概要
プリキュアシリーズでは、水着回が基本的に年に1度放送されされているが、かつては厳格な水着NGのルールがあるアニメとしてアニメファンの間では大変有名なシリーズであった(いわゆるプリキュアタブーというものを説明する時の代表例としてもよく取り上げられていた)。
その水着NGのルールとは、より正確な言い方をすると「プリキュア変身者、およびその同年代のキャラ(つまりは未成年女子)の水着姿を描かない」である。
男性キャラや成人女性については、水着姿は厳に規制されていなかった。
そして、このルールはプリキュアシリーズ第1作『ふたりはプリキュア』の立ち上げの際に決められた最初の決まりごとの1つでもあった。プリキュアはその誕生の時点で「水着NG」が決まっていた。
- 主人公美墨なぎさは筋金入りのカナヅチ(本人いわくトンカチ)との事だが、そもそも水着で泳ぐシーンが無いので、どれほど泳げないのかは不明。『ふたりはプリキュア』第6話では子熊が川に流されているのを発見し、思わず川に飛び込んだなぎさだったが…?
これは、『ふたりはプリキュア』という作品が「ミニスカートを着た女子中学生が激しい格闘バトルをする」という、男性視聴者があからさまに好みそうな要素をあえて取り入れていた事が影響する。
この基本コンセプトを世間に受け入れられやすくするように、「いかがわしいアニメではなく、母娘があくまで安心して見られる番組」ということをアピールするために様々な配慮がなされた結果、「水着NG」というルールができた。
『ふたりはプリキュア』は大ヒットし、キャラクターや世界観を変えつつ「プリキュアシリーズ」として以後も継続する事になったが、この「水着NG」のルールは後継作でもシリーズの伝統として約10年ほどは引き継がれる事になった。(ただし、「水着NG」のルールはあくまで「TVアニメ内」のみであって、カレンダーなどの関連グッズで水着姿が描かれる事はあった)
ほかの幼児向けアニメ…たとえば『アイカツ!』などで、毎年恒例となる水着回があり、さらにはEテレで放送の『境界のRINNE』ですらも水着回があったのに対し、これは極めて異例な事でもあった。
プリキュアシリーズでの水着NGのルールが何かとネタにされやすかったのは、水着を着せないのに、夏休み期間になると海に遊びに行くエピソードをやたらと入れたがるという制作側の態度への皮肉も大きい。
水着NGのルールが最初に作られた『ふたりはプリキュア』および、第2期の『ふたりはプリキュアMaxHeart』では水着を着せられないので、海回そのものを作らなかったが、夏休みに海を舞台とする楽しいお話を描くこと自体は、子供達にとっても需要があると判断されたのか、第3作『ふたりはプリキュアSplash☆Star』からはほぼ毎年プリキュア作品に海回が存在している。
しかし、水着を着せれない=海で泳がせることができないので、ビーチバレー、砂遊び、スイカ割りなど砂浜での遊びばかりを描かざるを得なくなった。
つまり、水着を着ないというだけならまだしも、水着を着るのが当たり前な場所で不自然なほど水着姿にならないために、ツッコミの元になりやすい。
しかもプリキュアではないキャラクターの水着姿(一般人キャラクターや敵キャラクターなど)は普通に描かれるので、違和感が余計にある。
実際にプリキュアシリーズで描かれてきた水着を着ない海回の実態は以下の通り。
- 『ふたりはプリキュアSplash☆Star』 第25話「商売繁盛!海の家のお手伝い」
タイトルの通りの内容。水着の男女で賑わう海岸でプリキュアたちが海の家のお手伝いに駆り出される。プリキュアたちは店員なので、水着を着る事は当然なかった。ただ、この話は後のシリーズの海回に比べれば「水着を着ない理由」がはっきりしているので、違和感は薄い。
- 『Yes!プリキュア5』 第26話「ロマンス全開リゾートライフ!」
水無月かれんの別荘がある島でみんなでバカンス。青い海にはしゃぐプリキュアたち。だが、何故か海で泳ごうという発想が誰からも出ない。バカンスの中心はこの島の森の中で行われる。ならば山の別荘を普通に舞台にすればよかったのでは……と誰もが思うところだが、実際に翌年では山にあるかれんの別の別荘がバカンス回の舞台となった。
- 『フレッシュプリキュア!』 第39話「ケンカは禁止?沖縄修学旅行!」
沖縄といえば青い海。しかし時期が11月なので海水浴はできず。ただ桃園ラブと知念大輔の夜の浜辺での逢瀬とか海回ならではのロマンティックな要素は多めではあった。何故この時期に海回を持ってきたのかは不明である。
- 『ハートキャッチプリキュア!』 第25話「海へゴーです!いつきウキウキ夏合宿!」
明堂院いつきの別荘がある浜辺でみんなで合宿。青い海にはしゃぐプリキュアたち。しかし、別に青い海で遊ぶわけでもなく、ファッション部の合宿、流しそうめん、プリキュアたちが浜辺でランニングと、専ら海とは関係の無い活動ばかりしていた。
ちなみに当初は水着シーンで水遊びをするというエピソードになる予定で、脚本段階ではちゃんと水着姿ではしゃいでいる事になっており、プロデューサー梅澤淳稔の許可までとっていたが、「仮に自分の娘の水着姿を衆目に晒したいのかと問われたら、それはできないだろう」という理由で長峯達也監督がコンテ段階で水着の登場しないシーンに差し替えたという逸話がある。したがって、長峯達也監督の容認さえ通っていれば、ここで正式な水着解禁のエピソードになっていたのかもしれない。
- 『スイートプリキュア♪』 第24話「サンサン!お砂のハミィで友情の完成ニャ!」
砂浜でサンドアート大会が開かれるので、それに参加するというお話。今回はモブキャラクターも含めて全員水着を着用していない。
- 『スマイルプリキュア!』 第25話「夏だ!海だ!あかねとなおの意地っ張り対決!!」
『S☆S』に続き2回目の「海の家のお手伝い」のお話で、今回は日野あかねと緑川なおが互いにライバル心むき出しで、お手伝い勝負を筆頭に、ビーチバレーやサンドアート作りなどで対決するというエピソードになっている。しかし勝負がどうしてもつかない。そして最終的に「じゃあせっかく海なんだから水泳で勝負しよう」という流れになる。一部視聴者の間に衝撃が走ったものの、そのセリフが出た直後にアカオーニが襲ってきて二人は戦いを通じて仲直りするという展開に。そして水泳勝負は結局お流れになり、水着シーンは描かれないまま終了。(代わりにキャンディがビキニの水着を披露したが)
泳ごうかというセリフをわざわざ言わせたのは、「海の遊びを扱う話なのに”泳ぐ”という発想が誰からも出てこないのはさすがに不自然」と毎年突っ込まれ続けたので、違和感を減らそうとしたのかもしれないのだが、結局は一部視聴者の期待を無駄に煽っただけという結果になってしまった。
なお、これについても水着シーンを登場させるつもりだったが最終的に中止となっている。理由については、「性的なものを出したら即SDを降りる」と、当時の大塚SDのツイートにより語られている。
このことから、この時点では「性的な文脈抜きに水着を描く」という発想が制作現場になかったことが窺える。
(事実、大塚SDは上記ツイートでプリキュアが水着を着るというただそれだけの事について『悪ふざけ』と回答している。この発言は現在の視点からすると「女性と子供の自由を貶める性差別炎上発言」と捉えられかねないが、日本国内でのジェンダー視点は2010年代後半から急速にアップデートされたので、スマイルプリキュアが放映された当時はそういう問題提起はまだ少数派であった)
- 『ドキドキ!プリキュア』 第30話「最後の試練!伝説のプリキュア!」
絶海の孤島でドラゴンと戦うお話。水着以前にレジャーやバカンスをする話ではなかったが、夜のキャンプでカレーをみんなで作るシーンなど、夏休みイベントっぽい部分が多少は意識されていたので、スタッフ的には海回のつもりで作っている様子。
ドキプリは元々連作エピソードが意識されていたため、海回に限らず季節イベントネタ自体があまり無かった作品で、この事はインタビューなどでメインスタッフも認めている。今回の話はこなさなくてはならないクエストの中で、夏らしさをどうにか盛り込もうとした結果なのだろう。
一応第28話にて、「数々こなしてきた特訓の一部」としてマナ達がスクール水着で水泳をするカットが小さく挿入されている。これも一応水着解禁なのかもしれない。
- 『ハピネスチャージプリキュア!』 第24話「いおなコーチのプリキュアパワーアップ大作戦!」/第25話「恋にドキドキ!プリキュア合宿クライマックス!」
氷川いおなの別荘がある浜辺でみんなで合宿。青い海にはしゃぐプリキュアたち。そして既定路線通りにプリキュアは泳がない。二週にわたった海回だろうと泳がない。ビーチバレーや花火やバーベキューは楽しんでも泳がない。
敵女幹部キャラクターであるホッシーワが白のビキニ姿を披露してバカンスを楽しんでいたが、プリキュア側にそれは許されなかった。
ちなみに合宿に同行していた相楽誠司は男子なので制限はなく、普通に水着で泳いでいた。おかげでプリキュア変身者だけ泳がないという不自然さが際立つ話になってしまっていたが……
なお、その誠司が溺れたときに白雪ひめが海中に入って助けたが、その時は水着になる代わりに人魚に変わルンルンしたのであった。(服を着たまま海中に入るのはさすがに危ないという認識はあった様子)
ちなみに、『ハピネス』は前述の『ハートキャッチ』と同じく長峯達也が監督を務めていたため、長峯達也がプリキュアシリーズに関わると、プリキュアの水着が「自分の娘の水着姿を晒す様であるため嫌だ」という理由で敬遠される傾向が強くなるとされている。
現在のプリキュアシリーズでは、水着というものは性的な雰囲気を出すものではなく「TVの前の幼女たちの憧れ」という視点で捉えられている。
だが、初代の頃に明確に敵視されていた水着が、このようなスタンスになるまでにはいくつもの試行錯誤があり、どうすれば水着回をプリキュアの理念にあわせてポジティブに描けるのかというチャレンジは現在でも続いている。
以下、プリキュアで水着回がどのようにして実現され、そして「性的でないように」という縛りの中で水着回がどのように描写されていったかについて記載する。
『フレッシュプリキュア!』
第2話「つみたてフレッシュ!キュアベリー誕生!!」
東映のプロデューサーが鷲尾天から梅澤淳稔に交替した2009年放送の第6作『フレッシュプリキュア!』は、それまでのプリキュアと違う要素を多々取り入れた意欲作であった。
その第2話で、蒼乃美希(キュアベリー)が競泳水着姿でプールで泳ぐシーンが放送された。一分あるのかないのか程度であったが、プリキュアシリーズ初の水着解禁。
しかし、このシーンは、「周囲の男子たちが水着姿の美希を色目で見る」ような演出になってしまい、これが視聴者の親から扇情的でよろしくないとの抗議が届いてしまう。その結果、プリキュアメンバー全員の水着解禁の流れは、これ以降暫く頓挫する事となった。しかしながら、この第2話がプリキュア水着解禁の流れの最初の始まりであった事は確かだろう。
詳細については、蒼乃美希水着騒動を参照。
なお、『フレッシュプリキュア!』からはデータカードダスやカレンダーといった関連商品においては、メインキャラクターの水着姿も描かれるようになった(布面積を広く取り、肌の露出を極力抑えたデザインになっている)。また、上北ふたごによる一部作品のコミカライズ版でも水着姿で泳ぐシーンがある。
『Go!プリンセスプリキュア』
第28話「心は一緒!プリキュアを照らす太陽の光!」
2015年放送の第12作『Go!プリンセスプリキュア』では、第16話が「海回」であったが、メインキャラはダイビングのウェットスーツ止まりで、水着姿になる事はなかった。
しかし、みなみの幼少時の水着姿が回想シーンで出てきた事は結構な話題となり、今年は一味違うのではないのかという淡い期待を持つものもいた。
そもそもこの第16話は5月の放映だったため、季節的な事をいっても水着ではない事は筋が通っていた。水着回の本番はやはり夏休みだ。
そして夏休み真っ盛りである8月10日に発売された「Febri Vol.30」で、同作を担当する東映の神木優プロデューサーのインタビュー記事に興味深い文言が掲載される。
「『プリキュア』ではこれまで、彼女たちの水着姿を基本的に避けてきたんです。でも、今回はそもそも海のプリキュアがいるわけで……(笑)。今後みんなで海水浴に行くエピソードがあるんですけど、彼女たちの水着姿をどう描くのがいいのか。これまで避けてきた理由もわかったうえで演出する必要がある」
そして、この直後に公開された第27話の次回予告で、実際にはるかたちの水着姿が披露された。
しかも、エピソードの一部シーンが水着だったという訳ではなく、1エピソード全体が海での遊びを舞台とした水着回そのものであった。
このため、プリキュアシリーズにおける公式の水着解禁は上記の『フレッシュ』よりもこちらとする見解の方が多い。
「みなみの別荘があるプライベートビーチでみんなでバカンス」というプリキュアシリーズの海回の定番の流れだったのだが、このときにビーチバレーや砂遊びなどの遊びを満喫しまくったきららが「砂浜でやれる遊びはもうほとんどやっちゃったのよね~!」というセリフを発して海で泳ごうとするシーンがあり、これをメタい自虐と受け取る視聴者も少なからずいた様子。
しかし、同話はゆいが「わたしもプリキュアになりたかった」とトワに告白したことに始まり、分裂したロックとプリキュアらの戦闘、そして奪われたドレスアップキー………と内容・演出とも濃厚で、プリキュアの水着解禁が霞むほどの神回だった。
なお、今回はトワとゆいが泳げないという事が重要な要素となっていた話であるため、水着どうこう以前に「みんなで海水浴に行くという状況でないと描けない話」であった事は、別に水着を着せること自体が目的だったわけではない事を示している。水着を着て当たり前の状況だから水着を着せただけにすぎない、という事を付記しておく。
自らが女性である神木Pは、元女児の立場から「プリキュアを見ている小さい女の子たちにとっては、可愛い水着を着て海で遊ぶのは憧れるシチュエーションだろう」と後のインタビューで語っており、「大人の男たち」の視点で決められていたプリキュア水着NGのルールには思うところがあった様子。
『魔法つかいプリキュア!』
第25話「夏だ!海だ!大はしゃぎ!かき氷が食べた~いっ!」
「アニメージュ」で、史上初のプリキュアの水着ピンナップが描かれる。
前作「Go!プリンセスプリキュア」に引き続き、次回予告の時点でプリキュアたちが堂々と水着姿で既に動き回っていた。
本作では「海」の属性を持つ戦闘フォーム「サファイアスタイル」が存在するので、前作と同じく海を舞台にする大義名分もあったのかも知れないが、海水浴というシチュエーションが、ストーリーと密接につながっていた前作とは雰囲気は異なり、夏休みの当たり前のイベントというスタンスで演出されていた。
布面積は前年よりも若干多く、肌の露出(特に太もも)を極力抑えたデザインになっているが、可愛さを強調したものになっていて、髪型が特別仕様になっている。よこしまな目線ではなく「夏休みのお楽しみ」という健全な方向性を意識している事がより伝わりやすくなっていた。
前年のようなシリアスな重要イベントが挿入されなかった代わりに、水着回らしい「皆で仲良く海水浴」といった明るい方向性が強く出ていた。
これは前作の神木Pが語っていた「(性的な視点は持たずに)TVの前の子供たちが純粋に憧れてもらえるような海回」の意思が、プロデューサーが交代しても引き継がれた事になる。
大きなお友達は自重しつつも、水着禁止の慣例を破った前作に感謝したとかなんとか。
ドラマCDではこの前日譚に当たる水着を買いに行く話があり、ことははパジャマで泳ごうとしており、リコは学校指定の水着で済まそうとしていたのを、みらいの提案で可愛い水着を買いに行く流れになった。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』
第26話「夏だ!海だ!キラパティ漂流記!」
前作・前々作に続き、次回予告の時点でプリキュア6人の水着姿が描かれる。
男装麗人風のあきらを除く5名は体のラインがはっきり出るものを着用し(うちいちか、あおい、シエルはセパレートタイプ)、ゆかりはワンピースタイプであるがチューブトップ風の白水着という出で立ちであった。
布面積こそ昨年より少なかったが、今回のあらすじは「海で遊んでいたらキラパティごとメンバーが無人島に漂流」というものであり、水着で海遊びのシーンはあくまで「エピソードの導入部」という扱いであった。
無人島に漂着した後は、森の散策や洞窟の探索をする事になったので、流石に水着のままとはいかず、安全対策としてパーカーやワンピースを水着の上に羽織る形で行動している。(水着から普段着にあえて着替えなかったのは、やはりスカート姿で自然の中の探索はしにくいからだろう)
ストーリーも同じ島に遭難していたビブリーとの接触が主軸に据えられており、水着シーンは「特に深い意味はない軽いサービスシーン」に過ぎず、水着回というほどに目立ったものではなかった。見た目の印象だけならむしろパーカー回と言った方が良いのかもしれない。
しかし、逆に言えば「特に深い意味もなく」水着を出すなんてのがプリキュアシリーズで許されるようになったのは革命的でもある。
『HUGっと!プリキュア』
第24話「元気スプラッシュ!魅惑のナイトプール!」
今回は「1エピソード全体がプールを舞台とした回」がシリーズで初めて実現したという点で快挙となった。プールでは「浜辺で遊ぶ」と言う逃げ道がなかったので、これまでのプリキュアシリーズでプールネタは扱いにくかった。それを実現させた事も含めて、プリキュア水着回も新たな伝統として完全に定着してきたと言えるだろう。
今回は全員体のラインが比較的出やすいものとなっているが、はなのようにフリルが多めなデザインの者もいれば、ルールーのようにレオタードタイプかつ足をかなり出したデザインの者もいたりと、デザインの方向にも個人差がある。ほまれも露出度がかなり多いが、水着は衣類風のデザインなので、普段着の延長上のような格好になってはいる。ショートヘアであるほまれを除いたメンバーは髪型が特別仕様にもなっていた。
ストーリー的には「夏休みのお楽しみ」として明るく楽しい雰囲気を重視しながらも、クライアス社の新体制紹介、はなが抱える心の闇の掘り下げ、えみるとルールーのユニット『ツインラブ』の初ライブに加え、彼女達を芸能事務所に引き入れようとする元敵幹部3名、と一年の物語の後半戦へ向けた大量のネタが詰め込まれており、物語の丁度折り返し地点としてのインターミッションの意味合いもあった。
特筆すべきは「水着姿となったほまれが、えみるにスタイルの良さを褒められる」という一幕があるということ。これは上述した美希の一件以来「布地が少ない衣装を着こなす女子キャラクターのスタイルの良さを褒める」こと自体に制約をかけてきた本シリーズでは考えにくかった事である。
ただ、このくだりは「年上の女子に対する憧れ」として描写されており、セクハラ的な印象にならないように配慮されている(上述した通り、ほまれが衣類風の水着だったのも、この描写の影響があるのだろう)。
なお、地元のプールという知り合いが多い場所を舞台としながらも、最低限の配慮なのか、はなたちと同年代の男子キャラクターは猛オシマイダーの素体にされたモブキャラクター以外目立った描写がなく、代わりに露出が少ない浴衣を中心にした翌第25話の夏祭りのエピソードでアンリと正人などの男子友達と交流する事になる。
『ヒーリングっど♥プリキュア』
第35話「手と手でトス!ボールつないで青春お手当て!」
今回の水着回はみんなでビーチバレーを楽しむというエピソードだが、第35話の放送日はなんと12月6日。暦の上では冬である。
「ラビリンがビーチバレーをテーマにしたスポ根アニメにハマったことがきっかけで、みんなでビーチバレーを楽しむためにアスミの能力で赤道直下の無人島へ赴くことになる」と云う、わりかし強引な導入で水着回をねじこんできている。
なお、水着を明確に着用していると思われるメンバーはひなたとアスミで、のどかとちゆについては、完全な水着姿とはいかなかった(後のアニメージュ2021年2月号73ページのインタビュー記事にて、のどかはTシャツの下に水着、ちゆはマリンスポーツ用のアンダーウェア『ラッシュガード』を着用しているという設定であることが語られている)。
そもそも本作は、コロナの影響により、本編が再放送版を9週間にわたり流した事に伴い、作中と現実的な季節にズレが生じてしまっていて、作中で夏のエピソードとして作られた第26話の浴衣回も夏ではなく、9月27日の放送となってしまっている。
実際に放映された浴衣回では夏祭りを前提とした設定ではなかったので、季節の違和感は多少は軽減されていたが、水着回はさすがに夏休みのレジャー時期に放映しないと違和感でまくりなため、「当初の構想では夏に水着回をする予定だったとしても、スケジュールがずれまくった今年は難しいだろう」と殆どの視聴者が諦めていた。
ところが、12月最初の放送回となる第35話の予告でいきなり「夏だ!」「海だ!」「ビーバレラビ!」という声が上がり、ビーチバレーを行うメインキャラクターたち(と見るからにスポコン漫画の汗臭いキャラクターみたいな男性達)の面々の映像、水着姿でサーブを放つひなたの姿が確認された。あわやハロウィン通り越して12月というクリスマス直前の冬に入った時期で「夏だ!」と言い切る堂々とした居直りぶりにファンが騒然となった。
予告映像から水着回とともにカオス回の到来も期待されてたが、実際の放送でも、グアイワルがメガビョーゲンにスポ根的な特訓を課すなど、盛大なカオスっぷりであった。
なお、この回ではグアイワルがメガパーツで進化済みであるのにも拘らずギガビョーゲンではなく、メガビョーゲンを生み出していたり、のどかが単独でメガビョーゲンを浄化していたり等、当初は夏に放送予定だったシナリオの名残のようにも見える場面がいくつか存在している。(ただし、無人島で人間がいないからギガビョーゲンは作ることができず、メガビョーゲンであれば単独技でも浄化できるので、話の筋立てとしてはおかしくはない)
その後、アニメージュ2021年3月号にて、今回の水着回はコロナによる影響がなかった場合でも、12月頃に放送するかもという話があったことが判明している。
なお、2020年は本来ならば東京オリンピックが7月22日から8月9日まで、同パラリンピックが8月25日から9月6日まで開催されていたはずであった(コロナの影響で2021年に開催延期となった)。オフィシャルコンプリートブックでは「オリパラによって何週の放送が休止されるかはシナリオ制作段階ではまだ決まっておらず、最大で5週の休止が発生する可能性さえあった」と語られている。この5週というのは、オリンピックで3週、パラリンピックで2週をカウントしていると思われる。
そこで、オリンピックでの遅延対策としてどういう時期に放映されても理屈が通じるようなシナリオにしていたとしており、「もともと、夏の話が秋に放映される可能性もあったので、季節感がずれてもお話としては矛盾がでないように考えていた」とも強調されている。
浴衣回の前話である第25話は、コロナがなければオリンピック開催直前の7月19日放送予定だった。仮にその後のオリンピック期間の3週が連続放送休止になっていたとするなら、浴衣回は8月16日放送予定だったという事になり、これはプリキュアシリーズ恒例の夏の日常回を行う時期(いわゆる「夏枯れ」)としてはギリギリであった(浴衣回が本作前半の総集編的な内容になっているのは、前述の当初の長期休止予定に伴うフォローの名残と思われる。また、プリキュアシリーズは8月下旬からメインストーリーが大きく動き始める事が多く、現に『ヒープリ』も浴衣回の次話である第27話はメインストーリーに関わる重大な事件が発生した)。
この事から、この水着回は早くても放送時期は夏休みが終わった後にするつもりだったのではとの推測もある。
なお、もしも当初から水着回が「第35話」で予定されていた場合、コロナ禍による「9週の再放送期間」がなくて、代わりに「オリンピック・パラリンピックによる5週休止」があったとした場合、その放送日は11月8日となっていたと推測される。これは上述の「夏の話が秋に放映される可能性もあった」という話とも一致している。
ちなみにこの2週間後の第37話では「行楽シーズン(秋)に因んだエピソード」になっており、この12月に入ってから本作は季節関係でかなり駆け足な状態になっている(もっとも放送時期の都合上、「ハロウィン回」や「クリスマス回」は、本編では放送される事はなかった)。
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』
メインキャラクターの一人に人魚のローラが登場したり、海辺の街を舞台にするなど、何かと海や南国要素にあふれた作風の本作。しかもメインキャラの殆どが「やりたいこと、やるべきことを思いついたら即実行する部活動」を行っているこの作品では、きっと水泳なり海水浴なり、海で遊ぶ事をテーマにした回、すなわち水着回もあるだろうと放映開始時から期待されていた。
ちなみにOPを水着で再現したイラストがこちら。
第18話「歩くよ!泳ぐよ!ローラの初登校!」
6月27日放送の第18話で、人間に変身することができるようになった人魚のローラがあおぞら中学校に転入するという展開に。
そして彼女は人魚ならではの得意の泳ぎを活かせそうな水泳部に体験入部することになる。
そういうわけで当然スクール水着に着替えることに。この時の水着はセパスクタイプの競泳水着であった。
しかし、彼女がその泳ぎを皆に見せつけようとした時に敵がやってきて、プールを舞台に戦いが勃発する。
戦いが終わった後は、ついにローラの華麗な泳ぎが衆目の中で披露される……はずであったが、なんとローラは人間の姿ではカナヅチになってしまう事が判明。皆の前で大恥を晒してしまう事になる。ローラの得意な泳ぎはあくまで人魚としてのヒレを活かしたものであったため、人間の足を使った泳ぎ方は全くの不慣れなのであった。(→ポンコツローラ)
理想
現実
第22話「ヒミツの大冒険!人魚の宝を探せ!」
そして8月1日放送の第22話では、トロピカる部が南乃島での夏合宿を行う事になる。
そこで島の住人しか知らない秘密の浜辺で海水浴を行う事になり、トロピカる部のメンバーたちによる水着回が実行されたのだった。
主人公であるまなつがかなり本格的なビキニタイプの水着(胸にフリルもない)であった事で一部を驚かせたが、これは本作の作風を意識してのものである。詳細は長くなるので当該話のリンクを参照。
なお、翌23話は浴衣回であったが、本編中での敵幹部パートにて先に休暇を取った幹部達の写真報告で、ヌメリーの水着姿を映した写真が出てきたり エピローグでまなつが「(人間としての)ローラと一緒に泳げていないのは勿体ない」という事で、サプライズ的に水着での海水浴シーンがもう一度描かれた。今度はローラも18話でのスクール水着姿で、まなつの指導もあり、バタ足をマスターすることができた。
『ひろがるスカイ!プリキュア』
第30話「ひろがる海!ビーチパラダイス!」
予定されていた水着回がお蔵入りした前作(後述)から1年の間を置いて、2年ぶりの水着回となった。
内容としては、プリキュアの水着回ではもはや定番となった海遊び回。主人公のソラが実は泳げなかったというところから始まるコメディ要素が強めの回である。まほプリの水着回と同じくシリアスな要素はあまり押し出さずに「夏を楽しむ」という娯楽性を重視した回となった。
ストーリーとしては「ヒーローたるもの、泳げなければなりません!」と、カナヅチの克服に挑むソラだったが、結局彼女に必要であったのは「力を抜くこと」であり、柔よく剛を制すという話であった。
戦闘面では、当作では初の本格的な水中戦が行われ、今までにあった陸上や空中での戦いとの違いを見せていた。
肝心の水着については、フリルが多めなデザインだったのはソラましの2人である。ふたりは色違いのお揃いの水着でペアルックのようだった。そして特筆すべきは初の男子レギュラーであるツバサの水着デザインだが、何とマリンスーツという想像の斜め上を行く答え。
一方、敵であるミノトンも浜辺で修行という形で登場したのだが、赤フン一丁で己の筋肉を強調というインパクトある姿であった。
当話の詳細については当該記事を参照。
『わんだふるぷりきゅあ!』
第25話「夏だ!海だ!宿題だ!」
次回予告の時点で水着回だとわかる映像が流れて、「水着の準備は万端です!」といういろはのセリフで締められる。なんでもないセリフだが、プリキュアタブーの歴史を知る古参ファンであれば、このようなセリフが扇情的と過敏に捉えられなくなったことに隔世の感を禁じ得なかったであろう。
実際のお話としては、アニマルタウンの近くのビーチに夏休みの自由研究を兼ねて行ったのだが、研究対象のウミガメの産卵が夜であるため、それまで海で遊ぶことになるというもの。
本作ではプリキュア4人と協力者の兎山悟が水着姿を披露。プリキュア4人はフリルが多めの可愛らしい水着で、犬組は活動的なセパレートタイプ、猫組はファッショナブルなワンピースタイプであった。
ちなみに男性である悟は前年のツバサと同様のマリンスーツであった。
いろはは華麗にサーフィンを決める一方、元から運動音痴であった悟がカナヅチなのはともかく、ユキがカナヅチどころか水に浸かることすら恐怖を抱いていることが発覚した。
番外・亜種?
Goプリでの水着解禁後も、明確な意味での水着回がなかった作品も存在する。
ただし、そのような作品にも、広義には水着回と言えないでもない話が作られている事が多い。
2019年『スター☆トゥインクルプリキュア』
第27話「海の星!人魚になってスーイスイ☆」
この回では海の星プルルン星を訪れるのだが、星全体が海に覆われているため、中心部にたどり着くまで外に出られない状態。ひかるは外に出て泳げないのかと考えるも、生身な人間はそのままでは息がさすがに続かなくなる。その時プルルン星人のヤンヤンが出したのが、姿を一時的に変えることができる宝石へんしんじゅ。これを使ってプリキュアの5人とヤンヤンは人魚になって海を泳ぐ事になる。
それで、この時水着回的な面で行けば変化球があり、この回専用の人魚になる変身シーンが作られており、しかも、水着のような姿に一旦なってから足が人魚の尾に変化するという演出手法がとられている。
今作は宇宙を舞台にし、様々な惑星を回るため、海に単に行くのではなく、こうした形になったのであろう。また、過去作での人魚表現とは異なり、まどか以外はヘソ出し状態なのも特徴と言える。(なお、これまでの人魚化の変遷は人魚(プリキュアシリーズ)の記事も参照)
その一方で、『なかよし』2019年9月号掲載の漫画版第7話では、リゾート星でのバカンスの話となっており、上北ふたごがデザインした漫画オリジナルデザインの水着を着用している他、とある大手コンビニエンスストアとのコラボレーションでも水着姿を披露している。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』
第11話「ジェントルーの罠!ゆいとらん、テストで大ピンチ!?」
話の冒頭で登校時に華満らんが前日に「ポテトサラダのプール」に飛び込む夢を見た事をゆいとここねに語る場面があり、そのイメージで真っ赤なユニスクを着用している。
幻のデパプリ水着回
『デリシャスパーティ♡プリキュア』では、海やプールで水遊びをするというエピソードが放送されなかったため、当作は水着解禁以降の作品で、唯一水遊びの場面が描かれなかった作品となった(ただし、水着解禁以降、夏休みのレジャーして描かれなくなっていた山遊びのエピソードが復活した)
実は、当初の予定では水着回に相当するエピソードが制作予定だったことが後のインタビューで明かされている。しかし、東映アニメーションが不正アクセスの被害に遭ったことで5話分のエピソードが削除され、予定されていた水着回はお蔵入りになってしまったという。
カットされた水着回は、ここねの家にある大きなプールとヘリポートでみんなで遊び、みんなでお泊り会をする(パジャマパーティー)回」という内容であったことが判明した(出典:アニメディア2023年3月号57ページで掲載された深澤敏則シリーズディレクターへのインタビュー記事)。
幻となってしまった水着回を想像して描くタグも作られている。
余談
キュアぱず水着イベント
ソーシャルゲームでは水着イベントは定番中の定番…だが、水着解禁以降はプリキュアもそれは例外ではなかった。
プリキュアオールスターズが出演のソーシャルゲーム『プリキュアつながるぱずるん』(現在はサービス終了)では、2017年以降は夏季に水着イベントが実装され、イベント褒賞カードとして水着姿のプリキュア達が描かれていた。
ファンサービスなのか、水着回がなかったプリキュア作品のキャラが中心だったりしていた。
キュアぱずで披露した水着姿がこちら。
■2017年夏
ドキプリチームが実装された時のイベント「海辺へGo!ドキドキ夏休み!」にて、ドキプリ5人の水着が実装
■2018年夏
なぎさ・かれん・くるみ・トワ・せつな・あかね・みらい・リコが水着姿を披露
■2019年夏
ほのか・えりか・エレン・アコ・スタプリの5人が水着姿を披露
一方こちらは……
水着回が解禁された昨今でも、早朝のアニメである事と、視聴者のターゲット層を考えるとお風呂の入浴シーンについては解禁の兆しが未だに全く観られない状態が続いている(シャワーシーンも『フレッシュプリキュア!』第2話で美希のシャワーシーンが登場したのみ)。たとえ修学旅行でお風呂の話題が出たり温泉が登場する回であったとしても、気付いたら既に入浴済みだったり、『ヒーリングっど♥プリキュア』の様に妖精(ラビリン&ペギタン)は"体のスカーフを外した"上でちゃんと肩まで温泉に浸かっている傍らで、のどか達は足湯のシーンのみだったり、プリキュア以外の登場人物(ハグプリにおけるドクター・トラウム)の入浴シーンしか映っていなかったり、人魚姿のまま入浴(ローラが該当、下のイラスト参照)というのが現状となっている。
ハトプリでは最終決戦直前にコッペ様の体内にある異空間の温泉に浸かり、裸の付き合いで本音をぶつけ合って結束を最終的に強めるというシーンの構想があり、当時の児童誌に描かれたりしたのだが、結果的には立ち消えとなった(上北ふたごも「シナリオ段階では記載されていたが、オンエア上ではなくなっていた」と証言している。後に発行された小説版では復活することに)。
プリキュアシリーズではお風呂が話題になるような回自体が少ないが、ハグプリ第30話のようにお風呂が取り上げられた場合には有志による入浴シーンイラストが投稿されたりする。
ちなみに、プリキュアシリーズの前番組の『明日のナージャ』や前々番組の『おジャ魔女どれみ』シリーズ(TV本編)、さらにその数年前の『夢のクレヨン王国』でも水着シーンは一切描かれなかった。したがって、ABC日曜8時半アニメ枠全体としては、『夢のクレヨン王国』から『ハピネスチャージプリキュア!』までの約14年間、本格的な水着回がほぼ存在しなかったことになる。
一方で、CSの『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』では、水着シーンが一応描かれてはいる上、何故かおジャ魔女どれみ♯第2話や第9話、第20話でお風呂のシーンは描かれてはいるが・・・(水着シーンNGでお風呂シーンOKというのもまた稀なケースである)。
夏だ!海だ!
ここまでを見てくれるとわかるが、どういうわけかプリキュアの海回では「夏だ!海だ!」から始まるサブタイトルが多く、2024年現在4回使われている。
最後に
『ゴープリ』での水着解禁以降、水着回に抗議した父兄がいたのかは定かではないが、特に目立った苦情も無く、現在まで水着回が定着している。しかし、水着回が永らく無かった反動なのか定かではないが、今度は視聴者の中に水着回目当てでプリキュアを見る心もとない人々が出てくる事態となった。
水着回を特別視して騒ぎすぎると、それこそ苦情につながり、最悪な場合はあの件の再発により、また水着回が封印される可能性もありえるので、大きいお友達はそこそこ自重しよう。何よりプリキュアの水着回は少女の水着が大好きな大きいお友達(女性も含む)へのサービス回ではないので・・・。
関連イラスト
水着解禁が本編で叶わなかった女の子たち(+α)がみんなにサービス
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関連タグ
プリキュア恋愛禁止令:解禁はみなみんのフィアンセ(自称)がキーパーソン?
今のキミはピカピカに光って:『デリシャスパーティ♡プリキュア』のナレーターの中の人がやった、伝説の名作CMが起源。今後は『デパプリ』関連の水着画に、タグが付けられると思われる。
デパプリ水着回:本来放送されるはずだった幻の回。
プリキュア水泳部:プリキュアたるものカナヅチは…アリ?ナシ?
本編で水着姿になった女子キャラクター
宇佐美いちか 有栖川ひまり 立神あおい 琴爪ゆかり 剣城あきら キラ星シエル
野乃はな 薬師寺さあや 輝木ほまれ 愛崎えみる ルールー・アムール 野乃すみれ 野乃ことり 十倉じゅんな 百井あき パップル ジェロス
(太字はプリキュア)
プリキュア水着タグ