重力に任せて落ちれば燃え尽きてしまう大気圏突入。
我も危険なら彼も危険。共に大地を見る事ができるのか?
─「機動戦士ガンダム」第5話『大気圏突入』予告
「機動戦士ガンダム」第5話のサブタイトル。
及び以降のガンダムシリーズで仮面の人・コロニー落としに並ぶ定番イベントである。
機動戦士ガンダム 第5話「大気圏突入」
シャア・アズナブルは、ジオン軍から3機のザクⅡと補充人員のコム、ジェイキュー、クラウンを受領する。
シャア「新たに3機のザクが間に合ったのは幸いである。20分後には大気圏に突入する。このタイミングで戦闘を仕掛けたという事実は、古今例がない。地球の引力に引かれ大気圏に突入すれば、ザクとて一瞬のうちに燃え尽きてしまうからだ」
だがシャアはホワイトベースがあえて大気圏突入するタイミングこそホワイトベースとガンダムを落とせるチャンスだと、3機のザクⅡと共に強襲を仕掛けた。
しかし新兵器ガンダムハンマーを受け取ったガンダムやホワイトベースの奮闘によって撃墜は失敗。コムとジェイキューは戦死、シャアも頃合いを見計らってコムサイに収容されるも、クラウンのザクはガンダムに気を取られているうちに大気圏内の重力に負けてガンダムごと地球へ降下してしまう。
クラウン「しょ、少佐!シャアー!!助けてください!げ、減速できません!シャア少佐!助けてください!!」
シャア「ク、クラウン。ザクには大気圏を突破する性能はない。気の毒だが…しかしクラウン、無駄死にではないぞ。お前が連邦軍のモビルスーツを引き付けてくれたおかげで、撃破することができるのだ!」
大気圏突破機能を持たないクラウンのザクⅡは熱にあっけなく燃え尽きたが、シャアはガンダムを相打ちに出来たと思っていた。だがガンダムには、大気圏突入専用オプションがあった。
アムロ「あった、大気圏突破の方法が!間に合うのか?姿勢制御、冷却シフト、全回路接続。耐熱フィルム!」
ガンダムはアムロ・レイの咄嗟の機転で大気圏突入用オプションを作動、フロントスカートから耐熱フィルムをまとわせる。
アムロ「…す、すごい、装甲板の温度が下がった。しかしどうやって着陸するんだ?」
ブライト「よーしアムロ!聞こえるか?アムロ!」
セイラ「アムロ、無線が使えるはずよ。アムロ!応答してください、アムロ!」
オスカ「映像回復します…ガンダムです!」
フラウ「アムロ!」
ブライト「奴め、あとで締め上げなければならんが、このモビルスーツがあれば連邦軍はジオンに勝てる!」
こうしてアムロとガンダムはホワイトベースの甲板に着地し、無事地球へ降り立った。
だがシャアはそれさえも計算済みで、ホワイトベースが誘導された場所はジオンの勢力圏内空域でガルマ・ザビの部隊が待ち伏せしていたのであった…。
ガンダムシリーズでの大気圏突入
「機動戦士ガンダム」では、それまでのSFアニメやロボットアニメ作品では曖昧にされていた、大気圏突入の危険度の高さと宇宙へと上がる事の困難さを描いており、後の作品の描写に大きな影響を及ぼしている。上述のクラウンの最期やシャアの台詞が象徴するように、大気圏突入のタイミングで戦闘をしかけるのは非常に危険な行為で、きわめて時間制限の厳しい戦いとなる。
ちなみに「劇場版 機動戦士ガンダムⅠ」での同シーンは耐熱フィルムから耐熱フィールドに変更されている。
一年戦争当時、通常の大気圏突入はサラミス級巡洋艦艦艇の大気圏突入シャトルや、ムサイ搭載のコムサイに搭載して行われ、
ホワイトベースのような戦艦そのものの大気圏突入も異例ならば、ガンダムのようにMS単独での大気圏突入は驚愕すべき事態とされている。
末期においては衛星軌道から降下、急襲を行う兵器が作られたものの、再利用の急造品であった為か同類の兵器は続かなかった。
そして、後のほとんどのガンダムシリーズでも大気圏突入は定番イベントとして登場している。
主に大気圏に突入する事になる経緯は
- 主人公がヒートアップして特定の敵を深追いし過ぎてしまう(ぶっちぎりで多い原因)
- コロニー落としなどの地上に落ちてはならない物体の破壊作業の途中で巻き込まれてしまった
- 任務などで地球へ降下する必要があった(大抵大気圏突入能力を最初から持っている機体に多い)
の3種類のいずれかであることが多い。
なお、後の機動戦士Zガンダムにおいてはそのシャア(クワトロ)も後述通り敵の攻撃に弾かれモビルスーツで大気圏突入を経験することになる。奇しくもクワトロの例は上記3パターンのいずれにも当てはまらないという非常に珍しいパターンでもある。
大半のMSには大気圏突入能力はなく、グリプス戦役時代などではフライングアーマーという装備を用いたり、バリュートと呼ばれるシステムを装着して大気圏突入を行っている。
Ζガンダムやウイングガンダムゼロ、ガンダムAGE-2のように、モビルアーマー形態が大気圏突入能力を持っている機体も珍しくない。
中にはビームシールドで大気圏突入を敢行した猛者もいる。
一方、大気圏突入に失敗し、機体諸共大気圏の塵になってしまうという描写もある。
装備使用も形態変化も無しに、易々と大気圏再突入をやってのける人もいるが、これはかなりまれな例。
「Gの影忍」では大気圏突入奥義としてイヅナ落としという技が登場する。敵のMSを背中から羽交い締めにし、それを大気との接触によって生じる摩擦熱に対しての盾にして大気圏に突入。断熱材代わりになった相手は燃え尽きてしまうが、自身は無事に地上へ降り立てる。
歴代映像作品での大気圏突入
機動戦士Zガンダム
カミーユは、ファとの間の、幼馴染の感覚を嫌悪していた。
しかし、その感傷を突き崩すように、シロッコのメッサーラがエゥーゴの大気圏突入を阻止する。
その戦いで、カミーユはファと別れ、カクリコンの死を見るのだ。
次回、「機動戦士Ζガンダム」 『大気圏突入』
君は、刻の涙を見る
ファースト同様第11話でそのままサブタイトルになっている。
バスク・オムの魔の手から逃げ延びたブライト・ノアがエゥーゴのアーガマの新艦長となるエピソードで、ティターンズの地上拠点を叩くためジャブローへとMS群を地球降下させるエゥーゴだったが、これを妨害せんとカクリコン・カクーラー隊のマラサイとパプテマス・シロッコのメッサーラが出撃。
これに気を取られたエマ・シーンのリック・ディアスは編隊を乱してしまい、巨大なプレッシャーを感知したのと危険高度に近づいたためシロッコは途中撤退するものの、メッサーラに機体の右腕を切断されてしまう。腕を切断されたままの機体ではバリュートでも突破は危険だとブライトは帰艦を命じるが、クワトロ・バジーナの百式が力業で無理矢理帰艦させたため未遂に終わる。
エマ「ありがとうございます。地球に降りられましたのに」
ブライト「何だと!?後でブリッジに上がってこい、修正してやる!地球上でのモビルスーツ戦は中尉が思っているほど甘くはない!」
カクリコンのマラサイもバリュートを展開しないまま戦闘を行ったが、バリュートがオートマチックで展開する事を知らず減速、機動性で上回るフライングアーマーに真下に近づかれてしまいカミーユ・ビダンのガンダムMk-Ⅱにバリュートを破られ、マラサイごと大気圏の熱に燃え尽きて戦死した。
カクリコン「アメリアッ…!」
アムロに引き続き、また部下の命令無視の大気圏突入に振り回されるブライトだった。
また、第35話ではヤザン・ゲーブル隊のハンブラビの海ヘビを食らってコントロール不能になった百式がそのまま大気圏に落下してしまう。
クワトロ「えぇい!打ちどころが悪いとこんなものか!」
クワトロは大慌てだったが、すんでのところでカミーユのウェイブライダー(Ζガンダム)が救出したため事なきを得る。
機動戦士Vガンダム
第33話・49話。ウッソ・エヴィンはカテジナ・ルースやエンジェル・ハイロゥに固執するあまり大気圏内の重力に2度呑まれかけたが、V2ガンダムのミノフスキー・ドライブによる莫大な推進力とビームシールドで持ちこたえ、リーンホースJrに帰投している。
機動武闘伝Gガンダム
コロニー国家間の主導権を巡った代理戦争・ガンダムファイトの国際条約第七条『地球がリングだ!』に則り、大会の開幕の際には各コロニーからモビルファイターが大気圏突入用カプセルを使って、地球上に射出されるようになっている。そのため、開幕シーズンでは地球のあらゆる方向に向けて大気圏突入するポッドが見られる。
さらに本編の開始前にもある人物が地球へ逃げるために、アルティメットガンダムで大気圏突入を試みている。しかし、突入自体は成功したものの、地上に落下した衝撃でプログラムに異変が生じ、暴走を起こしてしまうこととなる。
第24話では、ドモン・カッシュがゴッドガンダムで、ギアナ高地から地球を取り囲んでいるビームロープまで大気圏離脱し、それにぶつかった反動で、無理矢理ネオ・ホンコンへ急行する荒業をやっている。ビームロープを繋ぐコーナーポストは監視衛星でもあるため、十分に大気圏再突入と言える。
第46話では風雲再起に騎乗して大気圏離脱し(ついでに同じく大気圏離脱を試みていたウォルターガンダムを一蹴し)、デビルガンダムコロニーに立ち向かった。
最終話ではレインを伴い、やはり風雲再起に騎乗して大気圏再突入したところで、物語は幕を閉じた。
新機動戦記ガンダムW
L1~L5コロニーから地球に各ガンダムを射出する計画オペレーション・メテオから物語が始まっている。このうちウイングガンダムはバード形態のまま単体で大気圏突入した。
ウイングの原型機であるウイングガンダムゼロのネオバード形態にも大気圏突入能力があり、第36話でゼクス・マーキスが乗る本機がサンクキングダムを守るために地球へ降下している。
最終回である第49話でもウイングゼロが大気圏から宇宙戦艦リーブラの残骸を撃ち抜いたが、層が浅かったためか無事宇宙に引返している。
新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
ウイングガンダムゼロとアルトロンガンダムが交戦したまま地球へ降下。ウイングゼロは大気圏の熱気から左肩アーマーを破損したがその後大気圏突入用形態に入り、アルトロンは前もって用意していたパラシュートパックで大気圏突破している。
その後遅れてガンダムデスサイズヘル・ガンダムサンドロック改・ガンダムヘビーアームズ改も地球へ降下。デスサイズヘルはアクティブクローク、サンドロック改は耐ビームコーティングマントが大気圏突入用オプションとなっていたがヘビーアームズ改だけはそういったものがなくどうやって突破できたのか不明。
機動戦士ガンダムSEED
PHASE-13のアークエンジェルの地球降下作戦でキラ・ヤマトはイザーク・ジュールのデュエルガンダムアサルトシュラウドを深追いし過ぎたためエールストライクガンダムが大気圏の重力に呑まれてしまうが、シールドを構えた態勢を取りつつアークエンジェルに戻ったため地球降下自体は成功している。しかしアークエンジェル内で交流した少女エルも乗っていた避難用シャトルをイザークに撃墜されたショックからそのタイミングが遅れたためシールドは溶解、キラは地球降下後しばらくは高熱にうなされることとなってしまった。その様子は直接ではなく次のPHASE-15(PHASE-14は総集編でHDリマスター版では欠番扱い)で回想として描かれたという珍しい例である。また、同じくデュエルとバスターガンダムも大気圏の重力に呑まれたはずだがPHASE-17で何事もなかったかのようにジブラルタル基地に回収されており、こちらはディアッカ・エルスマンの「死にそうになった」という発言と装甲に相応のダメージを負っていた2機以外の情報がなくどうやって突破できたのかは不明である(落下地点がザフトの勢力圏であったため、事前に地上の基地や部隊と連絡を取り合い、ディンやグゥルに回収してもらった可能性が高い)。
PHASE-35でも同じくキラがアラスカでオペレーション・スピットブレイクに巻き込まれたアークエンジェルを救済するためフリーダムで大気圏突入を決行する。こちらは背部のウィングバインダ―が高度な排熱機構を持っており、シールドとバインダーの同時展開により難なく地球へ降下しており、そのままアラスカまで飛行して戦闘を行っていた。
機動戦士ガンダムSEEDDESTINY
PHASE-6~7でブレイク・ザ・ワールド事件で最後までユニウスセブンの残骸を破砕しようとしたアスラン・ザラのブレイズザクウォーリアとそれに付き合う形で同行したシン・アスカのフォースインパルスがサトー一味の妨害により大気圏に呑まれる。インパルスはパイロットのシンが軍が認定した正規軍人だったため、前方にシールドを展開しつつ迅速に大気圏突入用プログラムを起動し機体からラッピングが剥がれたかのように熱が放射される様子が描かれていた。一方、ザクウォーリアはサトーとの戦闘により中破(右腕・右脚を損失)していたため姿勢制御や熱制御が上手くいかず、アスランの的確な判断と操縦により辛うじて前方に肩シールドを構えつつ雲と同じ高度(上空約13000m)までは肩シールドを失いながらも降下に成功する。しかし、その過程で断熱圧縮による加熱によりウィザードの右ブースターが外れて爆発していたため、姿勢制御はおろか落下速度を軽減することもできなくなっており、インパルスとミネルバが助けなければ地表に激突する他なかった(アスランの言動的に万全な状態であれば難なく降下できた模様)。なお、それらよりも旧式だったサトー一味のジンハイマニューバ2型はユニウスセブンに激突した衝撃だけで機体が爆発している。
終盤のPHASE-42でもエターナルからストライクフリーダムを受領したキラがインフィニットジャスティス(地球にいたアスランの代わりにラクス・クラインが搭乗した)と共に地球へ降下する。この時、最新鋭核動力機相当の機体としてVPS装甲の耐熱性能が向上したためか、シールド等を構えるようなことは一切せずにMS操縦に不慣れなラクスをリードするように機体同士が手を繋ぎ合ったまま、かつ地上にて行われていたオペレーション・フューリーへ間に合わせるために高速で降下していた。さらにストライクフリーダムはデスティニーとの戦闘で窮地に陥っていたアカツキを確認するや否やさらに加速して、その戦闘に乱入している。また、インフィニットジャスティスも一旦はアークエンジェルに収容されるも、特に補給や整備を受けることなくアスランが搭乗して再出撃している。
機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM
物語冒頭から世界平和監視機構コンパスによる大気圏突入が描かれている。
ライジングフリーダムガンダムとイモータルジャスティスガンダムはモビルアーマー形態に変形し、ゲルググメナースとギャンシュトロームは足元からバリュートを展開して大気圏内の熱に対応している。
機動戦士ガンダム00
ソレスタルビーイングが少数精鋭で大量の正規軍に武力介入するというコンセプトのため、当然大気圏突入も第2話のガンダムキュリオスとガンダムヴァーチェを始めとして何度か行っている。GN粒子が万能過ぎるのもあり、大抵は機体にGNフィールドを一定時間発生させることでクリアできてしまう。
おそらくは非ガンダムでもGN-X以降の擬似太陽炉搭載機でも同様のことは可能だと思われる。
機動戦士ガンダムUC
バナージ・リンクス「アンタだけは…堕とす!」
OVA第3巻、RE:0096第8話ではリディ・マーセナスがオードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)を地球へ連れていくためにウェイブライダー形態のデルタプラスが大気圏突入する様子が描かれている。
OVA第3~4巻、RE:0096第9~10話でダグザ・マックールの死に激昂したバナージがユニコーンガンダムのNT-Dを発動。シナンジュに猛攻の勢いで襲いかかったまま大気圏空域に入ってしまう。しかしシナンジュをビームマグナムの攻撃から庇ったギラ・ズールのパイロットが一時期自分の面倒を見てくれたギルボア・サントだった事に激しく動揺し、放心状態のまま地球へ落下、そこをスベロア・ジンネマンの部隊に拾われ砂漠に不時着した。
機動戦士ガンダムAGE
アセム編終盤の第27話で登場。地球にダウネスが落ちるのを防ぐためにアセム・アスノとゼハート・ガレットが共闘、その際アセムを助けるためにゼハートのゼイドラが大気圏に突入してしまう。しかしドール・フロストのゼダスMがゼハートを庇い断熱材代わりになったため無事地球へ降下している。
Gのレコンギスタ
第25話。初代同様耐熱フィルムの存在が登場。
ベルリ・ゼナムのG-セルフがパーフェクトパックのコピペシールドで大気圏を突破。その他ネームドキャラが次々と男女で石破ラブラブ大気圏突入している。
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ
三日月・オーガス「そうだ…俺はその場所を見たい!お前はどうだ、バルバトス!!」
シーズン1 第19話で三日月のガンダムバルバトス(第5形態)が地球外縁軌道統制統合艦隊員のグレイズリッターを深追いした結果鉄華団とはぐれたまま大気圏に飲まれてしまうが、上述した『Gの影忍』と同じ方法で撃墜したグレイズリッターを断熱材代わりにバルバトスが大気圏突入に成功している。
関連リンク
関連タグ
バリュート ウェイブライダー フライングアーマー ロゼットTR-4
コロニー落とし:同じく宇宙と地球間が関係することから時期的に重複するシリーズもある