概要
整備新幹線の5路線の一つで、関東地方から上信越(信越)・北陸地方を経由して関西地方までを結ぶ計画路線。具体的には、群馬県高崎市から長野県長野市・新潟県上越市・富山県富山市・石川県金沢市・福井県福井市・同県敦賀市・京都府京都市などを経て大阪府大阪市までを結ぶ。
高崎駅〜上越妙高駅間がJR東日本、上越妙高駅~敦賀駅間がJR西日本により管轄・運営されている。整備新幹線の中では、複数の会社によって管轄・運営されている唯一の路線である。他の整備新幹線の路線と同様、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)(※)が鉄道施設を建設・保有し、運行主体であるJR東日本とJR西日本は鉄道施設をJRTTから借り受けて第一種鉄道事業者として運営している。
(※)2003年10月1日以前は日本鉄道建設公団(JRCC)。
運転系統としては東京駅が起点・終点になっており、東京駅〜大宮駅間は東北新幹線、大宮駅〜高崎駅間は上越新幹線に乗り入れている。
- 長野オリンピックに先立つ1997年10月1日、高崎駅〜長野駅間が先行開業した。当初は北陸地方に到達していなかったため、便宜上「長野新幹線」と案内されていたが、本来の正式名称はこの区間を含めて「北陸新幹線」である。
- 2015年3月14日に長野駅〜上越妙高駅〜金沢駅間が延伸したことで路線が北陸地方に達し、「長野新幹線」の愛称は使用されなくなった。
- 2024年3月16日には金沢駅〜敦賀駅間が開業した。
最終的には高崎駅と新大阪駅を長野駅・金沢駅経由で結ぶ。新大阪駅で山陽新幹線と合流して乗り入れを行う計画も存在している。
運行形態
- かがやき(東京-金沢)1往復+(東京-敦賀)9往復
全車指定席の速達列車で、東北新幹線における「はやて」に相当。「はやぶさ」・「こまち」とは違い、追加料金は不要。
- はくたか(東京-金沢)9往復+(東京-敦賀)5往復+(長野~金沢)1往復
JR東日本区間の準速達、JR西日本区間の各駅タイプ列車。東北新幹線における「やまびこ」や上越新幹線における「とき」に相当する。グランクラスは座席のみ(2022年9月30日まではアテンダントサービスもあった)。
- つるぎ(富山-敦賀)18往復+(金沢-敦賀)7往復
富山-敦賀のみを走行。グランクラスは座席のみor非営業。(一部を除き)在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」と連絡し、関西・中京圏のアクセスを担う。
- あさま(東京-長野)17往復+(軽井沢→長野)下り1本
長野新幹線時代から運転されている東京-長野を走行する列車で、高崎側の「なすの」・「たにがわ」タイプ。グランクラスは座席のみor非営業。
なお、JR東日本とJR西日本の境界駅は上越妙高駅(駅自体はJR東日本の管轄)であるが、乗務員交代は金沢延伸開業時から一貫して全列車が停車する長野駅で行われている。従って、長野駅~上越妙高駅間はJR東日本管内であるにもかかわらず、JR西日本の乗務員が担当することになる。
駅一覧
●:停車 ○:一部通過 ▲:一部停車
△:臨時のみ一部停車 レ:通過
か:かがやき は:はくたか あ:あさま つ:つるぎ
東北新幹線・上越新幹線区間を含む
駅名 | か | は | あ | つ | 乗換路線 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
東京 | ● | ● | ● | ※ | ||
上野 | ○ | ● | ● | ※ | ||
↑東京都/↓埼玉県 | ||||||
大宮 | ● | ● | ● | ※ | ||
熊谷 | レ | レ | ○ |
| ||
本庄早稲田 | レ | レ | ○ | |||
↑埼玉県/↓群馬県 | ||||||
高崎 | レ | ○ | ● | |||
安中榛名 | レ | レ | ○ | |||
↑群馬県/↓長野県 | ||||||
軽井沢 | レ | ○ | ● | しなの鉄道しなの鉄道線 | ||
佐久平 | レ | ○ | ○ | 小海線 | ||
上田 | レ | ○ | ○ | |||
長野 | ● | ● | ● | |||
飯山 | レ | ○ | 飯山線 | |||
↑長野県/↓新潟県 | ||||||
上越妙高 | レ | ● | えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン | JR東日本管理駅 | ||
↑JR東日本/↓JR西日本 | ||||||
糸魚川 | レ | ● | ||||
↑新潟県/↓富山県 | ||||||
黒部宇奈月温泉 | レ | ● | 富山地方鉄道本線(新黒部・T32) | |||
富山 | ● | ● | ● | |||
新高岡 | △ | ● | ● | 城端線 | ||
↑富山県/↓石川県 | ||||||
金沢 | ● | ● | ● | |||
小松 | ▲ | ● | ○ | IRいしかわ鉄道 | ||
加賀温泉 | ▲ | ● | ○ | IRいしかわ鉄道 | ||
↑石川県/↓福井県 | ||||||
芦原温泉 | ▲ | ● | ○ | ハピラインふくい | ||
福井 | ● | ● | ● |
| ||
越前たけふ | ▲ | ● | ○ | |||
敦賀 | ● | ● | ● |
※:在来線に3レターコードが設定されている駅
東京:TYO 上野:UEN 大宮:OMY
使用車両
- E2系0番台:1997年10月~2017年3月。8両のN編成を使用。10両のJ編成(※0番台)は北陸乗り入れ定期運用はないが、お召し列車としての運用実績はある。
- 200系:12両のF80編成。長野オリンピック(1998年)開催時の臨時列車として運用するため、長野乗り入れ改造を行った。
- E4系:2001年7月から2003年9月までは「Maxあさま」として運転。軽井沢発上野or東京行の上り列車のみで運用された(乗客を乗せて碓氷峠の急勾配を登れなくなる可能性があるため)。全26編成のうちP51・52編成は急勾配対応で軽井沢乗り入れ、P81・82編成はさらに周波数切り替え装置も搭載し長野乗り入れが可能であった。
- E7系:2014年3月~
- W7系:2015年3月~
延伸予定区間
未開業区間停車駅
凡例 ●:停車 ○:一部通過 レ:通過 空欄:未定
敦賀駅~新大阪駅間
敦賀駅までは着工の方針が示されていたものの、敦賀〜大阪間のルートが(終点も含めて)定まっていない状態であった。
フル規格での整備の場合、公式に示されている案は下記の3案で、2016年12月に「ルート2」案で決着がついた。
- ルート1(米原ルート):琵琶湖東岸を経由し南下、米原駅(滋賀県米原市)で東海道新幹線と合流し同線を走る(北陸・中京新幹線)。滋賀県推し。
- ルート2(小浜・京都ルート):福井県小浜市付近まで西に向かい、その後南方へ京都へ至る。JR西日本推し。
- ルート3(舞鶴ルート):福井県小浜市・京都府舞鶴市付近まで西に向かい、南東に方向を変え京都府京都市へ至る。京都府推し。
しかし、いずれのルートもメリットが存在すると同時に問題も存在する。
- ルート1:費用が抑えられ、中京圏での経済効果も期待できる。しかし東海道新幹線は過密状態であり、中央新幹線ができたとしてもJR東海が乗り入れ(米原駅への接続含む)を認めない可能性と自社エリア内かつ根元区間を他社に委ねることをJR西日本が容認しない可能性が存在する。加えてそもそも北陸新幹線と東海道新幹線の運行システムが異なる。 /> -ルート2:大阪市内まで新線とした場合、JR東海との関係を考慮する必要は低下する、あるいは無くなる。ただし建設区間が長くなる分費用は嵩む、京都市内~大阪までの路線選定の困難が生じる。また、直接の沿線ではない湖西線が並行在来線として経営分離される恐れがある。中京圏へのルートも問題になる。
- ルート3:「国防上の重要拠点に新幹線を通すことで国益上有利である(舞鶴市長談)」とのことだが、理由としては苦しいところ。3案中一番遠回りであるため建設費所要時間とも最もかかる。基本計画線である山陰新幹線が着工した場合共用可能だが、舞鶴線・小浜線・山陰本線が揃って経営分離される恐れもある。
京都駅まで新線を通す場合の問題点としては、高架駅ならどこに建設しどうやって大阪まで伸ばすか、地下なら空間は多少はあるもののそこは旧都、掘り返せば遺跡が大量に見つかったり建設費用が莫大になる可能性などがあった。そのため当初建設案やルート3などでは亀岡などに新しい京都のターミナルを整備することなどが考えられていた。
この他、フル規格ではなく湖西線を経由(ミニ新幹線化or軌間可変電車による直通)する案もあったが、湖西線の改軌と場合により交流化(北部は新快速直通のため直流化したのに逆戻りになる、新幹線の交流25,000Vと直流1,500Vの営業用直通車輌の実例は2018年現在JR東日本のE001形ただ一つであり、対応に手間がかかる。直流用パンタグラフは大電流に耐える必要から集電舟や接続ワイヤが大ぶりとなり、交流の新幹線区間で畳む前提であっても空気抵抗や騒音源になることが避けられない問題を抱えている)に時間と費用がかかる上工事中運休となる影響が多大であることや、軌間可変電車の開発自体が苦戦中のなかでさらに交直切替と耐寒耐雪機能を付加することができるか、また湖西線のもう一つの運休原因となる突風(比良おろし)…などの問題があり、ルート選出からは外されてしまった。
また、小浜駅からそのまま南下するルート(小浜ルート、整備新幹線計画当初の案)も検討されていたが、京都駅を経由しないため需要が低下してしまい、後に選出から外された。
そして2017年3月15日、敦賀駅~東小浜駅~京都駅~松井山手駅~新大阪駅間の南回りルート(小浜・京都ルート)で決定。着工時期に関しては、北海道新幹線札幌延伸後着工、工期15年を想定した結果、2046年の延伸開業になると試算された。
その後、予算に余裕ができたため敦賀延伸直後の着工が検討されたが、環境アセスメントをはじめとする様々な前提条件をクリアする見通しが立っておらず、着工も先送りとなっているのが現状。
並行在来線
整備新幹線として建設されたため、開通に当たって並行在来線にはJRから経営分離(廃線もしくは第三セクターに移管)された区間が存在する。
信越本線(JR東日本)は高崎駅〜直江津駅間が並行在来線に指定され、このうち経営分離されず存続したのは群馬県内(高崎駅〜横川駅間)と長野県内(篠ノ井駅〜長野駅間)の2区間(新潟県内の直江津駅〜新潟駅間は北陸新幹線の並行在来線には指定されなかった)。経営分離された区間は碓氷峠を越える群馬・長野県境(横川駅〜軽井沢駅間)が廃線となり、長野県内(軽井沢駅〜篠ノ井駅間および長野駅〜妙高高原駅間)がしなの鉄道、新潟県内(妙高高原駅〜直江津駅間)がえちごトキめき鉄道にそれぞれ移管されている。
北陸本線(JR西日本)は敦賀駅〜直江津駅間が並行在来線に指定され、全区間が経営分離された(米原駅〜敦賀駅間は存続)。経営分離された区間は新潟県内(市振駅〜直江津駅間)がえちごトキめき鉄道、富山県内(倶利伽羅駅〜市振駅間)があいの風とやま鉄道、石川県内(大聖寺駅〜倶利伽羅駅間)がIRいしかわ鉄道、福井県内(敦賀駅〜大聖寺駅間)がハピラインふくいにそれぞれ移管されている。
開通以前に運営されていた特急などについては、七尾線乗り入れ分を除き経営分離される区間までとなるか、廃止された。なお、寝台特急は運行すると主張していたが、客車の老朽化などを理由にそれ以前に全ての運行を廃止した。
金沢延伸開業後は、首都圏と富山・金沢方面のアクセスが便利になった反面、特急全列車が金沢止まりとなったため、名古屋・関西方面と富山方面のアクセスはかえって不便となってしまった(金沢~富山間のみでは新幹線によるメリットがほとんどない上、乗り換えの手間を考えると在来線時代とあまり差が出ないため)。
新幹線の走行時間は原則として6時から24時までであるが、在来線時代は富山を4時台に出発する大阪行き特急「サンダーバード」があり、金沢延伸開業後は富山から金沢への移動すら一部で時間が遅くなった。
余談
- 北陸新幹線(元・長野新幹線)は東北・上越新幹線とは違い、高崎~軽井沢間・飯山~上越妙高間にある飯山トンネル内に最急30‰にも及ぶ急勾配が連続する。そのため、運用する車両には登坂モーターに抑速ブレーキを装備する。
- 送電周波数が変更される地域を通過するため、新幹線では珍しく周波数切り替え地点が数か所ある(50Hz→60Hz:軽井沢~佐久平間、糸魚川~黒部宇奈月温泉間。60Hz→50Hz:上越妙高~糸魚川間)。新潟県内区間は通常時は東北電力から受電するため50Hzであるが、変電所異常などの緊急時には富山県・長野県側から延長送電で対応するため、地上設備も50・60Hz両対応となっている。 /> -北陸新幹線建設期成同盟会の掲示したポスターに萌えキャラがいる。
- 敦賀から先の路線延伸について
- 経営状況次第により小浜線や湖西線が分離される可能性があるが、特に後者は大阪圏を中心としたアーバンネットワークの一路線でありどうなるかは不透明。
- 京都より先でJR片町線(学研都市線)のルートと一部並行する可能性があるが、特に該当する松井山手より大阪寄りでは通勤路線としてかなりの収益をあげており分離する可能性は極めて低い。
- 当初は福井~敦賀間の新駅名を南越駅(仮称)としていたが、2021年5月13日に越前たけふ駅とする計画を発表。福井鉄道福武線にある越前武生駅(当時)と読みが同じになってしまうため、福井鉄道側の駅名を「たけふ新駅」に改称することでこの混乱は解消された。
- 2024年3月13日に北陸新幹線の鉄道博物館『トレインパーク白山』(白山市立高速鉄道ビジターセンター)を開館。最寄駅はIRいしかわ鉄道(旧・北陸本線)加賀笠間駅下車。北陸新幹線の車両基地「白山総合車両所」に隣接。
関連タグ
北陸本線 IRいしかわ鉄道 あいの風とやま鉄道 えちごトキめき鉄道 ハピラインふくい
- 長野オリンピック:アクセスのため高崎~長野間が先行開業。
- 令和元年台風第19号:千曲川が決壊し長野新幹線車両センターが浸水被害を受けた。「E7系・W7系」の記事も参照。