概要
『はたらくくるま(12)人を助ける消防車』(講談社)
救助工作車や救助車、レスキュー車などと通称される消防自動車の一種である。
火災や交通事故、災害などで逃げ遅れた人(要救助者)がいる場合、危険を顧みず救助活動にあたる救助隊員。
彼ら消防署の救助隊(レスキュー隊と通称される)が主に用いるのが救助工作車である。さまざまな現場で救助活動が行えるよう、投光器やウインチ、クレーン装置に代表される各種装備・資器材が搭載されている。
各地の消防本部に配置されるが、たとえば、東京都の島嶼部を除いたほとんどの地域を管轄する東京消防庁では〝救助車〟と呼称されるが、稲城市を管轄する稲城市消防本部では〝救助工作車〟と呼ばれるように、配備先の本部毎の管轄地域の実情に応じ、車両の名称や、車体の形状、大きさ、搭載資器材が全く異なるものとなっている。
多くの地域では中型トラックをベースとしているが、一部の地域ではバス型車体を架装したものであったり、小型トラックをベースとしたものであったり、走破性を重視し除雪車をベースとしたものであったりと形状における差異も見られる。
管轄地域の実情に応じ、レスキュー隊(救助隊)は救助工作車のほか、水難救助車や水陸両用車、山岳救助車、特殊災害対策車などに乗り換えて出場することもある。本項では便宜上、これら救助隊が用いる他の車両についても項を起こす。
また、消防のみならず警察機動隊にも同様の車両が〝広域レスキュー車〟として配備される。
(詳細下記)
救助工作車
全国的に見られる車両である。総務省消防庁では、車体サイズや搭載資器材によりおおよそ次のように分類している。
- 救助工作車I型
- 小型トラックをベースとした車両。近年ではポンプ車に救助資器材を搭載する例もみられ、減少しつつある。
- 救助工作車II型
- 中型トラックをベースとした車両。全国的にもっとも多く見られる救助工作車である。
- 救助工作車III型
- 阪神・淡路大震災を機に制式化された。4WDトラックをベースとしており、II型車より多くの資器材を搭載できる。
- 後述する警察の広域レスキュー車も、これとよく似た仕様となっている。
- 阪神・淡路大震災を機に制式化された。4WDトラックをベースとしており、II型車より多くの資器材を搭載できる。
- 救助工作車IV型
- 阪神・淡路大震災を機に制式化された。緊急消防援助隊での広域派遣を目的としており、小型トラックがベース。2台1組で行動する。
I型救助工作車
2〜3トントラックをベースとした小型の救助工作車で狭い地域を管轄する消防署などに配備される。
ほかの救助工作車と比較すると搭載できる装備・資機材に限りがあるうえ、II型の配備を進める自治省(総務省)消防庁の指針や、I型には国庫補助金が降りないこともあって配備される例はほとんど見られなくなった。
近年では、大阪市消防局の〝CD-I型救助車〟のように、ポンプ車に救助資器材を搭載する形で運用する例も散見される。
国庫補助金
後述するII型・III型・IV型救助工作車は導入時、基準額に基づいて総務省消防庁から国庫補助金が支弁される。
これは消防組織法第49条2項に基づき「緊急消防援助隊」に係る施設の経費を国が補助するとされるためである。
(なお緊急消防援助隊に係る施設は「緊急消防援助隊に関する政令」第6条に規定される。同条2項では基準額の2分の1まで補助されることも明記されている)
施設の種類 | 基準額 |
---|---|
救助工作車II型 | 48,254,000円 |
救助工作車III型 | 51,300,000円 |
救助工作車IV型 | 37,585,000円 |
II型救助工作車
各地の消防署に配備されるもっとも標準的な救助工作車といえる車両。クレーンを装備していない、4WD車ではないなど、III型救助工作車の要件を満たさない車両もこのII型救助工作車の分類となる。
多くの場合、中型トラックをベースに投光器やクレーン、ウィンチを装備したダブルキャブ車両が配備される。近年ではハイルーフ車両やバス型車両も見られるようになった。
横浜市消防局や東京消防庁では、基本的にクレーン無しの標準ルーフ車を採用している。
ただし、平成5年(1993年)に導入された江戸川消防署特別救助隊の車両はクレーン付き、令和3年(2021年)に導入された武蔵野消防署特別救助隊の車両はハイルーフ仕様となっている。
III型救助工作車
阪神・淡路大震災の教訓から制度化された車両で、震災対応救助車とも呼ばれる。
4WD車であり、かつ、クレーンを装備したものが、このIII型救助工作車の分類となる。政令指定都市や中核市を管轄する消防本部に配置することが義務付けられている特別高度救助隊や高度救助隊が主に使用する。
阪神大震災直後は、除雪車やラリーカー、メルセデス・ベンツ社製の高機動車『ウニモグ』をベースにした車両が配備される例もみられたが、近年では、通常の4WDトラックが主流である。
ラリーカーベース・大型救助工作車(京都市・神戸市)
阪神・淡路大震災を受け、平成8年(1996年)に自治省消防庁が京都市消防局と神戸市消防局に配備したものである。
京都市と神戸市で若干の差異はみられるが、どちらも三菱ふそう製大型トラック『ザ・グレート』をベースとしたラリーカーに架装したものを使用していた。
ウニモグベース(川崎市・新居浜市)
川崎市消防局や新居浜市消防本部では、メルセデス・ベンツ社製の高機動車『ウニモグ』をベースにユニッククレーンやウィンチを装備したものが配備されていた。
除雪車ベース(横浜市・新潟市)
横浜市消防局や新潟市消防局では、除雪車仕様の高床4WDトラックをもとにした車両を運用していた。
IV型救助工作車
同じく、阪神大震災の教訓から制度化された。2t級小型トラックベースとしており、ほかの車両に比べて小さな車体が特徴である。
それもそのはず、IV型救助工作車は緊急消防援助隊での広域派遣を考慮し、装備品を分散して積載し2台1組で行動することで小型化を図り、航空自衛隊のC-130輸送機に搭載・空輸できるようになっている。
初代車両は旧・自治省消防庁の指導の下、平成7年度(1995年)に東京消防庁、名古屋市消防局、大阪市消防局、福岡市消防局へ配備された。車種はトヨタのスーパーダイナ。陸上自衛隊の高機動車のベースであるメガクルーザーの足回りを流用していた。
東京消防庁
東京消防庁では立川市に所在する第八方面消防救助機動部隊〝ハイパーレスキュー隊〟に配備。平成22年(2010年)にいすゞ・エルフをベースに帝国繊維が艤装した車両へ更新された。
名古屋市消防局
名古屋市消防局では高所災害や航空隊との連携を担う特別消防隊〝ハイパーレスキューNAGOYA〟第3方面隊に配備。平成24年(2012年)にいすゞ・エルフをベースにモリタポンプが艤装した車両へ更新された。
大阪市消防局
大阪市消防局では管内に狭隘地域が多々あるため、所轄消防署の「特別救助隊」でIV型救助工作車を運用している。自治省消防庁から配備された車両は本部特別救助隊に配備されたのち、機動指揮支援隊で予備車として平成24年(2012年)まで運用された。
- 航空救助隊(AR):3隊
- 都市災害救助隊(BR):2隊
- 化学災害救助隊(CR):4隊
現在、IV型救助工作車は先述したCD-I型救助車とともに上記9隊で運用される。車種はいすゞ・エルフのほか日野・デュトロが用いられる。
福岡市消防局
福岡市消防局では早良区を管轄する早良消防署に配備され、平成22年(2010年)にいすゞ・エルフをベースにモリタポンプが艤装した車両へ更新された。
他消防本部
自治省消防庁が配備した上記4消防本部では上記したように更新車両が配備されたため、現在、初代車両は運用されていない。
近年、東日本大震災や発災が予測される南海トラフ巨大地震への対策のため、平成25年(2013年)3月に〝大規模震災用高度救助車〟として横浜市消防局、浜松市消防局、京都市消防局の3消防本部へ日野・デュトロをベースとした車両を総務省消防庁が無償貸与している。
このほか、自治体独自で配備する例もみられる。
さいたま市消防局では大宮消防署に拠点を構える〝さいたまブレイブハート〟が運用。日野・デュトロにバス型車体を架装したものとなっている、
浜松市消防局では、総務省消防庁からの無償貸与より前に天竜消防署へ配置している。天竜署の車両のうち1台はシングルキャブ、もう1台はハイルーフ仕様となっている。総務省消防庁からの貸与車両は北消防署へ配置されている。
搭載される装備品(一例)
主に次のようなものが装備される。
【車両に装備されるもの】
- 投光器
- 夜間の活動時に用いられる。古くはクセノン灯、ハロゲン灯、メタルハライド灯が主流であったが、近年ではLED灯が台頭しつつある。
- ウィンチ
- おおよそ5t前後の引張能力を持つ巻取り装置。交通救助などに用いられ、前部バンパー部分に装備されることが多い。
- クレーン
- 多くの救助工作車に装備される。形状はさまざまであるが、車両後部に装備される例や、キャブと積載スペースの間に装備される例もある。
【車両に搭載されるもの】
- スプレッダー
- ひしゃげた車体やドアなどをこじ開ける役割を果たす。
- 油圧カッター
- エアーソー
- 空気式のカッターである。火花を出しにくいため、気化したガソリンなど可燃性ガスが充満している現場等で活躍する。
- エンジンカッター・チェーンソー
- がれきやドアの切断に用いられる。
- ジャッキ
- 倒壊した家屋の持ち上げなどに用いられる。
- なお、災害等が発生した場合、自動車の整備用ジャッキなどを用いて救出活動をすることもできるが、この際、当て木をこまめにはめることに注意されたい。また、無闇に救出活動を行なうと挫滅症候群を引き起こす危険もあるため、要救助者が意識を失っている場合、救助隊や赤十字社などの医師の判断を待つのが賢明である。
- 倒壊した家屋の持ち上げなどに用いられる。
- マット・毛布
- 保温や、ガラス灯の破片から保護する際などに使用。
- 送風機
- 有毒ガスの排出、黒煙の排煙などに使用。
- これを大型にしたものが〝排煙高発泡車〟や〝大型ブロワー車〟である。
- 有毒ガスの排出、黒煙の排煙などに使用。
- たんか・バックボード
- 要救助者の搬送時に使用。狭い現場にも持ち込みやすいよう折り畳みができる布製やバックボードであることも多い。
- リヤカー
- 折り畳み式のものを搭載する例がある。
- 画像探索装置〝ボーカメ〟
- 伸縮式である棒の先端部にCCDカメラが装着されており、瓦礫に埋もれた要救助者の探索や、マイクを通じての呼びかけなどが可能となっている。
- マンホール救助器具
昭和六十一年自治省令第二十二号 救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令
装備品は配備される署所によって異なるが、概ね上記のようなものが配備される。
このほか省令(救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令 昭和六十一年自治省令第二十二号)に基づき、政令指定都市を管轄する特別高度救助隊、中核市を管轄する高度救助隊、人口十万以上の消防常備市町村を管轄する特別救助隊、その他地域を管轄する救助隊に配置される装備品の基準が定められている。
特別高度救助隊には高度救助資器材に加え〝ウォーターカッター車〟や〝大型ブロアー車〟ないし〝特別高度工作車〟が配備される。
車体のデザイン
ポンプ車(現在のようにオールシャッター化が進んでいなかった)やはしご車と比べ、車体側面のスペースが大きいことから、車体側面にロゴマークや模様などを記した例も多い。
東京消防庁
東京消防庁では昭和44年(1969年)8月に暫定運用を開始し、〝麹町消防署・永田町特別救助隊〟として発隊した当初、車体は朱色一色塗りで現在のようなマーキングはなされていなかった。
翌年、昭和46年(1971年)以降、車体後部が殺風景で物足りないからとの理由で白い斜め線を入れた救助車が配備される。当初はイナズマから連想される〝電光石火の出場〟になぞらえていたが、現在はツバメにあやかり、速さ・人間愛、ツバメの帰巣本能同様、必ず生きて帰署することをイメージしているようだ。
横浜市消防局
横浜市消防局の救助工作車は、特別高度救助隊「スーパーレンジャー」には〝SR〟、所轄救助隊「横浜レンジャー」には〝YR〟、水難救助車「ウォーターレスキュー」には〝WR〟の評記がされている。
元来、横浜消防の車両にはとりわけロゴやマーキング等はされていなかったが、平成20年(2008年)に放映された民放ドラマRESCUE〜特別高度救助隊』で横浜消防が撮影に協力して以降、ドラマ内で使用されたロゴが正式に採用され、実際に貼付されるようになった経緯がある。
大阪市消防局
大阪市消防局では、本部特別高度救助隊〝ASR〟の車両には「ファイヤーバード」と呼ばれる火の鳥をイメージした白いデザインがなされている。ツバメと同様、消防官が無事に帰還することを願ったものだそう。
一方、所轄救助隊の車両にはアルファベットで〝OSAKA〟のマーキングが記されている。
京都市消防局
京都市消防局では、救助工作車独自の塗装はされていない。他の特殊車両同様、白い帯が一条、車体外周を回り込むように記されている。
福岡市消防局
福岡市消防局では長年、バス型車両を採用していたが、近年ではハイルーフ型が採用されつつある。車体後部にFの字が大きく記されている。
水難救助車・水陸両用車
水難救助車
河川や湖沼、海などを管内に有する消防署に設置される「水難救助隊」が用いる車両。
(管轄地域の所轄救助隊が水難救助隊を兼任していることがほとんどである)
多くの場合、バス型車体にシャワー設備を装備し、ゴムボートや船外機、ウェットスーツ、救命策発射装置などが搭載されている。
東京消防庁では隊名標識にRWと記されている。
昭和49年(1974年)に発隊。その後、日野製中型バスレインボーRJ型をベースに給水タンク、車外シャワー設備、簡易ベッド、指揮台、断熱材を装備した〝防災機動車〟を水難救助隊が使用する形で運用する例もみられた。近年では中型トラックをベースにバス型車体を架装したものが主流となっている。
現在、東京消防庁では日本橋消防署浜町出張所、臨港消防署、大森消防署、足立消防署綾瀬出張所、小岩消防署、調布消防署で運用されている。
消防本部によってはマイクロバスやワンボックス車をベースとした例も散見される。
水陸両用車
日本初の消防用水陸両用車は昭和41年(1966年)、当時の横浜市消防局に配備されたものである。この車両はいすゞTSD・4WDトラックをベースに水密性車体を架装したもので、車体下半分が朱色(赤色)、上半分が白色のツートンカラーに塗り分けられているのが特徴だった。
1990年代に入ると市川市消防局(しぶき号)や横須賀市消防局にドイツの自動車メーカー・RMAライナウ社が販売する〝アンフィレンジャー〟が配備された。
(同型車両が建設省〈現・国交省〉や警視庁第九機動隊に配備されている)
その後、平成25年(2013年)に全地形対応〝レッドサラマンダー〟として愛知県・岡崎市消防本部に配備されて以降、中型水陸両用車や小型水陸両用バギーとして全国に配備が進められている。
大型水陸両用車
『赤い、水陸両用車。その名は「レッドヒッポ」。大阪市消防にニュータイプ現る。』(テレビ大阪)
- 岡崎市消防本部
- 『レッドサラマンダー』
- 大阪市消防局
- 『レッドヒッポ』
ふたつの消防本部に配備され、どちらも総務省消防庁が無償貸与したものとなっている。レッドサラマンダーは配備されて以降、平成29年(2017年)の九州北部豪雨で大分県日田市へ、平成30年(2018年)の西日本豪雨で岡山県真備町へ派遣されている。
ただし、レッドサラマンダーには車体が大きすぎるあまり狭隘地域での活動困難であるうえ、重量もあることから浮力に余裕がなく、活動が制限されるという弱点がある。
このことから、令和3年(2021年)に大阪市消防局へ新たに配備されたレッドヒッポは、少し小型化され、車体も軽量化されたヘグランドBV.206v型となっている。
ヘグランドは接地圧が低いため雪上走行が可能であることから、国土交通省の各地方整備局や北海道開発局に配備された。このほか航空自衛隊佐渡分屯基地での冬季輸送用、東京電力でも水力発電所ダムのパトロール用に導入したことがあった。
(現在でも北海道開発局が運用しており、TEC-FORCEで使用される)
【諸元】(大阪市消防局のもの)
- 車長:7.87メートル。
- 車幅:1.98メートル。
- 車高:2.54メートル。
- 総重量:7.03トン。
中型水陸両用車
『日本初の水陸両用消防車 津波や豪雨での活動に期待(19/05/22)』(テレビ朝日)
- 大崎地域消防本部(宮城県)
- 山武群市広域行政組合消防本部(千葉県)
- 『レッドバスティオン』
- 豊橋市消防本部(愛知県)
- 『レッドタートル』
- 奈良市消防局(奈良県)
- 板野東部消防組合消防本部(徳島県)
- 宇城広域連合消防本部(熊本県)
『被災した幼稚園から水陸両用車で避難する園児たち』(朝日新聞)
令和元年(2019年)に山武消防・板野東部消防へ配備されたのを皮切りに、総務省消防庁が全国への無償貸与を進めている。山武消防の車両は配備された数ヶ月後、台風21号により孤立した幼稚園の園児や先生らの救助に出場している。
【諸元】
- 車長:4.8メートル。
- 車幅:2.3メートル。
- 車高:2.7メートル。
水陸両用バギー〝ARGO〟
『【NEWS CH.4】災害時に備えて“はたらくくるま”導入進む』(南海放送)
緊急消防援助隊車両(津波・大規模風水害対策車)の配備について
〝津波・大規模風水害対策車〟に積載されたバギーである。陸上6名、水上4名乗りで不整地走行・浮上航行が行なえ、機動性に富んだ車両となっている。
大型水陸両用車や中型水陸両用車に比べ、全国的に多くの消防本部に配備されている。総務省消防庁の指針としては各都道府県に最低1台の配備を目標としている。また、警察庁でも一部警察本部に国費で配備されている。
【諸元】
- 車長:3.02メートル。
- 車幅:1.52メートル。
- 車高:1.90メートル。
- 総重量:21.9トン。
【北海道】
【東北地方】
都道府県 | 配備本部 | 配備署所 |
---|---|---|
青森県 | 青森地域広域事務組合消防本部 | 東消防署 |
岩手県 | 北上地区消防組合消防本部 | 北上消防署 |
宮城県 | 塩釜地区消防事務組合消防本部 | 消防本部(塩釜消防署) |
秋田県 | 秋田市消防本部 | 土崎消防署 |
山形県 | 鶴岡市消防本部 | 鶴岡市消防署 |
福島県 | 相馬地方広域消防本部 | 相馬消防署 |
【関東地方】
都道府県 | 配備本部 | 配備署所 |
---|---|---|
茨城県 | 日立市消防本部 | 日立消防署 |
栃木県 | 宇都宮市消防本部 | 西消防署 |
群馬県 | 高崎市等広域消防局 | 高崎中央消防署 |
埼玉県 | 埼玉東部消防組合消防局 | 加須消防署 |
千葉県 | 佐倉市八街市酒々井町消防組合消防本部 | 佐倉消防署 |
東京都 | 東京消防庁 | 即応対処部隊 |
神奈川県 | 平塚市消防本部 | 海岸出張所 |
山梨県 | 富士五湖消防本部 | 富士吉田消防署 |
静岡県 | 浜松市消防局 | 西消防署 |
【北陸地方】
【中部地方】
【近畿地方】
都道府県 | 配備本部 | 配備署所 |
---|---|---|
三重県 | 津市消防本部 | 久居消防署 |
滋賀県 | 大津市消防局 | 北消防署 |
京都府 | 舞鶴市消防本部 | 消防本部(東消防署) |
大阪府 | 大阪市消防局 | 都島消防署 |
兵庫県 | 神戸市消防局 | 水上消防署 |
奈良県 | 奈良県広域消防組合消防本部 | 五篠消防署 |
和歌山県 | 和歌山市消防局 | 中消防署 |
【中国地方】
【四国地方】
都道府県 | 配備本部 | 配備署所 |
---|---|---|
福岡県 | 久留米広域消防本部 | 久留米消防署東出張所 |
佐賀県 | 伊万里・有田消防本部 | 消防本部 |
長崎県 | 佐世保市消防局 | 消防局(合同庁舎) |
熊本県 | 八代広域行政事務組合消防本部 | 八代消防署 |
大分県 | 日田玖珠広域消防組合消防本部 | 日田消防署 |
宮崎県 | 宮崎市消防局 | 北消防署東分署 |
鹿児島県 | 姶良市消防本部 | 中央消防署 |
沖縄県 | 那覇市消防局 | 中央消防署 |
山岳救助車
東京消防庁の山岳救助隊は昭和62年(1987年)に発隊。八王子消防署、青梅消防署、秋川消防署、奥多摩消防署の特別救助隊が兼任する形で編成されている。
この山岳救助隊が運用する車両が〝山岳救助車〟である。
(かつては山林火災車と呼ばれていた)
通常の救助車では狭隘な山間部まで進入することが困難であるため、軽自動車ベースの車両や、SUV車ベースの車両、ワンボックス車ベースの車両を使用している。
山岳救助隊自体を常備編成している消防本部自体限られたものであるため、その他の消防本部では専用の車両を配備していない例も多い。ほとんどの場合、通常のポンプ車のほか、指揮隊車や司令車・指令車、連絡車など野呼ばれるワンボックス車や軽バン、セダン型車、SUV車など様々な形態の車両で出場する。
かがくとこころ、ひとつにあわせ 特殊災害対策車
HAZ-MAT〝ハズマット〟とも呼ばれ、NBC関連の特殊災害が発生した場合に出場する。
(近年では、これに爆発物〝Explosive〟、放射性物質〝Radiological〟を加えCBRNEと呼ばれることもある)
前史
源流としては、東京消防庁で1980年代に発隊した〝放射能対策隊〟に遡るが専門部隊ではなく、装備・資器材・練度ともに充分ではなかった。化学災害・毒劇物災害(特殊災害)が頻発するなか、諸外国(特に欧米諸国)では化学災害に対応する専門部隊の発隊が進みつつあり、東京消防庁でも検討が開始された。
平成2年(1990年)、東京消防庁は所轄消防署内に〝化学機動中隊〟を発隊、この化学機動中隊は専門の訓練を積んだポンプ隊員や化学隊員らで構成。現在は、赤坂消防署、大井消防署、本郷消防署、志村署志村坂上出張所、千住消防署、城東消防署大島出張所、三鷹消防署、東村山消防署、福生消防署、日野消防署の合計10個中隊が編成されている。
化学機動中隊は発隊当初、ガス分析装置を搭載した〝特殊化学車〟で出場する形であり、現在のような特殊災害対策車は配備されていなかった。平成7年(1995年)の地下鉄サリン事件や平成11年(1999年)のJCO事故を受け、装備の拡充が求められた。
こうして、平成14年(2002年)には、新設された第三方面消防救助機動部隊〝ハイパーレスキュー隊〟に特殊災害への対応を専門とした部隊(のちに機動科学隊と称される)を設置。後述する〝特殊災害対策車〟をはじめ、〝除染車〟などが配備された。
現在では所轄消防署の化学機動中隊にも、やや小型の特殊災害対策車が配備されている。
特殊災害対策車(特殊災害対応自動車)
東京消防庁の車両
東京消防庁では、所轄消防署化学機動中隊向けの小型車と、消防救助機動部隊〝ハイパーレスキュー〟向けの大型車と2種類に大別される。
化学機動中隊の特殊災害対策車は〝スーパー・ハズマット〟の愛称がつけられ、中型トラックをベースに風向風速計やガス分析装置などを搭載したものとなっている。
一方、ハイパーレスキューの特殊災害対策車は大型トラックをベースとし、車体は鉛や水の防護板で覆われ、機密性が高く外気進入をシャットアウトできる陽圧構造となっている。
『東京消防庁 東北地方太平洋沖地震災害 福島第一原子力発電所』
三本部ハイパーレスキュー発隊とともに配備された初代車両は、平成23年(2011年)に発生した東日本大震災に伴う原発事故の現場に出場し、放水前の偵察活動にあたった。
当時の模様は、フジテレビ系列の特番にて放映されている。
だが、車内でも線量計がうなりを上げるほどの放射線量を浴びたことにより除染できず、廃棄されることとなった。
(事故後十数年を経た現在もなお、現地に留め置かれている)
事故翌年には、第三方面と第九方面ハイパーレスキューに1台ずつ新たに特殊災害対策車が配備された。令和5年(2023年)には第九方面から第八方面ハイパーレスキューに配置換えとなっている。
【諸元】
- 車長:9.2メートル。
- 車幅:2.5メートル。
- 車高:3.7メートル。
- 総重量:21.9トン。
総務省消防庁の無償貸与車両
総務省消防庁では、政令指定都市を管轄する「特別高度救助隊」に平成21年(2009年)、および平成24年(2012年)に同様の車両〝特殊災害対応自動車〟を無償貸与している。
東日本大震災に際しては、神戸市消防局の車両などが緊急消防援助隊の一員として現地へ派遣されている。
都道府県 | 配備本部 | 配備署所 |
---|---|---|
北海道 | 札幌市消防局 | 中央消防署 |
神奈川県 | 川崎市消防局 | 臨港消防署 |
〃 | 横浜市消防局 | 特別高度救助隊 |
静岡県 | 静岡市消防局 | 千代田消防署 |
〃 | 浜松市消防局 | 中消防署鴨江出張所 |
京都府 | 京都市消防局 | 下京消防署塩小路出張所 |
大阪府 | 大阪市消防局 | 鶴見消防署 |
兵庫県 | 神戸市消防局 | 中央消防署 |
福岡県 | 北九州市消防局 | 特別高度救助隊 |
〃 | 福岡市消防局 | 機動救助隊 |
熊本県 | 熊本市消防局 | 東消防署 |
【熊本市消防局以外は平成21年度配備。熊本市消防局のみ平成24年度配備】
各消防本部毎の車両
(広島市消防局の特殊災害対応車)
総務省消防庁が貸与した車両のほか、各消防本部毎に配備する例も多い。総務省消防庁の基準としては政令指定都市を管轄する特別高度救助隊に配備することとされるが、中核市を管轄する高度救助隊など、おおむね主要都市を管轄する消防本部に配備されている。
名称は特殊災害対策車(山武郡市消防本部や横浜市消防局など)であったり、特殊災害対応車(仙台市消防局や岡山市消防局など)であったり、特殊災害車(山形市消防本部や大分市消防局など)であったりとまちまちである。
車両に関しても、総務省消防庁の貸与車両とほぼ同様、陽圧機構を備えたものであったり、マイクロバスをベースにしたものであったりと大きく異なる。
だが、活動しやすいよう車内空間が広く取られたり、化学防護服の破損を防止するために突起部がなかったり、除染のため防水性・耐蝕性が考慮されていたりと、装備品や構造はほぼ同一となってどちらもいる。
除染車
特殊災害対策車の一種で、その名の通り除染活動を行なうため、シャワー設備等を搭載した車両である。東京消防庁ではハイパーレスキュー隊に配備している。
総務省消防庁では「大型除染システム搭載車」として特別高度救助隊を有する消防本部へ無償貸与した。この車両は東消庁型の除染車と異なり、コンテナー型トラックとなっており、用途に応じ積荷を変更できる形式となっている。
先述した特殊災害対応自動車と異なり、東京消防庁および政令指定都市を管轄する18すべての本部に配備されている。
偵察車・高踏破偵察車
特殊災害対策車の一種で、どちらも東京消防庁ハイパーレスキュー隊に配備されている。
偵察車
第三方面消防救助機動部隊に配備。いすゞ・エルフの4WD車をベースとしたバス型車体を採用している。
汚染区域内で隊員が車外に出ず偵察活動を行なえるよう、陽圧構造となっているほか、車両後部に〝エクスクローラー〟と呼ばれるクローラ式の検知型(偵察用)ロボット「検知型遠隔探査装置」を搭載している。このロボットは車内からの操作で展開することが可能である。
先述したIV型救助工作車と同様、航空自衛隊C-130輸送機への搭載が可能となっている。
導入に際しては、東日本大震災を受け、台湾の民間団体「中国信託慈善基金会」から東京消防庁へ寄せられた3,500万元(日本円で約1億円)もの義捐金が活用されている。
【諸元】
- 車長:6.3メートル。
- 車幅:2.2メートル。
- 車高:2.6メートル。
- 総重量:6.8トン。
高踏破偵察車
第八方面消防救助機動部隊に配備。自衛隊で用いられるSKWをベースとしたいすゞ・フォワードの6輪駆動仕様〝6×6〟が採用されている。
超音波式風向風速計をはじめ、伸縮式監視カメラを搭載しており、上記の偵察車同様、隊員が車外に出ずに偵察活動が行える。
また、陽圧構造であるため毒劇物・放射性物質の車内への進入を防止できるほか、6輪駆動と高床式が持つ高い走破性を発揮し、瓦礫を乗り越えて活動できるものとなっている。
【諸元】
- 車長:7.6メートル。
- 車幅:2.5メートル。
- 車高:3.2メートル。
- 総重量:14.7トン。
救出救助車・耐熱救助車
どちらも通常の消防車両での進入が困難な現場に突入する車両である。
救出救助車
東京消防庁ハイパーレスキュー隊に配備され、火山の噴火や、爆弾テロ、水害など、通常の消防車では向かえない現場に出場する車両である。
- クローラ型(退役済)
- 6輪型
- 耐爆型
クローラ型
クローラ型車両は平成13年(2001年)に第八方面ハイパーレスキュー隊に配備された。三菱重工製とみられ、放水銃やガラス用の防護板も備えたものとなっており、現場までは重機搬送車に積載される形で出場していた。
この直接の後継車両として配備されたのが先述の高踏破偵察車である。
6輪型
6輪型車両は平成26年(2014年)に第六方面ハイパーレスキュー隊に配備された。高踏破偵察車と同様、いすゞ・フォワードの6輪駆動仕様〝6×6〟が採用されている。自衛噴霧装置を備えているほか、車体前下部にも防護板が設けられ、窓ガラス部には黒色の金網を取り付けることもできる。
【諸元】
- 車長:8.9メートル。
- 車幅:2.5メートル。
- 車高:3.7メートル。
- 総重量:14.7トン。
耐爆型
耐爆型車両は平成31年(2019年)に第三方面ハイパーレスキュー隊に配備された。爆発物を使用したテロ事案発生時の救助活動を目的としており、警察機動隊に配備される特型警備車や小型警備車(爆発物処理班が用いることもある)によく似た外観となっている。
車体後部には格納式のスロープが設けられており、迅速な救助活動が可能となっている。
高機動救助車
東京消防庁即応対処部隊に配備される。メルセデス・ベンツウニモグをベースとした車両であり、消火活動が行える「活動型」と救助活動が行える「搬送型」の2台が存在する。
火山噴火災害特殊避難車
阿蘇山を管轄する阿蘇広域行政事務組合消防本部・中部消防署に配備されていた。常設式の赤色灯がなかったり、朱色ではなかったりするが、これも消防自動車の仲間である。
万が一の大噴火に備え、窓ガラスには金網、火山灰を洗い流すための水タンクが装備されていた。
耐熱救助車
火山の噴火や爆発危険性の高い現場で消火・救出活動を目的としていた。現在は退役している。
防災機動車(耐熱救難型)
東京消防庁・向島消防署に配備されていたこの車は、メルセデス・ベンツ社製の高機動車『ウニモグ』をベースに、自衛噴霧装置やドーザー、防爆板などを備えていた。平成12年(2000年)に発生した三宅島噴火の際には、実際に派遣され、活動にあたっている。
耐熱救助車
横浜市消防局や北九州市消防局に配備されていたこの車両は、ドイツ製のTM-170装甲兵員輸送車をベースに、断熱材や放水銃、融けても走ることのできるコンバットタイヤを備えていた。
横浜市消防局の車両には『スーパーファイター327』の愛称が付けられ、北海道・有珠山噴火の際には、警戒区域に取り残されていた男性を救出するなどの活躍を見せている。
耐煙救出車〝モグラ〟
地下街での火災対応を目的として、昭和49年(1974年)に大阪市消防局・北消防署南森町出張所に配備されたのが、この耐煙救出車であった。
モグラの愛称がつけられ、2台1組で行動する体制だったものの、すでに退役している。車体前方には、障害物検知装置となる触覚がついているほか、要救助者の搬送用に空気呼吸器が装備されていた。
ウォーターカッター車・大型ブロアー車
ウォーターカッター車
平成18年(2006年)に総務省消防庁が札幌市消防局、東京消防庁、名古屋市消防局、大阪市消防局、福岡市消防局に無償貸与した車両である。
エンジンカッターと異なり、火花を出さないため、可燃性ガスが充満する現場でも活動できる。
大型ブロアー車
同じく、平成18年(2006年)に総務省消防庁が札幌市消防局、東京消防庁、名古屋市消防局、大阪市消防局、福岡市消防局に無償貸与した車両である。
車体後方に大型の扇風機を搭載しており、強力な気圧差で煙を押し出したり吸い出したりすることができる。また、市川市消防局も排煙高発泡車の更新として独自配備している。
特別高度工作車
総務省消防庁が上記以外の政令指定都市を管轄する消防本部に対し、平成20年(2008年)に5台、平成21年(2009年)に9台、平成24年(2012年)に2台(特殊災害工作車の名目)、合計16台無償貸与した車両である。
ウォーターカッター車と大型ブロアー車を1台に併せ持つ仕様となっている。
震災工作車・排除工作車・重機
川崎市消防局の震災工作車
阪神・淡路大震災を受け、一部の消防本部では震災工作車や排除工作車の名称で道路啓開用の車両を導入したこともあった。
横浜市消防局では、昭和59年(1984年)に横浜市西消防署浅間町出張所へ排除工作車を配備していた。現在はホイールショベルに更新されているほか、特別高度救助隊に大型レッカー車をベースとした『機動けん引工作車』も配備されている。
東京消防庁ハイパーレスキュー隊をはじめ、名古屋市消防局や京都市消防局、天童市消防本部でもクレーン車を配備していた。
現在では、総務省消防庁が各都道府県に1セット以上を目標に重機搬送車と重機(ユンボ)を配備している。
消防用ロボット
東京消防庁などでは「消防用ロボット」を運用している。
無人走行放水車『レインボーファイブ』
昭和39年(1964年)に発生した『品川勝島倉庫火災』で消防職団員19名が殉職(さらに守衛1名も関連死)する大惨事となった。これを受け、東京消防庁では消防用ロボットの開発に着手。ターレットを改造した車両など、幾多の試作車を経て、昭和61年(1986年)に配備されたのが『レインボーファイブ』である。
初代車両はタイヤ式、2代目車両はクローラ式、毎分5トンの放水と3トンの泡放射ができることから『レインボーファイブ』の名が付いていた。
救出ロボット『ロボキュー』
東京消防庁ハイパーレスキュー隊に配備される。その名の通り、有毒ガスが充満した現場など、消防隊員が近付けない場合、要救助者を搬送するためのロボットである。収容スペースには空気呼吸器や通話用マイクも備えられている。
無人走行放水車『デュアルファイター』
レインボーファイブの後継として配備された。障害物除去用のホイールローダー・ユンボである『セイバー』とともに、2台1組で活躍する。
無人走行放水車『ロボファイター330』
横浜市消防局の無人走行放水車。名前は配備当時の横浜市の人口・330万人に由来する。
壁面昇降ロボット『レスキュークライマー』
東京消防庁牛込消防署に配備されていた。
ビルの高層化が進む都会。ときに、はしご車ですら届かない高層ビルで火災が発生することもある。レスキュークライマーは、外壁面を吸着走行することが可能で、目標階にたどり着くと、窓ガラスを破壊して内部に侵入し、偵察や放水活動などが行なえた。
現在、高層ビルでの火災には、消防ヘリで対処することとなっている。
偵察ロボット『ファイヤーサーチ』
東京消防庁日本橋消防署の照明電源車に搭載。クローラ式で階段を昇り降りできるほか、ドアノブを回し、ドアを開けて延焼家屋に進入しての人命検索が行なえた。
水中ロボット『ウォーターサーチ』
水難救助現場にて活躍。水難救助隊員が潜航することが困難な場合、カメラによる偵察や、要救助者を引き揚げることもできる。
現在の『水中ドローン』の走りともいえる。
消火ロボット『ジェットファイター』
東京消防庁・池袋消防署ののち、第二方面<ruby>消防救助機動部隊〝ハイパーレスキュー隊〟に配備。現場までは排煙高発泡車に積載されて向かう形であった。
排煙高発泡車は、地下街での火災に対応する車両であるが、このジェットファイターも地下街での火災対応を目的としたロボットで、放水することも可能であった。現在は引退し、四谷にある〝消防博物館〟に展示されている。
『スクラムフォース』
市原市消防局に総務省消防庁が無償貸与した車両である。型の異なる4種類のロボットが搭載されている。
名称 | 機能 |
---|---|
スカイ・アイ | 上空から偵察を行うヘリコプター |
ランド・アイ | 地上から偵察を行うロボット |
ウォーターキャノン | 放水を行うロボット |
タフ・リーラー | ホース延長を行うロボット |
警察のレスキュー車
各警察本部の警備部に設置される機動隊にもレスキュー車が配備される。
前史
元々、警察のレスキュー隊自体は警視庁が都市震災対策や交通救助・列車事故救助、ビル火災での高所救助を目的として10個機動隊に機動救助隊を発隊させたことがはじまりである。ときに昭和47年(1972年)9月のことだった。
これ以前から警視庁では第七機動隊内にレンジャー部隊を設けており、〝空の神兵〟とも称される陸上自衛隊第一空挺団が所在する習志野駐屯地でラペリングをはじめとする降下訓練を行なっていた。この部隊はあさま山荘事件にも出動し、突入援護や救助活動にあたっている。
(現在、七機レンジャー部隊は銃器対策レンジャーと山岳救助レンジャーに分離された)
その後、各警察本部でもレスキュー隊が発隊するようになったが、訓練機会も少なく、装備・資器材や練度は充足していなかった。
平成7年(1995年)に発生した阪神・淡路大震災を受け、各都道府県警察機動隊で構成される広域緊急援助隊を発隊させるなど、警察の救助体制強化も進められた。
平成17年(2005年)には、前年に発生した新潟県中越地震を受け、一部警察本部の広域緊急援助隊に高度な救助技能を持つ隊員らで構成される『特別救助班〝P-REX〟』を設置。
東日本大震災を受け、警視庁は平成24年(2012年)に日本警察で初となる救助専従部隊である『特殊救助隊〝SRT〟』を発隊させた。
平成28年(2016年)には大阪府に、平成30年(2018年)には東京都にそれぞれ災害警備訓練施設を警察庁が開設するなど、さらなる強化が進められている。
- 近畿管区警察局災害警備訓練施設
- 警視庁・東日本災害警備訓練施設
レスキュー車・広域レスキュー車
警察のレスキュー車は都道府県費によるものと国費によるものに大別される。
レスキュー車(都道府県費)
都道府県の予算(都道府県費)で配備されるレスキュー車は各警察本部毎に車体形状やデザインなどが異なり、特色ある車両が多々みられる。
都費災害警備用車両は、ほかの警備車両と区別のため緑色に白い帯を配したものとなっている。特に、機動救助隊の車両には昭和47年の発隊当初より素早さとしなやかさを現す黒豹が描かれている。
特殊救助隊〝SRT〟の車両も、基本的に意匠は同様であるが、オレンジ色で大きくSRTと記された車両が1台存在する。黒豹のロゴも機動救助隊が横向きであるのに対し、特殊救助隊は正貌であることで区別できる。
昭和期のレスキュー車はいすゞ製のボンネットトラックを採用しており、塗装はやや濃目の青色に白い帯を配したものであった。大まかな塗り分けこそ変わらないものの、近年では地の色がやや水色に近しくなっている。
レスキュー車のみならず、新製配備されたサインカーやトイレカー、水難救助車も同様の塗色である。
昭和期のレスキュー車は日産ディーゼル・コンドルをベースとしていた。車体のシャッター部に「特別救助隊」の表記がなされ、やや濃目の青色に白い帯を配したものであった。現在ではこの塗装の車両は使用されていない。
その後、県費配備されたフォークリフトやホイールローダー、多目的災害車(ウニモグにドーザーを取り付けたもの)は水色一色塗りとなっている。
宝くじから寄贈された車両が水難救助車として、第二機動隊に配備されている。青色を基調とし、白い帯が周り込んでいる。
昭和期はトヨタ・ダイナをベースとしたレスキュー車を配備。下半分が青色、白い帯を挟み、上半分が水色に塗り分けられていた。
現在は国費の広域レスキュー車が配備されており、水難救助車含め、特殊な塗装のレスキュー車は存在しない。
かつては水色基調に白い波模様の入った水難救助車を運用していた。現在は通常の機動隊カラーとなっている。
紺色と水色に塗られた水難救助車を配備している。かつては除雪用のドーザーを取り付けたものも見られた。また、後述する高機動救助車は白を基調に紺色と水色の線を配したものとなっていた。
白色を基調に、青色と水色2条の線が走り、車体側面中央で手を組むように描かれている。
(警察庁警務局教養課『制服を着た紳士』の表紙にも似た意匠である)
水難救助車には『びわこ号』の愛称がつけられている。
水難救助車として、通常の機動隊カラーよりやや濃い青色を採用した車両が用いられている。
かつて、警視庁のレスキュー車同様、緑色に白い帯を配した車両を運用していた。
(千葉県警も同様)
広域レスキュー車(国費)
警察のレスキュー車は国費では〝広域レスキュー車〟と呼ばれ、投光器・クレーンを装備したダブルキャブ・4WD仕様となっており、消防のIII型救助工作車にも似た仕様となっている。
国費でレスキュー車の配備が始まるのは警視庁に遅れてからのことだった。かつては一部警察本部にのみ配備され、灰色・白帯の旧塗装時代にしろ、青・白の現行塗色時代にしろ、クレーン非装備のシングルキャブ・高床4WD仕様で導入されていた。
灰色塗装時代は、車種はいすゞフォワードのほか三菱ふそうファイターも用いられた。張り出しバンパー部にウィンチ、大型スピーカーと投光器を荷室上部に装備していた。
災害活動用高床バン型車・多目的災害対策車
災害活動用高床バン型車
トヨタランドクルーザーや日産サファリなどSUV車や、スバルレガシィなどステーションワゴン車に赤色灯・サーチライトを装備した仕様である。
各警察本部に配備されており、災害警備のほか、平素は連絡車などとしても用いられる。警視庁では機動隊のほか、特殊救助隊にも配置される。
多目的災害対策車
スズキジムニーシエラをベースにした車両である。通常の機動隊車両が大型車であるなか、狭隘地でも活動しやすい小型車となっており、航空自衛隊CH-47ヘリにも積載できるサイズである。
全警察本部に1台ずつ配備されている。
被災地活動用車
大分県警・熊本県警機動隊が独自に配備している車両である。ランドクルーザーをベースにスノーケル装置を取り付け、渡河能力を持たせている。
災害用高性能機動力車
岐阜県警機動隊が独自に配備している車両である。メガクルーザーをベースに赤色灯とサーチライトを備えている。
高機動救助車
北海道警機動隊が2台、独自に配備していた車両である。ハマーH1をベースに赤色灯とサーチライト、ラックを備えたものとなっていた。
ミニレスキュー車
警視庁が10個機動隊に独自配備している車両である。平成20年(2008年)の岩手・宮城内陸地震の際、隊員が現地で借りた軽トラが威力を発揮したことから正式導入された。
災害対策車・災害活動用拠点車・キッチンカー
災害対策車
いすゞ・フォワードをベースにエアコンや給湯器、シャワー設備を備え、災害時の活動拠点となる車両である。
災害活動用拠点車
拡幅車体を備えた災害対策車よりも大型の車両で、シャワー設備や向かい合わせ式ソファを備えている。
キッチンカー
マイクロバスをベースにガス給湯器や炊飯器、コンロを備えたものである。あさま山荘事件では機動隊員にカップヌードルを提供し、士気高揚につながった。
(このほか、警視庁では都費でトラック型の車両も配備している)
重機
重機搬送車・重機
ユンボと重機搬送車が国費で各警察本部に配備されるほか、一部警察本部にも日立建機製ホイールショベルが配備されている。
警視庁では都費でフォークリフトやホイールローダー、クローラダンプも配備している。
多目的災害車(クレーン車)
阪神・淡路大震災を受け、警視庁と大阪府警にかつて配備されていた車両。メルセデス・ベンツウニモグをベースにドーザーやクレーンを備えたものとなっていた。
水陸両用車
かつて警視庁第九機動隊が都費でアンフィレンジャーを配備していたほか、一部県警本部へは令和2年(2020年)に積載車とセットで国費配備されている。
配備されるのは、総務省消防庁が無償貸与した「津波・大規模風水害対策車」に積載されるARGOと同様である。
高性能救助車
メルセデス・ベンツウニモグにウィンチと幌付き荷台を備えたものである。警察庁は令和2年(2020年)に新型車両を更新配備しているが、この際、余剰となった車両が玉突きで他本部へ配転する例もみられる。
【諸元】
- 車長:6.2メートル。
- 車幅:2.4メートル。
- 車高:3.3メートル。
- 最大登坂能力:45度。
バケット車
同じく阪神・淡路大震災を受け、警視庁と大阪府警にかつて配備されていた車両。三菱ふそうキャンターにアイチコーポ製の「トラックバックホゥ」を架装していた。
関連イラスト
参考文献 外部リンク
『消防全鑑』
『カラーブックス 消防自動車』
いのうえ・こーいち、諸河久・共著(保育社)
『はたらくじどうしゃ』
著・山本忠敬(福音館書店)
(フジテレビ系列)
『THE MAKINGスペシャル版(5)消防自動車ができるまで』
関連タグ
レスキュー車(表記揺れ)