並行在来線問題
へいこうざいらいせんもんだい
概要
この問題は整備新幹線の建設に際し、それまでJRが運営していた新幹線に並行する在来線を第三セクター等に経営分離したり、廃止(廃線)したりすること、またそれらに伴う各種問題の事である。このため、整備新幹線の開業が必ずしも地域で肯定的に受け入れられるとは限らない一因となっている。
廃止の理由
これは国鉄民営化後も国が整備新幹線建設を通じてJRに影響を保ちつつ、JR各社の経営の安定を狙うものとして考えられたシステムであり、地域住民のことは一切考慮されていない。
また、新幹線と並行するため、優等列車(特急や急行)、快速、夜行列車(寝台特急など)といった長距離列車の運行が困難となり、仮に経営分離して運賃を上げた場合においても採算性が悪化する。
それでも大・中都市区間などで採算の取れる、あるいは特急が通過するなど、経営上必要と思われる路線はJR各社により存続されたり、上下分離方式により維持されたりする。が、そうでない場合は、それを他の会社……現状では全て沿線自治体(都道府県や市町村)などが出資する第三セクターが引き受ける必要があり、そうしなければその区間はJRにより廃止され、廃線となる。だが、並行在来線に指定された区間の多く(元は本線である)がJR貨物が運転する貨物列車にとって大動脈路線となっており代替経路が存在しないため、事実上引き受けを強制される場合が多い。
廃止および経営分離に伴うデメリット
- 整備新幹線が建設され、並行する在来線が経営分離されることにより鉄道ネットワークが寸断され、特急や快速が廃止されたり、JR線と第三セクター線間で初乗り料金が必要となる。
- 線路等の整備をローカルの運営会社で行わなければならないため、路線状況が悪化する。
- 独立で採算を取らなければならなくなるため、車両の運行本数が減少したり、運賃が高騰し、特に地元住民にとって不便なものとなる。
- 第三セクター化により「こっぱずかしい名前(関連項目参照)」になることが多い。
さらに、JR貨物による貨物列車の運行にも支障が出ている……と、言いたいところだが、JR貨物は適切な線路使用料を支払っているとは言い難いので、逆に分離された在来線側の負担増となっている。
地元の反対
そのため、旅行や仕事のため来訪する人々にとっては新幹線はメリットが大きいものの、地元住民にとってはデメリットが大きくなる。近距離から中距離の列車による移動は不便になるし、新幹線を利用し買い物をするようになって地元の商業施設の需要も落ちることがある。
さらに並行と言いながら在来線とはかけ離れたとんでもない場所に駅をつくったりする為、肝心の新幹線も飛行機に競争で負けてしまうというパターンもある。また、移管された路線が廃止されないとは限らず、その場合は地域住民の足がなくなってしまうことになる。そのため、一部の自治体により整備新幹線が嫌われる原因の一つになっている。
また逆に言えば、並行在来線問題により必要以上に新幹線建設が忌避される原因にもなっている。例えば湖西線は、ラッシュ時を中心に新快速が大阪駅や神戸駅まで直通し、他にも通勤列車が最大8両で走るなどそこそこの利用客数を有するが、同線を走る特急の廃止などで経営的に不利と見做されるかもしれないという理由だけで「第三セクターにされる」と地元民が並行する新幹線(北陸新幹線)建設に猛反対した。結果として北陸新幹線は当初予定していた湖西ルート開設が非常に難しくなり、紆余曲折の末現在小浜・京都ルートという湖西線沿線たる滋賀県をギリギリ避けるルートでの建設が予定されている。(なお滋賀県は過去に新幹線新駅を潰した”実績”がある)
- もっともこれは「鉄道不毛地帯」と呼ばれる舞鶴地区の救済や、できるだけJR東海区間を介さないで新大阪につないでほしいというJR西日本の思惑も絡んでいる。
結果的にその路線をJRが引き続き運行すべきか否かは事業者たるJRの胸三寸にかかっているわけで、都市圏近くを走る路線であっても分離されるかもしれないという猜疑心と隣り合わせなことが問題なのである。
- ただし東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線(東京駅〜盛岡駅間)と上越新幹線については、整備新幹線計画に基づいて整備された路線ではなく在来線の線増として建設されているため、現在でも並行在来線の廃止は原則として出来ない(東海道新幹線と並行して走っている東海道本線は国鉄の分割民営化により、3社での運行している為に近距離乗車券やSuica等の交通系ICカードでの利用では、各会社を跨がっての利用に制限がある)。
在来線よりも遅い新幹線?
区間によっては在来線特急が直通していた頃よりも遅くなるパターンも存在し、速達性を上げたら所要時間が逆に増えてしまった本末転倒である。
2024年3月16日の北陸新幹線敦賀延伸は、理論上では敦賀駅8分乗換で京都・大阪方面から福井まで僅か3分の短縮だが、公式(JR西日本)が自社の社員約900人(E7・W7系の満席状態と同人数)をエキストラとして敦賀駅へ集めて実証試験をした所、北陸新幹線から在来線特急への乗換完了までの実際の時間は13分もかかっており、乗換目的の駆け込み乗車をしなければ間に合わず、且つ京都・大阪方面から福井までの所要時間が在来線時代よりも遅くなる事が確定した。エスカレーター2列乗車を徹底した状況でこの乗換時間という有り様で、高齢者、障害者、子連れ客等の移動に時間が掛かる客だと更に遅く、20分以上に達するのは言うまでもない。
同時にJR全ての乗継割引制度全廃も行われる為、北陸新幹線と在来線の乗継利用で敦賀を跨った特急料金を乗継割引無しで2列車分徴収されるデメリットが発生する。(乗継割引とは別の割引が新設されるが焼け石に水)
特急料金を値上げされた上に遅くなる踏んだり蹴ったりである。京都・大阪方面に至っては新快速を遅れに巻き込んで京都以西のダイヤをも破綻させる事にもなる。
なお、敦賀駅以南は乗車券だけで乗れる新快速が走っているので、JR在来線側の特急料金の節約自体は可能。(時間が許す限り)9~12両のサンダーバード自由席を利用していた客が4両編成の新快速へ流れる可能性は容易に想像できよう。
青春18きっぷ問題
地域住民以外で並行在来線化の損害を受けるのが青春18きっぷ利用者、通称18キッパーである。青春18きっぷは移管された地域では使用できない(例外として「他の路線に乗り継ぐため移管された路線を使用しなければならない」場合に限り「途中下車は認められず」利用は可能となる)。
そのため特に並行在来線を不正乗車(無賃乗車)する者の増加も懸念される。整備新幹線開業で並行在来線が三セク転換されたのが原因で運賃値上げ&青春18きっぷ使用不能になったのを引き金に、18キッパーが不正乗車へ手を染めるようになり、結果的に「本来入る筈の収入が入らなくなる」等の鉄道事業者(JR及び並行在来線)側に損害が生じる可能性がある。
チケットレスで並行在来線を突破しようとする18きっぷ利用者から車内改札で運賃徴収する為に本来ワンマン運転の単行列車が車掌乗務でツーマン化する運行会社側にとっての人事面での圧迫(主に人件費、限られた人員配置のやり繰り)が生じている。
逆に並行在来線の正規運賃を払うが、青春18きっぷを購入せず、JR側の運賃を踏み倒す事例もある。
不正乗車はれっきとした犯罪行為なのでやってはいけない。
2015年以降:青春18きっぷ特例区間絡みで北陸本線金沢駅〜富山駅間のうち、津幡駅-高岡駅間で特例が歯抜けで設定されていない為、同区間の運賃を踏み倒す場合が多い。更に酷い場合だと富山駅-直江津駅-長野駅間も踏み倒される事も。ICカード導入路線は未記録のICカードを悪用される事が多いが、未導入路線は前述の車掌乗務による徴収で対策されている場合がある。
2024年3月16日以降:北陸新幹線敦賀駅延長と同時に北陸本線敦賀以北がハピラインふくい及びIRいしかわ鉄道へ転換されて運賃値上げ。更に同区間は途中の無人駅に交通系ICカード読取機がある為、不正乗車の規模・被害額共に悪化する可能性が懸念される。同時に津幡駅-高岡駅間が七尾線絡みの18きっぷ特例区間に加わるのと引き換えに、金沢駅-津幡駅が特例から除外される。
整備新幹線の並行在来線一覧
原則として、整備新幹線の開業日と並行在来線の経営分離日は同日。
東北新幹線(JR東日本)
2002年(平成14年)12月1日に盛岡駅〜八戸駅間が開通した際には、東北本線の盛岡駅〜八戸駅間がJR東日本から経営分離され、岩手県内の盛岡駅〜目時駅間がIGRいわて銀河鉄道のいわて銀河鉄道線、青森県内の目時駅〜八戸駅間が青い森鉄道の青い森鉄道線にそれぞれ移管された。
これに伴い、東北本線は東京駅〜盛岡駅間と八戸駅〜青森駅間の2区間に分断された状態になり、盛岡駅で東北本線の上野駅方面と青森駅方面や花輪線(好摩駅〜大館駅間を走るJR東日本の路線。好摩駅はIGRいわて銀河鉄道の途中駅であり、盛岡駅〜好摩駅間は第三セクターに乗り入れる形になる)の乗り換えも不便となった上、花輪線方面でもIGRいわて銀河鉄道の運賃がかかるようになった。また、特急「はつかり」・「スーパーはつかり」(盛岡駅〜青森駅〜函館駅間)と快速「海峡」(青森駅〜函館駅間)は特急「白鳥」・「スーパー白鳥」(八戸駅〜青森駅〜函館駅間)と特急「つがる」(八戸駅〜青森駅・弘前駅間)に統合・再編され、寝台特急「はくつる」(上野駅〜青森駅間)は廃止となった。寝台特急「北斗星」・「カシオペア」はこの時点では存続したが、運転区間に第三セクター鉄道(IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道)が含まれるようになったため、線路使用料の関係で運賃が値上げとなった。
2010年(平成22年)12月4日に八戸駅〜新青森駅間が開通した際には、東北本線の八戸駅〜青森駅間がJR東日本から経営分離され、同区間は青い森鉄道の青い森鉄道線に移管・編入された。これにより、東北本線は東京駅〜盛岡駅間のみとなった。特急「白鳥」・「スーパー白鳥」は新青森駅〜函館駅間、特急「つがる」は秋田駅〜青森駅間にそれぞれ運転区間を変更した(後者は特急「かもしか」の廃止・改称および特急「いなほ」の系統分離によるもの)。寝台特急「北斗星」・「カシオペア」はこの時点でも存続したが、第三セクター鉄道(青い森鉄道)の区間が変更されたため、線路使用料の関係で運賃が値上げとなった。
北海道新幹線(JR北海道)
2016年(平成28年)3月26日に新青森駅〜新函館北斗駅間が開通した際には、江差線の五稜郭駅〜木古内駅間がJR北海道から経営分離され、道南いさりび鉄道の道南いさりび鉄道線に移管された。これは幹線ではなく地方交通線が並行在来線に指定され、JRから経営分離される初のケースとなった。余談だが、江差線の末端区間である木古内駅〜江差駅間は、五稜郭駅〜木古内駅間の経営分離によってJR北海道の路線としては孤立区間になることが予想された事や、利用者の減少などを理由に、北海道新幹線の開業に先立つ形で2014年(平成26年)5月12日に廃止されている。
寝台特急「北斗星」は、北海道新幹線の走行試験開始などを理由に開通に先立つ2015年(平成27年)3月14日のダイヤ改正をもって定期運行を終了した(同年4月2日〜8月22日に臨時列車として運転された後、正式に廃止)。特急「白鳥」・「スーパー白鳥」、寝台特急「カシオペア」、急行「はまなす」は新幹線の開通準備のため2016年(平成28年)3月21日までに全て運行を終了(3月26日付で正式に廃止)。これによって、青函トンネル(津軽海峡)を通過する在来線の定期旅客列車は消滅した。津軽海峡線の路線愛称も使用されることはなくなったが、海峡線(中小国駅〜新中小国信号場〜木古内駅間)はJR北海道の路線として存続し、事実上貨物列車の専用路線となった(ただし、臨時旅客列車としては団体専用列車「カシオペアクルーズ」や「TRAIN SUITE 四季島」が海峡線を走行している)。青函トンネルを含む新中小国信号場〜木古内駅間は三線軌条による北海道新幹線・海峡線の共用区間となっている。
これにより青函間の鉄道中距離輸送は新幹線のみとなり、事実上の値上げとなった。その結果これを嫌った青函の利用者層(と18きっぷ利用者)が新幹線延伸後に一斉に比較的安価な青函フェリーに流れるという‘先祖帰り‘の現象が起きている。
なお、北海道新幹線の新青森駅〜新中小国信号場〜奥津軽いまべつ駅間は津軽線の青森駅〜蟹田駅〜中小国駅〜新中小国信号場〜津軽二股駅間と並行しているが、運営主体が北海道新幹線(JR北海道)と津軽線(JR東日本)で異なることから、津軽線は並行在来線に指定されず、末端の津軽二股駅〜三厩駅間も含めてJR東日本が継続して運営している。奥津軽いまべつ駅と津軽二股駅は隣接しているが、新幹線の開通以前から両駅は別鉄道会社の別駅扱いであるため、両駅を乗換駅として1枚の乗車券を発行することはできない。奥津軽いまべつ駅と津軽二股駅との間で連絡する場合は運賃通算はできず、打ち切り計算となる。
2031年(令和13年)春に新函館北斗駅〜札幌駅間が開通する際には、函館本線の函館駅〜七飯駅〜新函館北斗駅〜大沼駅〜大沼公園駅〜森駅〜長万部駅〜小樽駅間(本線)、七飯駅〜大沼駅間(通称・藤城支線(※))、大沼駅〜鹿部駅〜渡島砂原駅〜森駅間(通称・砂原支線)の3区間がJR北海道から経営分離される予定である。
函館駅〜札幌駅間を結ぶ在来線は函館本線(倶知安駅・小樽駅)経由と室蘭本線・千歳線(東室蘭駅・苫小牧駅)経由の2ルートが存在し、北海道新幹線は前者に並行して建設される。しかし、1961年(昭和36年)10月1日のダイヤ改正(サンロクトオ)で北海道初の特急列車として「おおぞら」が設定されて以降、メインルートとしての役割は順次後者にシフトしていき、函館本線の長万部駅〜小樽駅間(通称・山線)は1986年(昭和61年)11月1日に特急「北海」の廃止・急行「ニセコ」の臨時列車化によって定期優等列車が消滅し、1987年(昭和62年)4月1日に国鉄が分割民営化された際にはJR貨物が長万部駅〜小樽駅〜手稲駅間の貨物営業を承継しなかった。このため、長万部駅〜小樽駅間には新幹線開通以前から定期の優等列車・貨物列車がいずれも設定されなくなっており、臨時特急が特定の季節に設定されるのみであった。
2000年(平成12年)3月31日から6月30日に有珠山の噴火によって室蘭本線が不通になった際は、特急や貨物列車が迂回運転によって同区間を経由したが、今後も迂回運転以外でこれらの列車が走行する可能性は低いという状況であった。特に貨物列車に至っては、前述の迂回運転時に活躍した牽引機関車であるDD51形がJR貨物・JR北海道から共に全廃され、後継のDF200形は軸重の関係で同区間に入線不可能であり、JR貨物が「今後迂回運転の実施を想定した軽軸重の機関車を導入する予定はない」ことを明言していた。同区間は普通列車の本数も少ないことから利用客が見込めず、結局鉄道路線としての存続は困難とされ、廃止・バス転換されることになった。一方で小樽駅〜余市駅間は輸送密度が2000を越えており、他の北海道内の赤字ローカル線と比べても通勤・通学需要が一定数おり、昨今のバスドライバー不足もあってか当該区間のバス転換については異論も多い。
この区間の転換方針が早期に決着した背景には、定期的に火山活動を繰り返す有珠山が再び活発化し前述の迂回輸送問題が現実化してしまう前に決着を図りたかったという思惑があったともいわれる。なお2024年現在、バス転換の協議は停滞中であり、再開の目処すら立っていない。
また、函館駅〜長万部駅間のうち、函館駅〜新函館北斗駅間は電化されており、新函館北斗駅から函館市方面へのアクセス輸送を担う「はこだてライナー」が運転されているという事情から第三セクター鉄道として旅客輸送は存続するが、新函館北斗駅〜長万部駅間は非電化であり特急を除く旅客需要が小さいとされることから支線も含めて旅客輸送を完全に廃止する方向で協議が進められている。(だが、森駅などは現状でも相当数の高校生や高齢者などの利用があり、仮に旅客営業が廃止となった場合、函館への通学や買い物が困難になるほか、大沼公園駅へのアクセスが自動車だけとなり、函館を訪れた観光客が大沼公園に足を延ばすのが困難になったり、イベント開催時に起こる大渋滞が酷くなることが予想される。いずれも両駅は長万部町や八雲町と異なり代替となる新幹線駅も設置されない。その森駅を擁する森町や駒ヶ岳を海沿いに迂回する「砂原回り」の沿線自治体である鹿部町は最寄りの新幹線駅からも距離がある。山線も同様であるが新幹線を持つ者と持たざる者の格差が浮き彫りとなってしまう可能性が高い。)同区間は本州と北海道を結ぶ貨物列車の運行経路であることから、貨物専用の鉄道路線として存続させる方針であるが、2023年時点では具体的な方式は未定となっている。
なお函館市では札函の道内需要も見込んだ函館駅〜新函館北斗駅間の新幹線乗り入れを公約に掲げた市長が当選・就任しており、現在調査に入っている。
なお、小樽駅〜札幌駅間は札幌都市圏輸送の使命を担っており、千歳線(苫小牧駅・新千歳空港駅方面)や函館本線(岩見沢駅方面)と一体的な列車の運用を行っていることから、JR北海道が運営を継続する予定である。
このように北海道新幹線の並行在来線問題は西九州新幹線と並び現行の制度の様々な弊害を露呈させる結果となった。
(※)七飯駅〜大沼駅間に存在する新函館北斗駅・仁山駅を経由しない下り線専用の支線であり、独自の営業キロは設定されていない。
北陸新幹線(JR東日本・JR西日本)
1997年(平成9年)10月1日に高崎駅〜長野駅間(通称・長野新幹線、全てJR東日本の管轄区間)が開通した際には、信越本線の横川駅〜篠ノ井駅間がJR東日本から経営分離された。
このうち、群馬・長野の県境に跨る碓氷峠を越える区間として永年親しまれてきた横川駅〜軽井沢駅間(通称・横軽)はその特殊な運行形態を維持しなければ列車の運転そのものが不可能であることや、特急が新幹線に移行することで利用が激減し、ローカル需要が見込めないことなどから鉄道路線としての存続は困難とされ廃止。JRバス関東による路線バス(碓氷線)に転換された。同区間は並行在来線では初の廃止区間となった。
長野県内の軽井沢駅〜篠ノ井駅間はしなの鉄道のしなの鉄道線に移管されたが、東邦亜鉛の貨物輸送や乗降客が多く経営上有利と見なされた群馬県内の高崎駅〜横川駅間、および特急「しなの」が走行する長野県内の篠ノ井駅〜長野駅間は経営分離されず、JR東日本の路線として存続した。これにより、信越本線は高崎駅〜横川駅間と篠ノ井駅〜新潟駅間の2区間に分断された。特急「あさま」・「白山」は廃止。急行「能登」は上越線経由に変更された。なお、「あさま」・「白山」の長野駅〜直江津駅間の代替として特急「みのり」(長野駅・高田駅〜新潟駅間)と普通・快速「信越リレー妙高」が設定されたが、後に快速「くびき野」と普通・快速「妙高」にそれぞれ変更されている。
2015年(平成27年)3月14日に長野駅〜上越妙高駅間(JR東日本の管轄区間)および上越妙高駅〜金沢駅間(JR西日本の管轄区間)が開通した際には、信越本線の長野駅〜直江津駅間がJR東日本から、北陸本線の金沢駅〜直江津駅間がJR西日本からそれぞれ経営分離された。
このうち、信越本線は長野県内の長野駅〜妙高高原駅間がしなの鉄道の北しなの線、新潟県内の妙高高原駅〜直江津駅間がえちごトキめき鉄道の妙高はねうまラインに移管された。これによって信越本線は群馬県内の高崎駅〜横川駅間、長野県内の篠ノ井駅〜長野駅間、新潟県内の直江津駅〜新潟駅間の3区間に分断された。なお、北陸新幹線の長野駅〜飯山駅間は飯山線の豊野駅〜飯山駅間とも並行しているが、この区間はルート上の制約で飯山駅を経由することになっただけであるため、「本来の並行在来線の意義から外れる」として経営分離は行われていない。
北陸本線は新潟県内の市振駅〜直江津駅間がえちごトキめき鉄道の日本海ひすいライン、富山県内の倶利伽羅駅〜市振駅間があいの風とやま鉄道のあいの風とやま鉄道線、石川県内の金沢駅〜倶利伽羅駅間がIRいしかわ鉄道のIRいしかわ鉄道線にそれぞれ移管された。またこれに伴い県境を挟んだあいの風とやま鉄道泊駅〜えちごトキめき鉄道直江津駅間は運行コスト削減の為、気動車による運行に切り替わっている。
特急「はくたか」(北越急行ほくほく線経由)は廃止。特急「北越」と快速「くびき野」は特急「しらゆき」に統合・再編された。特急「サンダーバード」・「しらさぎ」は富山駅・魚津駅などへの発着がなくなり、金沢駅発着へ短縮された(新幹線「つるぎ」との接続に移行)。和倉温泉駅発着列車については、「サンダーバード」1往復を除いて「能登かがり火」にて代替された。寝台特急「トワイライトエクスプレス」は上下とも2015年(平成27年)3月12日出発の列車を最後に廃止された。
2024年(令和6年)3月16日に金沢駅〜敦賀駅間(JR西日本の管轄区間)が開通した際には、北陸本線の敦賀駅〜金沢駅間が経営分離された。このうち、石川県内の大聖寺駅〜金沢駅間はIRいしかわ鉄道のIRいしかわ鉄道線に、福井県内の敦賀駅〜大聖寺駅間はハピラインふくいのハピラインふくい線に移管された。
これに伴うダイヤ変更で敦賀駅では昼間下りの新快速(湖西線経由)からハピラインへの接続が悪化しており、新快速到着の僅か2分前に先に発車し、新快速からの乗り換え客は毎時58分も待たされる(上りは約20分程度で収まっている)。更に、米原方面はこれに加えて近江塩津駅でも約30分待ちがあり、合計約90分にも及ぶタイムロスが発生している。寧ろ「米原経由・近江塩津発着の列車を敦賀発着に延長するのが最適解では?」とツッコ見たくなるダイヤと化している。
特急「サンダーバード」の敦賀駅〜金沢駅・和倉温泉駅間と特急「しらさぎ」の敦賀駅〜金沢駅間は廃止され、それぞれ大阪駅〜敦賀駅間と名古屋駅・米原駅〜敦賀駅間に短縮。金沢駅〜和倉温泉駅間は「能登かがり火」での運転に統一された。特急「ダイナスター」(福井駅〜金沢駅間)・「おはようエクスプレス」・「おやすみエクスプレス」(敦賀駅〜金沢駅間)は全区間廃止となった。
九州新幹線(JR九州)
2004年(平成16年)3月13日に新八代駅〜鹿児島中央駅間が開通した際は、鹿児島本線の八代駅〜川内駅間がJR九州から経営分離され、肥薩おれんじ鉄道の肥薩おれんじ鉄道線に移管された。同区間は熊本県と鹿児島県に跨っているが、他の並行在来線とは異なり県ごとにそれぞれの区間を受け持つのではなく、一つの会社が全区間を一括で受け持っている。これは並行在来線を受け継いだ第三セクター鉄道としては初めての事例であり、また現在まで唯一の事例でもある。
この変更に伴い、特急「つばめ」は新八代駅発着の新幹線リレー特急「リレーつばめ」に移行。特急「ドリームつばめ」は熊本駅〜西鹿児島駅間を廃止し、特急「有明」に編入された。寝台特急「なは」は運転区間を京都駅〜西鹿児島駅(同日に鹿児島中央駅に改称)間から京都駅〜熊本駅間に縮小した。なお、鹿児島本線の川内駅〜鹿児島中央駅間は経営分離されていない。
2011年(平成23年)3月12日に博多駅〜新八代駅間が開通した際には、特急「リレーつばめ」は新幹線に移行し廃止となったが、並行する鹿児島本線の博多駅〜八代駅間から経営分離された区間はなく、引き続きJR九州が運行している。
特に鹿児島県内はこの問題が繁々であり、2023年現在では快速を含めた優等列車が一切存在せず、鈍行が数時間に1本程度のみとなっている。更に新幹線に至っても1時間に2本程度の大幅減便、挙句の果てにはバスも運転手不足で大幅減便となっており、鹿児島県においては公共交通機関は壊滅状態となっている。
西九州新幹線(JR九州)
2022年(令和4年)9月23日に武雄温泉駅〜長崎駅間が開通する際は、長崎本線の江北駅(同日に肥前山口駅から改称)〜諫早駅間が並行在来線に指定された。同区間はJR九州が引き続き旅客輸送営業を行うが、従来の第一種鉄道事業者から第二種鉄道事業者へと移行し、一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センターが第三種鉄道事業者として鉄道設備を保有する上下分離方式での運行へと移行。また、肥前浜駅〜諫早駅間は交流電化設備を撤去し、非電化となった。
当初は江北駅〜肥前鹿島駅間を上下分離方式で存続し、肥前鹿島駅〜諫早駅間をJR九州から経営分離する予定だったが、佐賀県杵島郡江北町と同県鹿島市が強烈に反対して着工に入れなかったため(着工に入るには沿線自治体の同意が必要)、JR九州が音を上げて全区間を上下分離方式で経営維持する方針に転換した経緯がある。但し23年後に経営分離の見直しの条項がある。
特急「かもめ」は武雄温泉駅発着の新幹線リレー特急「リレーかもめ」に移行。新幹線と接続しない佐賀駅・肥前鹿島駅発着の列車は特急「かささぎ」として分離された。開業後3年間は特急列車上下計14本の運行が約束されている。
長崎本線では他に、末端区間である諫早駅〜市布駅〜長崎駅間(新線)と喜々津駅〜長与駅〜浦上駅間(旧線)が西九州新幹線の諫早駅〜長崎駅間と並行しているが、こちらは従来通りJR九州が第一種鉄道事業者として存続する。このうち、新線は交流電化区間であるが、車両基地が長崎駅から早岐駅に移転し、電車維持の場合回送が機関車牽引となり非効率となることから、交流電化設備を撤去し、非電化となる。旧線は元々非電化のため変更なし。
これにより長崎本線は上記区間を含め肥前浜駅―長崎駅間が再び非電化となった。整備新幹線開業後に並行在来線の電化設備が本格撤去されるのは初の事例となる。
尤もこれが可能になったのは新型ハイブリッド車両の導入など在来線への新技術投入を並行して行った事も大きい。
西九州新幹線の武雄温泉駅〜諫早駅間は佐世保線の武雄温泉駅〜早岐駅間や大村線の早岐駅〜大村車両基地駅〜新大村駅〜諫早駅間とも並行するが、これらの区間は並行在来線には指定されていない。なおリレーかもめの運行に際して佐世保線内が一部複線化されている。