概要
蛾(ガ)とは、鱗翅目(ガ目・チョウ目ともいう)に属する昆虫のうち、蝶以外の全ての種類を便宜上にまとめた総称。英語は「moth」(モス)と呼ばれる。
完全変態で幼虫は蛹を経て成虫になり、蝶と同じ基本構造を有する。
幼虫は芋虫であり、種類により無毛な青虫やからふさふさな毛虫まで様々である。蛹は丈夫で肢が本体に密着し、多くが繭に守られる。成虫は体毛が胴体に密生し、原則として鱗粉に覆われた大きな翅と渦巻き状に収納されるストロー状の口吻を持つ。触角は種類により糸状から羽毛状や棍棒状まで多岐にわたり、雌雄で異なるものも多い。
原則として生涯を通じて草食で、幼虫は顎で植物の葉などを嚙み砕き、成虫は口吻で花の蜜などを啜る。
しかし蛾は非常に多様で、前述の特徴から逸脱した例外も少なくない。例えばコバネガなど原始的な蛾の成虫は吻の代わりに顎を有し、花粉を嚙み砕く。ヤママユガやカイコガの成虫は口吻が退化し、摂食せずに余生を過ごす。スカシバガやオオスカシバは翅が透明で鱗粉を持たず、ミノガやフユシャクのメスは翅が退化して飛べない。ハワイのカバナミシャクの幼虫は、鋭い爪でハエなどを待ち伏せる獰猛な捕食者である。
蝶と蛾
蛾はよく「蝶と対になる存在」と思われるが、「蛾」は分類学的でなく、あくまで「蝶以外のすべての鱗翅類」という消去法的て雑多な括りである。系統的にも下記の通り、蝶は蛾のごく一部に過ぎない。
以下の系統図はメジャーなグループのみ抜粋して省略化したもの(実際は百以上のグループの蛾が存在する)。
┗┳━コバネガ
┗┳━コウモリガなど
┗┳━ヒゲナガガなど
┗┳━ミノガなど
┗┳━ホソガなど
┗┳━蝶
┗┳━メイガ
┗┳━カギバガ
┗┳━カレハガなど
また、昼行性・棍棒状の触角・翅の縦に閉じる・繭を作らないなどを統合的に見て(それでも例外がいて完璧ではないが)何とかまとめられる「蝶」に対して、蛾は鱗翅類全般に当てはまるもの以外に共通の特徴はない。
- 「地味」と言えども、蝶に匹敵するほど派手な種類がいる(ツバメガ、アゲハモドキなど)。
- 「夜行性」と言えども、蝶のように昼行性の種類がいる(マダラガなど)。
- 「糸/櫛状の触角」と言えども、蝶の棍棒状に近い種類がいる(スズメガなど)。
- 「翅を縦に閉じない」と言えども、蝶のように縦に閉じる種類がいる(イカリモンガなど)。
- 「繭を作る」と言えども、蝶のように繭を作らない種類がいる。
大雑把に言うと、「鱗翅類における蝶と蛾」はまるで「地球人における日本人と外国人」のように偏った区分である。系統・見た目の両方から見ても「蝶と蛾」という区分や「蛾」という括りがナンセンスであり、実際、鱗翅目の昆虫を「蝶と蛾」に区別しない言語や地域も存在する。
当然ながら鱗翅類はほぼ全てが蛾で、その数はおよそ16万種ほど知られ、1万6千種の蝶を大きく上回る。
同じ昆虫で似たようなケースとして、膜翅目の蜂(=蟻以外のすべての膜翅類)が挙げられる。
主な種類
蛾は非常に多様で百以上のグループ(科)に分かれており、ここでは上記の系統図と同様メジャーなグループのみ列挙する(最後に科が表記されないグループ名は科全体を指す総称である)。
- コバネガ
- コウモリガ
- ヒゲナガガ
- 小型種がメイン。成虫の触角は糸状で体の倍以上に細長い。ケブカヒゲナガやクロハネシロヒゲナガ、ホソオビヒゲナガなどが属する。
- ミノガ(蓑虫/ミノムシ/みのむし)
- ホソガ
- マダラガ
- イラガ(イラムシ)
- メガロピゲイラガ
- トリバガ
- イカリモンガ科
- 小型種がメイン。成虫は蝶のように昼行性で翅を縦に畳む。触角は種類により糸状から棍棒状。イカリモンガなどが属する。
- メイガ
- カギバガ
- ヤガ
- ドクガ
- ヒトリガ科
- シャチホコガ
- シャクガ
- ツバメガ
- アゲハモドキガ
- カレハガ
- イボタガ科
- 大型種がメイン。多くの成虫は翅に複雑な波紋や模様がある。触角は鋸歯状。若い幼虫は長い突起物を前後に持つ。イボタガなどが属する。
- スズメガ
- ヤママユガ
- カイコガ科
蛾の扱い
世間一般におけると同じ鱗翅類の蝶とは対照的で、蛾はネガティブ的なイメージが強い。
素直に「綺麗な虫だなあ」と思いながら、蛾だと察する瞬間から評価が一気に「気持ち悪い」まで下がり、控え目でも「綺麗だけど蛾で残念」など、人々が美しい昆虫の「蛾」という身分でガッカリするケースも少なくない。フィクション作品の中でも、蛾は毒々しい悪役や不祥の象徴とされがちである。
世間の蛾に対する嫌悪感が風潮になったのは、おそらく自然界と離れた都市化生活や、規則性がなくパニックを起こしたように飛び回り、稀に人へつく事も一因と思われる(ゴキブリと同じ例)。鱗翅類を「蝶と蛾(butterfly & moth)」に区分する文化を含んだ英語圏の近代博物学の導入と、そこから生み出した世間の蛾に対する誤ったイメージに由来する。これは蛾に限らず、不快害虫全般に当たる話でもある。ちなみにドイツ語やフランス語などでは蝶と蛾の区別が無く、この事情は日本人にも馴染み深いヘルマン・ヘッセの短編『少年の日の思い出』でも窺い知れる。
かつての日本にも明確に「蝶」と「蛾」を区別する観念が無かったことは、例えば平安時代後期に成立したとされる『堤中納言物語』所収の「虫愛づる姫君」において、現代であれば「蛾」に分類される蚕の成虫が「蝶」と呼ばれていることにも見てとれる。
実際、害虫と言えるもの、有毒の毛虫や体外に毒のある蛾は一握りし過ぎない。そもそも「鱗粉に毒がある」というのも徹底的な誤解であり、毒は鱗粉ではなく(有毒種の)毒針毛にある。体内に毒を蓄える蛾と蝶は存在するが、食べない限り心配は不用である。また、蝶はよく植物の繫殖を支える送粉者として取り上げられたが、多くの蛾も同じ役割を担っている。昼行性の種類は勿論、夜にしか咲かない花は、夜行性の蛾に頼ることが多い。
蛾を嫌がる風潮が無くなれば、彼らも蝶に勝るとも劣らない魅力的な昆虫である事が認知されていくかも知れない。
関連イラスト
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