概要
『マップス』『機動戦士クロスボーン・ガンダム』で知られる漫画家・長谷川裕一の著作。NHK出版から刊行されている。
略称はすごかが。なお2巻目の『もっと~』において第32回星雲賞(2001年)ノンフィクション部門を受賞する栄誉に輝いている。
発表当時は『(昭和一期)ウルトラマン』や『ゴジラ』等の怪獣モノがSF・特撮オタクからの考察の対象になっていたのに比べ、『スーパー戦隊』などの東映特撮は「ヒーローものコント」「子供向けの30分玩具CM」だと思われていた。それを憂いた長谷川氏は「だったら真面目にSF考証してみよう」と考え、SF大会などでトークショー形式で『スーパー戦隊』をツッコミつつ一つの世界線に載せて研究発表していくイベントを開催していた。
それを知った高原敦(長谷川が漫画版執筆を務めたアニメ『飛べ!イサミ』のプロデューサー)は出版化を計画し、最初は「なんかの冗談だろう」と思っていた長谷川氏も次第にその熱意に押され、トークショーをテープに起こしオリジナルのイラストを加えた単行本として発売するに至った。
ちなみに奥付には(当たり前っちゃあ当たり前だが)テレビ朝日と東映のコピーライト(いわゆる©)がしっかりと入っている。(もちろん長谷川やNHK出版のコピーライトとは分割された形で入れられている)
こうして1998年に世に出た『すごい科学で守ります!』は好評につき、2000年に『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』をベースとして仮面ライダーやキカイダーにも考察の場を広げた続編『もっとすごい科学で守ります!』、2005年に第3巻『さらにすごい科学で守ります!』が出るに至った。
なお、現在は『仮面ライダーディケイド』と『海賊戦隊ゴーカイジャー』により東映特撮世界が一応の収束を見た為か、第4巻は同人誌として発売されるにとどまり、続巻の予定は無いようである。
しかし、『仮面ライダージオウ』『機界戦隊ゼンカイジャー』でまた分裂したり合流したりと複雑なことになっているので、新作の出版を望む声も多い。
そして、2023年2月25日に、無印~さらにの内容を一冊にまとめた『グレート合体愛蔵版 すごい科学で守ります!』の発売が決定された。価格は税込5,940円。
特色
本作は『空想科学読本』のように「ジェットイカロスの重量は94t! どっしぇ~っ! モーレツに軽い! これは風船並みの密度である! こんな重量で同じ50m級の巨大化した次元獣に挑もうものなら、小錦とアンガールズが戦うより不利な状況になるに違いなく、殴られれば宇宙空間まで飛んでいくだろう。ああっ、ぼくらのジェットイカロスはお星さまになったのよ…(ここで近藤ゆたかの挿絵が挟まり『柳田さん、そりゃあんまりですよ!』などと欄外で突っ込まれる)」などといった科学考証は基本的に行っていない。
『すごかが』で行われているのはあくまでSF考証であり、「できるわけねえじゃねえか、こんなもん!!!」と表面上は突っ込みつつも、「いやまて、このエピソードではこんなことも行われていたな、とすると…」と作品内から邪推に邪推を重ねていくため、基本的に製作者の無知や矛盾を嘲笑うことはなく、あくまで「作品世界内で起こってしまった事実は事実」と認める形で話を進めている。従って、「おもちゃを売るための事情」だとか「映像表現上の都合」「役者の都合」あるいは「時代のノリ」などといった大人の事情は考慮していない。
議論採用設定の優先順位は基本的には
- 映像作品
- >各種公式二次創作
- >設定資料集などの各種文書類
- >映像会社(東映)の会社見解
- ≧スタッフコメント
としており「映像や物語」と「設定や公式の発言」が乖離している場合には作品で描写されている事が優先(公式が「間違い」「映像表現上の都合」と発言していても映像への描写が無ければ考察の余地が残されている)としている。ただし、これはあくまでも「基本方針」であり、どうにも解決できない場合にはフレキシブルに低位の設定側が採用される事も無いではない。
こうしたノリは1986年に月刊OUT誌上で株式会社サンライズ作品を対象に行われた『サンライズ地球史』『サンライズ宇宙史』のようにロボットアニメ等のファンジン・ファンダムによる科学・SF・作内文化などジャンルを問わない各種設定の考察(という名のツッコミ祭りからのセルフフォロー)ではよくとられるスタンスで、中の人ネタや苗字ネタなどの安易なネタに走ることも多いが、「デンジ式空中浮遊システム」やら「広銀河クル文明圏」だの、東映特撮世界における「一連の流れ」を勝手に想像し、一つの大系に纏めたその筆致とヒマさ加減には誰もが舌を巻くことであろう。
扱った作品
『すごい科学で守ります!』
史上最初の戦隊ロボ・バトルフィーバーロボはあらゆる武器を持っていたのか!? その戦い方に長谷川の代表作との関連性を見た!
ヒーロー戦隊の飛行メカに「三角形は飛べるの法則」あり! そして、デンジマン最後の任務とは…!?
大悪党・機械帝国ブラックマグマは、実は哀れな使いッパシリだった!? 初代バルイーグル電撃退任の真相とは!?
なぜ本郷教授は世界の命運をガキンチョなんぞに任せてしまったのか!?
ダイナマッハの車輪はダイナロボのどこに入ってんの?
ピーボはなぜ愛する地球を離れてしまったのか!?
史上最強最悪の大星団ゴズマ襲来! 人類かく戦えり!!
フラッシュキングは縦分割! タイタンボーイはシグナルマン一族が作った!?
地底からの脅威! 立ち向かうマスクマンは第三セクターだった!?
科学の力VS科学の力! 合体バズーカ伝送システムここに誕生!
勇敢すぎだぞ星川夫妻! 蛮勇の裏にフラッシュ星人の尽力在り!?
ジェットイカロス苦戦の理由とテトラボーイが指示待ちロボットな原因は根底に共通するジレンマがあった!?
マンモスやサーベルタイガーも爬虫類! すごすぎる東映特撮世界の中生代を真面目に考察してみよう!
孫悟空も中華武将の鎧もインド人の想像する宇宙も、すべて気伝獣がモデルだった!!
忍術万能説! これでいいのだ忍者戦隊!
脅威のマシン帝国バラノイア! 全世界で闘えスーパー戦隊!! ついでに急に年代が飛んだ理由を解明せよ!
宇宙の陸はおれの陸! 広銀河クル文明圏とは何だ!?
あんな狭い基地にどうやって100人も入れた!? 邪電王国ネジレジアとの戦いが人類にもたらした壊滅的誤算!!
『もっとすごい科学で守ります!』
なぜショッカーは怪人を大量生産して攻撃しないのか!? 変身する前に着ていた服はどこに行く?
正義の科学者の技術は、悪の組織より10年遅い!!
密林の奥地に、5万年前からの光と影の果てしないバトルを見た!!
なぜ電波人間タックルは仮面ライダーになれなかったのか?
巨大なドラゴン・ネオショッカー首領こそが、ショッカー首領の真の姿だった!!
先代創世王はショッカー首領の心臓!? 全ての仮面ライダーは、初代創世王=パズズの模造だった!!
正義の組織が鷲を模した本当の理由! ゴレンジャースーツの実験を行った人物とは!?
あまりに犠牲が大きすぎた正義のサイボーグ四人衆! 彼らを率いるビッグワンの仮面の下に悲しみの涙を見た!
なぜ女も混じっているのに「マン」なのか!? ギンガの光はナノマシン!?
二度来た恐怖の大王アンゴルモア! 人類の科学が悪しき魔を破る時!!
ギャバンの正体は宇宙保安官!? ドルはギンガマンと友達になれる!?
シャリバンはなぜ手からビームを出さないのか!? グランドバースの両腕は何のために!?
不思議界は「地獄」!? 拳銃戦艦バビロスの真の所有者は巨人だった!!
『さらにすごい科学で守ります!』
タイムパラドックスの先に待つ未来、謎の“圧縮冷凍”技術! 意外!! 西暦3000年は過去に存在した
人類との接触によって進化の方向性が変化したパワーアニマル! 精霊だって楽したい。謎のGフォン!
忍者、いるんです。宇宙中に…。 実体がない(?)1号ロボ旋風神! カラクリボール。それは”ギンガの光“? ビルは沈む・・・・・・
混沌は続くよ、どこまでも…爆竜は生物か? 爆竜の強化服?ダイノギャリー!
ついに開局!宇宙警察地球分署! 戦隊史上初!敵の組織なし? 量産型バビロス!? スーツにはランクがある?
でもこれはコンバットスーツだろ!
時空戦士はいずこから? グランナスカはタイムマシンだった
なんと、戦時中のアンドロイド! 地球から力を!超重力エンジン! 空飛ぶ謎の戦時中の今の車(笑)
※忍風戦隊ハリケンジャーの乱入記事として掲載
ジバンはコンバットスーツ!? ところで五十嵐博士って・・・・・・誰?
10年越し?ついに完成した地球製コンバットスーツ?
チーム編成が人間2人+アンドロイドに?
前見えます?完全密閉、エクシードラフト 神と悪魔の戦い・・・・・・そしてミカエルとは
当世ロボット事情 当世AI事情 組織の壊滅によって拡散する悪の組織
爆虫戦隊ムシレンジャー!のはずが・・・・・・ 轟雷神はビーファイター用のメカだった!? そして世界が繋がった・・・・・・ 幻の(S・P・U製)轟雷神3号メカ
荷物はローターの下?そんな?バカな!
※特捜戦隊デカレンジャーの乱入記事として掲載
※ブルースワットの乱入記事として掲載
すごかが同人
正式タイトルは『すごい科学で守ります!・仮面ライダーディケイド編 だいたいわかった!』。
西暦2010年8月に長谷川裕一氏が『総統(長谷川氏はソノラマ時代の「宇宙船」誌で総統を自称したコラム連載をしており、これに因み氏を「総統」と呼ぶ向きも存在する。以降、特に注釈が無い場合は「総統=長谷川氏」とお考え戴きたい)』を務める『スタジオ秘密基地』から刊行された。
内容的には「すごかが流」の『仮面ライダーディケイド』の総括本だが、例によっての暴走を行っている為、先の商業版以上に入手が困難になっている現状は残念と言うより他は無い。
内容
☆帰ってきたゼ!〜前書き〜本書の取扱説明書
☆旅の始まり(ってえか、混乱の始まり)
☆ディケイドは何の改造人間か?
☆そして彼はとおりすがった
☆電気ウミウシは仮面ライダーの夢をみるか?
☆〔COLUMN〕特殊な「電王」の世界観
☆だいたい、しかわかっていなかった!
☆メッセンジャーはコミュニケーション能力不全!
☆あまたの世界あまたの勘違い
☆〔COLUMN〕謎の人物・鳴滝の謎
☆驚異!鬼ヶ島に戦艦が!
☆〔COLUMN〕謎の人物・鳴滝の謎 再び
☆九つの旅の終り、そしていくつだかわかんない旅の始まり
☆〔COLUMN〕この世界にはもともと平行宇宙が存在する!
☆混乱の宴は続くよ、どこまでも
☆ドロボウは新兵器がお好き
☆〔COLUMN〕十面鬼の正体とはなにか?
☆真夏の夜の夢 オールライダーVS大ショッカー
☆無限スパイラル!
☆電波人間は電気ウミウシの夢を見るか?
☆最後の鍵はずっとまわりでへらへらと飛んでいた
☆〔COLUMN〕では、そもそも「キバーラ」とは何者なのか?
☆本当の終り(たぶん) 本当の始まり(←こっちディケイドのことじゃないよね?)
☆〔COLUMN〕オ・ト・ナの事情
☆あとがき
・・・見出しだけでご覧の有り様である。勘弁してくれよ、総統!!
とりあえず「電気ウミウシ」なる謎のワードが気になる方も多いと思うが、結論から言うと総統流の『門矢士の「正体」』の改造人間、『ハードディスクウミウシ』の事を指す。
余談
『さらに~』の一部記事に痛恨のミスが有る。一つは圧縮冷凍について。いま一つはジバンについてである。
圧縮冷凍
「プロバイダス」等のヒントが劇中に呈示されている事から判る通り、データ処理に於ける『圧縮』と『解凍』が元ネタのシステム(圧縮対象の寸法や質量と言った『存在事象構成情報』を圧縮、凍結する物。当時の設定の「物理的にあり得ない数値の超低温」は、これを実現する為のエネルギーが周囲の空間の熱量を変換して取り入れられる際に一時的に物理定数の混乱が生じる為である)。・・・が、記事中では(散々悩んだあげく)ナノ・マシーンコーティングでお茶を濁してしまっている(圧縮原理は説明を投げている)。
ジバン
これは「ウインスペクター」に話を繋げる為の「こじつけ」である(劇中の「サイボーグ化」では手術時間が「間に合わない」との着眼点は良かったが・・・・・・)。そもそも、ジバンを「田村直人の記憶を移植した素体アンドロイドがコンバットスーツを装着した姿」とする当該記事の内容では劇中描写と色々と矛盾が出てくるのである。
※右腕の「マルチワーカー」は前腕の中身そのものがリボルバー方式のユニットである。また、ジバンは内部機構のダメージが田村直人の体調にも影響するが、メンテナンスや修復作業は「バトルモード」であるジバン形態でないと行う事ができない。実は、これらの問題をクリヤーしつつ劇中描写に矛盾のない解釈は「超人機メタルダー」の劇中に答がある。バルスキーがメタルダーとの決戦時、ローテールと「合体」して歴代の戦闘ロボット軍団員の姿と能力でメタルダーに挑むシーンがあったが、五十嵐博士が田村直人をジバンに改造する際に行ったのは『「これ」と同じ事』である。すなわち「存在位相の重ね合わせ」と「実存世界への存在事象情報の投影の切り換え」である。田村直人への「改造」は生命維持システムを兼ねる事になるジバンとのリンクシステムの移植「のみ」であり、これによりジバンの機体に田村直人の肉体を「情報化」して取り込ませ、モードチェンジによりジバンと言う機械構造体と人間・田村直人と言う生体構造体への相互変換を可能としたと考えられる。
・・・まぁ、「J・P・U計画」の巨大コンピューターはどう考えてもバード星の技術が入っていそうなので(・・・つーか、何なんだ?あの地下要塞都市みたいな巨大コンピューターは!トラクタービームまで使ってるし・・・)銀河連邦警察絡みで考える視点自体は間違ってはいないか。