「この世界を…僕が守る!」
物語
横浜に住むマドカ・ダイゴ、アスカ・シン、高山我夢の仲良し3人組は、TVヒーロー『ウルトラマン』に憧れながら少年時代を過ごした。3人はそれぞれ宇宙飛行士、野球選手、宇宙船を開発する立派な科学者になる夢を抱いた。そんな矢先、彼らは赤い靴を履いた謎の少女と出会う。このとき、ダイゴは彼女とある約束を交わす。
月日は流れ、3人は夢を諦めて平穏な日々を送っていた。そんなある日、横浜の空に蜃気楼が出現。同時に、ダイゴは知らないウルトラマンやウルトラ兄弟を目撃。ウルトラ兄弟に至っては、昔なじみのハヤタ・シン、モロボシ・ダン、郷秀樹、北斗星司が変身した。
さらに、アスカや我夢も自分たちが知らないウルトラマンに変身する夢を見た。
数日後、人々が行き交う横浜の赤レンガ倉庫街で外国視察団に熱弁を振るうダイゴ。そのとき、そこにいた人々が全員消えたかと思うと、ダイゴはウルトラマンメビウスと怪獣キングゲスラの戦闘に遭遇。ダイゴがメビウスに助言したことで、メビウスはキングゲスラに勝利。ダイゴは元の世界に戻るが、同時にヒビノ・ミライの姿に戻ったメビウスがダイゴの世界にやって来た。
ミライは、例の少女からダイゴたちの世界が侵略者に狙われていることを告げられ、7人の勇者を覚醒させるように頼まれたと言う。
ダイゴとミライが7人の勇者を探している最中、怪獣キングパンドンが出現。メビウスはキングパンドンを倒すが、スーパーヒッポリト星人の罠でブロンズ像にされてしまう。
さらにスーパーヒッポリト星人は、キングシルバゴンとキングゴルドラスを差し向けて街を破壊。
人々が絶望しかけたなか、ダイゴは思い出す。例の少女と交わした約束や、別世界での自分を…。
概要
2008年9月13日公開。八木毅監督、長谷川圭一脚本の特撮映画。
特撮番組『ウルトラマンメビウス』の番外編として製作された物語だが、この物語の主人公は本来『ウルトラマンティガ』の主人公だった、長野博演じるマドカ・ダイゴである(冒頭で「主人公の彼(ダイゴ)もまだヒーローではありません」とナレーションが入っている)。そのため、『ティガ』の劇場版作品側面も持っている作品とも言える。
当初、登場するウルトラマンはティガや、前作『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』にも登場したメビウス、初代ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエースのみだったが、長谷川氏がウルトラマンダイナとウルトラマンガイアも登場させることを提案し、8人のウルトラマンが登場することになった。
ティガ、ダイナ、ガイアは、(短編映画を除いて)世界観の相違から光の国のウルトラマンたちとは相容れない存在だったが、本作では後述の世界観により初共演が実現。さらに、マドカ・ダイゴ、アスカ・シン、高山我夢が3人揃って変身前の姿で共演するのも初となった。
劇場版ウルトラマンは本作より従来の35mmフィルム撮影からHD24P(ハイビジョン)による撮影に切り替っている。
ティガの起用について、プロデューサーの鈴木清は「ティガは多くの伝説と記憶を残した作品。ウルトラシリーズの総決算の作品を目指す」と語った。
主題歌は長野が所属するV6が、『ティガ』本編以来の担当。
企画
前作『メビウス&兄弟』は前評判が好調だったため、公開前の2006年夏の時点で次作品についての検討が始められた。その中で、『メビウス&兄弟』では神戸とタイアップを行ったことが制作や宣伝に効果的だったことから、本作品では2009年に開港150周年を迎える横浜市を舞台とすることが提案され、2006年秋に映画製作が正式に決定された。
前作で人間体の登場が実現されなかったウルトラマンタロウや、メビウスを主役とした『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟2』のタイトルで企画が進行。ヤプールがヒッポリト星人と手を組んで光の国に戦争を仕掛け、横浜を舞台にウルトラ兄弟が活躍する一方、肉親を失ったショックで言葉を話せなくなった良平少年の再起を描くことで、ウルトラマンと人間の絆を再確認する内容だった。長谷川氏が執筆したプロットにはタロウやメビウスの他に件の4兄弟、前作に登場しなかったウルトラの父、ウルトラの母、ウルトラマンレオ、アストラ、ウルトラマン80、ウルトラマンヒカリ、CREW GUYSのメンバー、そして成人している設定でホシノ・イサム、坂田次郎、梅津ダン、白鳥健一が登場。登場怪獣は、酉澤安施によるペギラ、バードン、アストロモンス、タイラント、グランドタイラント(タイラントにゴモラ、エレキング、ツインテール、バキシム、アストロモンスが合体した強化版)のデザイン画も完成していた。しかし、『メビウス&兄弟』同様の路線とすることに懐疑的な意見が多く、この案は不採用となった。
合体した強化案の設定の一部はギガキマイラへと受け継がれた。
また、第1稿の脚本段階ではベロクロン、アーストロン、ゴルザ、ガンQの登場も予定されていた。ちなみにゴモラは『ウルトラマンX』第19話でダークサンダーエナジーによってEXゴモラに変貌してみなとみらいを襲っている。
上記の経緯もあり、撮影に際しては横浜市が全面協力しており、通常では映画撮影が難しい横浜中華街や横浜公園においてもロケが行われた。
また、劇中の横浜市観光課においては主人公のマドカ・ダイゴと課長のムナカタ以外は、本物の横浜市役所の公務員が演じている。
世界観
本作は、今までのどのウルトラシリーズとも繋がらない並行世界にメビウスが飛ばされたという物語である。
この世界では『超時空の大決戦』などと同じく『ウルトラマン』が特撮番組として放映され、怪獣などは出現してこなかった。そのため、防衛組織も自衛隊や軍隊しか存在しない。
ダイゴ、アスカ、我夢の3人は、原典では光の力を受けてウルトラマンに変身するスーパーヒーローだが、本作では一般人として登場する。また、本来宇宙人であるはずのモロボシ・ダンや南夕子も、この世界では一般市民扱いである。彼らが変身できた理由は別世界の記憶が流れ込んだことによる補正である。よってこの世界のウルトラマンはメビウスを除き、別世界の記憶を元に誕生した純地球産ということになる。
そのためもあり、「人としてできること」を精一杯やっていかなければならない(ただし、ダンディー4は高速移動を行うなど元から人間離れしていたが)。
なお、この世界では平成ウルトラマンは放送されていないらしい。
登場人物
主役
原典では超古代人の血を引く地球平和連合TPCの精鋭部隊GUTSのエリートパイロットだったが、本作では横浜市役所観光課に勤める30歳の青年。遅刻や居眠りの常習犯らしい。同僚のレナに憧れて横浜市役所に就職したため、実際はまだ宇宙への夢を諦めていない。また、彼の母親は「シュシュっと参上する、『水が舞い波が踊る忍者』に変身する人」のそっくりさんだったりする。
ちなみに課長はムナカタリーダーである。
原典では宇宙飛行士を目指す(あれ?)熱血パイロットだったが、本作ではプロ野球選手になる夢を背負い、甲子園の決勝まで登りつめるも、スタンドプレーに走った結果、自滅。夢を諦めきれずに横浜スタジアムのボールボーイを務めている。原典ではダイゴの後輩だったが、本作では同い年。
原作では北斗もかくやというような熱血おバカだったが、この映画では割とまとも。スプーンでセブンの真似をやっていたが。
クライマックスで別世界ではあるが、リョウに投げかけた「ただいま」という台詞に涙したダイナファンは多かったことだろう。なお、偶然か否か次回作の映画では正史のアスカが生存報告をすることになった。
天才科学者なのは原典と変わらず、本作においてパラレルワールドを「多次元宇宙論」という量子物理学の観点から科学的に解説した最初の人物でもある。だが、現在は周囲からの重圧に耐えかねて横浜ミュージアムの職員を勤めている。
ちなみに、原典の我夢も『ガイア』が特撮番組として放送されている並行世界に飛ばされたことがある。
宇宙警備隊
遠く輝くM78星雲から、僕らのためにやってきたスーパールーキー。本作において、唯一原典の登場人物とまったく同一の存在。並行世界ではウルトラ戦士が架空の存在であることを知り、戸惑いながらも怪獣たちから地球を守るために勇敢に戦う。
なお、この映画の時系列はメビウスの世界で言うと『メビウス&兄弟』から第29話までの間とされる。要するに、まだインペライザーや暗黒四天王とも戦っていない時期の話である。
ちなみに、スーツは『メビウス』本編で使用されたものではなく新規造形。
この映画を最後に、『メビウス』当時のミライが登場することがなくなった(以降のシリーズは『ウルトラギャラクシー』以降の設定で登場するため)。
ダンディー4
妻のアキコとともに自転車屋を経営する中年男性。レナの父親であり、ダイゴとも親しい。
ちなみに、演じた黒部進氏は『ウルトラマンレオ』第30話でゲスト出演した際の役が自転車屋役である。
原典ではM78星雲人が人間に変身した姿だったが、本作ではごく普通の人間。妻のアンヌとともにレストランを営む(また、レストランのコンセプトがハワイアンレストランだが、奇しくも『セブン』はハワイで放映されたことがあったりする)。
ちなみに、演じた森次晃嗣氏はレストランを営んでいる。また、原典では宇宙人であるため、唯一実子がいない(次回作映画にセブンの息子が登場することになるが)。
妻のアキとともに、自動車整備工場を経営する大柄な中年男性。夢のレーシングカー「流星1号」を完成させるのが夢。
ミライには「ジャック兄さん」「新マン兄さん」「帰りマン兄さん」などと何度も別の名前で呼ばれるなど、異名がたくさんあることを(公式に)ネタにされている(ダイゴがウルトラマンジャックの呼称を使っている辺り、『ウルトラマンZOFFY』は公開された世界線だと思われる)。
なお、流星1号は『帰ってきたウルトラマン』第1話に登場する『流星号』が元ネタで、郷が死亡した際に送り火として燃やされた。郷の蘇生後は2号機の開発が進められていたものの、坂田兄妹がナックル星人に殺害され、計画は頓挫となった。なお、この世界でも坂田健は故人となっている模様。
ちなみに娘のメグを演じた松下恵は、坂田アキ役の榊原るみの実娘。
妻の夕子とともに、パン屋を開いている中年男性。正史同様、勇敢で気が短い。
ミライからは結婚指輪をウルトラリングと勘違いされてしまう。ちなみにパン屋という職業は正史の世界において、北斗がTACに入隊する前の職業であったりする。
また、夕子は看護師資格を持っているが、これは正史の世界におけるTACに入隊する前の職業が看護師であることに則ったもの。
その他豪華な脇役
ハヤタの愛娘。演じた吉本多香美氏が、ハヤタ役の黒部進氏の娘であることからこの配役となった。
また、上司にシンジョウ・テツオがおり、妹のマユミはこの世界ではニュースキャスターとなっている。
著名なSF作家らしい。TVで横浜に現れた蜃気楼について考察していた。もちろん、一平ちゃんもチョイ役で出ている。
本来のスーパーGUTSの隊長ではなく、熱血な横浜ベイスターズの監督。ラストでアスカに「宇宙で迷子になるなよ!」とダイナ最終回の展開を想起させるような言葉を贈るが、彼に平行世界の記憶を宿ったかどうかは不明。
学界の第一人者。我夢の友人で学生時代はライバル的存在だった。既婚者。今回はあくまでタイトルが『超ウルトラ8兄弟』なのでウルトラマンアグルには覚醒せず、『ウルトラマンガイア』以外での変身は9年5ヶ月後の『THE_ORIGIN_SAGA』まで待たねばならない。
また、妻の吉井玲子で出演した石田裕加里は、リアルのほうでも高野八誠氏の奥様だったりする。このことからあくまで役名こそ藤宮博也だが、実際はあくまで『高野八誠』としての出演という見方もできる。
怪獣に蹂躙される都市で人々の救護に努める医師。看護師の資格を持っていた北斗母娘の支援を受けた。
原典は劇場版『ウルトラマンコスモスTHE_FIRST_CONTACT』、『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』に登場していた人物なのだが、この映画にコスモスや春野ムサシは登場しておらず、『超ウルトラ8兄弟』にしては珍しい、原典世界のウルトラマンが登場していない作品からのキャラクターである(次回作の映画にはパラレルワールドのムサシが登場する)。しかし、風見しんご氏は前作にも出演。
横浜スタジアムのプロ野球公式戦で、始球式を務めた女性。
別の世界では凶悪なエイリアンを相手にするエージェントをやっていたとかないとか。
主役3人が子供の頃に通っていた駄菓子屋の主人。『ウルトラマン』第1話が放送開始を知ると、何やら嬉しそうな顔をしていた。
- 横浜市長
当時の横浜市長であった中田宏氏その人が、本人役で出演。
現実にも勝るとも劣らない毅然とした態度で、事態収拾に奔走する。
この他、横浜北高校野球部監督役に稲川誠を据えるなど、特撮とは別の意味でのレジェンドキャストが出演する本気っぷりである。
回想シーン(というより、ダイゴが一時的に別世界に迷い込んだというほうが近い)で登場。なお、前述のように元々はタロウを主役にした映画をやる予定だった。
- 応援団
ウルトラマンたちの活躍を見守る3人組。原典の世界ではそれぞれスーパーGUTSの隊員と、TPCの参謀であった。
原典ではTPC初代総監であった。この世界では国連事務総長を務める。
かつて『ウルトラQ』や『ウルトラマン』で初代ナレーターを務めた石坂浩二氏が担当している。
シリーズを支えたレジェンドスタッフ。鈴木清プロデューサーはセレモニー出席者として、満田氏はモブとしてゲスト出演した。
原作にも存在しているダイゴとレナの娘。
エピローグ時点で10歳ほど。つまり、ラストから10年以上は経っている。
登場怪獣
主題歌/挿入歌
作詞:KOMU/作曲:加藤裕介/編曲:Yoshimasa Kawabata/コーラスアレンジ:鈴木弘明/歌:V6
主題歌。
- 渚の約束
作詞:森由里子/作曲:サム・イワサ/編曲:池毅/歌:ダンディ4&メグ
挿入歌。
余談
本作に出演した二瓶正也は2021年8月21日に亡くなったため、ウルトラシリーズの出演としては最後の作品でもある。
興行収入は8億3800万円であり、これは2022年公開の『シン・ウルトラマン』が記録を更新するまでは歴代ウルトラシリーズの劇場版作品の中では1位の記録で、それまで14年間首位を独占するというとんでもない記録を残している。
平成ウルトラシリーズ全般を指揮していた円谷一夫が製作に関わった最後の作品でもあり、2024年現在、TBS系列局が製作に関わった最後のウルトラシリーズの作品でもある。本作ではハイコンセプト・ウルトラマンと『ULTRASEVENX』を制作したCBCが、製作委員会に参加。ただし、円谷作品全体に範囲を広げると、10年後に『ティガ』から『コスモス』までの制作局であるMBSがSSSS.GRIDMANに参加、TBS系列局が円谷作品の制作に本作以来10年ぶりに関わっている。
本作はCBCが制作に携わったため、TDG三部作の主人公ウルトラマンもCBC制作の作品に出演することになり、CBCによる専用サイトも制作され、平成ウルトラマンシリーズは『コスモス』を除く全作品の公式サイトがCBCによって開設された。これらのサイトは現在も閲覧でき、そこから本作の公式サイトを経由して『ネクサス』や『マックス』の公式サイト、円谷プロ公式サイトからも各6作のサイトに移行することが可能。ちなみに、『メビウス』では昭和ウルトラマンが客演したため、CBCは2024年現在、アニメ作品である『ザ☆ウルトラマン』や、放送時期が独立した『ウルトラマンコスモス』を除く当時すべてのTVシリーズの主人公ウルトラマンが登場した作品を制作した制作局となる。
内山まもる氏のコミカライズは流れが少し異なっていて、主な差異は次の通り。
- メビウスがキングパンドンとキングゲスラを同時に相手にしたかのような導入になっている。
- 若干言い回しが典型的なヒーローっぽく、技名を叫ぶ(内山先生の作品ではよくあること)。
- キングシルバゴンがフォトンエッジ、キングゴルドラスがソルジェント光線で倒されている。
- 黒い影法師が存在しないため、ギガキマイラはスーパーヒッポリト星人の意思で合体している。
- 横浜上空での戦いでギガキマイラに対して発射している技や着弾した部位が異なる
しかしながら、内山氏がTDG3戦士を同時に活躍させる漫画はこの作品だけであり、内山ファンは読んで損はない(特に内山氏の描くガイアはこの作品にしか登場しないのである)。
2024年には、同年の10月26~27日まで開催される熱海怪獣映画祭でクロージング上映(映画祭で最後に公開される映画作品を差す)され、当イベントには監督の八木毅氏と高山我夢役の吉岡毅志氏がゲスト登壇された。
本作が再上映されるのは今回が初と思われる。
関連項目
ジェットビートル ウルトラホーク1号 マットアロー1号 タックスペース
おくりびと:同日公開の松竹映画。興行収入64.6億円という松竹映画の中では1位の最高記録を残している。
ウルトラ作戦第一号:冒頭で少年時代のダイゴ・アスカ・我夢の三人がリアルタイムで視聴している。
ウルトラマンマックス、ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…:主人公とメインヒロインが宇宙へ旅立つエピローグが少し似ている。
バンダイビジュアル、エモーション:ロゴが作中に登場。気になる人は是非探してみよう。
ウルトラマンクロニクルZヒーローズオデッセイ:こちらで一部が放送された際には、ティガの声がTVシリーズと同じ真地勇志氏のものに差し替えられている。ただし、ギガキマイラに攻撃するシーンの中で一瞬だけ長野氏の声になっているシーンがある。
ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟←大決戦!超ウルトラ8兄弟→ウルトラ銀河伝説