シンジケート(『ロボット刑事』)
・怪魔ロボット(『仮面ライダーBLACK RX』)
・機械生命体/モンガー(『太陽戦隊サンバルカン』)
・マトロイド(『天装戦隊ゴセイジャー』)
・メタロイド(『特命戦隊ゴーバスターズ』)
・ロイミュード(『仮面ライダードライブ』)
・マギア(『仮面ライダーゼロワン』)
地球外生命/宇宙人
・宇宙人(『ウルトラシリーズ』)
宇宙怪獣の方が代表例に出されることが多いが、その怪獣を操ったりして登場している(巨大戦が主となるため、怪人としての印象は薄い)。
・ジンドグマ超A級怪人(『仮面ライダースーパー1』)
・フォッグ(『仮面ライダーJ』)
・宇宙獣士(『電撃戦隊チェンジマン』)
・アリエナイザー(『特捜戦隊デカレンジャー』)
一応宇宙人以外にもロボットも存在している。
・邪命体(『爆竜戦隊アバレンジャー』)
妖怪や悪魔
・妖怪(『超神ビビューン』)
・妖怪軍団(『忍者戦隊カクレンジャー』) & 外道衆(『侍戦隊シンケンジャー』『仮面ライダーディケイド』) & 牙鬼軍団(『手裏剣戦隊ニンニンジャー』)
等身大で登場するが、敗北後に巨大化する。
怪人のような人間大だけでなく、巨大な妖怪も存在する。
広義的にはこちら。一応人間もこの範疇である。
・前世魔人(『ダイヤモンド・アイ』)
悪霊世界に住む魔物の一族。「外道照身 霊破光線!」「ばれたか~」のくだりはテンプレ化してもいる。
宇宙人ということになるのだろうが、本質的にはこちららしい。
・サイマ獣(『救急戦隊ゴーゴーファイブ』)
宇宙由来だが、広義的にはこの範疇。
・暴魔百族(『高速戦隊ターボレンジャー』)
人類の進化形態
・デスパー軍団(『イナズマンF』)
ファントムおよびデスパーの怪人は新人類にサイボーグ手術を施した改造人間である。
異次元人
宇宙刑事シリーズの敵は専用の次元空間を持つ宇宙人で、純然たる異次元人は少ない
・ダークザイド(『超光戦士シャンゼリオン』)
異世界の魔物
・怪魔異生獣(『仮面ライダーBLACKRX』)
サイボーグタイプにも該当。
鏡の世界ミラーワールドに潜む怪物。非人型も多い。
・ファントム(『仮面ライダーウィザード』)
魔力の塊である精神世界アンダーワールドに潜む怪物。非人型も多い。
・メギド(『仮面ライダーセイバー』)
邪念や欲から誕生したもの
特撮やアニメでは、怪人ではなく、組織の頂点に立つ者(特に上記の妖怪たちの長など)の正体として描かれることが多い。
人間の欲望から生まれた怪物とされている。
・オルグ(『百獣戦隊ガオレンジャー』)
人間の邪念から生まれた怪物とされている。人間たちには「鬼」とも呼ばれている。
・シャドーライン(『列車戦隊トッキュウジャー』)
人間の「心の闇」から生まれた魔物。
本質的には寄生型や悪魔系に近い
物体や他の生物への憑依・寄生
・次元獣(『鳥人戦隊ジェットマン』)
・火炎魔人(『トミカヒーローレスキューファイアー』)
・眼魔(『仮面ライダーゴースト』)
異次元人タイプにも該当。
人間以外の地球在来生命が進化した存在
特定のアイテムで変身した怪人にも該当。
・アシュ(クエスター)(『轟轟戦隊ボウケンジャー』)
・メルザード一族(『ビーファイターカブト』)
人工生命体
・アマゾン(『仮面ライダーアマゾンズ』)
・合成怪獣(『大戦隊ゴーグルファイブ』)
・獣戦士(『超新星フラッシュマン』)
スーパーヴィラン
『スパイダーマン』『キャプテン・アメリカ』などのマーベル・コミックに登場する敵。 上記の分類に属する怪人もいるが、スーパーヴィランでまとめられている。
・『ザ・カゲスター』に登場する怪人
※特定の組織に所属しているわけではないのだが「怪人」と名の付く敵が多い。一応他の作品でよく見る人外タイプである。(12話まで)
・風魔忍者・甲賀忍者(『忍者キャプター』)
・オクトパス構成員(『星雲仮面マシンマン』)
・世界忍者(『世界忍者戦ジライヤ』)
・スーパーサイエンス・ネットワーク構成員(『特捜ロボジャンパーソン』)
※改造人間や人工生命体もいる。
・ご町内の悪人(『美少女仮面ポワトリン』及び『有言実行三姉妹シュシュトリアン』)
※怪人というか、変人もとい変態が多い。
ヒーロータイプの外見をした怪人
・『仮面ライダービルド』のトランスチームガンで変身した戦士たち。
・『仮面ライダードライブ』の「魔進チェイサー」
普通の人間が特定のアイテムで変身した怪人
上記以外の範疇に収まりにくいタイプ
※宇宙人やロボットの混成軍。
・アンデッド(仮面ライダー剣)
※不死生命体で地球生命の始祖。
※未来人が説話のイメージを組み込んで実体化した姿。
※コンピューターウィルスがゲームキャラの形を得た姿。
これら以外に心当たりありましたら追記お願いします。
怪人に出会ったら
速やかに避難しつつ、以下のヒーロー達にご連絡下さい。
余談
なお、劇中に登場または未登場の怪人のデザイン画を蒐集した画集では「UNDEAD GREENBLOOD」などのようにピックアップされたキャラクターをイメージさせる洒落たタイトルになる事が多いが、中でもホビージャパンから販売されている東映怪人のデザイン画集では四字熟語をもじった秀逸なタイトルを付ける傾向にある。(スーパー戦隊シリーズのみグライドメディアから発行)