その魔女は、チンコに被せる。
概要
第1クールが2022年10月2日から2023年1月8日まで、第2クールが2023年4月9日から7月2日まで、MBS・TBS系列『日5』枠にて放映されたガンダムシリーズ。
バンダイナムコグループのIP事業「ガンダムプロジェクト」の「作品軸」展開に含まれるTVシリーズ作品で、同事業の「ワールドワイド戦略軸」「GUDA軸」と同じく従来以上に挑戦的な要素が盛り込まれている。
TVアニメ作品としては前作『鉄血のオルフェンズ』の放送から5年半振りの新作となる(※1)と同時に令和最初の新作ガンダムでもある。
なお“初回放送”は、先述の通り日5枠での放送であるが、『鉄血』完結で消滅して以来、5年半ぶりの新作放送であった(復活第1弾の「呪術廻戦」が再放送であったため)。
英題は『 Mobile Suit Gundam THE WITCH FROM MERCURY 』。
本編の放送に先駆け、2022年夏からイベントや配信、また日5枠とAT-Xでの本編第1話放送前に、前日譚『PROLOGUE』が公開された。
また、アニマックス、BS11、BS日テレでも放送されている。
第1クールは同時期にAT-X、10月下旬からはアニマックス、2023年1月からはBS11、2023年4月からはBS日テレでもそれぞれ放送されたほか、BS11の放送と同時期にMBSとTBSでもアニメイズムB2枠にて再放送が行われた。
2022年3月29日にティザーPVが公開され、主人公のビジュアルと主役モビルスーツ「ガンダム・エアリアル」等が公開された。
また同時にガンダムTVシリーズでは、初の女性主人公であると明言された。
2022年6月17日にはあらすじと主人公「スレッタ・マーキュリー」のプロフィールやその他のメインキャラクター・MSの情報が公開された。
なお、日5枠での放送休止期間中はプロデューサーの小形が担当した劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』『機動戦士ガンダムNT』を、それぞれ全4話(サンダーボルトに関しては全3話)のテレビエディションとして放送された。
ヤマザキビスケットから発売されているエアリアルとのコラボ商品や、セブンイレブンでのキャンペーン展開など近年のTVシリーズの中でも積極的に宣伝が行われた。
2022年4月にサンライズがバンダイナムコフィルムワークスに社名変更したため、企画とアニメーション制作は過去作に同じく「サンライズ」名義だが、製作会社としては「バンダイナムコフィルムワークス」名義に変更された(劇場版では『ククルス・ドアンの島』で先行して名義変更)。
今作では『SEED DESTINY』以来となるアイキャッチが復活(但し『BLOOD+』のようにAパートのみ)している。
その一方で次回予告は(近年のアニメではよく見られるスタイルではあるが)サブタイトルの読み上げのみに留まっており、次回の内容は一切流さないようになっている(これは第1期後番組の閃ハサTVエディションも同様)。
また、19話以降は後番組である『ゾン100〜ゾンビになるまでしたい100のこと〜』の番宣もあってか『水星の魔女』のコールも省略されている。
『SEED DESTINY』程ではないが本作品も総集編が幾度か放送されたが、これは「製作スケジュールの都合によるもの」とされており、相当厳しいスケジュールだった事がうかがえる。
※1 ガンダムビルドシリーズを含めれば『ガンダムビルドダイバーズ』の放送から4年振りの新作となる(『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』は初出がWEBアニメのため除く。また『SDガンダムシリーズ』を含めると2021年に『SDガンダムワールドヒーローズ』がTVにて放送していたが、先放送が『ガンダムチャンネル』且つSD等の派生作品を除けば、令和最初は今作になる)。
あらすじ
A.S.(アド・ステラ) 122。
数多の企業が宇宙へ進出し、巨大な経済圏を構築する時代。
MS産業最大手「ベネリットグループ」が運営する「アスティカシア高等専門学園」に、辺境の地・水星から一人の少女が編入してきた。
名は、スレッタ・マーキュリー。
無垢なる胸に鮮紅の光をともし、少女は一歩ずつ、新たな世界を歩んでいく。
(公式サイトより)
登場人物
主要人物
- スレッタ・マーキュリー(CV:市ノ瀬加那)
- ミオリネ・レンブラン(CV:Lynn)
アスティカシア高等専門学園
ジェターク寮
ペイル寮
グラスレー寮
地球寮
- ニカ・ナナウラ(CV:宮本侑芽、白石晴香〈第10〜12話代役〉)
- チュアチュリー・パンランチ(CV:富田美憂)
- マルタン・アップモント(CV:榎木淳弥)
- オジェロ・ギャベル(CV:KENN)
- ヌーノ・カルガン(CV:畠中祐)
- ティル・ネイス(CV:天崎滉平)
- リリッケ・カドカ・リパティ(CV:稲垣好)
- アリヤ・マフヴァーシュ(CV:島袋美由利)
ブリオン寮
ベネリットグループ
総裁
- デリング・レンブラン(CV:内田直哉)
グラスレー社
ジェターク社
ペイル社
シン・セー開発公社
- プロスペラ・マーキュリー(CV:能登麻美子)
- ゴドイ・ハイマノ(CV:青山穣)
カテドラル
宇宙議会連合
フォルドの夜明け
- ソフィ・プロネ(CV:井澤詩織)
- ノレア・デュノク(CV:悠木碧)
- ナジ・ゲオル・ヒジャ(CV:楠大典)
- オルコット(CV:三上哲)
- ベッシ・エンリケ(CV:坂泰斗)
- グリスタン・ディンバリ(CV:佐々木義人)
- フィリップ・クー(CV:濱岡敬祐)
- マチェイ・ガオ(CV:近藤浩徳)
- ジャリル・リ・ナランカ(CV:山口令悟)
- シーシア(CV:川井田夏海)
- セド・ワンチェク(CV:藤原夏海)
その他
小説版オリジナルキャラ
ドラマCDオリジナルキャラ
登場メカ
太字はプラモ化された機体、斜体はプレミアムバンダイ限定商品。
MS(モビルスーツ)
シン・セー開発公社製
ジェターク社製
ペイル社製
グラスレー社製
ブリオン社製
フォルドの夜明け
- ガンダム・ルブリス・ウル
- ガンダム・ルブリス・ソーン
- ガンヴォルヴァ
- デスルター(ジェターク社製、公式サイトでは『OTHER MOBILE SUITS』扱い)
- プロドロス(HMI社製、公式サイトでは『OTHER MOBILE SUITS』扱い)
その他のMS
(原則として公式サイトでは『OTHER MOBILE SUITS』扱い)
SFS・その他
(原則として公式サイトでは『WORDS』扱い)
- モビルクラフト
- ティックバラン
- ミラソウル社製フライトユニット(エアリアルの差分として掲載)
- ガンドノード用アーマーパック(モビルアーマー〔MA〕。ガンドノードの差分として掲載)
艦船
(現時点では公式紹介なし)
- ユリシーズ
- 学園艦
- ワームブロッド
小説版オリジナル
用語
根幹設定
- アド・ステラ(A.S.×××)
今作で用いられている年号。西暦との関係は今のところ不明。本編の年代はA.S.122。
- 条約
12話のカテドラル兵によって言及された条約。
条約の具体名は現在のところ不明。
この条約により実体弾の使用は禁止されており、ほとんどのモビルスーツはビーム兵器を携行している。
※「実体弾」と言われると、実体を持つ物すべてという印象を受けるが、実際には「徹甲弾のように金属の塊でできた砲弾」のみを意味する為、ディランザやザウォートの実戦仕様などに搭載されているミサイル兵装は条約をすり抜けている可能性がある(テロリストが運用していたプロドロスに関してはその限りではない)。
- フロント
小惑星に設置される形で作られた宇宙居住区。
従来の作品のスペースコロニーに相当するもの。
それぞれ宇宙で暮らす人と地球で暮らす人。
宇宙世紀のスペースノイドとアースノイドに当たる。
アーシアンはスペーシアンに経済的・労働的に搾取される状況にあり、スペーシアンの中にはアーシアンを格下の社会階層と見下し差別的に扱う傾向がある。
そういった扱いを受けるアーシアンもスペーシアンを敵視しており、格差是正や環境改善を求めたデモが起こり、MSを伴う治安出動が発生するなど一触即発の状況にある。
- パーメット
太陽系内で採掘される鉱石に含まれる新種の元素。
パーメット間で情報を共有する性質を持ち、その特性から新たな技術体系の礎となる。
かつては水星で採掘されていたが、近年では月でも採れるようになっている。
作中時年代「A.S.(アド・ステラ) 122」ではこれを用いたパーメットリンクが主要な通信規格の一つとして普及しており、あらゆる電子機器はパーメットリンクを介した通信ネットワークを利用している。
- モビルスーツ開発評議会
モビルスーツ開発産業が所属する団体。
経済面などの観点からかほぼ全ての企業がスペーシアン系である。
後述のベネリットグループやカテドラルも属している。
モビルスーツ開発産業の最大手である巨大企業。
御三家と呼ばれる「ジェターク社」「グラスレー社」「ペイル社」の三企業を軸に多数の企業で運営されている。
モビルスーツ開発評議会の下に置かれた監査組織。
統括代表はデリング・レンブラン。
評議会から移管した特殊部隊・ドミニコス隊を擁しており、パイロット候補生にとってのエリートコースとして認識されている。
数多の機動戦士ガンダムシリーズに登場する球状のマスコットロボ。
声優は兼役で務めるのが伝統で、オレンジのハロの声はシャディク役の古川慎。
グリーンのハロの声はチュチュ役の富田美憂が務める。
今作ではベネリットグループが生産し、学園内でスクーターや空撮用ドローンと合体し、様々な場面で登場する。
グリーンのハロはロウジが独自にカスタマイズしたもの。
2023年4月16日以降は『WORDS(用語集)』から端役モビルスーツの説明が『OTHER MOBILE SUITS』ページに変更されているが、コピー&ペーストで移植したのか何故かこちらもモビルスーツ扱いされてしまっていた(現在は修正済み)。
スレッタがミオリネとお揃いで持ちたい理由で作った、形容しがたいデザインのマスコットのキーホルダー。
青いのがクールさんで、赤いのがホッツさん。
ミオリネがダサくスレッタが好むであろうと評し、ニカもお世辞混じりで褒めていたりと作中でのデザインの評価は低い模様。
詳細はこちら。
元ネタは作中に登場する加古川市のマスコット、「かっつん」と「デミーちゃん」と思われる。
デリングとプロスペラが共同で極秘裏に進める、謎の計画。
- 戦争シェアリング
ベネリットグループを含むモビルスーツ開発企業(≒モビルスーツ開発評議会)が構築した軍事ビジネスモデル。
宇宙開発事業の莫大な費用を裏で支えているとされる。
これにより、地球は代理戦争の様相を示していた。
- アカデミー
グラスレーが運営する戦災孤児を″再教育″する養護施設。
優秀な成績を修める事で、貧しいアーシアンでもスペーシアンと同等かそれ以上の厚遇で生活する事が出来る。
学園内用語
物語の舞台となるフロント内の学校。
ベネリットグループが運営するパイロット育成校。
モビルスーツの運用試験を兼ねた場でもあり、グループの強い影響下にある。
学内には各企業の名を冠した寮があり、各寮にエースパイロットが存在している。
生徒の出自はスペーシアン、アーシアンを問わない故に、少なからず学内での対立が生まれている。
さらに、寮を追い出された者や遠方出身者に対して冷ややかな目で見る者がいたり、アーシアン同士でも育った環境の違いで意見が対立することがある。
- 決闘
「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」
「操縦者の技のみで決まらず」
「ただ、結果のみが真実!!」
アスティカシアでは生徒間で様々な物を賭け、モビルスーツに搭乗し模擬戦で雌雄を決する。公的な一種の競技として扱われ、遂行・審判は「決闘委員会」なる学園内の組織の管理下で行われる。
決闘は学園内でライブ中継され、生徒手帳のデバイスでも観戦可能となっている。
企業の後継問題が絡んでおり、時として学園内でのお遊びに止まらない意味合いを持つ。
第8話にて決闘オッズが登場した。お金賭けてるの…?
当然ながら相手を殺すのは御法度。
決闘の際は武装の攻撃力は実戦より低出力で、かつレギュレーションプログラム搭載によって、コクピットへの直接的な攻撃も出来ないよう安全に設定されている。
- ホルダー
アスティカシア学園内での最強のパイロットの称号。
単にステータスだけでなくヒエラルキーを変化させる程の影響力を持つ。
総合的な戦績は考慮されず、あくまでもホルダーに勝利して称号が移動する仕組みを採っている。
ホルダー所持者の制服とノーマルスーツのカラーは白になる。
軍事用語
人類が宇宙に適応するための技術「GUND」を兵器制御に転用した「GUNDフォーマット」を搭載するモビルスーツ。
一般的な機体よりもパイロットへのパーメット流入値が高くなる傾向にあり、データストームによる強い負荷が掛かる事実から、評議会によってあらゆる開発計画が凍結された曰くつきの技術。
- パーメットスコア
パーメットをパイロットへ流入させ、そこから機体の追従性・反応速度を上昇させるコマンドワード。
レベルが高いほど人体への過負荷が増し、スコア4でほぼ限界に近い負荷が生じる。
前述のクワイエット・ゼロに必要なスコアは8との事だが…。
- ノンキネティックポッド
無人機によるドローン戦争に終止符を打ったパーメット・電子対抗装備の進化系となる、非運動エフェクターを搭載した有線式の遠隔操作端末。
射出後はロックオンした対象のGUNDフォーマットリンクを妨害する「アンチドート」を行なう。
- GUNDビット(ガンビット)
GUNDフォーマットを利用した次世代群体遠隔操作兵器システム。
宇宙世紀のファンネルに当たる。
GUNDフォーマットの禁じられた劇中では、あくまでも『新型のドローン』として扱われ、ベネリットグループ傘下企業の関心を集めている。
データストームが発生してしまうガンダムに乗る為に、ペイル社が人工的に肉体を強化された人間。
- COMP・JAM・POD(コンジャムポッド)
MSにより散布される小型の電子戦機材。
現時点で登場している「ベルタ・ブラード」は敵性ユニットに強力な通信妨害を行いつつも味方の通信を確保でき、更には日常的な通信障害のように装って戦場を隔離する事も可能である。
Computer Jamming Pod の略称と思われる。
- ホッピング通信
現実にも存在する周波数ホッピングスペクトラム拡散を行う通信様式であると思われる。
送信、受信側でタイミングを合わせて周波数を頻繁に切り替える(ホップする)手法であり、ホッピングパターンを把握しなければ途切れ途切れの信号しか受信できない為、第三者による傍受が困難となる。
また特定の周波数に対するジャミングではホッピング通信のごく一部しか遮断できず、あらゆる周波数にジャミングをかけるにはとんでもない出力が必要になってしまうため、ホッピング通信の妨害は非常に難しい。
- オーバーライド
データストームを介してパーメットで起動する物を強制的に停止したり、コントロールを手中に収める。
フロントに存在する殆どの機械はパーメットで動いているため、何でも意のままに制御・操作が出来る模様。
制作体制
監督は『キズナイーバー』『ひそねとまそたん』等で知られる小林寛。
シリーズ構成・脚本は『∀ガンダム』でデビューを果たし、『OVERMANキングゲイナー』『コードギアス反逆のルルーシュ』『革命機ヴァルヴレイヴ』などに携わってきた大河内一楼が担当。
また、『永久×バレット』『ケモノファブリック』等を手掛ける同人ユニット「モリオン航空」が本作の原型となる企画を提出している(インタビューより)。モリオン航空は企画協力として参加すると共に、メンバーのHISADAKEが設定協力、モグモがキャラクターデザイン原案を担当している。
エグゼクティブプロデューサーには『機動戦士ガンダムUC』『ガンダム Gのレコンギスタ』で知られる小形尚弘、プロデューサーには小形と共に『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』を手掛けた岡本拓也が携わっている。
小形は「宇宙世紀のシリーズではなく、新しいガンダムとして展開していく。7年ぶりのテレビアニメということもあり、新しいファンが増えることも意識しながら作っていく」と語っており、インタビューでも「極力口出しせず、若いスタッフの感性を信じる」「水星の魔女は『こんなのガンダムじゃない』という人が出てきてくれた方がいい」とも語っている。
また、岡本のインタビューによれば、ティーン層向けの作品をオーダーされたことを明かす一方で、社会科見学で来た10代に「ガンダムは敷居が高くて僕ら(10代)に向けたものじゃない」「ガンダムだったら作品は見ない」と1話切りですら無い塩対応を受け、シリーズと若い客層との乖離に衝撃を受けた事実にも触れられており、その上で舞台を若者に身近な環境である学園にするなど、若い世代が入りやすいように工夫を凝らしていることが明かされている。後述の若者向けのお約束展開もその一環といえよう。それでも「ガンダムである以上は物語には転換点や不穏な話もある」と岡本は語っている。
岡本が参加する前から『女性が主人公』なのは決まっていたらしく、ガンダムの原作者である富野由悠季も某ニュース番組のインタビューで「(いつもは腹立たしくなるので他の人のヒット作は観ない氏にしては珍しく)鬼滅の刃を観た」「次回作の主人公は少女になるかも」という旨の発言をしていたので小形から話を聞いたのかもしれない。ちなみに小形と制作したGレコも企画書段階では女主人公の予定であった。
キャラクター設定は小林のイメージを出発点として肉付けを行い、MSも含めてドラマがばらばらにならないように配慮がなされている。
テレビシリーズとしては初の女性主人公に関しては、作為的なものを入れたり、ジェンダーに配慮して描いたりはせず、あくまで1人のキャラクターとして話を描くのを意識されている。
「多様性が当たり前になっている世界に、多様なキャラクターが出てくるのは必然である」のを理由に、監督の小林の意向でさまざまなキャラクターが登場する。
構成要素
上記の通り若い視聴者を意識して、従来のガンダムシリーズのイメージを覆す要素が盛り込まれた。
具体的には主人公のスレッタを含めた5人の少年少女を中心とした学園ものとなっている(ただし、学園ものとしてのガンダムTVシリーズは『新機動戦記ガンダムW』の例があり、本作が初ではない)。
序盤から「入学した途端に退学を賭けて〈決闘〉する」、「周囲からはヒエラルキー下位に見られていた主人公がヒエラルキー上位の異性から次々と興味を持たれる」など、若者向け作品(男性向け・女性向け問わず)で流行している展開で畳み掛けた上、女性主人公とヒロインの婚約(百合)展開で話題を集めている。
なお、脚本の大河内は本作を「学園もの」であると同時に「企業もの」と称しており、主要キャラが企業経営に直接関わり、ビジネスシーンの駆け引きも多く描かれる。
一方で、宇宙サイドと地球サイドの対立構造や、本作におけるガンダムが「呪い」とも称される危険な側面を持つ点が強調されているなど、ガンダムシリーズらしい不穏な雰囲気も随所に見え隠れする。
第1クール最終盤では主人公らが戦闘の中で殺人に手を染める残酷シーンが登場し、今後の容赦ない展開を予感させる幕切れとなった。
更に本作の主要キャラの肉親は “復讐に取り憑かれた母” や “己の正義や野望を追い求めて暴走する父親達” などの〈毒親〉に類しそうな人物ばかりで、富野由悠季が掲げる「親子、兄弟姉妹、身内同士であっても、決して理解し合えるわけではない」とする “家族愛” へのアンチテーゼの図式に通じるものがある。
学園の内部構造も色々と歪で、弱肉強食の風潮が学園内に蔓延し、“アーシアンである”だけでスペーシアンの生徒のみならず、教師からも不当に扱われるなどの行為が常態化している。
〈決闘〉システムも色々とキナ臭く、親や企業のコネクションによる裏工作が罷り通るなど、子供世代による企業間の代理戦争ともいえる側面を持っている。
もっとも、こうした親への反発や対立を描く展開や、学園を青春を謳歌する若者たちの楽園ではなくむしろ一種のディストピアとして描く展開もまた、近年の若者向け作品の定番ではある。
このような構成上、ガンダムシリーズでは珍しく序盤から明確な戦争状態でない上に、明確な敵勢力も存在しない構図となっている。
加えて、敵対していた相手が急に好意的になったり、逆に味方だと思っていた相手が手の平を返したりと、誰が敵で誰が味方かわからない独特の緊張感を生み出している。
それもあって本作品はラスボスに相当する存在が、人によって大きく見解が異なっている。
似た構成だった『機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST』は後に思想の危険性・個人の戦闘能力・組織の規模のいずれの面で突出した “首切り王” がそのポジションに就いたが、本作は思想・戦闘能力・組織いずれも異なる人物達に割り振られており、明確に「このキャラクターがラスボスだ」と断定・明言し難くなっている。
また、劇中で使われるキーワードである「魔女」や「カヴン」はフェミニズムにおいては「抑圧をはねのけた女性」「自立した女性」「女性同士の連帯」の意味を付与される扱いが多い単語だが、本作においては「魔女」「カヴン」がフェミニズム的文脈の「魔女」「カヴン」を歪めた、あるいはその負の側面である「女性(たとえば母親)が別の女性(たとえば娘)を支配する」ものの象徴として描かれているとも見える。
メタファーやハイコンテクストな表現も数多く盛り込まれており、散見される(ガンダムシリーズを含めた)古典・既存作品のオマージュ要素の多様さから、知識や教養を持ち合わせていればいるほど物語や世界像への理解が深まるようにもなっている。
スタッフ
企画・制作 | サンライズ |
---|---|
原作 | 矢立肇・富野由悠季 |
監督 | 小林寛 |
シリーズ構成 | 大河内一楼 |
キャラクターデザイン原案 | モグモ |
キャラクターデザイン | 田頭真理恵・戸井田珠里・高谷浩利 |
メカデザイン | JNTHED・海老川兼武・稲田航・形部一平・寺岡賢司・柳瀬敬之 |
美術監督 | 佐藤歩 |
音楽 | 大間々昂 |
音響監督 | 明田川仁 |
プロデューサー | 岡本拓也 |
エグゼグティブプロデューサー | 小形尚弘 |
製作 | バンダイナムコフィルムワークス・創通・MBS |
音楽
作詞・作曲・編曲:ayase
作詞:馬場龍樹
作曲:馬場龍樹、遠藤ナオキ
編曲:遠藤ナオキ
作詞・作曲・編曲:ryo(supercell)
ED2:アイナ・ジ・エンド『Red:birthmark』
作詞・作曲:TK
挿入歌:アイナ・ジ・エンド『宝石の日々』
各話リスト
特別編への次回予告はTV放送のみ。
配信等ではスキップされ本来の(?)予告となる。
また、回によってサブタイトルやアイキャッチの背景や演出が白または黒となる(法則は不明だが、その回の時系列でのスレッタの心理状態に対応している?)
第一期
次回予告の背景のシェルユニットは赤。
話数 | サブタイトル | 予告の出演 |
---|---|---|
第1話 | 魔女と花嫁 | - |
-The Witch and the bride- | ||
第2話 | 呪いのモビルスーツ | スレッタ |
-Cursed Mobile Suit- | ||
第3話 | グエルのプライド | グエル |
-Guel's Pride- | ||
第4話 | みえない地雷 | ミオリネ |
-Unseen Trap- | ||
第5話 | 氷の瞳に映るのは | エラン |
-Reflection in an Icy Eye- | ||
第6話 | 鬱陶しい歌 | スレッタ |
-A Gloomy Song- | ||
特別編1 | まだ間に合う!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』スペシャル特番 | スレミオ |
-Special Program- | ||
第7話 | シャル・ウィ・ガンダム? | プロスペラ |
-Shall We Gundam?- | ||
第8話 | 彼らの採択 | ミオリネ |
-Their Choice- | ||
第9話 | あと一歩、キミに踏み出せたなら | シャディク |
-If I Could take One More Step Toward You- | ||
第10話 | 巡る思い | ミオリネ |
-Circling Thoughts- | ||
第11話 | 地球の魔女 | ソフィ |
-The Witches from Earth- | ||
第12話 | 逃げ出すよりも進むことを | スレッタ |
-Keep Marching on Instead of Running Off- | ||
特別編2 | まだまだ間に合う!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』スペシャル特番 | - |
- | TV放送なし |
第二期
次回予告の背景は青。
第14話からは『日5』ロゴの縁取りもオレンジから青に変更。
更に第18話からは背景が反転し黒となってロゴそのものが白に。
第24話予告のみ特殊演出となっている。
話数 | サブタイトル | 予告の出演 |
---|---|---|
特別編3 | 今から追いつける!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season1総復習ダイジェスト | - |
- | ||
第13話 | 大地からの使者 | - |
-Envoys from the Earth- | ||
第14話 | 彼女たちのネガイ | ニカ |
-What They Wish For- | ||
第15話 | 父と子と | ミオリネ |
-Father and Child- | ||
第16話 | 罪過の輪 | プロスペラ |
-Cycle of Sin- | ||
第17話 | 大切なもの | グエル |
-Precious Things- | ||
特別編4 | Season2もまだ間に合う!『機動戦士ガンダム 水星の魔女』スペシャル特番 | エリクト |
-Special Program- | ||
第18話 | 空っぽな私たち | スレッタ |
-Our Empty Selves- | ||
第19話 | 一番じゃないやり方 | シャディク |
-Not the Best Way- | ||
第20話 | 望みの果て | ノレア |
-The End of Hope- | (以降作品名省略) | |
第21話 | 今、できることを | チュアチュリー |
-What We Can Do Now- | ||
第22話 | 紡がれる道 | エラン |
-The Woven Path- | ||
第23話 | 譲れない優しさ | ミオリネ |
-Unrelenting Tenderness- | ||
第24話 | 目一杯の祝福を君に | スレッタ |
-My All Blessings Find Their Way to you,I'm Wishing It.- |
関連作品
本編の前日譚。
OPテーマの原作として書かれた短編小説。
PROLOGUEから本編に繋がる水星でのスレッタの姿を、エアリアルの視点で垣間見る。
公式ホームページで見れる他YouTubeでスレッタ役の一ノ瀬市の朗読動画や、祝福のCDのガンプラ付属版に冊子として付属している。
インターネットラジオ音泉で展開されるラジオ番組。略称は「魔女ラジ」。MCは主要人物の2人。YouTubeには公式の切り抜きが投稿されている。
漫画。ガンダムエース2023年5月号から連載開始。
PROLOGUEとゆりかごの星の間の時系列の地球で何が起こったかが書かれる。
関連動画
ティザーPV
予告PV
予告PV2
SEASON2予告PV
関連タグ
ガンダムシリーズ
ガンダムビルドダイバーズRe:RISE(SDガンダムワールドヒーローズ)⇒機動戦士ガンダム水星の魔女
日5
呪術廻戦(第1期再放送、2022年春夏)→本作(第1クール、2022年秋)→機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ / 機動戦士ガンダム サンダーボルト / 機動戦士ガンダムNT(TVエディション、2023年冬)→本作(第2クール、2023年春)→ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜(2023年夏)
アニメイズムB2
15周年 コードギアス 反逆のルルーシュR2(2022年夏秋)→本作(第1クール再放送、2023年冬)→江戸前エルフ(2023年春)
外部リンク
テレビシリーズ初の女性主人公役の市ノ瀬加那 “相方”Lynnと語る“新しいガンダム” - MANTANWEB
初の女性主人公、“学園が舞台のガンダム”が描くものとは - WEBザテレビジョン
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