マッドサイエンティスト
まっどさいえんてぃすと
概要
直訳すると「狂った科学者」。
何ゆえ「狂」と呼ばれるかというと、次のどちらか、あるいは両方の特徴を持つからである。
フィクションにおけるマッドサイエンティスト
しばしば一般的な善悪・倫理の基準をどこかに置き忘れて来た「頭のねじの飛んだ」性格として描写され、危険な研究を行っているにもかかわらず善悪の概念が欠如した危険人物である。多くの場合、自身の研究成果によって何が引き起こされるかについては無頓着かあえて無視しており、自己中心的な言動で周囲の反感を買うことも少なくない。
そのような性質のために悪役となることがしばしばであるが、結果的に主人公達の役に立つこともある。一般的な善悪の概念は欠如しているが、自分の信念や美学が主人公の目的や思想と一致した結果、協力する立場になるというのがお決まりのパターンである。またコメディ色の強い作品では、悪意がなくてもトンデモない発明で周囲に迷惑をかけるトラブルメーカーとして描かれることが多い。
現実のマッドサイエンティスト
フィクションに登場するマッドサイエンティストはとかくとっつきにくい変人が多いが、エキセントリックな人間性と大掛かりな研究は現実的には両立しにくい。
何かしらの研究開発に携わったことがある人であればおわかりいただけるだろうが、実際の研究開発というのは専門家達の知見を結集した協働によって行なわれるのが常であり、また理論を実用に繋げるには莫大な予算がかかるものだからである。マッドサイエンティストと呼ばれる実在の人物の多くがビジネスマンや軍人といった組織人としての顔も併せ持っているのも、研究開発というものが孤高の天才による個人作業でなくビジネスや政治と密接に結びついた協働作業であることをあらわしている。
端的に言えば、マッドサイエンティスト的な研究開発は、マッドサイエンティストらしい社会不適合者には困難なのである。現実の学術分野で変人研究者が多数生息しているのは、極論1人でもできる数学や理論物理学分野であって、マッドサイエンティストが手掛けるような応用科学(特に工学や医学)分野には、あからさまな変人はまずいない。
フィクションにおけるマッドサイエンティストが変人であることが多いのは、現実のマッドサイエンティストと呼ばれた人々のパーソナリティ(確かに変わり者もいるが、大なり小なり誰もが持っている部分ではある)が誇張されてきたことや、科学発展の黎明期(貴族がパトロンだったり、個人研究が基本だった時代)の科学者が元ネタであることなどが理由として考えられる。
現在のフィクションでは現実的な側面を踏まえ、表向きには「優秀な軍人や実業家」「真っ当な研究者」として社会的には成功しているマッドサイエンティストも多く登場している。
実在したマッドサイエンティスト
フィクションほど突きぬけた人物は流石に少ないものの、研究テーマと用途が倫理を踏み外したものであったり、研究内容や主張が風変わりなものであったり、本人のパーソナリティや経歴に変わった部分があるとマッドサイエンティストと呼ばれる。
学者
- ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ(アメリカ合衆国:医学者)
- ジョン・フォン・ノイマン(アメリカ合衆国:理論物理学者・数学者・経済学者)
- 原爆開発に関わり、映画『博士の異常な愛情』のストレンジラヴ博士のモデルの一人(もう一人はエドワード・テラー)。「自己複製機械のシミュレートを暗算と筆算で証明(当時は高速なコンピューターがなかった)」「コンピューターができたので電子計算が正しいかをノイマンに検算させる」など、常軌を逸した演算能力の逸話は多い。別名『火星人』。一方で晩年は認知症に侵され、2桁の足し算すらできなくなってしまったという哀しい最期となった。
- エドワード・テラー(アメリカ合衆国:理論物理学者)
- 水爆開発に関わり、映画『博士の異常な愛情』のストレンジラヴ博士のモデルの一人(もう一人はジョン・フォン・ノイマン)。
- ジョン・グールド(イギリス:動物学者)
- トロフィム・ルイセンコ(ソビエト連邦:農学者・生物学者)
- 武田邦彦(日本:工学博士<資源材料工学>)
- アルバート・ホフマン(スイス:化学者)
- LSDを開発した。幻覚剤の開発に取り組み、マジックマッシュルームなどを研究した。
- 賀建奎(中華人民共和国:生物物理学者)
- 2018年に世界で初めて遺伝子編集ベビーを誕生させた。受精卵にHIVに感染しにくい遺伝子編集を施し、双子の赤ちゃんを誕生させたもので、倫理的、法的、手続き的問題(大学に無断で行った)から世界的な非難を浴びた。
- ヴィルヘルム・ライヒ(オーストリア=ハンガリー帝国:精神分析学者)
- 元フロイト派の精神分析学者。ナチスを批判していたため後にアメリカへ移住。顕微鏡下でオルゴンエネルギーという生命エネルギーを発見したと報告したが、他の研究者の追試に耐えうるものでは無かったのにもかかわらず、アメリカでオルゴンエネルギー増強による治癒を銘打った医療機器を開発・販売するなどしたため、医療法違反で逮捕拘禁され、そのまま死去した(今でも関連法に抵触しない範囲で関連器具が売られている)。
- イブラヒム・アル・アシリ(サウジアラビア:化学者)
- アルカイダの化学者、爆発物専門家。サウード王国大学で化学を学んでおり、アルカイダにて爆発物の製造を行い、2009年のサウジアラビア副内相暗殺未遂事件等に関与した。彼の製造した爆弾は発見が難しく、2013年に体内に埋め込む爆弾を開発するなどしている。また、インクカートリッジに偽装し爆弾の原料を仕込み密輸しようとする事件を起こしている。2017年にアメリカ軍の作戦により暗殺されたと言われている。
医師
- アンドレアス・ヴェサリウス(神聖ローマ帝国:医学者・解剖学者)
- ジャック・ケヴォーキアン(アメリカ合衆国:医師)
- 自殺装置を発明した。要はリアルドクター・キリコ。
- ヨーゼフ・メンゲレ(ドイツ:ナチス親衛隊員・医師)
- ジークムント・ラッシャー(ドイツ:ナチス親衛隊員・医師)
- メンゲレ二号。実験内容はメンゲレより石井のそれに近い。
- 山福二郎(大日本帝国:陸軍軍医)
- B-29搭乗員の8名の米兵捕虜を生体解剖に供する事を病院詰見習士官の小森卓軍医と共に軍に提案、これを軍が認めたため、8名は九州帝国大学へ引き渡され彼らによって生体解剖が行われた。
- 石井四郎(大日本帝国:陸軍軍医)
- 齊藤元章(日本:医師)
- スーパーコンピューターの開発者。「日本初の人工知能で不老不死がもたらされる」などの奇矯な言動で注目されるも、自身の経営する会社への補助金を趣味のカーレースにつぎ込んでいたとして逮捕されている。
- ジョン・ハンター(イギリス:医師)
- 「近代外科医の開祖」と呼ばれる一方で死体の窃盗に手を染めていた。
- モーリス・チュビアーナ(フランス:医師)
- フランス原子力学会の議長を務めていた医師。放射線ホルミシス説(低線量の放射線は身体の抵抗力を増すとする)の強力な主張者。「人間の細胞は自然放射線の10万倍程度までなら遺伝子を修復できる」という現代の放射線医学の常識とは反する主張を行っており、Pixivにも彼の主張を真に受けたイラストが投稿されている。
工学系技師・技術者
- 平賀源内(日本:本草学者・発明家)
- ニコラ・テスラ(アメリカ合衆国:電気技師)
- ヴィリー・メッサーシュミット(ドイツ:航空機設計技師・会社経営者)
- Bf109を始めとする数々の名機を設計したことで航空機史に名を遺した。自身の名を冠した会社の経営者としても有能であり、戦後も会社を切り盛りしていた。しかし技術者としては倫理に欠けた面があり、乗員の安全を無視した無茶な設計をすることも多かった。
- リヒャルト・フォークト(ドイツ:航空機設計技師)
- ブローム・ウント・フォス社の航空機設計技師。どういうわけか左右非対称の飛行機に固執しており、Bv141を筆頭とする左右非対称の"作品"をコレでもかというほど考案した。川崎造船所(川崎航空機)で航空機設計の指導を行っていたこともある。
- アブドゥル・カディール・カーン(パキスタン:技術者)
- 大学で金属工学を学び、卒業後はヨーロッパで核兵器の製造で重要な役割を果たす遠心分離機を製造する会社に就職。その後パキスタンに帰国し、核開発の責任者として核実験を成功させる。また、その際作った人脈「核の闇市場」を用いてイラン・北朝鮮の核開発に関与している。
- ジェラルド・ブル(カナダ:技術者)
- 大砲の研究者。イラクのフセイン大統領のもと、ミサイルの距離を飛躍的に伸ばす多薬室砲を研究していたが何者かに暗殺された。
マッドサイエンティスト風の人物
フィクションのマッドサイエンティスト一覧
太字は投稿作品数100以上のキャラクター
漫画
ジャンプ作品
※1ゲーム版オリジナルキャラクター
※2劇場版オリジナルキャラクター
サンデー作品
他少年漫画
他ジャンル
※:OVA版では「木原マサキ」。
アニメ
※1:作品媒体によっては該当しない場合もある。
※2:マッドサイエンティストというより、『マッドエンジニア』の方が正しい。
小説・ラノベ
※1:代々マッドサイエンティストな家系、最近では血縁は関係のない概念とされる。
※2:現状、web版のみの登場。発現してしまった盾の影響で本来の人格を押しのけて生まれてしまった、「コミカルな悪の科学者」的な別人格。一人称は「ワシ」。
ゲーム
アクション
※1:作品ジャンルが「ダンドリアクション」のためアクションの分野に記入。また、ゲーム内で目立つのは幼馴染に対する扱いぐらいである。
※2:作品のテーマ上、アンブレラ社の幹部以上の地位を持っているキャラクターは、ほぼ全員がマッドサイエンティストである。
※3:他作品からのコラボキャラクターは除外。
RPG
※1:インペリアルサガ/同エクリプスでのエピソードに関しては特に常軌を逸している。
※2:名前だけでなく容姿、科学力、人間性ともに『MOTHER2』の博士とそっくりだが、『MOTHER2』の博士と同一人物であるとは明言されていない(同じ作品シリーズのスターシステムのようなものと推測される)。
SRPG・ARPG
他ジャンル
特撮・ドラマ
仮面ライダーシリーズ
改造人間がテーマである為、シリーズを通して多数登場。
※1:続編漫画に登場。
※2:これらも含めると100以上になる。
スーパー戦隊シリーズ
こちらも敵の組織が悪の研究に手を染めてたりすると登場することが多い。
※1:所属の暗黒科学帝国デスダークは暗黒科学者(マッドサイエンティスト)による組織。
※2:弟子の武装頭脳軍ボルト幹部たちも全員マッドサイエンティスト。
海外作品
※海外での名前はクーキー。